ドミトリーの生活最初に断っておくが、私は日本で一人暮しをしたことがない。こちらに来てはじめて一人暮しを経験したのである。 こちらに来て、3日ほど大学が経営する宿で生活していた。この宿は、結構快適で、しかもそのときは、1泊65ドルだった。豪華な朝食付きである。一般人も泊まれるようだ。ただ、防音がいまいちで、寝ているときに隣の部屋のいびきが聞こえた。 そののち、BUSCHキャンパスにあるBuell apartmenetsと言う名前のアパートに移った。ここは、大学院生用のアパートである。このアパートに入居するには、もちろん申請しておく必要があるのだが、私が日本にいる間に、ボスの秘書がやったおいてくれた。ちなみに、二ヶ月半ほどここにいたのだが、宿泊費は全部で999ドルだった。 建物の入り口は、カードキーで開くようになっている。私のアパートは二階にあって、玄関のドアを開けると、まずリビングがあり、キッチンがあり、廊下を歩いた突き当たりにバスルームやら洗面所などがあり、廊下に沿って個室がある。空調は、セントラルヒーティング、クーリングで、アメリカ人ってなんて贅沢なんだろうと思ったものだ。ここまで書くと、いいように思えるが、個室は4つあり、キッチン、バスルームは4人共同で使うことになる。冷蔵庫は一つしかない。これが、私には苦痛だった。 こちらに来て驚いたのが、アメリカの学生のプライバシーはあまり重視されていないということだ。大学院生でない普通の学生(Undergraduate)のドミトリーなんてひどいものである。相部屋なんてざらだし、クーラーもついていないところがあるそうだ。こちらの夏は非常に暑いので、夏にいなければならないとしたら大変だろう。まあ、長い夏休みがあるから問題ないとは思うけど。それから、バスタブもないらしい。これにくらべると、日本の学生の恵まれていること… ちなみに、私のいたアパートのそれぞれの個室には、いす、机、ベッド、たんすが、もともとあったので、便利だった。アパートと言えば、家具が何もついていないのが普通だ。 毎日の生活は、こんな感じだった。まず、結構早い時間に起きた。6時とか7時かな。それから、パンを焼いたり、ベーコンを焼いたりして、朝食を作り、自分の部屋で食べた。それから、大学の研究室にお出かけして、昼には、戻ってきて、食事を作った。それから、また研究室に行って、夜に帰って食事を作って食べて、寝た。初めのころは、昼食は大学にある食堂でとっていたのだが、口に合うのがピザだけで、そればかり食っていたら飽きてしまって、昼も自分で作ることになった。 4人部屋で、食事を作るのは結構大変である。まず、冷蔵庫のスペースがないこと。それから、ほかの人間と食事を作る時間が、かち合わないようにすること。まず、冷蔵庫のスペースがないのには参った。しようがないので、野菜などで、いたみにくいものは、自分の部屋に置いておいた。たとえば、ナスやピーマン。冷房は、とんでもなくよく効いていたので、部屋の中でも、そうは傷まない。ちなみに、私は夏でもアパートの中では、冬のように着こんでいた。それから、毛布をかぶって寝ていた。アメリカと言うのは、資源の浪費国だと思ったものだ。寒かったら窓を開ければいいという人もいたが、あまりに、ばかばかしいと思った。食事を作る時間がかみ合わないようにするのも、また大変である。私は、Buell apartmentにいる間、簡単に早く出来るものばかり食べていた。そうすれば、他の人間に迷惑がかからないから。たとえば、ステーキとか。昼もステーキ、夜もステーキなんてことは頻繁にあった。そういうときの、尿の色というのは、非常に濃くて,ちょっとぞっとした。それから、ご飯も一切食べていなかった。こんな生活を続けていたら健康を害していたことだろう。私の和食ライフが始まるのは、次のアパートに移ってからである。 ちなみに、私の隣には、アメリカ人と韓国人が住んでいた。もう一人の住人のチェコ人は私が入ってすぐに、長い旅行に出かけて行った。だから、3人の生活が長かった。それでも、冷蔵庫のスペースは少なかった。アメリカ人のほうは、まいにち毎日パスタばかり食っているようだった。韓国人の兄ちゃんは、結構まともな食生活で、ご飯を炊いて食っていた。私が、ベーコンを焼いていたときやってきて、「私はアメリカに来たころ毎日毎日ベーコンを食ったので、今では大嫌いだ」と、言っていた。野菜をいっぱい取らないと体に悪いと言っていた。まあ、その通りだろう。東洋人どうしというのは、案外仲良くなるもので、今でも、たまにキャンパスで出会うと挨拶する。でも、アメリカ人のほうは顔も覚えていない。 私がそのアパートを出る直前、sanitary inspectionと言うのが行われた。衛生チェックとでもいうのか、とにかくバスやキッチンをチェックする人がきて、合格しないと罰金を払わされるのだ。それで、みんなでその前に大掃除をする。このお陰で、アパートはかなりきれいに保たれている。私と韓国人の兄ちゃんは、チェックの直前に、せっせ、せっせと掃除したのだが、なんとアメリカ人は掃除に来なかった。チェックは、午後9時ごろ行われて、それまでに掃除しておかないといけないのだが、彼が帰ってきたのは午後11時ごろである。ちなみに、各人の個室はチェックされない。チェックされるのは、キッチン、バス、トイレなどだけである。普段ならその男は、夕方6時ごろに帰ってくるのに、その日に限って遅くまで出歩いていたのだ。私が、合格したよというと、「Thank you」の一言である。掃除をしている間、韓国人の兄ちゃんに、なんでアメリカ人が来ないか知っているか聞いたら、「そんなことは、気にしない」といっていた。もう、韓国人の兄ちゃんもあきらめていたのだろう。すべてのアメリカ人がそのように振舞うわけではないが、アメリカ人にはそういうところがあると思う。ちょっと、アンチアメリカの気分になった瞬間だった。韓国人の兄ちゃんとは、二人でせっせと掃除したお陰で、結構なかよくなった。
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