病態生理学試験問題    山田幸宏    平成9年(1997年)5月28日

正解を一つ選び,その番号を病態生理学答案用紙に記入して下さい.

問題1. 正しいのはどれですか.

1.疼痛感覚は脊髄視床路をへて大脳皮質に到達する.

2.アスピリンはピリン系の解熱鎮痛剤である.

3.モルヒネの薬理作用として鎮痛作用,鎮静作用があるが,鎮咳作用,止痢作用はない.

4.麻薬性拮抗性鎮痛剤はオピオイドopioid受容体に働き,鎮痛効果を発現させる.

問題2. 正しいのはどれですか.

1.グラム陰性桿菌の敗血症によりエンドトキシンショックendotoxin shockがおこることがある.

2.エンドトキシンendotoxinによりアナフィラキシーショックがおこることがある.

3.循環血液量減少性ショックhypovolemic shockの場合,副腎髄質からカテコールアミンcatecholamineが分泌され末梢血管を収縮させ,血圧を上昇させる機序が働くので補液は必要ない.

4.心原性ショックの場合には前負荷preloadが減少するのでうっ血性心不全になりやすい.

問題3.正しいのはどれですか.

1.血管が損傷されると凝固因子が活性化され線維素(フィブリン)が形成されて凝固がおこる.

2.熱傷ショックburn shockの場合には循環血液量減少性ショックhypovolemic shockなので生理的食塩水physiological salineを輸液する.

3.低体温症hypothermia, 寒冷障害cold injuryの場合,体温を回復させるため加温することが重要である.

4.造血組織は放射線障害radiation injuryを最も受けやすいが,リンパ球は放射線に対してしてやや抵抗性を示す.

問題4.正しいのはどれですか.

1.自発呼吸時に呼気終末陽圧法positive end expiratory pressure, PEEPを行う方法をCPAP法(continuous positive airway pressure)という.

2.呼吸窮迫症候群respiratory distress syndromeの場合にはPaO2の低下,PaCO2の上昇がみられるが,A-aDO2(肺胞気-動脈血酸素分圧較差)は正常である.

3.アチドーシスacidosisの場合, 酸素解離曲線がシフトしてヘモグロビンが酸素を解離しにくくなる.これをボーアBohr効果という.

4.チアノーゼは血中の酸化ヘモグロビンが5g/dl以上になると現われるので多血症があるとチアノーゼは現われやすい.

問題5.正しいのはどれですか.

1.スワン-ガンツSwan-Ganzカテーテル法により末梢循環不全と肺うっ血の程度がわかる.

2.拡張期末期の心室容積が増えると,心不全のばあいであっても心収縮力がたかまり,持続的に1回心拍出量が増加する.

3.右心不全の場合には呼吸困難が,左心不全の場合には浮腫がおこる.

4.上室性期外収縮の場合には心電図においてQRS幅が広くなる.

病態生理学答案用紙(解答例)    山田幸宏   平成9年(1997年)5月28日

問題1  1  問題2  1   問題3    1  問題4    1   問題5  1

問題6ショックshockとはどのような病態ですか.病態生理学pathological physiologyの立場から記述(describe)して下さい.

 ショックは急激な循環障害のために起こった,全身性の臓器,組織,細胞性の障害で,放置するとhypovolemic shock死にいたる病態である.循環障害をおこす病態には 1.循環血液量の減少によるショック,2.心原性ショックcardiogenic shock,3.血管性ショックvasogenic shockがある.1.循環血液量の減少によるショックは外傷などによる出血,熱傷などによる体液喪失が原因となる,循環血液量減少性のショックhypovolemic shockである.2.心原性ショックは心臓のポンプ機能の障害が原因となりひきおこされるもので,心筋梗塞による左室駆出不全,心タンポナーデcardiac tamponade, 緊張性気胸などによる左室充満不全などの場合におこる.循環血液量は減少していないので左室駆出不全により左心不全がおこり呼吸困難が出現する.3.血管性ショックvasogenic shockは細菌内毒素endotoxin(エンドトキシンショックendotoxin shock)やIgEが関与したアレルギー反応によりひきおこされる末梢循環不全によるショック(アナフィラキシーショックanaphylactic shock)である.エンドトキシンショックはグラム陰性桿菌Gram negative rod の敗血症sepsis時にグラム陰性桿菌からのエンドトキシンendotoxin,リポポリサッカライドlipopolysaccharide(LPS)が原因となり起こる.アナフィラキシーショックはペニシリンを投与したときなどに起こるペニシリンショックなどで,抗原抗体反応antigen- antibody reactionの結果により,アナフィラトキシンanaphylatoxinが好塩基球basophilや肥満細胞mast cellに作用して,IgEやヒスタミンhistamineなどを放出させ,血管透過性permeabilityを亢進させ,平滑筋smooth muscleを収縮させるため起こる. 循環不全をきたすと副腎髄質adrenal medullaからエピネフリンepinephrine,ノルエピネフリンnorepinephrineなどのカカテコールアミンcatecholamineの分泌が増え,末梢血管抵抗を増大させ代償の機序が働くが,やがて不可逆性ショックとなり死亡する.収縮期血圧が低下し,尿量は減少し,血中乳酸lactate濃度は上昇し,塩基過剰Base Excess値は-(マイナス)となる.

問題7 心不全とはどのような病態ですか.病態生理学の立場から記述して下さい.

 心不全heart failure, cardiac decompensationとはポンプ機能としての心拍出能の障害のため,心拍出量が低下して,全身性の循環障害に基ずく息苦しさ,意識レベルの低下,手足の冷感,血圧の低下,乏尿などの症状が出現し,それを代償しようとする機能が発現するが,心臓死となる場合がある重篤な病態である.心不全の要因となるものには心臓にかかる負荷の増大と心臓自体の障害がある.静脈系から心臓に還ってくる血液の量は心筋に対して圧として作用し,心室は拡張して心室に血液が流入する.これを前負荷preloadという.前負荷は肺毛細管楔入圧pulmonary capillary wedge pressureから推測できる.後負荷after loadは収縮期にかかる負担で収縮期圧により規定される.心不全は前負荷および後負荷の増大と密接に関連している.左心不全時には呼吸困難が, 右心不全時には全身浮腫出現する.左心不全時には心拍出量が減少するため,有効循環血漿量が減少し,腎での水,Naの再吸収が亢進し,細胞外液量が増加する.これを前方障害説forward failure theoryという.右心不全時には,静脈還流venous returnが障害されるため静脈圧が上昇するため,組織液tissue fluid(間質液interstitial fluid)が増加する.これを後方障害説backward failure theoryという.心不全時には心拍出量と血圧の低下に対し,交感神経が作動して末梢血管抵抗を高め,心拍数を増加させて心拍出量を確保する機序が働くが,後負荷が増大し心不全は増悪傾向を示すこととなる.心筋はFrank-Starlingの法則により心拍出量を増大させようとするが過剰なエネルギー消費をもたらし,代償できない病態へと進行することとなる.

 

看護治療論II  病態生理学試験問題  山田幸宏 平成10年(1998年)7月1日

正解を一つ選び,その番号を看護治療論II 病態生理学答案用紙に記入して下さい.

問題1. 疼痛painに関し正しいのはどれですか.

1.疼痛感覚は脊髄小脳路spino-cerebellar tractをへて視床thalamusに達し,内包internal capsuleを経て大脳皮質の知覚中枢に到達する.

2.アセチルサリチル酸(アスピリンaspirin)はピリンpyrine系の解熱鎮痛剤antipyreticanalgesic drugである.

3.モルヒネmorphineの薬理作用として鎮痛作用analgesic effect,鎮静作用があり,癌性疼痛に用いられるが,鎮咳作用,止痢作用はない.

4.ペンタゾシンpentazocineなどの麻薬拮抗性末梢性鎮痛剤はオピオイドopioid受容体に働き,鎮痛効果を発現させる.

5. アセチルサリチル酸(アスピリンaspirin)などの非ステロイド性抗炎症剤non-

steroidal anti-inflammatory drugs, NSAIDはシクロオキシゲナーゼcyclooxygenaseを阻害し,プロスタグランジンprostaglandin, トロンボキサンA2thromboxaneA2などの産生を抑え,解熱鎮痛作用を示す.

問題2. ショックshockに関し正しいのはどれですか.

1. エンドトキシンショックendotoxin shockはグラム陰性桿菌Gram negative rod の敗血症sepsis時にグラム陰性桿菌からのエンドトキシンendotoxin,リポポリサッカライドlipopolysaccharide(LPS)が原因となり起こるショックである.

2. ペニシリンを投与したときなどに起こるペニシリンショックは抗原抗体反応antigen antibody reactionの結果により生じるが,このときアナフィラトキシンanaphylatoxinは好塩基球basophilや肥満細胞mast cellや好酸球eosinophilに作用して,IgEやヒスタミンhistamineなどを放出させ,血管透過性permeabilityを亢進させ,平滑筋smooth muscleを収縮させてアナフィラキシーショックanaphylactic shockを起こす.

3. 循環血液量減少性ショックhypovolemic shockの場合,副腎髄質adrenal medullaからエピネフリンepinephrine,ノルエピネフリンnorepinephrineなどのカテコールアミンcatecholamineが分泌され末梢血管を収縮させ,血圧を上昇させる機序が働くのショックの早期から尿量urine volumeは減少しない.

4.心筋梗塞myocardial infarctionなどのときにおこる心原性ショックcardiogenic shockの場合には前負荷preloadが減少するので中心静脈圧central venous pressureは上昇し,うっ血性心不全congestive heart failureになりやすい.

5. ショックの場合には,血中乳酸lactate濃度は上昇し,塩基過剰Base Excess値は+(プラス)となる.

問題3. 損傷injuryに関し正しいのはどれですか.

1. 血管が損傷されると凝固因子coagulation factorが活性化され線維素(フィブリンfibrin)が形成されて凝集agglutinationがおこる.

2. 熱傷ショックburn shockの場合には循環血液量減少性ショックhypovolemic shockなので生理的食塩水physiological salineを輸液し急性腎不全acute renal failureを予防することが大切である.

3.  複雑骨折complex fracture,熱傷burn,褥瘡decubitusなどの治療のとき,固着した汚染組織,壊死組織を除去することをデブリドマンdebridementという.

4. 造血組織hematopoietic tissueは放射線障害radiation injuryを最も受けやすいが,リンパ球は放射線radiationに対し感受性が低い.

5. 低体温症hypothermia, 寒冷障害cold injuryの場合,体温を回復させるため温浴により急速に加温することが重要である.

問題4. 呼吸不全respiratory failureに関し正しいのはどれですか.

1. 新生児newbornあるいは成人adult呼吸窮迫症候群respiratory distress syndromeの場合にはPaO2の低下,PaCO2の上昇がみられるが,A-aDO2(肺胞気-動脈血酸素分圧較差)は正常である.

2. 肺胞虚脱collapseがあり,生理的シャントshuntが増加している場合,自発呼吸spontaneous respiration時に呼気終末陽圧法positive end expiratory pressure, PEEPを行う方法をCPAP法(continuous positive airway pressure)というが,CPAP法と界面活性剤surfactantを用いて低酸素血症を治療することがある.

3. アチドーシスacidosisの場合, 酸素解離曲線がシフトして酸素飽和度が下がり,ヘモグロビンが酸素を解離しにくくなる.これをボーア効果Bohr effectという.

4. チアノーゼcyanosisは血中の還元ヘモグロビンdeoxyhemoglobinが5g/dl以上になると現われるので貧血anemiaがあるとチアノーゼは現われやすい.

5. 肺胞毛細血管ブロック症候群(alveolar-capillary block syndrome, A-C block syndrome)では肺胞毛細血管膜の厚さが増大するため拡散diffusionの障害があらわれ,低酸素血症hypoxiaと高二酸化炭素血症carbon dioxide retentionになる.

問題5. 心不全heart failureに関し正しいのはどれですか.

1.スワン-ガンツSwan-Ganzカテーテル法により右室拡張末期圧right ventricle enddiastolic pressureを測定できるので,末梢循環不全と肺うっ血lung congestionの程度がわかる.

2.拡張期末期end-diastolicの心室容積が増えると,心収縮contraction力がたかまりinotropic action,1回心拍出量stroke volumeおよび心拍数heart rateが増加する現象(変時作用chronotropic action)を,フランク・スターリングの機構Frank-Starling mechanism,スターリングの心臓の法則Starling's law of heartという.

3.うっ血性心不全congestive heart failureには右心不全right heart failureと左心不全left heart failureとがあるが,右心不全の場合には呼吸困難dyspneaが,左心不全の場合には浮腫edemaが起こる.

4.異所性刺激ectopic stimulus(impulse)の部位が心室にある心室性期外収縮ventricular extrasystole(早期収縮ventricular premature contraction, VPC)の場合には刺激が刺激伝導系conducting systemを通らないので心電図electrocardiogramにおいてQRS幅が広くなる.

5. アダムス・ストークス症候群Adams-Stokes syndromeの場合は,完全房室ブロックcomplete atrio-ventricular block,心室細動ventricular fibrillation,心室粗動ventricular flutterなどにより脳虚血が起こり,失神発作syncope,痙攣発作convulsionおよび低血糖hypoglycemia発作などがみられる.

看護治療論II 病態生理学答案用紙(解答例) 山田幸宏 平成10年(1998年)7月1日

問題1   5  問題2  1   問題3    3  問題4    2   問題5  4

問題6.浮腫edemaとはどのような病態ですか.病態生理学pathological physiologyの立場から記述(describe)して下さい.浮腫は細胞外液である血漿plasmaと組織液tissue fluid(間質液あるいは組織間質液interstitial fluidともいう)のうち,組織液が過剰に貯留した状態である.すなわち血漿成分が血管外に滲出(滲出液exudate)あるいは漏出(漏出液transudate)した状態である.毛細血管壁を介した体液body fluidの分布は,Starlingの法則として,毛細血管内静水圧hydraulic pressure,血漿膠質浸透圧plasma oncotic(colloid osmotic) pressureおよび毛細血管壁の透過性permeabilityによって規定される.腹腔にたまるものを腹水ascites,胸腔にたまるものを胸水pleural fluidという.ネフローゼ症候群nephrotic syndromeなどで尿中にアルブミンが失われると血清アルブミン濃度が低下すと膠質浸透圧が低下し,組織から血管内への水分の回収が減り浮腫がおきる.心疾患で心臓からの拍出量cardiac outputが減少すると右心不全right heart failureによる浮腫が起こる.この病態をうっ血性心不全congestive heart failureという.また,心臓からの拍出量が減少すると腎血流量renal blood flowが減少し,糸球体からの濾過量glomerular filtration rate, GFRが減少し,Naの排泄が減少して浮腫が生じる.これらは心性(心臓性)浮腫cardiac edema, 循環性浮腫circulatory edemaである.腎疾患のため糸球体濾過量が低下した場合にもNaがたまり浮腫が起きる.これらを腎性浮腫renal edemaという.

問題7.呼吸不全respiratory failureとはどのような病態ですか.病態生理学pathological physiologyの立場から記述(describe)して下さい.呼吸不全respiratory failure,pulmonary failure, respiratory insufficiencyは呼吸器系の障害により,換気ventilationあるいはガス交換gas exchangeに異常が生じた結果,低酸素状態や二酸化炭素蓄積状態となり,生命の維持や日常生活の遂行が不可能になった状態である.吸気酸素分画濃度(吸入気酸素分圧)FIO2 21%の空気を吸入しているときに,PaO2が60mmHg以下の低酸素血症,PaCO2が50mmHg以上の高二酸化炭素血症のときは呼吸不全である.その病態として,1.肺胞低換気,2.シャントshunt(短絡),3.拡散diffusion障害,4.換気-血流比ventilation-perfusion ratioの不均等分布が存在する.1.呼吸気の出入りの障害である肺胞低換気(換気不全)は,気管支喘息重積発作status asthmaticsなどで起こる.1回換気量が減少したり,死腔換気量が増加した場合に起こる.換気の補助により,1回換気量を増やしたり,呼吸数を増やす必要があり,人工呼吸器が必要なこともある.2.静脈血が肺胞-毛細血管単位で酸素化されずに左心に流れ込むシャントは,無気肺などで起こる.末梢気道の炎症や浮腫,分泌物貯蔵,肺胞内腔への滲出液貯留,肺胞表面活性物質の減少などによって肺胞が虚脱collapseし,生物学的シャントが増加するため,低酸素血症となる.酸素療法に加え,呼気終末陽圧法positive endexpiratory pressure, PEEPやcontinuous positive airway pressure,CPAPを用いた呼吸法,界面活性剤surfactantや分泌液や滲出液の排除促進が必要となる.3.肺胞から毛細血管へ酸素が広がりにくい拡散障害は間質性肺炎,肺線維症など肺胞毛細血管膜の厚さが増大する肺胞毛細血管ブロック症候群(Alveolar-capillary block syndrome, A-C block syndrome)で起こる.肺実質の障害により,間質の浮腫や線維化,肺胞膜の肥厚や拡散面積が減少することが原因である.酸素療法により吸入気酸素分圧(FIO2)を上げることが必要となる.4.肺胞換気量と毛細血管血流量の比がばらつき,ガス交換効率の低下した肺胞-毛細血管単位が増加している換気-血流比の不均等分布は呼吸窮迫症候群respiratory distress syndromeなどで起こる.肺実質の障害では肺胞のふくらみやすさに差が生じ,各肺胞-毛細血管単位の肺胞換気量や血流量が不均等になったりする死腔様効果あるいは換気が血流に対して小さい単位では,血流は十分酸素を取り入れることなく低酸素血症として体循環におけるシャント様効果などを生じることが原因となる.

看護治療論II病態生理学追試験答案用紙(解答例)

山田幸宏平成10年(1998年)7月3日          

問題1 ショックshockとはどのような病態ですか.病態生理学pathological physiologyの立場から記述(describe)して下さい.ショックは急激な循環障害のために起こった,全身性の臓器,組織,細胞性の障害で,放置すると死にいたる病態である.循環障害をおこす病態には 1.循環血液量の減少によるショック,2.心原性ショック,3.血管性ショックがある.1.循環血液量の減少によるショックは外傷などによる出血,熱傷などによる体液喪失が原因となる,循環血液量減少性のショックhypovolemic shockである.2.心原性ショックは心臓のポンプ機能の障害が原因となりひきおこされるもので,心筋梗塞による左室駆出不全,心タンポナーデcardiac tamponade, 緊張性気胸などによる左室充満不全などの場合におこる.循環血液量は減少していないので左室駆出不全により左心不全がおこり呼吸困難が出現する.3.血管性ショックvasogenic shockは細菌内毒素endotoxinやIgEが関与したアレルギー反応によりひきおこされる末梢循環不全によるショックである.循環不全をきたすと副腎髄質からカテコールアミンの分泌が増え,末梢血管抵抗を増大させ代償の機序が働くが,やがて不可逆性ショックとなり死亡する.

問題2心不全heart failureとはどのような病態ですか.病態生理学pathological physiologyの立場から記述(describe)して下さい.心不全heart failure, cardiac decompasationとはポンプ機能としての心拍出能の障害のため,心拍出量が低下して,全身性の循環障害に基ずく息苦しさ,意識レベルの低下,手足の冷感,血圧の低下,乏尿などの症状が出現し,それを代償しようとする機能が発現するが,心臓死となる場合がある重篤な病態である.心不全の要因となるものには心臓にかかる負荷の増大と心臓自体の障害がある.静脈系から心臓に還ってくる血液の量は心筋に対して圧として作用し,心室は拡張して心室に血液が流入する.これを前負荷という.前負荷は肺毛細管楔入圧pulmonary capillary wedge pressureから推測できる.後負荷は収縮期にかかる負担で収縮期圧により規定される.心不全は前負荷および後負荷の増大と密接に関連している.右心不全時には全身浮腫が,左心不全時には呼吸困難が出現する.心不全時には心拍出量と血圧の低下に対し,交感神経が作動して末梢血管抵抗を高め, 心拍数を増加させて心拍出量を確保する機序が働くが,後負荷が増大し心不全は増悪傾向を示すこととなる.心筋はFrank-Starlingの法則により心拍出量を増大させようとするが過剰なエネルギー消費をもたらし,代償できない病態へと進行することとなる.

問題3.脱水症dehydrationとはどのような病態ですか.病態生理学pathological physiologyの立場から記述(describe)して下さい. 脱水症は体液の欠乏した状態あるいはその結果生ずる病態を総括した概念である.体重の5%以上の脱水が起こると臨床症状があらわれる.体液は水分と電解質などからなっているので,体液が失われる場合に,水分の方がより失われると体液の浸透圧濃度は高くなる.血清Na濃度が150mEq/l以上の脱水症を高張性脱水症hypertonic dehydrationという.水分より電解質の方がより失われると体液の浸透圧濃度は低くなる.血清Na濃度が130mEq/l以下の脱水症を低張性脱水症hypotonic dehydrationという.水分と電解質が体液と同じ割合で失われれば血清Na濃度は正常範囲の131-149mEq/lである.この場合をの脱水症を等張性脱水症isotonic dehydrationという.便中Na濃度は血清のNa濃度の1/2-1/3であるので急激に下痢が起こると高張性脱水症となる.汗のNa濃度も血清のNa濃度の1/3であるので発汗の増加が起こると高張性脱水症となる.高張性脱水症の場合,細胞外液の浸透圧が高いので,水分は細胞内から細胞外へと移動する.そのため循環障害の症状が出にくい.細胞内脱水が強いが,そのことは中枢神経系に強くあらわれ,不穏,興奮,痙攣,深部反射の亢進などの中枢神経症状が強く出現する.慢性に脱水が起こり,電解質が補給されないと低張性脱水症になる.低張性脱水症の場合,細胞外液の浸透圧が低いので,水分は細胞外から細胞内へと移動する.そのため循環障害の症状が出やすい.

 

看護治療論II 病態生理学答案用紙Caroline White  平成10年(1998年)7月1日

1.What is the concept of symptom management?

症状マネジメントの概念はどのようなものですか.

2.What are the ideas of the symptom management model?

症状マネジメントモデルの考え方はどのようなものですか.

3.How does the nurse help patients and families with symptom management?

症状マネジメントではどのようにしてナースは患者,家族を助けますか.

病態生理学試験問題    山田幸宏  平成11年(1999年)6月25日

正解を一つ選び,その番号を病態生理学答案用紙に記入して下さい.

問題1. 疼痛painに関し正しいのはどれですか.

1.疼痛感覚は脊髄小脳路spino-cerebellar tractをへて視床thalamusに達し,内包internal capsuleを経て大脳皮質の知覚中枢に到達する.

2.アセチルサリチル酸(アスピリンaspirin)はピリンpyrine系の解熱鎮痛剤antipyreticanalgesic drugである.

3.モルヒネmorphineの薬理作用として鎮痛作用analgesic effect,鎮静作用があり,癌性疼痛に用いられるが,鎮咳作用,止痢作用はない.

4.ペンタゾシンpentazocineなどの麻薬拮抗性末梢性鎮痛剤はオピオイドopioid受容体に働き,鎮痛効果を発現させる.

5. アセチルサリチル酸(アスピリンaspirin)などの非ステロイド性抗炎症剤non-

steroidal anti-inflammatory drugs, NSAIDはシクロオキシゲナーゼcyclooxygenaseを阻害し,プロスタグランジンprostaglandin, トロンボキサンA2thromboxaneA2などの産生を抑え,解熱鎮痛作用を示す.

問題2. ショックshockに関し正しいのはどれですか.

1. エンドトキシンショックendotoxin shockはグラム陰性桿菌Gram negative rod の敗血症sepsis時にグラム陰性桿菌からのエンテロトキンenterotoxin,リポポリサッカライドlipopolysaccharide(LPS)が原因となり起こるショックである.

2. ペニシリンを投与したときなどに起こるペニシリンショックは抗原抗体反応antigen antibody reactionの結果により生じるが,このときアナフィラトキシンanaphylatoxinは好塩基球basophilや肥満細胞mast cellや好酸球eosinophilに作用して,IgEやヒスタミンhistamineなどを放出させ,血管透過性permeabilityを亢進させ,平滑筋smooth muscleを収縮させてアナフィラキシーショックanaphylactic shockを起こす.

3. 循環血液量減少性ショックhypovolemic shockの場合,副腎髄質adrenal medullaからエピネフリンepinephrine,ノルエピネフリンnorepinephrineなどのカテコールアミンcatecholamineが分泌され末梢血管を収縮させ,血圧を上昇させる機序が働くので,ショックの早期から尿量urine volumeは減少しない.

4.心筋梗塞myocardial infarctionなどのときにおこる心原性ショックcardiogenic shockの場合には前負荷preloadは増加し,中心静脈圧central venous pressureは上昇し,左心不全,うっ血性心不全congestive heart failureになりやすい.

5. ショックの場合には,血中乳酸lactate濃度は上昇し,塩基過剰Base Excess値は+(プラス)となる.

問題3. 損傷injuryに関し正しいのはどれですか.

1. 血管が損傷されると凝固因子coagulation factorが活性化され線維素(フィブリンfibrin)が形成されて凝集agglutinationがおこる.

2.褥創の第1度は紅斑が出現している状態であり,第2度はびらん,水疱,潰瘍などが出現している状態であり,第3度は皮膚損傷が皮下脂肪層までおよんでいる状態である.

3.  複雑骨折complex fracture,熱傷burn,褥瘡decubitusなどの治療のとき,固着した汚染組織,壊死組織を除去することをドレナージdrainageという.

4. 造血組織hematopoietic tissueは放射線障害radiation injuryを最も受けやすいが,リンパ球は放射線radiationに対し感受性が低い.

5. 低体温症hypothermia, 寒冷障害cold injuryの場合,体温を回復させるため温浴により急速に加温することが重要である.

問題4.呼吸不全respiratory failureに関し正しいのはどれですか.

1. 新生児newbornあるいは成人adult呼吸窮迫症候群respiratory distress syndromeの場合にはPaO2の低下,PaCO2の上昇がみられるが,A-aDO2(肺胞気-動脈血酸素分圧較差)は正常である.

2. 肺胞虚脱collapseがあり,生理的シャントshuntが増加している場合,自発呼吸spontaneous respiration時に呼気終末陽圧法positive end expiratory pressure, PEEPを行う方法をCPAP法(continuous positive airway pressure)というが,CPAP法と界面活性剤surfactantを用いて低酸素血症を治療することがある.

3. アチドーシスacidosisの場合, 酸素解離曲線がシフトして酸素飽和度が下がり,ヘモグロビンが酸素を解離しにくくなる.これをボーア効果Bohr effectという.

4. チアノーゼcyanosisは血中の還元ヘモグロビンdeoxyhemoglobinが5g/dl以上になると現われるので貧血anemiaがあるとチアノーゼは現われやすい.

5. 肺胞毛細血管ブロック症候群(alveolar-capillary block syndrome, A-C block syndrome)では肺胞毛細血管膜の厚さが増大するため拡散diffusionの障害があらわれ,低酸素血症hypoxiaと高二酸化炭素血症carbon dioxide retentionになる.

問題5. 心不全heart failureに関し正しいのはどれですか.

1.スワン-ガンツSwan-Ganzカテーテル法により右室拡張末期圧right ventricle enddiastolic pressureを測定できるので, 末梢循環不全と肺うっ血lung congestionの程度がわかる.

2.拡張期末期end-diastolicの心室容積が増えると,心収縮contraction力が高まりinotropic action,1回心拍出量stroke volumeおよび心拍数heart rateが増加する現象(変時作用chronotropic action)を,フランク・スターリングの機構Frank-Starling mechanism,スターリングの心臓の法則Starling's law of heartという.

3.うっ血性心不全congestive heart failureには右心不全right heart failureと左心不全left heart failureとがあるが,左心不全の場合には呼吸困難dyspneaが,右心不全の場合には浮腫edemaが起こる.

4.異所性刺激ectopic stimulus(impulse)の部位が心室にある心室性期外収縮ventricular extrasystole(早期収縮ventricular premature contraction, VPC)の場合には刺激が刺激伝導系conducting systemを通らないので心電図electrocardiogramにおいてQRS幅が狭くなる.

5. アダムス・ストークス症候群Adams-Stokes syndromeの場合は,完全房室ブロックcomplete atrio-ventricular block,心室細動ventricular fibrillation,心室粗動ventricular flutterなどにより脳虚血が起こり,失神発作syncope,痙攣発作convulsionおよび低血糖hypoglycemia発作などがみられる.

看護治療論II 病態生理学答案用紙(解答例)山田幸宏 平成11年(1999年)6月25日

問題1.  5

問題2.  4

問題3.  2

問題4.  2

問題5.  3

問題6ショックshockとはどのような病態ですか.病態生理学pathological physiologyの立場から記述(describe)して下さい.ショックは急激な循環障害のために起こった,全身性の臓器,組織,細胞性の障害で,放置するとhypovolemic shock死にいたる病態である.循環障害をおこす病態には 1.循環血液量の減少によるショック,2.心原性ショックcardiogenic shock,3.血管性ショックvasogenic shockがある.1.循環血液量の減少によるショックは外傷などによる出血,熱傷などによる体液喪失が原因となる,循環血液量減少性のショックhypovolemic shockである.2.心原性ショックは心臓のポンプ機能の障害が原因となりひきおこされるもので,心筋梗塞による左室駆出不全,心タンポナーデcardiac tamponade, 緊張性気胸などによる左室充満不全などの場合におこる.循環血液量は減少していないので左室駆出不全により左心不全がおこり呼吸困難が出現する.3.血管性ショックvasogenicshockは細菌内毒素endotoxin(エンドトキシンショックendotoxin shock)やIgEが関与したアレルギー反応によりひきおこされる末梢循環不全によるショック(アナフィラキシーショックanaphylactic shock)である.エンドトキシンショックはグラム陰性桿菌Gram negative rod の敗血症sepsis時にグラム陰性桿菌からのエンドトキシンendotoxin,リポポリサッカライドlipopolysaccharide(LPS)が原因となり起こる.アナフィラキシーショックはペニシリンを投与したときなどに起こるペニシリンショックなどで,抗原抗体反応antigen- antibody reactionの結果により,アナフィラトキシンanaphylatoxinが好塩基球basophilや肥満細胞mast cellに作用して,IgEやヒスタミンhistamineなどを放出させ,血管透過性permeabilityを亢進させ,平滑筋smooth muscleを収縮させるため起こる. 循環不全をきたすと副腎髄質adrenal medullaからエピネフリンepinephrine,ノルエピネフリンnorepinephrineなどのカカテコールアミンcatecholamineの分泌が増え,末梢血管抵抗を増大させ代償の機序が働くが,やがて不可逆性ショックとなり死亡する.収縮期血圧が低下し,尿量は減少し,血中乳酸lactate濃度は上昇し,塩基過剰Base Excess値は-(マイナス)となる.

問題7.脱水症dehydrationとはどのような病態ですか.病態生理学pathological

physiologyの立場から記述して下さい. 脱水症は体液の欠乏した状態あるいはその結果生ずる病態を総括した概念である.体重の5%以上の脱水が起こると臨床症状があらわれる.体液は水分と電解質などからなっているので,体液が失われる場合に,水分の方がより失われると体液の浸透圧濃度は高くなる.血清Na濃度が150mEq/l以上の脱水症を高張性脱水症hypertonic dehydrationという.水分より電解質の方がより失われると体液の浸透圧濃度は低くなる.血清Na濃度が130mEq/l以下の脱水症を低張性脱水症hypotonic dehydrationという.水分と電解質が体液と同じ割合で失われれば血清Na濃度は正常範囲の131-149mEq/lである.この場合をの脱水症を等張性脱水症isotonic dehydrationという.便中Na濃度は血清のNa濃度の1/2-1/3であるので急激に下痢が起こると高張性脱水症となる.汗のNa濃度も血清のNa濃度の1/3であるので発汗の増加が起こると高張性脱水症となる.高張性脱水症の場合,細胞外液の浸透圧が高いので,水分は細胞内から細胞外へと移動する.そのため循環障害の症状が出にくい.細胞内脱水が強いが,そのことは中枢神経系に強くあらわれ,不穏,興奮,痙攣,深部反射の亢進などの中枢神経症状が強く出現する.慢性に脱水が起こり,電解質が補給されないと低張性脱水症になる.低張性脱水症の場合,細胞外液の浸透圧が低いので,水分は細胞外から細胞内へと移動する.そのため循環障害の症状が出やすい.

Marcia Petrini

Symptom management is part of nursing work with patients and families in hospital and home. Symptom management is done by people, patients, families, and all people in their daily lives. Many ideas and terms are associated with the process of symptom management or part of the UCSF symptom management model. Give two symptoms for nursing management based on the UCSF model and your knowledge of nursing, pathophysiology, and identify observable physical findings you would expect on your physical assessment of the patient for these symptoms.

看護治療論II  病態生理学試験問題  山田幸宏 平成12年(2000年)7月1日

正解を一つ選び,その番号を看護治療論II 病態生理学答案用紙に記入して下さい.

問題1. 疼痛painに関し正しいのはどれですか.

1.疼痛感覚は脊髄小脳路spino-cerebellar tractをへて視床thalamusに達し,内包internal capsuleを経て大脳皮質の知覚中枢に到達する.

2.アセチルサリチル酸(アスピリンaspirin)はピリンpyrine系の解熱鎮痛剤antipyretic analgesic drugである.

3.モルヒネmorphineの薬理作用として鎮痛作用analgesic effect,鎮静作用があり,癌性疼痛に用いられるが,鎮咳作用,止痢作用はない.

4.ペンタゾシンpentazocineなどの麻薬拮抗性末梢性鎮痛剤はオピオイドopioid受容体に働き,鎮痛効果を発現させる.

5. アセチルサリチル酸(アスピリンaspirin)などの非ステロイド性抗炎症剤non-

steroidal anti-inflammatory drugs, NSAIDはシクロオキシゲナーゼcyclooxygenaseを阻害し,プロスタグランジンprostaglandin, トロンボキサンA2thromboxaneA2などの産生を抑え,解熱鎮痛作用を示す.

問題2. ショックshockに関し正しいのはどれですか.

1. エンドトキシンショックendotoxin shockはグラム陰性桿菌Gram negative rod の敗血症sepsis時にグラム陰性桿菌からのエンドトキシンendotoxin,リポポリサッカライドlipopolysaccharide(LPS)が原因となり起こるショックである.

2. ペニシリンを投与したときなどに起こるペニシリンショックは抗原抗体反応antigen-antibody reactionの結果により生じるが,このときアナフィラトキシンanaphylatoxinは好塩基球basophilや肥満細胞mast cellや好酸球eosinophilに作用して,IgEやヒスタミンhistamineなどを放出させ,血管透過性permeabilityを亢進させ,平滑筋smooth muscleを収縮させてアナフィラキシーショックanaphylactic shockを起こす.

3. 循環血液量減少性ショックhypovolemic shockの場合,副腎髄質adrenal medullaからエピネフリンepinephrine,ノルエピネフリンnorepinephrineなどのカテコールアミンcatecholamineが分泌され末梢血管を収縮させ,血圧を上昇させる機序が働くので,ショックの早期から尿量urine volumeは減少しない.

4.心筋梗塞myocardial infarctionなどのときにおこる心原性ショックcardiogenic shockの場合には前負荷preloadが減少するので中心静脈圧central venous pressureは上昇し,うっ血性心不全congestive heart failureになりやすい.

5.ショックの場合には,血中乳酸lactate濃度は上昇し,塩基過剰Base Excess値は+(プラス)となる.

問題3. 損傷injuryに関し正しいのはどれですか.

1. 血管が損傷されると凝固因子coagulation factorが活性化され線維素(フィブリンfibrin)が形成されて凝集agglutinationがおこる.

2. 熱傷ショックburn shockの場合には循環血液量減少性ショックhypovolemic shockなので生理的食塩水physiological salineを輸液し急性腎不全acute renal failureを予防することが大切である.

3. 複雑骨折complex fracture,熱傷burn,褥瘡decubitusなどの治療のとき,固着した汚染組織,壊死組織を除去することをデブリドマンdebridementという.

4. 造血組織hematopoietic tissueは放射線障害radiation injuryを最も受けやすいが,リンパ球は放射線radiationに対し感受性が低い.

5. 低体温症hypothermia, 寒冷障害cold injuryの場合,体温を回復させるため温浴により急速に加温することが重要である.

問題4. 呼吸不全respiratory failureに関し正しいのはどれですか.

1. 新生児newbornあるいは成人adult呼吸窮迫症候群respiratory distress syndromeの場合にはPaO2の低下,PaCO2の上昇がみられるが,A-aDO2(肺胞気-動脈血酸素分圧較差)は正常である.

2. 肺胞虚脱collapseがあり,生理的シャントshuntが増加している場合,自発呼吸spontaneous respiration時に呼気終末陽圧法positive end expiratory pressure, PEEPを行う方法をCPAP法(continuous positive airway pressure)というが,CPAP法と界面活性剤surfactantを用いて低酸素血症を治療することがある.

3. アチドーシスacidosisの場合, 酸素解離曲線がシフトして酸素飽和度が下がり,ヘモグロビンが酸素を解離しにくくなる.これをボーア効果Bohr effectという.

4. チアノーゼcyanosisは血中の還元ヘモグロビンdeoxyhemoglobinが5g/dl以上になると現われるので貧血anemiaがあるとチアノーゼは現われやすい.

5. 肺胞毛細血管ブロック症候群(alveolar-capillary block syndrome, A-C block syndrome)では肺胞毛細血管膜の厚さが増大するため拡散diffusionの障害があらわれ,低酸素血症hypoxiaと高二酸化炭素血症carbon dioxide retentionになる.

問題5. 心不全heart failureに関し正しいのはどれですか.

1.スワン-ガンツSwan-Ganzカテーテル法により右室拡張末期圧right ventricle end-diastolic pressureを測定できるので,末梢循環不全と肺うっ血lung congestionの程度がわかる.

2.拡張期末期end-diastolicの心室容積が増えると,心収縮contraction力がたかまりinotropic action,1回心拍出量stroke volumeおよび心拍数heart rateが増加する現象(変時作用chronotropic action)を,フランク・スターリングの機構Frank-Starling mechanism,スターリングの心臓の法則Starling's law of heartという.

3.うっ血性心不全congestive heart failureには右心不全right heart failureと左心不全left heart failureとがあるが,右心不全の場合には呼吸困難dyspneaが,左心不全の場合には浮腫edemaが起こる.

4.異所性刺激ectopic stimulus(impulse)の部位が心室にある心室性期外収縮ventricular extrasystole(早期収縮ventricular premature contraction, VPC)の場合には刺激が刺激伝導系conducting systemを通らないので心電図electrocardiogramにおいてQRS幅が広くなる.

5. アダムス・ストークス症候群Adams-Stokes syndromeの場合は,完全房室ブロックcomplete atrio-ventricular block,心室細動ventricular fibrillation,心室粗動ventricular flutterなどにより脳虚血が起こり,失神発作syncope,痙攣発作convulsionおよび低血糖hypoglycemia発作などがみられる.

看護治療論II 病態生理学答案用紙(解答例) 山田幸宏 平成12年(2000年)7月1日

問題1   5  問題2 1   問題3    3  問題4    2   問題5  4

問題6.心不全heart failureとはどのような病態ですか.病態生理学pathological

physiologyの立場から記述(describe)して下さい.心不全heart failure, cardiac decompensationとはポンプ機能としての心拍出能の障害のため,心拍出量が低下して,全身性の循環障害に基ずく息苦しさ,意識レベルの低下,手足の冷感,血圧の低下,乏尿などの症状が出現し,それを代償しようとする機能が発現するが,心臓死となる場合がある重篤な病態である.心不全の要因となるものには心臓にかかる負荷の増大と心臓自体の障害がある.静脈系から心臓に還ってくる血液の量は心筋に対して圧として作用し,心室は拡張して心室に血液が流入する.これを前負荷preloadという.前負荷は肺毛細管楔入圧pulmonary capillary wedge pressureから推測できる.後負荷after loadは収縮期にかかる負担で収縮期圧により規定される.心不全は前負荷および後負荷の増大と密接に関連している.左心不全時には呼吸困難が, 右心不全時には全身浮腫出現する.左心不全時には心拍出量が減少するため,有効循環血漿量が減少し,腎での水,Naの再吸収が亢進し,細胞外液量が増加する.これを前方障害説forward failure theoryという.右心不全時には,静脈還流venous returnが障害されるため静脈圧が上昇するため,組織液tissue fluid(間質液interstitial fluid)が増加する.これを後方障害説backward failure theoryという.心不全時には心拍出量と血圧の低下に対し,交感神経が作動して末梢血管抵抗を高め,心拍数を増加させて心拍出量を確保する機序が働くが,後負荷が増大し心不全は増悪傾向を示すこととなる.心筋はFrank-Starlingの法則により心拍出量を増大させようとするが過剰なエネルギー消費をもたらし,代償できない病態へと進行することとなる.

問題7.呼吸不全respiratory failureとはどのような病態ですか.病態生理学の立場から記述して下さい.呼吸不全respiratory failure,pulmonary failure, respiratory insufficiencyは呼吸器系の障害により,換気ventilationあるいはガス交換gas exchangeに異常が生じた結果,低酸素状態や二酸化炭素蓄積状態となり,生命の維持や日常生活の遂行が不可能になった状態である.吸気酸素分画濃度(吸入気酸素分圧)FIO2 21%の空気を吸入しているときに,PaO2が60mmHg以下の低酸素血症,PaCO2が50mmHg以上の高二酸化炭素血症のときは呼吸不全である.その病態として,1.肺胞低換気,2.シャントshunt(短絡),3.拡散diffusion障害,4.換気-血流比ventilation-perfusion ratioの不均等分布が存在する.1.呼吸気の出入りの障害である肺胞低換気(換気不全)は,気管支喘息重積発作status asthmaticsなどで起こる.1回換気量が減少したり,死腔換気量が増加した場合に起こる.換気の補助により,1回換気量を増やしたり,呼吸数を増やす必要があり,人工呼吸器が必要なこともある.2.静脈血が肺胞-毛細血管単位で酸素化されずに左心に流れ込むシャントは,無気肺などで起こる.末梢気道の炎症や浮腫,分泌物貯蔵,肺胞内腔への滲出液貯留,肺胞表面活性物質の減少などによって肺胞が虚脱collapseし,生物学的シャントが増加するため,低酸素血症となる.酸素療法に加え,呼気終末陽圧法positive end

expiratory pressure, PEEPやcontinuous positive airway pressure,CPAPを用いた呼吸法,界面活性剤surfactantや分泌液や滲出液の排除促進が必要となる.3.肺胞から毛細血管へ酸素が広がりにくい拡散障害は間質性肺炎,肺線維症など肺胞毛細血管膜の厚さが増大する肺胞毛細血管ブロック症候群(Alveolar-capillary block syndrome, A-C block syndrome)で起こる.肺実質の障害により,間質の浮腫や線維化,肺胞膜の肥厚や拡散面積が減少することが原因である.酸素療法により吸入気酸素分圧(FIO2)を上げることが必要となる.4.肺胞換気量と毛細血管血流量の比がばらつき,ガス交換効率の低下した肺胞-毛細血管単位が増加している換気-血流比の不均等分布は呼吸窮迫症候群respiratory distress syndromeなどで起こる.肺実質の障害では肺胞のふくらみやすさに差が生じ,各肺胞-毛細血管単位の肺胞換気量や血流量が不均等になったりする死腔様効果あるいは換気が血流に対して小さい単位では,血流は十分酸素を取り入れることなく低酸素血症として体循環におけるシャント様効果などを生じることが原因となる.

 

看護治療論II  病態生理学試験問題  山田幸宏 平成13年(2001年)11月20日

正解を一つ選び,その番号を看護治療論II 病態生理学答案用紙に記入して下さい.

問題1. 疼痛painに関し正しいのはどれですか.

1.疼痛感覚は脊髄小脳路spino-cerebellar tractをへて視床thalamusに達し,内包internal capsuleを経て大脳皮質の知覚中枢に到達する.

2.アセチルサリチル酸(アスピリンaspirin)はピリンpyrine系の解熱鎮痛剤antipyretic analgesic drugである.

3.モルヒネmorphineの薬理作用として鎮痛作用analgesic effect,鎮静作用があり,癌性疼痛に用いられるが,鎮咳作用,止痢作用はない.

4.ペンタゾシンpentazocineなどの麻薬拮抗性末梢性鎮痛剤はオピオイドopioid受容体に働き,鎮痛効果を発現させる.

5.アセチルサリチル酸(アスピリンaspirin)などの非ステロイド性抗炎症剤non-steroidal anti-inflammatory drugs, NSAIDはシクロオキシゲナーゼcyclooxygenaseを阻害し,プロスタグランジンprostaglandin, トロンボキサンA2thromboxaneA2などの産生を抑え,解熱鎮痛作用を示す.

問題2.ショックshockに関し正しいのはどれですか.

1. エンドトキシンショックendotoxin shockはグラム陰性桿菌Gram negative rod の敗血症sepsis時にグラム陰性桿菌からのエンドトキシンendotoxin,リポポリサッカライドlipopolysaccharide(LPS)が原因となり起こるショックである.

2. ペニシリンを投与したときなどに起こるペニシリンショックは抗原抗体反応antigen-antibody reactionの結果により生じるが,このときアナフィラトキシンanaphylatoxinは好塩基球basophilや肥満細胞mast cellや好酸球eosinophilに作用して,IgEやヒスタミンhistamineなどを放出させ,血管透過性permeabilityを亢進させ,平滑筋smooth muscleを収縮させてアナフィラキシーショックanaphylactic shockを起こす.

3. 循環血液量減少性ショックhypovolemic shockの場合,副腎髄質adrenal medullaからエピネフリンepinephrine,ノルエピネフリンnorepinephrineなどのカテコールアミンcatecholamineが分泌され末梢血管を収縮させ,血圧を上昇させる機序が働くので,ショックの早期から尿量urine volumeは減少しない.

4.心筋梗塞myocardial infarctionなどのときにおこる心原性ショックcardiogenic shockの場合には前負荷preloadが減少するので中心静脈圧central venous pressureは上昇し,うっ血性心不全congestive heart failureになりやすい.

5.ショックの場合には,血中乳酸lactate濃度は上昇し,塩基過剰Base Excess値は+(プラス)となる.

問題3. 損傷injuryに関し正しいのはどれですか.

1. 血管が損傷されると凝固因子coagulation factorが活性化され線維素(フィブリンfibrin)が形成されて凝集agglutinationがおこる.

2. 熱傷ショックburn shockの場合には循環血液量減少性ショックhypovolemic shockなので生理的食塩水physiological salineを輸液し急性腎不全acute renal failureを予防することが大切である.

3. 複雑骨折complex fracture,熱傷burn,褥瘡decubitusなどの治療のとき,固着した汚染組織,壊死組織を除去することをデブリドマンdebridementという.

4. 造血組織hematopoietic tissueは放射線障害radiation injuryを最も受けやすいが,リンパ球は放射線radiationに対し感受性が低い.

5. 低体温症hypothermia, 寒冷障害cold injuryの場合,体温を回復させるため温浴により急速に加温することが重要である.

問題4. 呼吸不全respiratory failureに関し正しいのはどれですか.

1.新生児newbornあるいは成人adult呼吸窮迫症候群respiratory distress syndromeの場合にはPaO2の低下,PaCO2の上昇がみられるが,A-aDO2(肺胞気-動脈血酸素分圧較差)は正常である.

2. 肺胞虚脱collapseがあり,生理的シャントshuntが増加している場合,自発呼吸spontaneous respiration時に呼気終末陽圧法positive end expiratory pressure, PEEPを行う方法をCPAP法(continuous positive airway pressure)というが,CPAP法と界面活性剤surfactantを用いて低酸素血症を治療することがある.

3. アチドーシスacidosisの場合, 酸素解離曲線がシフトして酸素飽和度が下がり,ヘモグロビンが酸素を解離しにくくなる.これをボーア効果Bohr effectという.

4. チアノーゼcyanosisは血中の還元ヘモグロビンdeoxyhemoglobinが5g/dl以上になると現われるので貧血anemiaがあるとチアノーゼは現われやすい.

5. 肺胞毛細血管ブロック症候群(alveolar-capillary block syndrome, A-C block syndrome)では肺胞毛細血管膜の厚さが増大するため拡散diffusionの障害があらわれ,低酸素血症hypoxiaと高二酸化炭素血症carbon dioxide retentionになる.

問題5. 心不全heart failureに関し正しいのはどれですか.

1.スワン-ガンツSwan-Ganzカテーテル法により右室拡張末期圧right ventricle end-diastolic pressureを測定できるので,末梢循環不全と肺うっ血lung congestionの程度がわかる.

2.拡張期末期end-diastolicの心室容積が増えると,心収縮contraction力がたかまりinotropic action,1回心拍出量stroke volumeおよび心拍数heart rateが増加する現象(変時作用chronotropic action)を,フランク・スターリングの機構Frank-Starling mechanism,スターリングの心臓の法則Starling's law of heartという.

3.うっ血性心不全congestive heart failureには右心不全right heart failureと左心不全left heart failureとがあるが,右心不全の場合には呼吸困難dyspneaが,左心不全の場合には浮腫edemaが起こる.

4.異所性刺激ectopic stimulus(impulse)の部位が心室にある心室性期外収縮ventricular extrasystole(早期収縮ventricular premature contraction, VPC)の場合には刺激が刺激伝導系conducting systemを通らないので心電図electrocardiogramにおいてQRS幅が広くなる.

5. アダムス・ストークス症候群Adams-Stokes syndromeの場合は,完全房室ブロックcomplete atrio-ventricular block,心室細動ventricular fibrillation,心室粗動ventricular flutterなどにより脳虚血が起こり,失神発作syncope,痙攣発作convulsionおよび低血糖hypoglycemia発作などがみられる.

 

看護治療論II 病態生理学答案用紙(解答例)山田幸宏平成13年(2001年)11月20日

問題1  5  問題2  1   問題3    3  問題4    2   問題5   4

問題6.ショックshockとはどのような病態ですか.病態生理学pathological physiologyの立場から記述(describe)して下さい.ショックは急激な循環障害のために起こった,全身性の臓器,組織,細胞性の障害で,放置するとhypovolemic shock死にいたる病態である.循環障害をおこす病態には 1.循環血液量の減少によるショック,2.心原性ショックcardiogenic shock,3.血管性ショックvasogenic shockがある.1.循環血液量の減少によるショックは外傷などによる出血,熱傷などによる体液喪失が原因となる,循環血液量減少性のショックhypovolemic shockである.2.心原性ショックは心臓のポンプ機能の障害が原因となりひきおこされるもので,心筋梗塞による左室駆出不全,心タンポナーデcardiac tamponade,緊張性気胸などによる左室充満不全などの場合におこる.循環血液量は減少していないので左室駆出不全により左心不全がおこり呼吸困難が出現する.3.血管性ショックvasogenic shockは細菌内毒素endotoxin(エンドトキシンショックendotoxin shock)やIgEが関与したアレルギー反応によりひきおこされる末梢循環不全によるショック(アナフィラキシーショックanaphylactic shock)である.エンドトキシンショックはグラム陰性桿菌Gram negative rod の敗血症sepsis時にグラム陰性桿菌からのエンドトキシンendotoxin,リポポリサッカライドlipopolysaccharide(LPS)が原因となり起こる.アナフィラキシーショックはペニシリンを投与したときなどに起こるペニシリンショックなどで,抗原抗体反応antigen- antibody reactionの結果により,アナフィラトキシンanaphylatoxinが好塩基球basophilや肥満細胞mast cellに作用して,IgEやヒスタミンhistamineなどを放出させ,血管透過性permeabilityを亢進させ,平滑筋smooth muscleを収縮させるため起こる. 循環不全をきたすと副腎髄質adrenal medullaからエピネフリンepinephrine,ノルエピネフリンnorepinephrineなどのカカテコールアミンcatecholamineの分泌が増え,末梢血管抵抗を増大させ代償の機序が働くが,やがて不可逆性ショックとなり死亡する.収縮期血圧が低下し,尿量は減少し,血中乳酸lactate濃度は上昇し,塩基過剰Base Excess値は-(マイナス)となる.

問題7.浮腫edemaとはどのような病態ですか.病態生理学の立場から記述して下さい.浮腫は細胞外液である血漿plasmaと組織液tissue fluid(間質液あるいは組織間質液interstitial fluidともいう)のうち,組織液が過剰に貯留した状態である.すなわち血漿成分が血管外に滲出(滲出液exudate)あるいは漏出(漏出液transudate)した状態である.毛細血管壁を介した体液body fluidの分布は,Starlingの法則として,毛細血管内静水圧hydraulic pressure,血漿膠質浸透圧plasma oncotic(colloid osmotic) pressureおよび毛細血管壁の透過性permeabilityによって規定される.腹腔にたまるものを腹水ascites,胸腔にたまるものを胸水pleural fluidという.ネフローゼ症候群nephrotic syndromeなどで尿中にアルブミンが失われると血清アルブミン濃度が低下すと膠質浸透圧が低下し,組織から血管内への水分の回収が減り浮腫がおきる.心疾患で心臓からの拍出量cardiac outputが減少すると右心不全right heart failureによる浮腫が起こる.この病態をうっ血性心不全congestive heart failureという.また,心臓からの拍出量が減少すると腎血流量renal blood flowが減少し,糸球体からの濾過量glomerular filtration rate, GFRが減少し,Naの排泄が減少して浮腫が生じる.これらは心性(心臓性)浮腫cardiac edema, 循環性浮腫circulatory edemaである.腎疾患のため糸球体濾過量が低下した場合にもNaがたまり浮腫が起きる.これらを腎性浮腫renal edemaという.

 

看護治療論II  病態生理学試験問題  山田幸宏 平成14年(2002年)11月26日

正解を一つ選び,その番号を看護治療論II 病態生理学答案用紙に記入して下さい.

問題1.血液bloodに関し正しいのはどれですか.

1.鉄欠乏性貧血iron deficiency anemiaは,正球性,低色素性の貧血を示す.

2.鉄欠乏性貧血では,不飽和鉄結合能は低下する.

3.再生不良性貧血aplastic anemiaでは末梢血では汎血球減少pancytopenia(貧血anemia,白血球減少leukocytopenia,血小板減少thrombocytopenia)を示す.

4.再生不良性貧血では,血中および尿中のエリスロポエチンerythropoietin濃度は低値を示す.

5播種性血管内凝固症候群disseminated intravascular coagulation(DIC)では,血中fibrin degradation products(FDP)値は低下する.

問題2. ショックshockに関し正しいのはどれですか.

1. エンドトキシンショックendotoxin shockはグラム陰性桿菌Gram negative rod の敗血症sepsis時にグラム陰性桿菌からのエンドトキシンendotoxin,リポポリサッカライドlipopolysaccharide(LPS)が原因となり起こるショックである.

2. ペニシリンを投与したときなどに起こるペニシリンショックは抗原抗体反応antigen-antibody reactionの結果により生じるが,このときアナフィラトキシンanaphylatoxinは好塩基球basophilや肥満細胞mast cellや好酸球eosinophilに作用して,IgEやヒスタミンhistamineなどを放出させ,血管透過性permeabilityを亢進させ,平滑筋smooth muscleを収縮させてアナフィラキシーショックanaphylactic shockを起こす.

3. 循環血液量減少性ショックhypovolemic shockの場合,副腎髄質adrenal medullaからエピネフリンepinephrine,ノルエピネフリンnorepinephrineなどのカテコールアミンcatecholamineが分泌され末梢血管を収縮させ,血圧を上昇させる機序が働くので,ショックの早期から尿量urine volumeは減少しない.

4.心筋梗塞myocardial infarctionなどのときにおこる心原性ショックcardiogenic shockの場合には前負荷preloadが減少するので中心静脈圧central venous pressureは上昇し,うっ血性心不全congestive heart failureになりやすい.

5.ショックの場合には,血中乳酸lactate濃度は上昇し,塩基過剰Base Excess値は+(プラス)となる.

問題3. 損傷injuryに関し正しいのはどれですか.

1. 血管が損傷されると凝固因子coagulation factorが活性化され線維素(フィブリンfibrin)が形成されて凝集agglutinationがおこる.

2. 熱傷ショックburn shockの場合には循環血液量減少性ショックhypovolemic shockなので生理的食塩水physiological salineを輸液し急性腎不全acute renal failureを予防することが大切である.

3. 複雑骨折complex fracture,熱傷burn,褥瘡decubitusなどの治療のとき,固着した汚染組織,壊死組織を除去することをデブリドマンdebridementという.

4. 造血組織hematopoietic tissueは放射線障害radiation injuryを最も受けやすいが,リンパ球は放射線radiationに対し感受性が低い.

5. 低体温症hypothermia, 寒冷障害cold injuryの場合,体温を回復させるため温浴により急速に加温することが重要である.

問題4. 呼吸不全respiratory failureに関し正しいのはどれですか.

1. 新生児newbornあるいは成人adult呼吸窮迫症候群respiratory distress syndromeの場合にはPaO2の低下,PaCO2の上昇がみられるが,A-aDO2(肺胞気-動脈血酸素分圧較差)は正常である.

2. 肺胞虚脱collapseがあり,生理的シャントshuntが増加している場合,自発呼吸spontaneous respiration時に呼気終末陽圧法positive end expiratory pressure, PEEPを行う方法をCPAP法(continuous positive airway pressure)というが,CPAP法と界面活性剤surfactantを用いて低酸素血症を治療することがある.

3. アチドーシスacidosisの場合, 酸素解離曲線がシフトして酸素飽和度が下がり,ヘモグロビンが酸素を解離しにくくなる.これをボーア効果Bohr effectという.

4. チアノーゼcyanosisは血中の還元ヘモグロビンdeoxyhemoglobinが5g/dl以上になると現われるので貧血anemiaがあるとチアノーゼは現われやすい.

5. 肺胞毛細血管ブロック症候群(alveolar-capillary block syndrome, A-C block syndrome)では肺胞毛細血管膜の厚さが増大するため拡散diffusionの障害があらわれ,低酸素血症hypoxiaと高二酸化炭素血症carbon dioxide retentionになる.

問題5. 心不全heart failureに関し正しいのはどれですか.

1.スワン-ガンツSwan-Ganzカテーテル法により右室拡張末期圧right ventricle end-diastolic pressureを測定できるので,末梢循環不全と肺うっ血lung congestionの程度がわかる.

2.拡張期末期end-diastolicの心室容積が増えると,心収縮contraction力がたかまりinotropic action,1回心拍出量stroke volumeおよび心拍数heart rateが増加する現象(変時作用chronotropic action)を,フランク・スターリングの機構Frank-Starling mechanism,スターリングの心臓の法則Starling's law of heartという.

3.うっ血性心不全congestive heart failureには右心不全right heart failureと左心不全left heart failureとがあるが,右心不全の場合には呼吸困難dyspneaが,左心不全の場合には浮腫edemaが起こる.

4.異所性刺激ectopic stimulus(impulse)の部位が心室にある心室性期外収縮ventricular extrasystole(早期収縮ventricular premature contraction, VPC)の場合には刺激が刺激伝導系conducting systemを通らないので心電図electrocardiogramにおいてQRS幅が広くなる.

5. アダムス・ストークス症候群Adams-Stokes syndromeの場合は,完全房室ブロックcomplete atrio-ventricular block,心室細動ventricular fibrillation,心室粗動ventricular flutterなどにより脳虚血が起こり,失神発作syncope,痙攣発作convulsionおよび低血糖hypoglycemia発作などがみられる.

 

看護治療論II 病態生理学答案用紙(解答例)山田幸宏平成14年(2002年)11月26日

問題1   3  問題2 1   問題3    3  問題4    2   問題5  4

問題6.脱水症dehydrationとはどのような病態ですか.病態生理学pathological

physiologyの立場から記述して下さい. 脱水症は体液の欠乏した状態あるいはその結果生ずる病態を総括した概念である.体重の5%以上の脱水が起こると臨床症状があらわれる.体液は水分と電解質などからなっているので,体液が失われる場合に,水分の方がより失われると体液の浸透圧濃度は高くなる.血清Na濃度が150mEq/l以上の脱水症を高張性脱水症hypertonic dehydrationという.水分より電解質の方がより失われると体液の浸透圧濃度は低くなる.血清Na濃度が130mEq/l以下の脱水症を低張性脱水症hypotonic dehydrationという.水分と電解質が体液と同じ割合で失われれば血清Na濃度は正常範囲の131-149mEq/lである.この場合をの脱水症を等張性脱水症isotonic dehydrationという.便中Na濃度は血清のNa濃度の1/2-1/3であるので急激に下痢が起こると高張性脱水症となる.汗のNa濃度も血清のNa濃度の1/3であるので発汗の増加が起こると高張性脱水症となる.高張性脱水症の場合,細胞外液の浸透圧が高いので,水分は細胞内から細胞外へと移動する.そのため循環障害の症状が出にくい.細胞内脱水が強いが,そのことは中枢神経系に強くあらわれ,不穏,興奮,痙攣,深部反射の亢進などの中枢神経症状が強く出現する.慢性に脱水が起こり,電解質が補給されないと低張性脱水症になる.低張性脱水症の場合,細胞外液の浸透圧が低いので,水分は細胞外から細胞内へと移動する.そのため循環障害の症状が出やすい.

問題7.細胞性免疫(cellular immunity)[細胞介在性免疫 cell-mediated immunity]につき,病態生理学の立場から記述して下さい.免疫反応は抗体,サイトカインなどの液性因子humoral factorによる体液性免疫humoral immunityとリンパ球lymphocyte, マクロファージmacrophage,樹状細胞dendritic cellによる細胞性免疫cellular immunityに大別される.細胞性免疫はTリンパ球(T細胞cell)で伝達される抗原特異的antigen specific獲得免疫acquired immunityを指し,遅延型アレルギー反応delayed type hypersensitivity, 細胞障害活性cytotoxic activityや同種移植拒絶反応allogeneic transplantation rejection reactionなどが代表的である.細胞性免疫の効果発現は感作T細胞sensitized T lymphocyte(CD4抗原陽性)すなわち,ヘルパーhelper T細胞から放出されるサイトカインcytokineによって起こる細胞,組織の反応と,抗原特異的キラーT細胞antigen specific killer T cell(CD8抗原陽性)すなわち,細胞障害性T細胞cytotoxic T lymphocyte(CTL)による細胞傷害, あるいは抗原非特異的antigen nonspecific なnatural killer(NK)などによって担当されている.細胞と細胞との液性因子にはリンパ球が産生するインターリューキンinterleukin(IL)などのサイトカイン,遊走chemotaxisを引き起こすケモカインchemokineなどがある.リンパ球が産生するリンホカインであるサイトカインのマクロファージ活性化因子はインターフェロンγ(IFNγ)であり,結核菌,サルモネラなどの細胞内寄生体の静菌作用とマクロファージの細胞傷害作用を増強する.マクロファージ遊走因子および遊走阻止因子はマクロファージの炎症部位への集積に関与する.IFNγはマクロファージ,T細胞,NK細胞の活性を増強し,IL‐2はリンパ球の増殖と反応の増強を誘導する.また,CTLはウイルス感染細胞virus infected cell,同種移植片や腫瘍細胞の排除,自己免疫性組織破壊などに重要な役割を果たす.NK細胞はClass I 陰性のウイルス感染細胞や,腫瘍細胞を障害する.すなわち,細胞性免疫は抗体の関与が少ないウイルス,真菌fungus,原虫protozoaなどの感染防御,遅延型アレルギー反応,移植免疫,腫瘍免疫などと,自己免疫反応autoimmune reactionを担っている.

看護治療論II  病態生理学試験問題  山田幸宏 平成15年(2003年)11月21日

正解を一つ選び,その番号を看護治療論II 病態生理学答案用紙に記入して下さい.

 

問題1.血液bloodに関し正しいのはどれですか.

1.鉄欠乏性貧血iron deficiency anemiaは,正球性,低色素性の貧血を示す.

2.鉄欠乏性貧血では,不飽和鉄結合能は低下する.

3.再生不良性貧血aplastic anemiaでは末梢血では汎血球減少pancytopenia(貧血anemia,白血球減少leukocytopenia,血小板減少thrombocytopenia)を示す.

4.再生不良性貧血では,血中および尿中のエリスロポエチンerythropoietin濃度は低値を示す.

5播種性血管内凝固症候群disseminated intravascular coagulation(DIC)では,血中fibrin degradation products(FDP)値は低下する.

 

問題2.ショックshockに関し正しいのはどれですか.

1. エンドトキシンショックendotoxin shockはグラム陰性桿菌Gram negative rod の敗血症sepsis時にグラム陰性桿菌からのエンドトキシンendotoxin,リポポリサッカライドlipopolysaccharide(LPS)が原因となり起こるショックである.

2. ペニシリンを投与したときなどに起こるペニシリンショックは抗原抗体反応antigen-antibody reactionの結果により生じるが,このときアナフィラトキシンanaphylatoxinは好塩基球basophilや肥満細胞mast cellや好酸球eosinophilに作用して,IgEやヒスタミンhistamineなどを放出させ,血管透過性permeabilityを亢進させ,平滑筋smooth muscleを収縮させてアナフィラキシーショックanaphylactic shockを起こす.

3. 循環血液量減少性ショックhypovolemic shockの場合,副腎髄質adrenal medullaからエピネフリンepinephrine,ノルエピネフリンnorepinephrineなどのカテコールアミンcatecholamineが分泌され末梢血管を収縮させ,血圧を上昇させる機序が働くので,ショックの早期から尿量urine volumeは減少しない.

4.心筋梗塞myocardial infarctionなどのときに起こる心原性ショックcardiogenic shockの場合には前負荷preloadが減少するので中心静脈圧central venous pressureは上昇し,うっ血性心不全congestive heart failureになりやすい.

5.ショックの場合には,血中乳酸lactate濃度は上昇し,塩基過剰Base Excess値は+(プラス)となる.

 

問題3.疼痛painに関し正しいのはどれですか.

1.疼痛感覚は脊髄視床路spino-thalamic tractをへて視床thalamusに達し,内包internal capsuleを経て大脳皮質の知覚中枢に到達する.

2.アセチルサリチル酸(アスピリンaspirin)はピリンpyrine系の解熱鎮痛剤antipyretic analgesic drugである.

3.モルヒネmorphineの薬理作用として鎮痛作用analgesic effect,鎮静作用があり,癌性疼痛に用いられるが,鎮咳作用,止痢作用はない.

4.ペンタゾシンpentazocineなどの麻薬拮抗性末梢性鎮痛剤はオピオイドopioid受容体に働き,鎮痛効果を発現させる.

5.アセチルサリチル酸(アスピリンaspirin)などの非ステロイド性抗炎症剤non-steroidal anti-inflammatory drugs, NSAIDはリポキシゲナーザlipoxigenase活性を阻害し,プロスタグランジンprostaglandin, トロンボキサンA2thromboxaneA2などの産生を抑え,解熱鎮痛作用を示す.

 

問題4.呼吸不全respiratory failureに関し正しいのはどれですか.

1. 新生児newbornあるいは成人adult呼吸窮迫症候群respiratory distress syndromeの場合にはPaO2の低下,PaCO2の上昇がみられるが,A-aDO2(肺胞気-動脈血酸素分圧較差)は正常である.

2. 肺胞虚脱collapseがあり,生理的シャントshuntが増加している場合,自発呼吸spontaneous respiration時に呼気終末陽圧法positive end expiratory pressure, PEEPを行う方法をCPAP法(continuous positive airway pressure)というが,CPAP法と界面活性剤surfactantを用いて低酸素血症を治療することがある.

3. アチドーシスacidosisの場合, 酸素解離曲線がシフトして酸素飽和度が下がり,ヘモグロビンが酸素を解離しにくくなる.これをボーア効果Bohr effectという.

4. チアノーゼcyanosisは血中の還元ヘモグロビンdeoxyhemoglobinが5g/dl以上になると現われるので貧血anemiaがあるとチアノーゼは現われやすい.

5. 肺胞毛細血管ブロック症候群(alveolar-capillary block syndrome, A-C block syndrome)では肺胞毛細血管膜の厚さが増大するため拡散diffusionの障害があらわれ,低酸素血症hypoxiaと高二酸化炭素血症carbon dioxide retentionになる.

 

問題5.心不全heart failureに関し正しいのはどれですか.

1.スワン-ガンツSwan-Ganzカテーテル法により右室拡張末期圧right ventricle end-diastolic pressureを測定できるので,末梢循環不全と肺うっ血lung congestionの程度がわかる.

2.拡張期末期end-diastolicの心室容積が増えると,心収縮contraction力がたかまりinotropic action,1回心拍出量stroke volumeおよび心拍数heart rateが増加する現象(変時作用chronotropic action)を,フランク・スターリングの機構Frank-Starling mechanism,スターリングの心臓の法則Starling's law of heartという.

3.うっ血性心不全congestive heart failureには右心不全right heart failureと左心不全left heart failureとがあるが,右心不全の場合には呼吸困難dyspneaが,左心不全の場合には浮腫edemaが起こる.

4.異所性刺激ectopic stimulus(impulse)の部位が心室にある心室性期外収縮ventricular extrasystole(早期収縮ventricular premature contraction, VPC)の場合には刺激が刺激伝導系conducting systemを通らないので心電図electrocardiogramにおいてQRS幅が広くなる.

5. アダムス・ストークス症候群Adams-Stokes syndromeの場合は,完全房室ブロックcomplete atrio-ventricular block,心室細動ventricular fibrillation,心室粗動ventricular flutterなどにより脳虚血が起こり,失神発作syncope,痙攣発作convulsionおよび低血糖hypoglycemia発作などがみられる.

 

問題6.腎kidneyに関し正しいのはどれですか.

1.水の再吸収は抗利尿ホルモンantidiuretic hormone, ADHにより,遠位尿細管および集合管において行なわれ,尿量urine volumeが調節されている.

2.尿細管基底膜にはNa+K+交換pumpという二次能動輸送系secondary active transporterがあり,Na+は細胞内から血管内へ能動輸送される.

3.ヘンレ係蹄の太い上行脚にはNa+K+2Cl-共輸送体cotransportertという一次能動輸送系primary active transporterが存在し,Na+K+が再吸収され,2Cl-が分泌される.

4.傍糸球体装置juxstaglomerular apparatusからアンギオテンシンangiotensinが分泌され,血圧の調節を行なっている.

5.尿細管糸球体フィードバック機構tubuloglomerular feedbackは糸球体濾過量および水の再吸量を調整し,血圧を安定させるシステムである.

 

問題7.体液body fluid,電解質electrolyte,酸塩基平衡acid-base balanceに関し正しいのはどれですか.

1.尿量は2ml/kg/hr程度である.

2.1日に必要な水分量(ml)は200x体重(Kg)1/2である.

3. アシドーシスacidosisのときには高K血症になりやすいので,不整脈が起こりやすい.

4. 抗利尿ホルモン(antidiuretic hormone, ADH)分泌異常症候群syndrome of inappropriate secretion of ADHの場合,ADH分泌量が減少しているため,血液は低Na血症となり,尿中Na濃度は上昇している.

5. HCO3-濃度の低下する病態を呼吸性アシドーシスといい,HCO3-濃度の増加する病態を呼吸性アルカローシスという.

 

問題8.アレルギーallergyに関し正しいのはどれですか.

1.即時型アレルギーimmediate hypersensitivityにおいて肥満細胞mast cellからの脱顆粒はIgE抗体が存在すれば,肥満細胞のIgEFc受容体receptorの架橋crossrinkなしで起こる.

2. IgEFc受容体は肥満細胞,好塩基球basophil,好酸球eosinophilの細胞表面に存在する.

3.IgG抗体とC3aを介するオプソニン効果opsonizationはC3a受容体receptorを持つ好中球,マクロファージにおいて細胞障害型cytotoxic type(抗体依存型antibody-mediated) を示すアレルギー反応である.

4.抗体依存性細胞障害antibody-dependent cell mediated cytotoxicity, ADCCを示すリンパ球はnatural killer細胞である.

5.遅延型アレルギーdelayed type hypersensitivity(T細胞介在性過敏反応T cell mediated hypersensitivity )において細胞障害性T細胞cytotoxic T lymphocyteはパーフォリンperforin,グランザイムgranzymeを放出し,標的細胞の壊死necrosisを誘導する.

 

看護治療論II 病態生理学答案用紙(解答例)山田幸宏 平成15年(2003年)11月21日

問題1. 3 問題2. 1 問題3. 1 問題4. 2 問題5. 4 問題6. 1 問題7. 3 問題8. 4

問題9.不整脈arrhythmiaとはどのような病態ですか.病態生理学pathological

physiologyの立場から記述して下さい.心臓は洞結節からの刺激が,心房,心室へと伝達されて,1分間60〜70拍で規則的収縮している.規則的に収縮を行なわない場合を不整脈という.洞調律であっても1分間100拍以上は洞性頻脈,50拍以下を洞性徐脈,呼吸と共に変動するのを呼吸性整脈と呼ぶ.洞結節以外で刺激が形成されることがある.多いのは期外収縮で,刺激が出る場所の違いから上室性期外収縮,心室性期外収縮という.心室性期外収縮が2つ続くのを二連発,3つ続くのを三連発,三連発以上を心室頻拍という.心室の収縮が頻脈かつ不規則で心拍出量がなくなったのを心室細動という.心房が独自に刺激を規則的に発し,副伝導路を通り逆行性に房室結節を通り刺激が回転し規則的に心房,心室が刺激されるのを上室性頻拍という.心房が不規則に拍動するのを心房細動という.このような頻拍型の不整脈の他に徐拍型の不整脈もある.洞結節の刺激発生が少なくなったり,洞結節から心房への伝達がとぎれたり(洞房ブロック),これに頻脈が加わったりする例も含めて洞機能不全症候群と呼ぶ.房室結節の伝導が障害されたのを房室ブロックという.房室ブロック,心室細動など不整脈が原因で意識障害を生ずるのをアダムス・ストークス症候群Adams‐Stokes syndromeという.このように,不整脈の中には多くの種類が含まれている.

問題10.サイトカインcytokineについて記述して下さい.細胞と細胞との液性因子にはリンパ球が産生するインターリューキンinterleukin(IL)などのサイトカイン,遊走chemotaxisを引き起こすケモカインchemokineなどがある.サイトカインはリンパ球,マクロファージ,樹状細胞(dendritic cell, DC),および他の造血系細胞,線維芽細胞,ケラチノサイトなど種々の細胞から産生される,すなわち多数の異なる細胞から産生され,多数の異なる細胞に働きかける液性因子humoral factorのペプチドであり, それに対する受容体レセプターreceptorを持つ細胞に作用し,その細胞の分化,増殖,機能発現を誘導する. インターフェロン(interferon, IFN), 腫瘍壊死因子(lymphotoxin, LT),  顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte-colony stimulating factor), 血小板由来増殖因子 (platelet-derived growth factor, PDGF), 上皮増殖因子(epidermal growth factor, EGF),  線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor, FGF), 神経増殖因子(nerve growth factor, NGF), 悪性化増殖因子(transforming growth factor,  TGF), 腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor, TNF)など広範な増殖,分化因子を含む.サイトカインのうち,免疫系細胞への作用を担っているものをIL,あるいはリンホカインlymphokineという. T細胞,大顆粒リンパ球large granular lymphocyte(natural killer細胞)などはリンホカインを産生する.単一のリンホカインは多様な生物活性を示し,また単一のリンホカインは複数の異なる細胞から産生される.作用の特徴はオートクラインautocrineかパラクラインparacrineとしての活性が優位で,  IL-1, TNFαなど全身的に作用するエンドクラインendocrineとしての活性は,多くの他のサイトカインの場合強くない.サイトカインの作用は微少環境に限られており,免疫応答などでみられるような細胞間作用intercellular reactionの担い手としての活性を備えている.サイトカインには,TNF α,IL-1, IL-6などの炎症性サイトカインとIFNαなどの免疫サイトカインとがある.免疫応答の質はヘルパーT細胞の産生するサイトカインに依存する.Th1細胞はIL-2, IFNγ,などを産生し,細胞性免疫に関与する細胞の成熟や活性化を促す.Th2細胞はIL-4, IL-6, IL-10などを産生し,抗体産生の促進とアレルギー反応に関与する.Th1細胞の生成にはIL-12が,Th2細胞の生成にはIL-4が関与している.