エンジンなどを使わずに、空を飛ぶ方法を考えてみましょう。エンジンなしで空を飛ぶには浮力を利用する必要があります。浮力とは流体中に存在する物体に働く力のことで、流体中に存在する物体には押しのけた流体分の質量が浮力として重力とは反対方向にかかります。流体とは液体や気体のことです。例として水に浮かぶりんごを考えてみましょう。りんごを水中に入れると、もともと水があった場所にりんごが存在するようになるわけで、りんごはその体積の分だけ水を押しのけたことになります。そして、その押しのけた水の質量と同じ分だけ浮力を得ることになります。この浮力がりんごにかかる重力よりも大きいので、りんごは水面に浮かぶことになるのです。りんごと同じ大きさの鉄では、体積はりんごと同じであるのでかかる浮力はりんごと同じですが、鉄の質量がりんごよりも大きく、また鉄にかかる浮力よりも大きいために、鉄は沈みます。つまり、その物体にかかる重力と浮力の大きさが、浮くか浮かないかを決めることになるのです。簡単に言うと、水よりも密度の大きいものは沈み、小さいものは浮くということです。

 次に空気中の場合を考えてみましょう。空気も流体ですから、空気中に存在する物体にも浮力はかかります。では、空気中に置いたりんごを考えてみましょう。空気中のりんごにも水中と同じだけの重力がかかります。そして、りんごが押しのけた空気の分だけ浮力もかかります。しかし、机に置いたりんごは浮かびません。りんごの体積は水中でも空気中でも同じですから、りんごは同じ体積だけ水と空気を押しのけます。しかし、浮力の大きさは押しのけた流体分の質量と同じだけの大きさですから、水と空気を押しのけた場合、重い水を押しのけた方がより大きな浮力を得ることになるのです。したがって、空気中ではりんごにかかる重力の方が浮力よりも大きく、りんごは浮かぶことはないのです。

 では、どうすれば空気中で物体を浮かすことができるのでしょうか。空気よりも密度の小さいヘリウムなどは浮かびます。しかし、人間を構成している物質は空気よりも密度が大きいので浮きません。そこで浮かび上がる乗り物が必要になります。乗り物全体にかかる重力よりも浮力を大きくすれば浮きます。つまり、大きな体積の中に軽い物体をつめればいいのです。できるだけ軽い大きな入れ物を作り、その中に軽い物体をつめて、乗り物全体にかかる重力よりも浮力を大きくします。入れ物の中にヘリウムなどの空気よりも密度の小さな物質を入れれば、実際に人間をのせて空を飛ぶことができますが、ヘリウムは高価です。ヘリウムなどを使わずに飛ぶことはできないでしょうか。そこで考えられるのが暖めた空気です。暖められた空気は圧力が一定なら膨張します。暖められて膨張した空気は普通の空気よりも密度が小さくなります。そこで、暖めた空気をこの入れ物の中に入れて、人間が乗る部分の重力を補えるだけの浮力を得ることで、この乗り物を浮かび上がらせることができます。これが熱気球です。

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