T-1 Midnight Chaser
T-2 Red Skies
T-3 High upon High
T-4 Way of the Kings
T-5 No Reprieve
T-6 Don't Be Fooled
T-7 Fool for Gods
T-8 Suffragettes
T-9 Back to the Grind
T-10 Cheetah
Phil Brady - B
Graeme Crallan - Ds
Janick Gers - G
Malcolm Pierson - Kb
Bruce Ruff - Vo
Produced by John McCoy
1980年、英MCAから発表された彼らの1stにして唯一のアルバム。MCAは当時ダイヤモンド・ヘッド、タイガース・オヴ・パン・タン、フィスト、クオーツなどの中堅バンドと多く契約していた。NWOBHMという流れ全体を汲み上げようとしていたのであり、一般にもアピールできる資質のあるバンドに限り、ほとんど引き抜き的に一本釣りしようと狙っていた他のメジャー(EMIとメイデン、フォノグラムとLEPSなど)とは考え方が違ったのであろう。
私の所有するCDは1992年に発売された日本ビクター盤。中古で780円程で入手した。レンタル落ちっぽいが盤質は良好、あんまり借りる人いなかったと見える。
8〜10はCDボーナス・トラック。92年時点では日本盤が世界で唯一のCD化だった。
****
古典的BHR風味であるが、疾走感・焦燥感はやはりNWOBHMならではのものか。
ギターは後にギランを経てアイアン・メイデンに加入するヤニック・ガーズ。彼がメイデンに加入した時、「若返った」「(ライヴでは)ヤニックの溌剌としたアクションに触発されたか、シャイな性格のデイヴ・マーレイまで派手な決めを見せるようになった」等評されていたように思うが、デビュー時期や下積み期間を考える限り、マーレイらと同年代ではないんだろうか。だからメイデンの平均年齢を引き下げたようには思えないのである。マーレイが年齢の割に落ちついた人物だった事は確かだと思うが。ともあれ、ここでのヤニックはオーソドックスだがメロディアスなソロを聴かせてくれる。黒いステージ衣装でストラトキャスターを愛用することからもわかるように、彼はリッチー・ブラックモアを敬愛するギタリストである。なかでも振幅の大きなアーミングに、ひしひしとリッチーからの影響・リッチーへの愛情を聴き出すことができる。
ヤニックのギターと並ぶもう一つの看板が、マルコム・ピアスンのキーボードである。ギター対キーボードと言えばディープ・パープル・マナーというわけである。事実T-1等は「ハイウェイ・スター」を思わせる曲である。
ことによるとバンドの中心はキーボードのマルコムだったのかもしれない。後にバンド内の人間関係で上手く行かなくなった時、脱退したのはヤニックであり、バンドを存続させたのはマルコムだからだ。尤もバンドを始動させたのはヤニックとドラムのグレアムということだが。ギタリスト対キーボーディストで確執になってしまうところまでディープ・パープル・マナーである、あーあ。
ともあれ、マルコムのハモンドやシンセサイザー(ムーグっぽいですよ!?)によるソロは、プログレ好きにもオススメできる華やかなものだ。音色といいフレーズといい実にブリティッシュである(シンセの音色ちょっと古臭いけどな)。ジェネシス、イエス、ユーライア・ヒープといったバンドが脳裏に浮かんでくる。個人的には特にジェネシスのトニー・バンクスに似ているように思う。リック・ウェイクマンのような派手な弾きまくりではないが、結構上手い。なお、私は上手い下手については今一つ鈍感なので(下手すぎて耐えられない、なんて思う事はごく稀である)、こんなの全然大したことないと思う人もいるかもしれない。大体リック・ウェイクマンだってクラシック的常識から言ったらかなりヘタクソなはずだ。もちろんアトミック・ルースター、クエータマス等のキーボード・ハードロック好きにもオススメできる。そんな人はあんまりいないのだが。
シンガー、ブルース・ラフのスタイルもギランをモデルとしているようである。ギランほどの声量・爆発力はなく、歌い回し、吐き捨て具合がギランを意識しているのだろうな、と思わせるくらい、なのであるが。大爆発しない分、煮えきらない系に通じる魅力もある。それは特にT-7あたりで顕著である。
出番は少ないがベーシストも悪くは無い。T-2などで小技の効いたベースラインを聴かせてくれる。このフィル・ブレイディという名前、どこかで聞いた名前な気がするのだが、どうも思い出せない。
プロデューサーのジョン・マッコイとはギランのメンバー(ベーシスト)。あの坊主頭の巨漢である。HM/HRサイト、「Kronikle
of 80's」には「『シティーハンター』の海坊主に似ている」と書かれているが、私も全くその通りだと思う。この人はその後巨漢ばっかり集めた(全員体重が100キロあるとか、そんな噂だった)バンド「マンモス」を結成、そのプロモーション・ヴィデオでは「重すぎてステージが抜ける」という場面が描かれている。いやいや、ブリティッシュ・自虐ユーモアとは恐ろしいものでスな。
****
バンド名の「白い魂」とはどういうことか、白人の魂てなことだろうか?スピリットを霊のようなものと考えると、霊(オバケ)というのは大抵白い(青白い)気もする。
****
テンポが速い曲がもっと多かったらもっと一般受けしただろうになあ。彼らが重視する「ドラマティックさ」は、裏を返せばパンク・ニューウェイヴ側から排撃された「仰々しさ」ということでもあるのだ。
****
T-1 Midnight Chaser
ディープ・パープルの「ハイウェイ・スター」を強烈に思い起こさせる曲。これを愛と憧れに溢れたオマージュととるか、猿真似ととるか、は、我々の主体的決断にかかっている。私は勿論愛・憧れをここに見出す(聴出だす)者である。ライター風情がガタガタ言おうが気にすることは無い。
T-2 Red Skies
小技の効いたベースラインに、アコースティックギターのアルペジオが重なるメイン・テーマ。シンセサイザーの煌びやかなソロ。それでいて、テンポは速い。演奏だけ取り出せばHR化したジェネシスのようだ。
T-3 High upon High
メロディアス・ハード、(あるいはプログレ・ハード)的な構成。行進曲っぽいミディアム・テンポ(ちょっと速歩きだが)。メロディーはアメリカンとまではいかないものの、なかなか爽快である。歌詞の中のyouを恋人と取れば大げさなラヴソングであるが、このyouを神(的な存在)ととれば崇高な賛美歌である。
T-4 Way of the Kings
イントロのギター、ハーモニクスが印象的。これもミディアム・テンポだが、前曲の爽快さとは打って変わって重厚である。政治家の欺瞞的なあり方を告発する歌詞であるように思うが、どうであろうか。
T-5 No Reprieve
アップテンポ、ギターとキーボードのユニゾンによるメイン・テーマ。タイトルは「無執行猶予」の意。「死刑執行人よ、私の命を絶つことはできても、私の魂を奪うことなどできはしない」、と歌っている。
T-6 Don't Be Fooled
これがまたもやハイウェイ・スター的イントロを持つ曲である、が、曲が始まるとテンポアップしたスモーク・オン・ザ・ウォーターといった感じだ。ギター・ソロ1音目、正にリッチー・トーン、たまらない。
T-7 Fool for Gods
キーボード主導の荘重なイントロに始まり、アコースティック・ギターを用いた優美なコーダに終る、(つまりプログレっぽい)大曲。預言者の嘆きってな感じの中身。神に従い王国を与えられ神殿を築き…というくだりはダビデ・ソロモン王朝を思わせるのだが、Godsと複数形なんだからユダヤ教伝統について歌ったわけではないのだろう。後半ギターソロにおける泣きはまるでジェネシス在籍期のスティ―ヴ・ハケットである。キーボード(シンセ)とギターによるユニゾンも美しい。
***以下ボーナストラック***
T-8 Suffragettes
Suffragettesとは女性参政権のことである。女性が参政権を獲得していった途上の闘争について歌われているようである。とかく男性優位主義的に思われがちなメタル世界では、珍しいことである。「もがきながらもがきながら、彼女等は一歩一歩進んだ」というくだりは聴く者の胸を打つ。アコースティック・ギターによる穏やかなイントロから静かに歌いだし、劇的に走り出す展開。シンセの使い方はこれまたジェネシスを思わせる。T-1
Midnight Chaserがシングル・カットされた際のB面曲である。
T-9 Back to the Grind
ハモンドによるイントロがいかにもブリティッシュな響き。ハモンドの歪んだトーンはユーライア・ヒープを思わせる。勇壮なミディアム・テンポ。Neatから出したデビュー・シングルのA面曲である。
T-10 Cheetah
これはかなり走っている、NWOBHMらしい疾走である。どっしりしたミディアムもドラマティックな大曲もいいが、こういうひた走る速い曲をもっと聴きたいものだ。ギターソロ、あの「よよよよーん」というリッチー・アーミングの音色が好きな人には、これはもうたまらずむせび泣き級のソロである。cheat(騙す・欺く)お前はcheetahだぜ、という言葉遊び的タイトルなのである。いわゆる「性悪女にふりまわされ」系の曲である。Neatから出したデビュー・シングルのB面曲である。