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第二章 日常場面における行為の心理学



人間の思考と説明の性質

人は自分がよく知らないものでも、自分なりに理解する方法を持っていなければならないのである。なぜなら人間はなんでも説明したがる生き物だからだ。

メンタルモデルはものがどのように機能し、できごとがどのように起こり、人がどのようにふるまうかについての概念モデルである。私達が経験を理解したり、自分の行動の結果を予測したり、予期せぬ出来事に対処したりするときの手助けとして、これらのメンタルモデルは必須である。そして、誰でも自分が観察した事実を説明する理論としてこのメンタルモデルを形成してしまう。

現実あるいは、想像上のものに関する知識であろうと、素朴あるいは洗練された知識であろうと、私達のもつその知識を基にして、メンタルモデルは作られる。断片的なデータしかあたえられないとき、人は自分が見た事実に矛盾しない範囲で自由に想像力を膨らまし、結果間違ったモデルをもってしまうこともある。偶然に連続して2つの出来事が起こればそこになんらかの因果関係を想定してしまうし、間違った過去の経験から推理を行うってしまうこともある。そして、一旦説明を思いついてしまえば、それが正しいものであろうとなかろうと、もはや矛盾や困惑を感じることはなくなる。


人はどのように作業をするか。

まず、何かするためには目的がなくてはならない。それが遂行されるべきゴールである。これは、実際に目的達成のために行う特定の行為[意図]に変換される。そこからさらに意図を実現するためにしなければならない行為系列が作成される。次にそれを実行する。どの行為をするか特定したあとで、それを実際に行う。これが実行の段階であるそして最後に、実行した結果、目的が達成されたのかチェックしなければならない[評価]。ここには三つの段階がある。最初に外界に何が起こったかを知覚し、次にその意味を理解しようとし(解釈し)、最後に、欲していたものと実際に起こったことを比較する。

大抵の行動はこれらの段階すべてを経由する必要はないし、また、一つの行為で完成するようなものでもない。絶え間なく続くフィードバックルートが存在していて、ある活動の結果がそれに引き続く活動を呼び起こしたり、ゴールは副次的なゴールを、意図は副次的な意図を生み出したりもする。活動しているうちに、ゴールが変化したり、捨てられたりするかも知れない。

また、日常の行為においては、ゴールや意図もあまり具体的に特定されていないことが多い。

何か行う時に、人が頭の中に作り上げる心理的な表現と外界の物理的な構成要素・状態にへだたりがあると、行為が上手くいかない。利用者の意図した通りのことが実際に実行できなかったり、実行した結果を知覚し解釈することが困難で評価ができなければ、それだけ行為は難しいものになってしまう。

一般的に言って、それぞれの段階においてそれぞれ特別のデザイン的手法が必要とされる。そしてこれらのひとつひとつが結局、第一章で述べた「可視性」、「よい概念モデル」、「よい対応付け」、「フィードバック」の原則に相当する。





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