論文の書き方 2005年2月27日
看護形態機能学 山田幸宏
論文の構成
1.題名title, 論文の著者の名前, 論文を作成した日付 2.抄録 3.緒言
4.材料および方法 5.結果6.考察7.結論8.謝辞9.文献10.図11.表
良い論文の書き方
論文は英語でpaperあるいはterm paperと言います.論文は報告reportではありません.英語でpaperと言えば論文です.Reportの方がpaperよりも硬い感じの表現のようです.論文には必ず題名titleを付ける必要があります.題名titleを付けることをentitleと言います.なぜ題名を付ける必要があるのでしょうか.題名はその論文の内容を最も良く表現するからです.どのような題名を付けるかはreporterの最も学問的知識が要求されるところです.自分がreportしたい内容を要約し,統合した題名を付けることが重要です.これはちょうど看護診断名を付けることと同じです.題名は穏健moderateなものが望ましく,極端extremeなものは好ましくありません.論文paperは通常,題名title,要約,抄録abstractあるいは要旨summary,緒言あるいははじめにintroduction,材料および方法materials and methods,結果results,考察discussion,結語summaryまたは結論conclusion,謝辞acknowledgmentあるいはacknowledgement,文献references,図figureおよび表tableから構成されます.題名では”〜と〜”と言うようになるべく並列で書かないで下さい.一つの論文は一つの内容で十分であり,二つ以上の内容を報告する必要はないのです.
要約,抄録abstractは論文とは別に出版publishされることも意図されています.したがって,読者が論文の基本的内容を理解でき,かつその論文自身を読むべきかどうかを決定するための十分な情報を提供する必要があります.要旨summaryあるいは結語summaryは論文の一部であり,本文と切り離して出版されることはありませんので,結果と結論だけの重要な点を述べたものです.
CINAHL, Medline, 医学中央雑誌あるいは日本健康科学学会誌,N.Engl.J.Med.などの雑誌においては,いずれもAbstractは抄録として扱われております.日本語要旨,英文抄録という表現が一般的に用いられているのは,日本語の論文では本文の前に要旨を書き,本文の後ろに英語で抄録を書く習慣があるためです.英文抄録を書いておくと,それが,CINAHL, MedlineにAbstract written in Englishとして掲載されるというメリットが期待されます.また自分のC.V.を書くときにもAbstract in Englishと記載できるメリット期が期待されます.日本語の論文では要旨が本文の前に,本文とともに掲載されることを前提としておりますので,必ずしも,全体から抽出する必要がなく,結論を中心に要旨を書くことが慣例のようになっておりました. CINAHL, Medlineの普及とともに,Abstractを書き,Abstractと全く同じ内容を日本語で書いて,それを要旨とするようになりました.このとき要旨に書かれている内容が,英文抄録の内容であることを強調する必要があり,これを表現する用語として,要約が用いられてきました.したがって要旨集という表現は要約を集めたものと理解できますが,学会発表ではさらに内容をはっきりさせるために,学会抄録という表現が一般的になりました.要約はAbstractに対応いたしますので,要旨はSummaryに対応するということになります.CINAHL, Medline, 医学中央雑誌にAbstract,抄録,要約が収録され,Summary要旨が収録されない理由は読者が望んでいるのがAbstractであるためだと思われます.
緒言ではなぜこのpaperを書くのかについての本質について述べます.この中には関連している文献を短く引用した文章を入れます.総説や学位論文では論文の背景が必要となる場合があります.重要なことは,論文の内容のレベルに合った事を書くべきであり,内容とはかけはなれた程度の高いこと,あるいは低いことは書いてはいけません.かけはなれた程度の高いことは読者は理解できませんし,かけはなれた程度の低いことは読者は削除してほしいと思うことでしょう.緒言の終りではこのpaperの結論を短く述べることが大切です.科学論文では,小説とは異なり,結末を早く読者に知らせ,実際の論拠の展開について知らせる必要があります.
論文には学籍番号を書く必要はありますがそれ以上に重要なものは,日付です.名前と日付を書くことは,題名を書くこととともに,極めて重要です.日付の書き方は国によりいろいろな習慣がありますが,例えば1/13/96と書くことだけでも,これが1996年1月13日だと言うことがわかります.もちろんもっと正式にはいろいろな書き方があります.重要なことは正式な書き方がどのようなものなのかと言うことではなく,日付を記載すると言うことです.Time stampを押しておくことにより,どの時点での成果なのかがわかります.日付のないreportはtitleのないreportと同様,その価値は激減してしまいます.年は1996などと西暦で必ず記載して下さい.
書いてある内容が,真実として引用しているのか,あるいは自分の意見なのか,あるいは実験結果なのかと言うことです.これがわかるように書かないと支離滅裂の文章になってしまいます.真実であると思って引用するときには,その時制tenseは必ず現在形present tenseで表現しなくてはいけません.たとえば,”T細胞はリンパ球である.”と言う文章は真実を述べているのであり,”T細胞はリンパ球であった.”と言う文章は実験結果を述べているのです.真実ではないと思って論文を引用するときには,現在形ではなく,過去形で書きます.自分の結果の解説は現在形で書きます.英文での例を示します.コロンブスは地球が丸いことを立証した.Columbus proved that the earth is
round. 先生はナポレオンはワーテルローでウエリントン公に破られたと言った.Our
teacher told us that Napoleon was defeated at Waterloo
by the Duke of Wellington.地球が丸いのは事実ですので過去形にしませんし,ウエリントン公に破られたのも事実ですので,過去完了形にはしません.
材料および方法では,この研究に用いた材料や機器を記載します.材料や機器の購入先,購入先の会社の所在場所を記載します.商品名とともに一般名が必ず必要となります.これは著者の材料や機器を用いれば,必ずその実験が再現できるよう,詳細に記述する必要があります.再現性のない実験結果は信頼性がありません.再現性があると言うことは極めて重要なことなのです.著者は,いま書いている分野に関してかなりの知識を持っていいることを承知している必要があります.たとえば微生物の論文は,それに関する日常の実験手順を知っている微生物学者を対象としていると言うことです.すでに発表された方法を使用した場合には,その論文を引用します.もしその方法を変更した場合には,どこを改変したのかを明らかにします.
実験結果は必ず過去形past tenseで記載する必要があります.過去形以外では記載できません.”〜であった”と言うのは過去形であり,現在完了形ではない点が重要です.現在完了形は,その事実が現在まで続いていることを示します.例えば,"私たちはnatural killer 細胞はinterleukin 2に反応することを報告した.We reported that
natural killer cells responded to interleukin 2."は過去の事実を述べているのであり,その事実が現在まで続いているかどうかは無関係です."We have reported that natural killer cells responded to
interleukin 2."はその事実が現在まで続いていることを示しています.真実を述べている文章とは,実験結果から導きだされた多くの人が信じている事実ですが,普遍的に広まっているからといって本当の真実であるかどうかであるかはわかりません.科学の進歩は真実と思っていたことがそうではなかったと言うことを数多く経験いたしました.
科学的scientificな文章には文学的な表現は必要ありません.事実を客観的に伝えることが重要です.例えば,”気の遠くなるような”,”奇蹟的な”などの誇張表現exaggerationは控えるほうが良いでしょう.”尊敬の念”,”感動した”など価値観の入った表現はしないほうが良いでしょう.”働きかけ”は”作用する”で良いでしょう.”赤ちゃん”は”新生児あるいは小児”です.また”〜せずにはいられない”などの二重否定の表現は非常に混乱しますので,使用しないようにいたしましょう.”とか”は口語的表現なので”など”を使用しましょう.”前者”あるいは”後者”は分かりにくいのでなるべく使用しないようにしましょう.
文脈をはっきりさせるためには,”しかしbut”などの接続詞をうまく使用して文章の意味をはっきりさせましょう.除外を意味する”ただしexcept”の使用には極めて注意が必要です.科学的な文章には”ただし”は使用しないと思っていたほうがよいでしょう.例えば,”リンパ球は細胞障害活性を持つ.ただしB細胞は除く.”と言う文章は,”T細胞とNK細胞は細胞障害活性を持つ.しかしB細胞は細胞障害活性を持たない.”と言う文章にしたほうが非常に分かりやすくなります.
文章は簡潔に述べることが極めて重要です.冗長(じょうちょう)redundancyを避けることは,文章をスッキリさせます.短いこと, 簡潔性 (brevity, conciseness) は何回も文章を推敲することによって可能となります.題名では,以前は”〜について.On the〜”と言う題名がありましたが,最近は”〜について”と言う題名は用いられなくなりました.例えば,”アレルギーについて”は”アレルギー”だけで十分内容が伝わります.”前にも述べましたが”と言う言葉は不要です.前に述べたことは,繰り返し述べる必要はなく,一度書けば十分です.
誤字,脱字,当て字がないように十分注意して下さい.何回も見直して下さい.自分で自信のある漢字でも必ず確認して下さい.例えば,”手技”を”主義”などです.Phagocytosisは貪食であり,貧食ではありませんし,coagulation は凝固であり,agglutinationは凝集です.凝固と凝集はまったく別のことですので注意が必要です.血清と血漿の違いにも注意して下さい.提示,捕捉にも注意して下さい.
小学生程度の漢字はひらがなで書かないで,漢字で書いて下さい.例えば,”しらべる”は”調べる”などです.しかし,”または”を”又は”あるいは,”すなわち”は”即ち”と書かないで下さい.また”歳”の変わりに”才”と書かないで下さい.癌を”ガン”としていることが散見されましたが,癌は外来語ではなく,癌と書かない場合には”がん”と書くべきでしょう.誤字,脱字をなくすために推敲することも重要ですが,簡潔性を求めるために,何回も見直すことが必要となります.誤字,脱字,当て字があるだけでも文章の格調性の高さは半減してしまいます.ヒトはhumanと言う意味であり,生物学的な人を示しています.人格をもった人間を示す言葉ではない点に注意して下さい.問題と言う言葉は特にproblemと言う意味とissueと言う意味がありますので,十分注意して下さい.Questionは困難や議論を引き起こす問題であり,problemは明瞭な解決が必要とされる困難な問題であり,issueは論争の対象となって決着が迫られている争点であり,subjectは研究の対象として取り上げ解決すべき題目です.論文には,簡潔性のほか,明晰性clarity,首尾一貫性consecutiveness,正確性correctness,包括性comprehensivenessが大切です.
最近は字下げindentionまたはindentationのない文章も流行しています.しかし,その場合では段落paragraphごとのまとまりがはっきりしている必要があります.Indentionがない場合には,1行あけることは最低限必要となります.不必要な改行は避けましょう.段落は一つの意味を持っています.改行をできるだけ少なくすることは,brevityと言う観点からも非常に重要です.内容が二つ以上になってしまう場合以外にはできるだけ改行しないよう,頑張ってください.段落の少ない文章は非常に引き締まります.
文章を引き締めるには,読者に文章に注意が持続するような組み立てをすべきです.例えば,”話は変わるが”と言う言葉が入ると,どうしてそんな事を言うのだろうと思われてしまいます.科学的な文章には挿入エピソードepisodeは不必要です.必ず,論理がつながっていることrelationが必要です.重要なことは繰り返しrepeat述べることが大切です.文脈contextが異なりますので,冗長,重複とはなりません.”略述すると”と言う表現は,読者に良い印象を与えませんので,説明とか,述べるなどにしたほうが良いでしょう.
文章を書く時には,なるべく能動態を使用すべきであり,受動態は可能な限り避けると良いでしょう.常に主語,述語の関係に注意すべきです.主語がない文章は要旨を曖昧にしてしまう原因になることがあります.また括弧parenthesisの使用はできる限り避けるべきでしょう.どうしても括弧を使用しなくてはならない時は,同格として,例えば,商品名など,誤解がないようなものなど,極めて限定して使用する程度と考えておいて下さい.文章には括弧の使用は不必要との原則を覚えていて下さい.
”はずである”と言う言葉の使用にも十分注意が必要です.”推定できる”,”と言われている”などの意味の場合には”はずである”を用いず,これらの表現を用いてください.”はずである”と言う言葉は自分の推測を示す言葉ですが,感情が混入してしまいます.科学的な文章にはふさわしくありません.また,”参照して下さい”と言う表現も丁寧な言葉のように見えますが,科学的な文章にはふさわしくありません.丁寧な表現でも命令の意味が含まれているからです.例えば”図1を参照して下さい”は”図1に示した”と表現できます.科学的な文章の評価は筆者がするのではなく読者であるからです.図を見るか見ないかは読者の自由であり,命令されて見るものではありません.”当然of
course”と言う言葉もたとえば,予期していたexpected, 予想されたpredicted, 理にかなったreasonableなどの科学的な言葉を使用したほうが良いでしょう.
文章には主語と述語が必要です.動詞がないと意味がきわめて曖昧になります.たとえば単に”産生”とかいても,”産生する”のか”産生しない”のかはっきりしません.特に,抑制などのnegativeな単語が入ってくるときには,一層の注意が必要です.また↑と言う記号を書いても,これが増加を意味しているかも知れないと言うことは推定できても,確証は得られません.”↑,→,=,!,・”などの記号は使用しないことが原則です.”・”は同格appositionを示すのに使用されることがありますが,意味がはっきりしないことがありますので,なるべく使用しないようにしましょう.","を使用すれば良い場合もあります.疑問符(?)は英語のときは使用しますが,日本語のときには使用しないで下さい.日本語では,疑問文でも文章の最後は"."で終わります.
図figureや表tableは本文を読まなくてもたやすく理解できることが必要です.図のレジェンドlegendや表の脚注footnoteで説明します.Legendは図の説明であり,footnoteは表を説明するものですが,本文中には同じ説明は繰り返してはいけません.注noteあるいは注釈annotationは図や表のみに必要であって,本文中にはまったく必要がないことに注意してください.注がある文章は括弧のある文章と同様,格調が低くなります.
図や,表には必ず番号を入れて下さい.図や,表は必ず本文中に説明があるはずですので,番号のない図表はありえないはずです.本文中に記載する場合には,”であった(図1).”のように”.”の前に来ます.図表にも必ず題名を付けて下さい.題名はその内容を最もわかりやすく要約したものです.図の場合には,題名の他に,さらに説明が必要です.題名は図のときには下側に,表のときには上側に付けます.Figureを略すときには”Fig”ではなく”Fig.”としてください.日本語の図の場合にはfigureではなく図として下さい.
考察はdiscussionであり論争dispute, 議論argument, 論証reasoningではないことに注意して下さい.考察では,得られたデータが何を意味しているのかを述べることになります.結果から推定reductionできる事実や原理について述べます.帰納inductionを行う推論を行ってはいけません.他人の結果,推論を引用するときには,必ず適切な文献を引用する必要があります.他人の論文の結果あるいは趣旨を誤って引用しないよう,十分な注意が必要となります.他人の論文の結果が間違っていると述べることは避けて下さい.他人の論文が正しいかどうかを読者に押し付ける権利はないことに十分注意して下さい.過去形で引用すれば十分なのです.考察で断定できないときには示唆suggestされたと言う表現をして下さい.
文章の最後には結論を述べる必要があります.結論のない論文は読者はなんのためにこの文章が書かれているのか分かりません.
ページには番号を必ず入れてください.本文中にアンダーラインや太字あるいは赤線は,まったく不必要です.重要なことは,文章の表現ですべきであって,文章の修飾でしてはいけません.
共著すなわち連名で書く場合には共同の責任が生じます.通常論文あるいは論文paperには筆頭著者first authorがおります.優先権priorityは筆頭著者あるいはLast
authorにありますが,このどちらかにより優先権があるのかは,その文章を読んだだけでははっきりしないことがあります.この場合にはその人の経歴background を調べ,組み立てorganizeしたのは誰なのかの詳細な検討が必要となります.共著者はその貢献度には差はありますが責任の一翼を担っていることは確かですので共同してその責任を担うことになります.Positive な業績に直接結びつくことはもちろんですが,negativeな業績の責任追及にも密接に関連してくることに十分な注意が必要です.Corresponding author責任者は誰かと言うことも大切です.論文あるいは論文には貢献contributionした人はすべて名前が載るべきであり,貢献していない人の名前は載ってはいけないと言うことは常識です.科学論文においての貢献とは,その研究を最後までやりとげた人,その研究のアイディアを出した人およびその研究を遂行するのに必要な資金,材料,施設を提供した人です.
論文の内容については教科書のみに頼ってはいけません.教科書ばかりでなくすべての書籍,論文には誤りがあることは常識です.したがって例えば,教科書に誤りがあっても少しも驚くべきことではないのです.学問は毎日進歩いたしますし,また書かれている内容のレベルが異なるためです.一つの事実が教科書に載るのには20年かかりますし,専門書に載るのに10年かかるためです.この10年,20年が永いと思わないで下さい.リンパ球にはT 細胞とB細胞があると書いている書籍が非常に多のですが,リンパ球にはT 細胞,B細胞とNK細胞の3種類があることは常識です.I, II, III, IV型アレルギーの分類ばかりに焦点が当てられ,もっと分かりやすく,もっと学問的で,もっと臨床的な,細胞性免疫,Th1細胞,Th2細胞,液性免疫についての議論はアレルギーについての理解をさらに深めることでしょう.免疫もアレルギーも生物学の立場から見れば,まったく同一の現象なのです.生体防御に有利かどうかと言う価値観に基づいているように思われますが,ある側面から見れば有利であり,ある側面から見れば不利であると言うことなのです.重要なことは,その有利,不利の各々の程度であり,もっと重要なことは,その関与participationがどの程度全体に貢献contributionしているかどうかと言うことです.例えば,骨粗鬆症にエストロジェンの関与が指摘されておりますが,エストロジェンは単にInterleukin 6と言うサイトカインの産生を抑制しているだけであって,骨粗鬆症の成因とは無関係であることが最近はっきりしてきましたが,これにより,エストロジェンの生体において果たしている重要性を軽視するこはできません. Interleukin 6の理解がなければ骨粗鬆症が理解できませんのでそれらについて勉強するこは重要ですが,もっと重要なことは,それらを理解することによって,骨粗鬆症の理解がきわめて容易になることなのです.10年かかってようやくわかったことが,あることを知ったため,1日ですべてが分かってしまうと言うことは常識なのです.
科学的な論文には一定のルールがあります.解剖学の講義で勉強した通り,骨,筋肉などには学名scientific nameあるいは専門用語technical termがついています.”ふともも”は”大腿”と表現してください.
省略abbreviationを用いるときには,必ず,何を省略したかを書いてください.NKといえば,あるいはTSHといえば,それぞれnatural killer, natural killer cellあるいはthyroid
stimulating hormoneを指すことは,看護大学生の常識かもしれませんが,学術的な論文では,何を省略したのかを明記しないで使用することはありえないことを十分承知しておいてください.たとえば,”甲状腺刺激ホルモン(TSH)”などと日本語の省略として英語の省略を用いても,これでは,なぜ甲状腺刺激ホルモンがTSHなのか分かりません.もしTSHを使用するのであれば,それはthyroid stimulating hormoneの省略だと分かるように必ずthyroid
stimulating hormoneと言う単語が記載されていなければなりません.省略形はその用語が最初に用いられた時に定義しますが,論文中に2回から5回以上出てこなければ使用しないようにしましょう.一般的に省略される習慣がないものは省略しないで下さい.本文中で人名を引用するときには,敬称あるいは称号titleまたはdegreeをつけてはいけません.Scienceにはladderはない,あるいはbrevityを追及すると言うことが理由なのでしょう.”山田教授によれば”,は”山田によれば”とすべきなのです.
参考文献は引用文献literature citedと呼ばれることもあります.文献references,参考文献,引用文献はいずれも同じことを示しており,区別する必要はありません.Referencesがまったくないことは考えられません.本文中のどの文章でどのreferenceを使用したのかを,番号を付けて書くようにして下さい.Referencesは自分の論理を有利に展開するのに非常に重要です.Referencesには必ず,発行publishされた年を書いておきましょう.参考文献の書き方の例を示しますが,引用するときには,参考文献ではなく,"文献"である点に注意しましょう.書籍を引用するときには,ページを記載しないことがあります.書籍にはoriginalityがあまりないからです.自分の業績として書籍を記載するときには,ページを明記いたします.
著書の例
小宮山 淳、北原文徳、市川元基、山田幸宏、川合 博、宮川幸昭 、江口光興、水谷修紀、赤羽太郎 : Natural killer 活性を有する小児の急性リンパ性白血病. 柴田 昭、高久史麿編. 白血病の新しい診断技術. pp.74-81,
医歯薬出版株式会社. 東京 1988.
論文の例
山田幸宏 : 小児アレルギー性紫斑病における血液凝固第XIII因子活性と紫斑病性腎
炎との関連 . 小児科臨床
49(1):39-42, 1996
英語の論文の例
Yamada S and Komiyama A. : Decrease
in number of CD16(Leu 11) + CD45RA (2H4) + cells and defective production of
natural killer cytotoxic factor in childhood acute lymphoblastic leukemia.
Leukemia Res., 15(9):785-790,1991.
論文の価値はどのように決まるのでしょうか.あるいはその評価はどのようにすべきなのでしょうか.論文の価値は学問的な水準の高さから判断すべきでしょうし,その評価はその価値を基準とし,教育効果が最も上がるよう考慮して決めるべきでしょう.一つの論文にはその人の全人格,学問的水準が如実に反映されます.一つの単語,文章でも全体とのバランスがとれていない,あるいは整合性がない場合には,その論文の価値は激減してしまいます.この意味において,単に,他人の文章を写したのでは,論文としての価値が高まらないのです.文章を書いた人のbackgroundはそれぞれ違います.われわれはpolyclonalであってmonoclonalではないのです.書かれている内容が一見high levelのように見えても,読者に感動を与えないようなものもあります.看護形態機能学は学問scienceであり,解剖学,生理学,生化学を網羅しています.これらは,病態・治療看護学,基礎看護学,生活援助学,小児看護学など,看護を学ぶ上で極めて重要なfundamentalsです.
論文は何回も推敲improveして提出して下さい.それをすることによってのみ科学的なものの考え方がimproveされるものと思います.論文は手書きではなく,コンピュータやワープロを用いて活字で書きたいものです.コンピュータを利用しないのは英語を知らないで看護を学ぶのと同様,時代錯誤でしょう.推敲するときには,この言葉は英語でどのように表現されるのかを考えると良いと思います.論文と論文の言葉もそうでしたが,それが英語でどのような単語であるのかは,日本語の論文だけでなく,英語の論文を書く場合にも役立ちます.また英語の論文を読む時にも役立ちます.たとえば,医療はmedical treatment, medical careを意味している場合もありますが,health careを意味している場合もあります.治療はtreatmentの他に,interventionと言う単語もあります.これらは,英語にはそれぞれの意味があるのに,日本語にはそれに対応する適切な単語がない例です.また,適切な専門用語があっても,一般用語とはかけ離れているために,日常的にはあまり使用されない単語もあります.たとえば患者patientをclientと表現する場合です.
論文は小論文と同様にその書き方を十分練習することが重要です.科学的な考え方は論文を書くことにより習得できます."Practice makes perfect."です.
追加1-論文を査読した感想
論文には必ず題名titleを付ける必要があります.題名titleを付けることをentitleと言います.なぜ題名を付ける必要があるのでしょうか.題名はその論文の内容を最も良く表現するからです.どのような題名を付けるかはreporterの最も学問的知識が要求されるところです.自分がreportしたい内容を要約し,統合した題名を付けることが重要です.これはちょうど看護診断名を付けることと同じです.題名は穏健moderateなものが望ましく,極端extremeなものは好ましくありません.論文paperは通常,題名title,抄録abstractあるいは要旨summary,緒言あるいははじめにintroduction,材料および方法materials and methods,結果results,考察discussion,要約abstractあるいは結語summaryまたは結論conclusion,謝辞acknowledgmentあるいはacknowledgement,文献references,図figureおよび表tableから構成されます.題名で”〜と〜”と言うように並列で書いてあるものが非常に多く見られました.一つの論文は一つの内容で十分であり,二つ以上の内容を報告する必要はないのです.
名前と日付を書くことは,題名を書くこととともに,極めて重要です.日付の書き方は国によりいろいろな習慣がありますが,例えば1/13/96と書くことだけでも,これが1996年1月13日だと言うことがわかります.もちろんもっと正式にはいろいろな書き方があります.重要なことは正式な書き方がどのようなものなのかと言うことではなく,日付を記載すると言うことです.Time stampを押しておくことにより,どの時点での成果なのかがわかります.日付のないreportはtitleのないreportと同様,その価値は激減してしまいます.年は1996などと西暦で必ず記載して下さい.
書き方が不備なため,読んでも内容が不明なものが数多くありました.書いてある内容が,真実として引用しているのか,あるいは自分の意見なのか,あるいは実験結果なのかと言うことです.これがわかるように書かないと支離滅裂の文章になってしまいます.真実であると思って引用するときには,その時制tenseは必ず現在形present tenseで表現しなくてはいけません.たとえば,”T細胞はリンパ球である.”と言う文章は真実を述べているのであり,”T細胞はリンパ球であった.”と言う文章は実験結果を述べているのです.実験結果は必ず過去形past tenseで記載する必要があります.過去形以外では記載できません.”〜であった”と言うのは過去形であり,現在完了形ではない点が重要です.真実を述べている文章とは,実験結果から導きだされた多くの人が信じている事実ですが,普遍的に広まっているからといって本当の真実であるかどうかであるかはわかりません.科学の進歩は真実と思っていたことがそうではなかったと言うことを数多く経験いたしました.
図figureや,表tableには必ず番号を入れて下さい.図や,表は必ず本文中に説明があるはずですので,番号のない図表はありえないはずです.本文中に記載する場合には,”であった(図1).”のように”.”の前に来ます.図表にも必ず題名を付けて下さい.題名は図のときには下側に,表のときには上側に付けます.Figureを略すときには”Fig”ではなく”Fig.”としてください.日本語の図の場合にはfigureではなく図として下さい.
ページに番号がない論文が数多く見られましたが,必ず入れてください.本文中にアンダーラインや太字あるいは赤線を引いてあるものもありましたが,これらは,まったく不必要です.重要なことは,文章の表現ですべきであって,文章の修飾でしてはいけません.
共著で書かれた論文がありました.同じことに興味をもち,協力してまとめあげたことはすばらしく思いましたが,私としては連名で論文が提出されることを予想しておりませんでしたのでびっくりしました.勉強は友達と一緒にすると楽しくでき,切磋琢磨できることでしょう.通常論文あるいは論文paperには筆頭著者first authorがおります.優先権priorityは筆頭著者あるいはLast authorにありますが,このどちらかにより優先権があるのかは,その文章を読んだだけでははっきりしないことがあります.この場合にはその人の経歴background を調べ,組み立てorganizeしたのは誰なのかの詳細な検討が必要となります.共著者はその貢献度には差はありますが責任の一翼を担っていることは確かですので共同してその責任を担うことになります.Positive な業績に直接結びつくことはもちろんですが,negativeな業績の責任追及にも密接に関連してくることに十分な注意が必要です.Corresponding author責任者は誰かと言うことも大切です.論文あるいは論文には貢献した人はすべて名前が載るべきであり,貢献していない人の名前は載ってはいけないことは常識です.
論文の内容についてはもう少し工夫が必要であったと思いました. 例えばリンパ球にはT 細胞とB細胞があると書いている人が非常に多くみられましたが,リンパ球にはT 細胞,B細胞とNK細胞の3種類があることは極めて常識なので十分注意して下さい.アレルギーの分類について言及していることがありましたが,I, II, III, IV型アレルギーの分類ばかりに焦点が当てられ,もっと分かりやすく,もっと学問的で,もっと臨床的な,細胞性免疫,液性免疫について論文すれば,アレルギーについての理解はさらに深まったことでしょう.Th1細胞,Th2細胞を思い出してください.免疫もアレルギーも生物学の立場から見れば,まったく同一の現象なのです.生体防御に有利かどうかと言う価値観に基づいているように思われますが,ある側面から見れば有利であり,ある側面から見れば不利であると言うことなのです.重要なことは,その有利,不利の各々の程度であり,もっと重要なことは,その関与participationがどの程度全体に貢献contributionしているかどうかと言うことです.例えば,AIDSの感染にCD4分子は深くかかわっていますが,これによってCD4分子の生体における重要性を軽視するこはできません.また,骨粗鬆症にエストロジェンの関与が指摘されておりますが,エストロジェンは単にInterleukin 6と言うサイトカインの産生を抑制しているだけであって,骨粗鬆症の成因とは無関係であることが最近はっきりしてきましたが,これにより,エストロジェンあるいはInterleukin 6の生体において果たしている重要性を軽視するこはできません.CD4分子あるいはInterleukin 6の理解がなければAIDSあるいは骨粗鬆症が理解できませんのでそれらについて勉強するこは重要ですが,もっと重要なことは,それらを理解することによって,AIDSあるいは骨粗鬆症の理解がきわめて容易になることなのです.10年かかってようやくわかったことが,あることを知ったため,1日ですべてが分かってしまうと言うことは常識なのです.
科学的な論文にはルールがあります.解剖学の講義で勉強した通り,骨,筋肉などには学名scientific nameあるいは専門用語technical termがついています.”ふともも”は”大腿”と表現してください.省略abbreviationを用いるときには,何を省略したかを書いてください.NKといえば,あるいはTSHといえば,それぞれnatural killerあるいはthyroid stimulating hormoneを指すことは,看護大学生の常識かもしれませんが,学術的な論文では,何を省略したのかを明記しないで使用することはありえないことを十分承知しておいてください.たとえば,”甲状腺刺激ホルモン(TSH)”などと日本語の省略として英語の省略を用いていることがありましたが,これでは,なぜ甲状腺刺激ホルモンがTSHなのか分かりません.もしTSHを使用するのであれば,それはthyroid stimulating hormoneの省略だと分かるように必ずthyroid
stimulating hormoneと言う単語が記載されていなければなりません.本文中で人名を引用するときには,敬称あるいは称号titleまたはdegreeをつけてはいけません.Scienceにはladderはない,あるいはbrevityを追及すると言うことが理由なのでしょう.”山田教授によれば”,は”山田によれば”とすべきなのです.
参考文献referencesが書いてないものが数多く見られました.Referencesがまったくないことは考えられません.本文中のどの文章でどのreferenceを使用したのかを,番号を付けて必ず書くようにして下さい.Referencesは自分の論理を有利に展開するのに非常に重要です.Referencesには必ず,発行publishされた年を書いておきましょう.参考文献の書き方の例を示しますが,引用するときには,参考文献ではなく,"文献"である点に注意しましょう.
論文の価値はどのように決まるのでしょうか.あるいはその評価はどのようにすべきなのでしょうか.論文の価値は学問的な水準の高さから判断すべきでしょう.一つの論文にはその人の全人格,学問的水準が如実に反映されます.一つの単語,文章でも全体とのバランスがとれていない,あるいは整合性がない場合には,その論文の価値は激減してしまいます.この意味において,単に,他人の文章を写したのでは,論文としての価値が高まらないのです.文章を書いた人のbackgroundはそれぞれ違います.われわれはpolyclonalであってmonoclonalではないのです.書かれている内容は一見high levelのように見えても,読者に感動を与えないようなものもあります.形態機能学は学問scienceであり,解剖学,生理学,生化学を網羅しています.これらは,病態治療学を学ぶ上でも重要なfundamentalsです.
論文は何回も推敲してimproveして下さい.科学的なものの考え方をimproveするのに,少しはcontributionできるかもしれません.”Ars longa, Vita brevis. "です.Good Luck
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