『待つ女』


5月5日。端午の節句。ゴールデンウィークが終わる日。私はなんとなく落ち着かないでいた。苛々するでもなく、脱力感を覚えるでもなく、ただ、落ち着かないでいた。
彼は昨日も来なかった。今日でゴールデンウィークは終わる。明日からはまた普通の生活が始まる。彼も例外ではない。

“けっきょく彼は来ないのだろうか。”

こうしてただ待っているのにも、もう疲れてきた。いつまでと問いたらその日かぎりで終わり。それでも待っている自分に、嫌気がさしていた。実は自分自身を一番赦せないのだ。そんなことはもう、とっくに分かっている。

“彼はけっきょく来ない。”

期待なんてはじめからしないつもりだった。求めなければ楽なのに、求めずにはいられない。求めてはいけなのに、求めてしまうから、苦しむのだ。それでも、期待しない振りをして、自分自身に嘘をつく。裏切られたときの脱力感はもうたくさんだ。いつから私はこんなにも卑屈になってしまったのだろう。

“彼はけっきょくやってきた。”



5月5日。端午の節句。ゴールデンウィークが終わる日。彼はひょっこりやってきて当たり前のように私のベッドに横たわって眠る。私の体に指一本触れることなく、ベッドに倒れこみ、眠る。ただそれだけで、全てを赦せてしまう自分が情けない。けれど、人を好きになるとはこおいうことなのだ。

“けっきょく私は彼から離れられないのだろうか。”

どれくらい経っただろうか。彼は突然起き上がり、食事に行こうと私を誘う。断るすべを知らない私はただ無邪気に笑顔をつくる。ただそれだけで、全てがどうでもよくなってしまう。人を好きになるとはこおいうことなのだろうか。それでも、私は彼と一緒にいたい。

“愛しさ余れば憎さがつのる”

食事をしながら束の間の幸せに浸る。それが偽りの幸せであることは百も承知で、しかし、自分を偽らずしてどうしてこの状況を乗り越えられよう。彼を愛しているのか、憎んでいるのか、それすらももう、分からない。分かりたくもない。

“私はけっきょく彼から離れられない。”



5月5日。端午の節句。ゴールデンウィークが終わる日。私はなんとなく落ち着かないでいた。苛々するでもなく、脱力感を覚えるでもなく、ただ、落ち着かないでいた。
彼はけっきょくやってきた。今日でゴールデンウィークは終わる。明日からはまた普通の生活が始まる。彼も例外ではない。そして、私もまた、例外ではないのだ。





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