「鬼無里行こうよ」
高田が言った。
「ああー、たまにはいいよねー」
(仕方ないな。たまには行ってやるか)
鬼無里の階段を降りていく。
金井ちゃんはよく麻雀で負けると気晴らしに金子と二人で鬼無里に行っていた。
今日も気晴らしだった。
 
「ふー」
おしぼりで手をふいて、金井ちゃんはため息をついた。目が死んでいる。
「なんかあったの?」
高田が聞いた。
「うん、ジョイント委員の仕事やりたくないんだよー」
「そんな大変なの?」
「人間関係とかさー。嫌なんだよねー」
金井ちゃんは東経大の人間関係を言ったのだが、
高田は他大学の人との人間関係だと思ったようだ。
「仕事やらないんだったらガツンと言っちゃえばいいんだよ」
「あーそうだねーでも嫌いなんだよねー」目が死んでいる。
 高田は話題を変えた。
「セカンドは雰囲気どう?」
「あーちょっと暗いよねー、みんなしゃべってくれないんだよー。
ボクが盛り上げてやってるのにねー協力してくれないんだよー」
言いたい放題だ。
「ぼくセカンドの人達と合わないのかなー」
「そんなことないんじゃないの?」
「あとボク高い音でないんだよーバリトン行きたいなー」
「だからキミはテナー声だって。だいたいパートリーダーが言うセリフじゃないね」
 バリトンに行けないことは解っていたが、パートリーダー終わって4年になったら元技術系の権限を使って、バリトンに移るつもりだった。
 金井ちゃんはパートリーダーの権限を乱用して、セカンドにいた上司のキヨさんをベース(条件付)に追いやったばかりだ。
金井ちゃんはセカンド以外のパートに行きたかった。
金井ちゃんは表情には出さなかったが偽善者と言われるのがとても嫌だったのだ。
(セカンドにいるから偽善者って呼ばれるんだよ。バリトンにいたらきっと言われないよ。)
 
「音取りテープ作った?」
「あーもうちょっと。」目が死んでいる。
「まだやってないのかよ?じゃ明後日までにつくって。」
金井ちゃんはムッとした。
ボクは昨日作るはずだったのに千葉を探しに岩井まで行ってやって、金子と二人っきりで電車で帰ってきてやってお疲れなのになんて事を言うんだ、J・Tは。
「そんなこと言ったって仕方ないじゃん、ジョイント委員もあるんだよ」
「それでいいわけ?」
金井ちゃんはビールを一気に飲んだ。そしてビールをもう一つ頼んだ。
「ちょっとトイレ行ってくる。」
金井ちゃんはトイレに行った。
 
トイレに行って気がついた。
「あれボクお金いくら持ってたっけ?」
金井ちゃんは財布を見るまでもなくお金をほとんどなかったことを思い出していた。
どうしようかなー。借りるのも嫌だしなー。いいや帰っちゃえ。
千葉ちゃんだって先生練習中に失踪したんだ。
金井ちゃんは高田にばれないようにして、出口を出た。
 
良い加減に酔っていた。そろそろ帰るかな。
金井ちゃんはPHSの時計を見た。
11:00だ。帰ったら弟のケンは寝ているだろう。
そう言えばケンは明日朝早いんだったけなー。
金井ちゃんはアダルトビデオが見たくなった。
 
金井ちゃんはビデオ屋の花ちゃんによることにした。
んー何借りよっかなー。運動会ものは飽きちゃったからなー。
金井ちゃんは企画物派だった。
これにしよっ。
金井ちゃんは放課後ピンサロ通信2を借りた。
 
時計を見ると12時であった。帰ろっと。
(ふーやっと帰れるよー嫌なことがいっぱいあったなー。でも明日ビデオ見て元気出そー)
12時の割に国分寺駅は人通りが少なかった。
「あれっ」
金井ちゃんは驚いた。駅のシャッターが閉まっていたのだ。
(あれまだ12時のはずじゃあ)
駅の時計を見ると1時30分を過ぎていた。
PHSの時計が狂っていたのだ。
(何で時計が狂ってるんだよ、昨日まで狂ってなかったのに)
金井ちゃんは、金子が電車の中で金井ちゃんのPHSをいじくっていたのを思い出した。
「ちっあのバカネコめ。」
金井ちゃんは困った。終電を逃してしまったのだ。
どっか泊まるか。
こんなことなら高田と一緒にいるべきだった。
金井ちゃんは候補地を考えた。
ウメの家かおさとうさんの家かクワの家か。高田の家に行けないのが痛い。
ウメの家は寝るとき電気真っ暗にしてくれないからなー、おさとうさんはまだ寒いかも知れないからなー
「クワのところ行こっかなー」
                 続く