さっちゃんのまほうのて
たばた せいいち のべ あきこ しざわ さよこ 共同製作
脚本 スプリング
ナレ さっちゃんは今日、とってもお母さんになりたかったのです。
お母さんになって、みんなにおやつをあげたり、
赤ちゃんにミルクをのませたりしたかったのです。
ほんとうは、ようち園のままごと遊びのお母さんですけどね。
ナレ けさ、お母さんが言いました。
お母さん 「さっちゃん、もうすぐおねえさんね。」
さちこ 「赤ちゃん、ここにいるのかな。」
(さちこ、お母さんのおなかをそっとなでる。)
さちこ 「さっちゃんも お母さんになろっと。」
(さちこ、お母さんのおなかに顔をつける。)
ナレ ここは 林ようち園のすみれ組です。
さっちゃんたちが 元気に遊んでいます。
友だち@ 「ねえ みんな、とびばこやろう。」
友だちA 「うん やろう。」
友だちB 「わたしもやる。」
友だちC 「ぼくも まぜて。」
友だちD 「おいら、とくいなんだぜ。」
(とびばこを じゅんばんにとんで 一人ずつポーズをとる。)
(見ている子は 一人とぶごとに はくしゅをする。)
友だちE 「こんどは なわとびやろう。」
友だちF 「うん やろう。」
友だちG 「わたしもやる。」
友だちH 「ぼくも まぜて。」
友だちI 「あーん わたくしも まぜてくださらなーい」
(5人で それぞれとくいなとびかたで 20回ぐらいとぶ。)
(見ている子は はく手する。 )
(とんでいた子はポーズをとる。)
友だちJ 「次はマットやろう。」
友だちK 「うんやろう。」
友だちL 「わたしもやる。」
友だちM 「ぼくもまぜて」
友だちN 「しょうがねー 一ちょおれもやつてやるか」
(一人ずつとくいなマット運動をやってポーズをとる )
(見ている子ははく手する。)
友だちO 「ねえみんなでおままごとしよう」
友だちP 「やるやる。」
友だちQ 「あきらくん。また、お父さんやってよ。」
あきら 「よーし。今日は、お父さんがとくべつうまいもんをくわせるぜ。」
(おもちゃばこから、ふらいぱんを持ち出して言う。)
ナレ さっちゃんたちの すみれぐみは、今、
ままごとあそびがとてもさかんです。
でも、お母さんになるのはいつも、せのたかいみよちゃんか
まりちゃんに きまっています。さっちゃんは たいてい、
ちびのいもうとか あかちゃんです。さっちゃんだって、いちどで
いいから 長いスカート はいて エプロンつけて
お母さんに なんていってみたいのです。
けいこ先生 「今日のお母さんは、だれなの。」
「ちょっとみんなでやっててね。」
さちこ 「あたし、お母さんになる!」(元気な声で)
(さちこ:かけてままごとばこからエプロンをさっと取り出す。)
まり (あわてて)「あたしよ。お母さんは!」
さちこ 「ちがうよ、今日はあたしよ。あたしだってお母さんやりたいもん。」
まり (おこって)「さっちゃんはお母さんにはなれないよ!だって、
手のないお母さんなんてへんだもん」
友だちR 「そうよ!」
友だちS 「へんだよ!」
あきら 「おれ、お父さんやーめた」(フライパンを下におく)
さちこ 「あたしだって、あたしだって、お母さんになれるよ。」
(さち:こエプロンをにぎりしめたまま、まりにとびかかる)
(まり:負けずにさちこのかみを引っぱる。)
けいこ先生 「どうしたの?やめなさい。」(あわてて止めにはいる。)
(さちこ:いきなりエプロンをなげつけて部屋の外にとびだす。)
ナレ さっちゃんは、大好きなかばんも ぼうしも おいたまま、くつも
はきかえないで、ようち園を とびだしました。
ナレ 「みんな、みんな、だいきらい!!だいっきらい!!」
こころのなかで そう さけびながら、さっちゃんは かけました。
じどう車が ブッブー、けいてきを ならしても、
自てん車のおねえさんが ころびそうに なっても、
さっちゃんは きがつきません。
「どうしたの さっちゃん!」
かどのパン屋の おばさんの声も、さっちゃんの耳にははいりせん。
ナレ ただいまも言わず、さっちゃんはげんかんのドアをあけました。
お母さん 「まあ、さっちゃん。どうしたの?おなかでもいたいの?」
(さちこ:ハーハーあらいいきをして、立っている。)
さちこ 「お母さん。さちこの手は どうして みんなと ちがうの?
どうして みんなみたいに 指が ないの? どうしてなの」
ナレ あなたの手には、指が いくつありますか。
お父さん指、お母さん指、おにいさん指、おねえさん指、
それから 赤ちゃん指、グー ちょき パー、
きつねや犬の かげえをつくったり、
ひとりあやとりも できますね。
手には、五つの指が あります。
でも、さっちゃんの右の手には
五つの指が ないのです。
ナレ お母さんは、もう むねがいっぱいでした。
だまって さっちゃんを だきしめました。
お母さん 「さちこはね、お母さんのおなかの中で、
はじめ、小さな小さな いのちのつぶだったの。
その いのちのつぶが だんだん大きくなって、
手や足や しんぞうができて、にんげんのからだになっていくの。
でも さちこはその時に、おなかの中で けがをしてしまって、
ゆびだけ どうしても できなかったの。
どうして おなかの中で けがなんかしてしまうのか、
まだ、だれにも分からないの。」
さちこ 「小学生になったら、さっちゃんの指、はえてくる?」
(さちこ:お母さんの顔をじっと見つめる。)
(お母さんは両手でさちこの手をやさしくつつむ)
お母さん 「さちこの手はね、小学生になっても 今のままよ。
でもね、さっちゃん。
これが さちこの 大事な 大事な手 なんだから
お母さんの大好きな さちこの
かわいいかわいい手なんだから・・・。」
さちこ (なきながら)「いやだ。いやだ。こんな手いやだ!」
(お母さんもなみだをこぼす)
ナレ その日の夜、さっちゃんはふとかがみに うっている
自分に 気がつきました。
指のない 小さな丸い手。かがみの中の手は、
まるで はじめて見る しらな人の 手のようでした。
「さっちゃんは お母さんには なれないよ!
だって、手のないお母さんなんて へんだもん。」
ほんとだったらどうしよう。もし、ほんとだったらどうしよう。
ふとんの中で さつちゃんは、いつまでも ねむれませんでした。
ナレ 次の日、さっちゃんは ようち園を 休みました。
一日中、お庭で 大好きな くまさんと 遊びました。
お母さんが 心配して話しかけても、
「いいの」と言うだけでした。
さっちやんが ようち園に いかなくなつて、
何日か 立ちました。 なかよしのみちこちゃんが
遊びに来たときだけは、ひさしぶりに 楽しそうでしたが、
後は やっぱり、もとのさみしいさっちゃんでした。
ナレ お母さんに、とうとう赤ちゃんが 生まれました。
さっちゃんは お父さんに つれられて、病院に行きました。
(お母さん:赤ちゃんをだいていすにこしかけている。)
(さちこ:赤ちゃんのほっぺたにさわる。)
さちこ 「かわいい。あーおててが動いた。」
お父さん 「じゃあ、さちこ。そろそろ帰ろうか。お母さん、
またあした来るから。」
さちこ 「お母さん。バイバイ。赤ちゃんもバイバイ。」
ナレ びょういんの帰り道、
お父さんとさっちゃんは 手をつないで 歩きました。
町も空も、いっせいに 夕やけ色に なりました。
さちこ 「お父さん。さっちゃんも、お母さんになれるかな。」
(お父さん、びっくりして さちこの顔をのぞきこむ)
さちこ 「さっちゃん、ゆびが なくても おかあさんに なれるかな。」
お父さん 「なあんだ、さちこは そんなこと しんぱいしてたのか。
なれるとも、さちこは すてきなお母さんに なれるぞ。
だれにも 負けないお母さんに なれるぞ。」
(お父さん さちこの手を 大きくふる。)
お父さん 「それにねさちこ、
こうして さちこと 手をつないで 歩いていると
とってもふしぎな力が さちこの手から やってきて
お父さんのからだ いっぱいに なるんだ。
さちこの手は まるで まほうの手だね。」
ナレ 次の日、さっちゃんがびっくりする゛事件゛がありました。
いつものように、さっちゃんが くまさんと 遊んでいたときです。
ふと気がつくと、目の前にあばれんぼうのあきらくんが、
ぬうっと立っていたのです。
(さちこ:くまと遊んでいる。)
あきら 「さっちゃん。まだおこってる?」
(いつものあきらくんとちがうので、さちこはぽかんとしている。)
あきら 「これあげる。」
(小さなつつみをさちこの手におしつけにげるように走っていく。)
さちこ 「あっ。ハートのチョコレートだ。」
(さちこ:紙づつみを開けて言う。)
ナレ しばらくして、今度はけい子が、やってきました。
けい子先生「さっちゃん。お姉さんになったんだって、おめでとう!
それからね、すみれ組じゃみんなでクリスマスのげきを
やるんだけど、さっちゃん、お星さまになってくれないかな。
そうしたら、先生うれしいんだけどな。」
ナレ 夜です。お父さんは今、おふろに はいっています。
お母さんはまだ、病院です。でも もうすぐ、
赤ちゃんといっしょに 帰ってくるでしょう。
ナレ さっきからさっちゃんは、昼間のあきらくんの顔を
思い出して、なんだか ふうーっと おかしくなってしまいます。
さちこ 「あしたは、ようちえんに行くんだ。みんなと いっしょに
絵をかいたり、お星さまのげきをしたり、それに そうだ
とびばこにだって 登りたいな!とび箱の上に登ったら
『ヤッホー!』って、手をふるんだ。そしたら、あきらくん
どんな顔するかな。」
ナレ お父さんがおふろから上がって さっちゃんの部屋を
のぞきこんだとき、さっちゃんは もう、やすらかな
ね息を立てて、ねむりこんでいました。
ナレ 次の日さっちゃんは、ようちえんで、元気に遊んでいました。
あきら 「さっちゃん。すべるなよ。」
まり 「さっちゃん。落ちないで!」
さちこ 「へいき!へいき!だってさっちゃんの手は、まほうの手だもん。」
(みんなのほうを向いて、手をふる。)
BGM ♪ともだちになるために♪ ♪ひとはであうんだよ ♪
♪どーこのどーんな ひーとともー♪
♪きーっとわーかりあーえるさー♪
♪いーままでーでああった たくさんのー♪
♪きみと きみと きみと きみと きみと きみと きみと♪
♪こーれから であうたくさんのー♪
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♪ともだーちー♪
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