お詫び 今週は作者が多忙・病気のため多事匠論は休載いたします。 作者が病気から立ち直れるように、そして就職が決まるようにみなさ 応援してあげてください。 そこで今週は、先週の多事匠論をそのまま掲載します。 先週の水曜日、品川プリンスホテルで石原裕次郎十七回忌法要が行な われた。そして、石原裕次郎を偲ぶ多くのファンのために特別上映会が 開かれた。「黒部の太陽」と「栄光への5000キロ」。どちらの作品も石 原裕次郎の遺言で映画館でしか見ることができず、幻の映画と言われて いる。私は、たまたま、「黒部の太陽」を鑑賞することができた。 長野県と富山県にまたがる北アルプスに黒部峡谷はある。そこに、巨 大な黒四ダムを建設しようというプロジェクトが組まれた。戦後の日本 が敗戦国から脱皮して世界に伍していくために必要なダムだ。このダム ができあがるまでの過程を描いたのが「黒部の太陽」である。昨年、NHK の「プロジェクトX」で取り上げられ、紅白歌合戦で中島みゆきが歌った 場所が黒四ダムだ。 この作品は三時間を超す大作であるが、上映会では二時間に編集されて いた。だが、スケールの大きさに圧倒されてしまった。標高三千メートル の断崖絶壁を道なき道へと進む場面には山の恐怖を覚え、トンネル内での 濁流シーンではダム建設に命をかける労働者の情熱を感じた。ハリウッド 映画にも負けないほどの名作だ。そして、初公開から三十五年を経ても、 まったく古さを感じない。むしろ新鮮に映る映画であった。日本映画の底 力を知ることができた。まさに一流の作品と言えるだろう。 これに対し、最近の日本映画はつまらない。心に響くものがない。映画 会社が利益誘導に走ってしまい、映画制作に大金をかけないからなのだろ うか。詳しい理由はわからないが、二流・三流の作品が多すぎる。黒澤明 や木下恵介、小津安二郎の作品をリアルタイムで見ることができた人々が うらやましい。本物の映画には、想像力をかりたて豊かな心を育む力があ るはずだ。だからこそ、映画は「七番目の芸術」と呼ばれるのだろう。 かつて、手塚治虫に憧れた若い漫画家たちはトキワ荘に集まった。藤子 不二雄や赤塚不二夫、石ノ森章太郎らである。手塚治虫は彼らに次のよう な言葉をかけたそうだ。「一流の漫画を書きたければ、一流の本を読み、 一流の音楽を聞き、一流の舞台を見て、一流の映画を鑑賞しなさい。そし て、あなた方が一流の人間になりなさい」(赤塚不二夫・「これでいいの だ」)現代に生きる私たちにも通じるものがあるかもしれない。一流を見 極める目をもちたいものだ。