合成実験版「マーフィーの法則」
反応の法則
「これは簡単だ」と思った実験は失敗する。
「これはうまくいかない」と思った実験は必ず失敗する。
うまくいかせたい反応ほど、うまくいかない。
ノートにていねいに書いてある実験ほど、きれいに進む反応である。
ノーベル賞を取っているような反応は、いかないということがない。
実験項のない論文の反応ほど、適用範囲が狭い。
論文の
ee は、絶対に越えることができない。じっくり練った多段合成ほどうまくいかないものはない。
頭の悪い学生ほど、合成の腕はよい。
指導者がうまく行かないと予想している反応ほど、学生がいい結果を出す。
自分が深く検討しなかった反応ほど、他の人がいい結果を出す。
よく効く触媒ほど、失活しやすい。
実験技術の法則
後輩の実験技術は先輩から見て必ず未熟に見える。
先輩の実験技術は後輩から見て必ず手抜きに見える。
ガラス器具を割ると、指導者が必ずそばにいる。
生成物の量が多いほど、操作時のロスも大きい。
絶対回収不可能な状況でのみ、サンプルをこぼしてしまう。
いちばん大切なフラクションほどよくこぼす。
消火しようと努力すると、よけい火勢が強くなる。燃え尽きるまで眺めることがよいことも多い。
火が出るときに限って消火を手伝ってくれる人が回りにいない。
常に帰宅予定時間は「あと2時間」程度である。
器具の法則
危ないなと思いながら置いたガラス器具は落として割れる。
温度計の読みたい部分が、必ずゴム栓に隠れている。
ガラス器具が増えると、学生が割る数が増える。研究室の器具の数は常に一定である。
どんなにていねいな設計図を書いても、ガラス工はそのとおりに作ることができない。
固着したスリ栓は、「最後の一叩き」で割れる。
化合物の法則
異性体は必ず目的物より収率が高く、結晶性がよい。
結晶性の高すぎるものは目的物ではない。
溶解性が悪すぎて難儀するものは塩ではない。
虫は必ず大事なサンプルに入水自殺する。
最初に調べた化合物が一番物性がよい。分子設計をしても徒労に終わる可能性が高い。
興味深い化合物ほど、収率が極端に悪いか、反応の再現性がない。
使い道のない化合物ほど面白い化合物である。
飛び跳ねた試薬は、必ず目の方に向かって飛んでくる。
ビンごと試薬を割る場合、割るのは一番臭いピリジンである。
分析機器の法則
使おうと思ったときには分析装置が空いていない。
NMR
管のフタは、使用中でないものはない。便利な機能を持った分析機器ほど、誰もその使い方を知らない。
結晶構造解析の法則
いい単結晶ができない化合物は、どう検討してもいい結晶を育てることができない。
一番期待している化合物の結晶構造ほど、ディスオーダーしている。
NMR
管の中に放置してできた結晶は、まじめに作った結晶よりもいい結晶である。結晶作りは、つまるところ忍耐と時間が育ててくれるものである。実験者は「結晶化のお手伝い」をしているものと心得よ。
教育、人間関係の法則
「指導が悪い」「テーマが悪い」という学生ほど腕が悪い。
「学生の腕が悪い」という教授ほど指導能力がない。
英語の苦手な人ほど、英語を使いたがる。
教授は何でも知っていると本人は思っているが、まわりは教授は何も知らないと思っている。
教授の悪口を言っているときには、後ろに教授がいる。
どんなに教授が研究費を持ってきても、学生はありがたみがわからない。
研究室に研究費があればあるほど、学生の腕が落ちる。
研究室が結果を出せば出すほど、野球が下手になる。
教授の辞書に「合成不可能」の文字はない(「やってみなければわからない」はある)。
還暦になって教授が再度実験をやり始める頃には、実験操作をすべて忘れている。
教授の性格が円くなった場合は、そろそろ体力の低下を認識している。
教授の性格が円くならない場合は、能力低下の自覚を欠いている。
自分で何でもしようとする学生の後輩は何もしない。逆は成立しない。
教授と学生の仲が悪いと、学生間の仲はよい。教授と学生間の仲がよいと、学生間の仲が悪い。
教授とスタッフの仲が悪いと、学生間の仲も悪い。
学会報告、論文の法則
手間をかけて作ったポスターほど誰も見てくれない。
準備すれば準備するほど、口頭発表では緊張する。
レフェリーは、一番つかれたく無いところをついてくる。
「
without revision」 の項は飾りであって、あそこに印が付くことはない。