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ハーモニカおじさん ハーモニカおじさんを知ってるかい? いつも同じ場所同じ時間におじさんは 楽しそうにハーモニカを吹いている。 でもどこか、切なそうな時もあるんだ。 おじさんはその昔、小さな町工場で働いていた。 くる日もくる日も休みなく、おじさんはその小さな体で 一生懸命に働いていた。それには理由があったんだ。 おじさんにはきれいで若く働き者の妻がいた。 とても幸せでその妻との間に男の子が授かったけれど 妻は間もなくなくなってしまった。 息子は生まれつき病弱で、外に出ることができなかった。 いつも寂しそうに外を眺める息子を見て おじさんは一刻も早く病気を治してやりたいと 治療代のために休まずに働く必要があった。 だから毎日、息子を一人残して家を後にしていたんだ。 ある日おじさんが家に帰ると、息子はそこにいなかった。 どうしても息子は外に出てみたかったんだ。 いくら探しても息子は見つからなかった。 息子はおじさんの吹くハーモニカが大好きで、 ハーモニカを吹いてくれとよくせがんでいた。 おじさんはハーモニカを吹いた。必死に吹いた。 おじさんはそれからもう何年も、ハーモニカを吹いている。 街中の雑踏の中に、大きくなった息子の姿があることを信じて。 変わってしまった自分の姿でも、ハーモニカの音色にきっと 息子が気付いて笑いかけてくれることを信じているんだ。 だからハーモニカおじさんは、人通りの多い場所で いきいきとハーモニカを吹いているんだよ。 |
(終わりを迎える季節 2004.2.28 sunny cloudy)