流れる

 
時間を本気で戻したいと思ったことがある。

中学生になったばかりの頃だった。
何が嫌だったわけではないけれど
あの薄暗い廊下や、制服や校則や
見えないヒエラルキーは確実に私を蝕んだ。

小学生の頃に聞いていた曲を家で流して
目を閉じて、本気で願えば
目を開いた時、1年前に戻っているような気がした。

毎日、授業が終わったと同時に逃げるように帰っては
家でそんなことばかりしていた。

そのうちに、その儀式が効力を持たないことに気付いた私は
いつしか時間を戻そうとすることはなくなった。
現状を受け入れたのではない。
あきらめたのだ。

今、みんなが休みではない日に
人のいない北千住のカフェで紅茶を飲んでいると
時間が戻ったような錯覚に陥る。
時間が戻ればいいのに、と本気で思う。

大学生のころは良かった。
今よりも、もっと濃い時間を過ごしていた。
カフェで物思いに耽ることも、バイトをすることも
サークルで歌うことも、どんなに貴重で
密度の高い時間だったのかと、今さら悔やんでも遅い。

過ぎた時間は戻らない。
それなら、私は目の前にある時間をもっと
楽しめばよかった。

もう、時間の流れについていけない。
トップに戻ります。