2010年(平成22年)1月
肝機能障害
肝臓が悪いと皮膚の色が黄色くなることは良く知られており、これを黄疸といいます。最近では黄疸が出ていなくても血液検査で軽度の肝機能障害を早期に発見することができるようになっています。
肝臓の細胞の中には、AST(GOTともいいます)とALT(GPTともいいます)という酵素がたくさん含まれています。肝細胞が障害されると、これらの酵素が血液中に出てきますので、AST、ALTは逸脱酵素と呼ばれています。
血液検査では健康人ではASTの値はALTの値よりも大きいですが、アルコール性肝炎、肝硬変、肝癌などでは、肝細胞が破壊されるため、AST、ALTの両方とも高い値を示し、またASTの値はALTの値よりも大きいパターンとなります。
慢性肝炎ではAST、ALTの両方とも高い値を示しますが、ALTの値はASTの値よりも大きいパターンとなります。このパターンは通常の脂肪肝でもみられますが、あまりアルコールを飲まない場合にみられる脂肪肝である非アルコール性脂肪性肝炎でもしばしばみられます。
脂肪肝、アルコール性肝機能障害の場合には血液中のγーGTPの値が上昇する事は良く知られていますが、胆管がんなどでもγーGTPの値が上昇することがあります。脂肪肝、アルコール性肝機能障害のみられる場合であっても、慢性肝炎、胆道がんなども存在しているかもしれませんので、詳細な検査が必要になります。
最近は健診でも肝炎ウイルス検査が行なわれるようになっています。肝炎ウイルス検査としてはB型およびC型肝炎ウイルス検査が行なわれています。B型肝炎ウイルス検査ではB型肝炎ウイルスそれ自身が存在するかの抗原検査が、またC型肝炎ウイルス検査ではC型肝炎ウイルスに対する抗体が存在するかの抗体検査が行なわれています。これらのウイルスは慢性肝炎の原因となることがあり、また最近ではインターフェロン療法なども広く行なわれるようになり、治療が奏効する場合もありますので、肝臓内科を受診してこれらの治療の適応があるかについて相談してみましょう。またこれらの肝炎ウイルスに感染している場合には定期的な肝臓の超音波検査などの定期検査を受けましょう。
2010年(平成22年)2月
脂肪肝
肥満や糖尿病など、脂質異常症(高脂血症)がみられると脂肪肝が生じることがあります。健康な肝臓には、4〜5%程度の脂肪が含まれていますが、10%以上になると細胞の中に脂肪滴が出現してきます。この脂肪滴が肝細胞の30%以上に現れるようになった状態を脂肪肝といいます。
脂肪肝の原因は、肥満とアルコールの飲み過ぎです。脂肪肝で肝臓にたまった脂肪のほとんどは、エネルギーの過剰摂取や運動不足が原因でたまった中性脂肪です。
脂肪肝は健診の腹部超音波(エコー)検査で肝臓が白く光った状態の高エコー状態となることにより通常は明らかになりますが、また胸部•腹部CT検査でも指摘されることがあります。
アルコールの飲み過ぎが原因で肝臓に中性脂肪がたまったアルコール性脂肪肝の人は、肝臓の繊維化が進むため肝硬変に進行しやすくなります。また脂肪肝のある人は、動脈硬化や高血圧になりやすく、肝硬変以外にも心臓病や脳卒中のリスクも高くなります。
脂肪肝が生じてもほとんど自覚症状はありません。血液検査では健康人ではAST(GOTともいいます)の値はALT(GPTともいいます)の値よりも大きいですが、脂肪肝が生じるとAST、ALTの値がともに高くなり、またALTの値はASTの値よりも大きくなるパターンとなります。ALTの値がASTの値よりも大きくなるパターンは慢性肝炎でもみられますが、実際脂肪肝ではさまざまな液性因子が脂肪細胞から分泌されており、この状態はまさに慢性の炎症状態と考えられています。
最近非アルコール性脂肪性肝炎と呼ばれる脂肪肝が進行したと考えられる脂肪性肝炎が増えています。この非アルコール性脂肪性肝炎はアルコールによる脂肪肝を引き起こすほどには大量に飲んでいないという意味で、まったく飲まないことを意味しているわけではなく、適量飲酒程度の飲酒量での脂肪性肝炎という意味です。
脂肪肝は肥満を解消し、血糖値を正常に戻すことにより、また節酒や禁酒を実行するなどして原因を取り除くことによりほとんど治癒します。肥満にならないよう食事、運動で適切な体重にコントロールしましょう。またアルコールは飲み過ぎないようにしましょう。
2010年(平成22年)3月
くも膜下出血
脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の3つを合わせて脳血管障害と言います。以前は脳卒中と言っていました。脳血管障害のなかで脳出血は15〜20%程度、くも膜下出血は5〜10%程度みられます。くも膜下出血は髄膜であるくも膜の下、すなわちくも膜下腔に出血した状態です。脳動脈瘤破裂によるものが最も多く、頭部外傷、脳動静脈奇形破裂によることもあります。
脳動脈瘤破裂は脳動脈瘤を持つ人が、運動、興奮などにより、脳への血圧が上昇する高血圧に伴って起こります。脳動脈瘤破裂の好発年齢は40〜60歳代です。高血圧性脳内出血の場合は、出血が脳室内に穿破し、これがくも膜下腔に流出したものです。
くも膜下出血の特徴は強い頭痛が突然起こり、それが持続することです。くも膜下出血では、頭全体、特に前頭部、後頭部などに極めて強い頭痛が起こります。頭痛はこれまで経験したことのない強烈な頭痛です。くも膜下腔に広がった血液により、吐き気、嘔吐、首が硬くなるなどの髄膜刺激症状および脳圧亢進症状が起こり、また意識障害が起こることがあります。
くも膜下出血の急性期にはCTスキャンなどの精密検査が必要になり、また脳外科的な緊急手術が必要になることがあります。脳圧亢進のために脳ヘルニアが発生すると、急激に意識障害が起こり、重篤な症状となります。
くも膜下出血を予防するためにまず高血圧を予防しましょう。高血圧の予防のために最も重要なことは減塩です。日本では食塩摂取量は8〜10g/日が推奨されていますが、世界保健機関(WHO)が推奨する食塩摂取量は、1日5g(小さじ1杯)ですし、米国では5.8g/日(ナトリウム換算では2.3g/日)が推奨されています。なお食品表示ではナトリウム量で記載されることがありますが、ナトリウム量を2.5倍すると食塩量に換算できます。なお喫煙、アルコール多飲もくも膜下出血の危険因子となります。
くも膜下出血が疑われる場合にはただちに救急車を呼び、脳外科などのある救命救急処置が受けられる医療機関を受診しましょう。
2010年(平成22年)4月
学習障害
学習障害は、英語でlearning disabilities あるいはlearning disordersと言いますので、日常的にLDと呼ばれています。この場合のlearnは「〜ができるようになる」という意味です。すなわち学習障害の学習とは学力を意味するのではなく、日常生活をしていく上で必要な知識と技術を習得していく力と考えられます。学習障害は5%程度の子どもにみられ、男児の方が女児よりも5倍ほど多くみられます。
学習障害は、全般的な知的発達に遅れはみられないのですが、読む、書く、聞く、話す、計算する、推論する能力のうち、特定の分野の習得と使用に困難を示します。読みの正確さと理解力の障害は学習障害の中核となる症状であり、そのために書字障害が引き起こされます。
幼い子どもでは、色の名前や文字を覚えること、身近にあるものの名前を認識すること、数を数えることなどの遅れがみられることがあります。また注意力が持続せず散漫であり、話し方がたどたどしく、記憶力が長く続かないなどの症状があります。
学習障害のある児童は、コミュニケーションに困難がみられるため、気が散ったり、多動であったり、授業中に立ち歩いたり、私語が多かったり、引っ込み思案であったり、攻撃的であったり、相手の気持ちを察することができなかったり、さまざまな行動に問題が生じることがあります。このためこのような児童は学校での学業成績が良くないことがあります。中高生では英語の読み書きが苦手である、読書に時間がかかるなどの症状がみられることがあります。
学習障害が疑われる場合は、小児神経の専門医に相談しましょう。注意の集中が持続できにくい注意欠陥/多動性障害を合併することがあります。視力や聴力に障害がある場合も読み書きの能力が障害されることがあるので、視力と聴力の検査も行う必要があります。
学習障害に対し最も重要なことは、それぞれの子どもが適切な支援を受けられる教育です。学習障害に対しては現在特別支援教育が実施されていますので、少しでも発達障害の不安があれば、学級担任、児童相談所、自閉症•発達障害支援センターなどに相談しましょう。
2010年(平成22年)5月
注意欠陥/多動性障害
注意欠陥/多動性障害は英語でAttention Deficit / Hyperactivity Disorderと言いますので、日常的にAD/HDと呼ばれています。思考を実行する過程の抑制機能の低下がみられる発達障害で、不注意、多動性、衝動性が特徴です。
AD/HDはじっとしているなどの社会生活が増加する小学校入学前後にしばしば見いだされます。注意力を維持しにくい、時間感覚がずれている、さまざまな情報をまとめることが苦手などの特徴があります。日常生活に大きな困難を生じることがありますが、適切な治療と環境の整備によって症状を緩和することが可能です。
学童期までの発症率は3〜7%程度で男児の方が女児よりも3〜5倍ほど多くみられます。集中困難・過活動・不注意•キレるなどの症状が7歳程度までに確認されますが、過活動が顕著でない不注意優勢型の場合には幼少期には気付かれないことがあります。女児の場合は多動が目立たない不注意優勢型が多いため、発見が遅れる傾向があります。
年齢が上がるにつれて見かけ上の多動は減少するため、以前は子どもだけの症状であり、大人になるにしたがって改善されると考えられていましたが、近年は大人になっても症状が残ることがあると考えられています。
学校生活への影響 としてAD/HDに学習障害が合併することがあります。AD/HDは知能の低下はみられません。学習面においては、計算などの作業において障害が原因で誤りが多くなる傾向はありますが、叱るのではなく、誉めるなど状況に応じた適切な支援よって誤りを減らすことは可能です。
治療には中枢神経刺激薬が用いられることがありますので、AD/HDの症状が疑われる場合には小児神経の専門医に相談しましょう。またAD/HDに対しては現在特別支援教育が実施されていますので、少しでも発達障害の不安があれば、学級担任、児童相談所、自閉症•発達障害支援センターなどに相談しましょう。
2010年(平成22年)6月
高機能自閉症
対人関係の障害、コミュニケーションの障害、こだわり、あるいは想像力の障害を持つ発達障害を自閉症と言いますが、知的に遅滞がみられない場合は高機能自閉症と言います。また高機能広汎性発達障害pervasive developmental disorders、あるいは自閉症スペクトラム障害autism spectrum disordersに相当すると考えられておりますので、日常的にPDDあるいはASDと呼ばれることがあります。小児の発症率は1%程度で男児の方が女児よりも4倍ほど多くみられます。広汎性発達障害でコミュニケーション障害の傾向が強くない場合にはアスペルガー障害あるいはアスペルガー症候群と呼ばれることがあります。
対人関係の障害は相応の友達関係ができない、喜び、興味などを他人と共有することができないなど、社会的相互作用がうまくできないことです。コミュニケーションの障害は話し言葉、表情などを用いた交流がうまくできないことです。こだわり、あるいは想像力の障害は狭く限られた反復的、固定的な行動や活動様式を示すことです。
高機能自閉症では興味のあることには非常に物知りだったりしますが、集団行動では問題をおこし、思うままにならないとキレた状態となることがあります。また他人の気持ちを察するのが不十分であり、そのため孤立したり、またいじめにあうことがあります。また学習障害あるいは注意欠陥/多動性障害が合併することがあります。アスペルガー障害は言語発達は正常ですが、対人関係や、他者の気持ちの推測力の障害などの思考の柔軟性に障害がみられます。
高機能自閉症には、早寝早起きの規則正しい覚醒リズムの確立が重要ですが、また向精神薬などの薬物療法が有効なことがありますので、高機能自閉症の症状が疑われる場合には小児神経の専門医に相談しましょう。また高機能自閉症に対しては現在特別支援教育が実施されていますので、少しでも発達障害の不安があれば、学級担任、児童相談所、自閉症•発達障害支援センターなどに相談しましょう。