リード
関大をはじめ、多くの大学でセクシャルハラスメントの防止のためのガイドラインが作られてきている。こうした事態を踏まえ、新聞会では「学校教育と性差別の関係」について研究されている木村涼子さんにインタビューを行った。
−まず、木村さんの研究について教えてください。
学校教育における性差別を明らかにするとともに、今の学校教育のなかで女の子が「女らしく」、男の子が「男らしく」というように育てられていく社会化のプロセスの研究です。
それから、戦前の婦人雑誌を題材に、近代的な「主婦」というものが登場した社会的プロセスを見ていく研究もやっています。
−研究し始めたきっかけは何ですか。
大学入学時に改めて自分のことを見つめ直してみたときに、「女性は男性に比べると価値が低い」という感覚が自分の中にあるのに気づいたんです。一方で、私は自分自身を女性の中では男性にちょっと近い存在だと考えていて、「自分は少し特別なんだ」という優越感を持っていました。しかし、そこには自分が「『女の子らしい女の子』じゃない」という劣等感もあったんです。このように、周りの女性に対して優越感と劣等感を持っている自分は、歪んでいるんだなぁーと思いました。
加えて、学校教育を受けてきた中で、勝ち負けで人間関係を見る能力主義的なものの考え方に侵されてしまっていることにも気が付いたんです。
これらをきっかけとして、「教育」と性差別ということをテーマに研究したいと思いました。
−今大学について、どのようなことを指摘されているのでしょうか。
私は学生時代に阪大で、部落問題論などがあるのと同じように、まずは基礎教養として、女性問題論といった授業の開設を要求する運動をしていました。しかし、在学中には残念ながら実現しませんでした。
今はそれから比べるとジェンダーのことを授業で扱う大学や、勉強したいという学生さんも増えてきていて、「大きな変化が起こったな」と思っています。まだまだこれから先も、もっと広がっていって欲しいです。
こうした中で、一つの課題としては、今そういう運動もしているんですけども、ジェンダーや女性問題についての授業を人権教育として、教員養成課程の必修科目に入れてほしいということです。その先には、教職課程だけではなく、一般教養や専門教育として各大学に開設しほしいですね。
こうした授業を受けて卒業後に職場の中で生かしてもらいたいと思います。
セクシャルハラスメントといった問題が社会的に無視できなくなっていますし、そういうことについてちゃんと対応できる人たちに、なっていってほしいですね。
−現在、セクシャルハラスメントに関するガイドラインを作っている大学が増えていますが。
大阪女子大でも現在ガイドラインを作成中で、議論を重ねています。その中では、相談員に教職員がなったら、その名前に全学に公表して、直接個人的に相談に行けるような形にしようと話しています。
今お話しになったように、セクシャルハラスメントのガイドラインが他の大学でもいっぱいできてきています。これはよいことだと思います。
ただ何かが起こったときに、「いや、一応は対応しました。ガイドラインをうちでも作っています」、「女性学やジェンダー論の授業、そしてガイドラインがあるからいいじゃないか」といったかたちで終わらせるための「言い訳」に、それが使われたのでは困ります。セクシャルハラスメントがない環境を作っていくことはすごく大変だけど、それに向けて、ガイドライン作成の後に自主的に出来る限りの努力をして行かねばならないですね。
−社会的にセクシャルハラスメントの問題性が訴えられる中で、それに対し、いま男性に求められることは何でしょうか。
言われはじめて「あっ」と思うことも多いと思うんです。だから、「全部自分で考えて気付いていかなあかん」とまでは言いません。構造としては、なかなか気づけない情況に置かれているわけですから。そこでは、はっきり文句を言われたわけじゃなくても、ちょっとしたきっかけで気づける自分を持ってほしいと思います。
その上で、女性が何か言ったときには、まず、わかろうとしてほしい。言われたときに、素直に耳を持ってくれるかどうかということを男性に期待したいです。そして、対話ができれば一番いいなと思います。このことは男女問わず、そして他の問題にも当てはまることだと思います。
−最後に、ジェンダー論や女性問題を勉強しようと思っている、あるいは現在している学生に何か一言お願いします。
昔は、「ジェンダーや、女性問題のことをやります」と言っただけで反発が来たので、運動するつもりじゃないとできませんでした。でも、今では「わたしはこれを勉強したいだけ」というのでも勉強できるようになっています。
しかし、私個人は、「フェミニズムと無関係にジェンダー論の研究をやります」と言われると「つらいなぁ」と思います。女性学やジェンダー論が今のように市民権を持っているのは、運動が勝ち得たものだと思っているので、運動と研究を切り離して考えたくないんです。
ですから、ジェンダー研究の広がりの中で周りや自分を変えていくということと結びつけるかたちで学ぶ人も、増えていってほしいですね。
その上で学生には、矛盾して聞こえるかもしれませんが、謙虚さと自信を併せ持ってほしいと思います。
謙虚になってほしいというのは、女性学研究・ジェンダー論が出てきた歴史を学び、大事にしてほしいということです。
古い研究の中には、今はもう「当然」のことになっていて、大したことないと思えるようなものもあるかと思います。それでも、その時代には「すごかったんだ」という歴史感覚を持ってほしいと思います。
そのことを踏まえた上で、未来に向かって自分に自信を持って学んでいってほしいですね。
−ありがとうございました。