アンケートへの協力を御願いしていた中で、男性研究者より回答の形で意見が寄せられました。
これについては会議室で「アンケート回答を読んで」でQ3のE、Q8のEとして話題に上っています。
↓
|
花咲く小径・企画掲示板 「アンケート回答を読んで」(1)・(2) |
(Q3)女性・子持ちなどの理由で仕事上不愉快・不便な経験をしたことがありますか
以前、女性のポスドクの就職を断った事があります。今までの実績、これから何をしたいのか、というような点で見劣りしたのと、私の論文を読んだり真剣に勉強してきた形跡がないので、落としました。彼女の先生は私の懇意な方で、本当は採用したかったのですが。
彼女の、出産・子育てに関する態度も、私を不快にするのに十分なものでした。彼女は子供がほしくて、そのための努力をしているとのこと(既婚)。しかし、保育園の状況も調べていないし、何ヶ月から保育園に預けられるか、ということも知らなかったし、最初の1年をどう切り抜けるか、なども考えたこともなかったようだし、−−−と、全く雇用する側としては、あきれる状況でした。勿論、ほとんどの男の研究者は、これらのことを真剣に考えるわけではないので、それをしなくてはいけない分だけ女性は不利です。しかし、社会的に不利だからこそ、それなりの、調査、作戦、戦略が必要になるのです。そういうことをやっていないということ自体が、この方の、どうしても科学を続けたいという強い意志への疑念を抱かせるに十分なものでした。bloom さんが雇用する側だったら、このようにいい加減な人(ある意味では、のんきで良い人)を雇いたいと思われますか?
非常に高名な女性教授に、このような人は、たとえ、人並み程度にサイエンスが出来る人でも採用できないのではないか、という質問をぶつけたところ、完全な同意を得ました。本当に仕事を続けたいという意志を持って、さらに、そのための努力をきちんとする人は、こんな風にはなるはずがない、とのことです。恐らく、仕事のレベルにも、このようなことが現れているのではないでしょうか? 一方で、上に書いたような努力をする女性は非常に珍しいのだそうです。しかも、最近、益々減っているのではないかとおっしゃったのには驚きました。(私のラボの院生には、受験の相談に来たときから、将来の職と家庭の両立についての話をします。効果のほどは明らかではありません。)
私の家内も仕事をしていますが、彼女も同意見でした。彼女は仕事の性質上どうしても休めない日が多く、当日に休むのは大問題になるので、仲間同士で、家庭との両立をどういう具合にするかというような話は、結婚前からの一大関心事だったとのこと。家内は、上の候補者が、私が尋ねるまで子供を持ちたいという話とその時どうしたいかという話をしなかったこと自体が、彼女の世界ではモラルにもとる、と考えていました(勿論、今の社会の中では、という意味です。本当は、社会の仕組みとして、雇用者と被雇用者の両方を助ける制度があるべきです。しかし、これを、研究の世界で実現できるかどうかは、難しいことですね。基本的には、日本に存在するすべてのポジションを50%増やすことが出来れば、それで、問題は解決します。その時、一人あたりの給料は今の70%に抑える必要があるので、瞬間的には、独身者には不利です。)。
一番の問題は社会にあるので、女性個人に、調査、作戦、戦略を要求するのは気の毒であると思いますし、社会的にも不公正であると思います。しかし、社会を今すぐ変えることは出来ないし、女性も雇用側になることもしばしばあるわけですから、その場合を考えてみられたらわかると思いますが、今すぐ出来ることは、やはり、自助努力しか無いと思います。すなわち、作戦を本気で立て、仕事を続ける強い意志を持つということです。勿論、社会を変えていく努力は必要で、それにも、私は、出来るだけ協力したいと思っています。
(Q8)その他、普段仕事上で抱えている悩みなど何でも書き込みして下さい。
2年契約で雇った女性ポスドクが、子供を産むとして、しかも、産まれた子供が身体上の事情でひどく手が掛かる子供で、産後3ヶ月を経過しても、本当に研究が出来る時間が週に30時間程度だったとします。しかも、その人のサイエンスのレベルが、良くて人並み、どちらかというとボスとしては不足を感じるという(ごく普通にある)状況だったとしましょう。bloom さんなら、どう対処しますか? 今までこのようなことは考えたこともなかったので(今でも架空の状況です)、頭が痛いです。
女性ポスドクで、子育てのため、平日と土日を合わせて30時間しか働けないという人を、実は、私は採用しました。あと、在宅で、8時間程度はやっているようです。彼女の仕事は極めて順調で、私は全く満足しており、1年後に、給料を30%上げました。うまく行った理由を考えてみると、
(1)彼女が科学を(いつまで続けられるかはわからないが)何とか続けたいという意志を持っていたこと
(2)現実的に、どの程度の時間は働けるかということを考え、それを、はじめから明白に私に言ってくれたこと
(3)働く環境の整備に熱心であったこと
3−1)そのための引越もした(私も自分の時には、住居の場所も含めて最適化した)
3−2)配偶者の理解を得て、土日にも研究時間が入れられるようにした。しかも、家族との時間も大切にした
(4)彼女と雇用者である私の両者が満足できるような折り合い点を、両者とも努力して見つけたこと
(5)彼女は彼女の手持ちの時間で私が期待していた以上の成果を挙げたということ(実は、この1年間で、私の判断では、研究室で一番の具体的成果を挙げたのが彼女だったのです)
しかし正直に言うと、このようなアレンジメントはポスドクだからこそ可能だったのであり、パーマネントな職の公募で男性と競争になった場合に、うまく行くかどうかは疑問です。そういう意味では、ポスドクが終わる頃には、子供が2才程度にはなっているようにという作戦は有効だと思います。