| 野菊の墓 | |||||||
| 著者 | 伊藤左千夫 | 本体価格 | 286円(税別) | ||||
| 発行年月日 | 1955年10月27日 | 出版社 | 新潮社[新潮文庫] | ||||
| 江戸川の矢切の渡し付近の静かな田園を舞台に、15の政夫と2つ年上の従姉民子との間に芽ばえた幼い清純な恋は、世間体を気にする大人たちのために隔てられ、少年は町の中学に行き、少女は心ならずも他に嫁して間もなく病死してしまう。純真、可憐な恋物語として多くの読者の共感をさそった『野菊の墓』、心理小説風な『浜菊』、ほかに『姪子』『守の家』を収める。 | |||||||
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| 4月29日付けの読売新聞、30面「名作ここが読みたい」という記事を読んで、『野菊の墓』を無性に読みたくなった。私は本を読むのが好き、という人に会うと「あなたのオススメの本は何ですか」と聞くことにしている。他の人が好きになり得る本には、何かしら魅力があるに違いない、と思っているからだ。その記事を書いた藤原正彦氏によると、最後の10ページは涙無しには読めないらしい。 『野菊の墓』をという題名や、作者が伊藤左千夫であることくらいは知っていたが、実際に手にとって読んでみたことは無かった。やはり、死ぬまでに一度は読んでおくべきだ、と思い、その日のうちに書店へ行った。 読み始めると、その文章にぐいぐい吸い込まれていくような気がした。「読みやすい文章」というのは人によってそれぞれ違うと思うのだが、『野菊の墓』の文体は私に合っていたのだろう。政夫と民子が徐々に恋に落ちてゆく過程、そしてその恋が大人たちによって引き裂かれていく状況、悲しい別れを迎える場面。ほんの60ページくらいの短編小説だが、こんなに人の感情を揺さぶることができる文章が書ける才能を妬ましくも思う。 最後の政夫の言葉、を読んだとたん、涙が止まらなくなった。こんなにも誰かを愛することが私にはできるだろうか、と羨ましくなったのかもしれない。風呂で読書をすることの利点は、どんなに泣いても恥ずかしくないことだろう。 |
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| 2003/05/03 | |||||||