ガープス第三部リプレイ外伝     その後のあいつらどーなった編 1章                  @ さっきまで暖かい日差しを、投げかけていてくれた太陽は、あれからほんの少ししか、たっていないという のに、もう沈みかけている。それに続くように今度は、冷たい風が吹き抜ける。オレは風を避ける防寒具と して着けているマントの前を閉めるが、秋風はじわじわとオレの体を冷やす。 「ファン。秋の太陽はあっという間にいなくなるんだ。」 オレは昔、親父に言われたのをぼんやりと思い出していた。 オレ達は今、燃えるように鮮やかな色に紅葉した、林の中の街道を歩いている。秋もだんだん深まってきた ので、北風も冷たくなってきた。今日のところは、暗く寒くなってきたし、そろそろ歩くのも限界かな? おっと、そういや、自己紹介がまだだったな。オレの名前はファーデス・プライヤー。ファンって呼んでく れ。今年でかれこれ,19になる。オレは、戦乙女の精霊が宿った魔法の槍と銀の鎧を愛用する精霊戦士だ。 一応、このパーティーのリーダーをしている。ま、簡単だが自己紹介はこんなとこか。 オレ達が目指しているのは、紅葉山脈。ラオンの北に位置する場所だ。この時期、紅葉山脈の木々はその名 前通り、見事に紅葉する。観光には持ってこいなのだが、オレ達の目的は残念ながら観光ではない。それは 何かっていうと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「おい、ファン、今日はここいら辺で野宿しようぜ」 「・・・・・・・・・・・・・・・」 「ぼーっとするなよ。ファン!」 「あ、悪い。そうだな。これ以上進めなさそうだしな」 その前に旅の仲間を紹介しとこうか。 まずはさっきオレに話し掛けてきたやつはセシル。黒髪で紫の目の半妖精で盗賊をやっている。盗賊ってい っても、泥棒じゃなく、どっちかっていうと、レンジャーって感じだ。ここいら辺はさすがに半妖精、半分 とはいえ自然に対して特別な感覚を持っている、森妖精の血が流れているだけの事はある。当然、武器は弓 矢。それも腕は抜群で、敵の弱点を狙ったピンポイント攻撃が得意だ。 セシルとは一行の中で一番付き合いが長い。オレが冒険を始めて、すぐに巻き込まれた事件の中で知り合った んだ。これが、また大事件で大変な事件だったんだが・・・・・・・・・・・・・・・・・て、この話はまた の機会にするか。一緒に旅をするようになってから、あれからもう3年になるか。なんとなく感慨深い。ん? 23年って言ったほうがいいかな?まあ、これも簡単に言うと、いろいろゴタゴタあって、オレ達は20年後 に吹っ飛ばされたってことだ。うーん、ややこしい。 「やっぱり、今日は街に着くのは無理ね」 はぁ、とため息をつき、憂鬱げに長い髪をかきあげたのは、ジョセフィーヌ。赤髪に金銀妖眼という何とも派 手な外見をした美女で、ラーファの神官をしている。さすが神官というだけのことはあり、神聖魔法が得意で 、彼女の神聖魔法には、今まで、数え切れないほど助けられてきた。そして、ひとたび戦闘になれば、愛用の 槍で敵と戦う。前線を支える戦士が少ないこのパーティーでは、オレと共に最前線で戦うのだ。と、ここまで はいいんだが・・・・ 世間一般に、ラーファ神官といえば、質素だが清潔な白い神官服を着た乙女、っていうイメージがある。が、 ジョセはそのイメージと正反対。まず、着ている物は無闇に露出度の高いボディコン風の耐刃服。なんでも、 特注品らしい。まあ、こんな非効率的な防具は他にあるわけないか。この時期、そんな物を着てれば普通は 寒い。ジョセは普通じゃないから平気なんだろう。なんでも故郷のラーファ信仰はこれが普通だって言って るけど、所詮はジョセの言うことだしな。当てにはならん。そもそも、こいつの出身地だって、知らない。 あれ?前に行ったことがあったかな?まあ、いいや。性格は平たく言うと男好き。さらに女の子も好き。たち が悪い。こんな性格だからパーティーのトラブルメーカーだ。 そしてジョセと並ぶ、否、それ以上のトラブルメーカーが、一人いる。 「ったく、てめぇらが俺様の足ばっかり引っ張るから、街に着けねえじゃねえか。くそっ!<炎の嵐>でまと めて、焼き払うぞ、おら!!」 この、たわけた事を言っているのがマサル。最強のトラブルメーカーだ。黒髪黒目の真音魔術師。魔力の許容 力や制御力は凄まじいもの――おそらく、ファイブリアでもトップクラス――なんだろうが、口がかなり爆砕 していて、おまけに性格は最大級に爆砕している。本人曰く、金と食い物、そして、釣りをこよなく愛するナ イスガイらしい。ある意味ここまでくると立派。得意な呪文は、もちろん<炎の嵐>。奇襲で焼き払う。敵も 味方もまとめて焼き払う。まったく、こいつに何度焼かれた事か。もう数え切れん。まあ、俺の場合は<瞬間 防熱>って便利な精霊魔法があるから平気だけどさ。ジョセはいっつも燃やされている。ま、ジョセだからい いか。 そして、そのマサルの足元で、コクコク同意するように頷いているのが、果たしてなんなんだろう?未だにわ からない。名前は目素という。外見はまあ、可愛いといってもいいだろう。身長は50ネェくらいで、ピンク の体毛が生えていて、顔は眉が太く愛くるしく、マントとターバンを着けている。しかし、この外見に騙され てはいけない。こいつは、どういう体の構造をしているのか、炎や吹雪、電撃、毒ガス、カマイタチ、マグマ 、溶解液はもちろんのこと、爆弾、<光の槍>、2オイは軽くあるグレートソード、果てはコボルトチーフま ではきだす。身長も確認したまでで、5オイまで伸びる。さらに問答無用に空を飛び、瞬間移動までする。そ の正体は?っていうと、どうやら中身の何かが、キグルミをきているらしい。というのも、こいつの背中には マントに隠されてはいるが、チャックが付いている。中身はまったく不明。以前、ジョセがチャックを開けよ うとして、炎で黒焦げ、そして危うく消し炭にされかけた。マサルの使い魔ってことになってるが、本当に支配 出来ているかどうかは疑問だ。 そうそう、ジョセとマサル、ついでに目素も20年前から飛ばされたクチだ。 「まあまあ、マサルさん。昔から、楽しみは後に取っておく、と言うじゃないですか」 マサルをやんわりと、宥める様に言ったのはルーン。金髪碧眼の森妖精だ。自由自在に精霊魔法を使いこなし 、凄まじい力を持った時空魔法っていう特殊な魔法も使う(精度はちと低いが)。オレ達が20年吹っ飛ばさ れっちまったのは、正確にはルーンの時空魔法の暴走が原因なんだが、不可抗力といえば不可抗力なんで、今 更、責めようとは思わない。我が最愛の義妹、リミッツとも再会できたしな。そもそも、責めた所で、反省し そうにない。性格はマイペース、いかなるとにも慌てず、笑みを絶やさない、っていうか事態を理解してない だけかもしれない。自分の戦乙女の精霊をギャロット、つまり絞首具に宿らせているっていう訳のわからない 事もしている。 「でもでも、マサルさんが、食堂を<炎の嵐>で、炎上させたのが、いけないと思うですぅ〜」 この間延びした口調のが、ホーリー。本名は確か・・・・フォル・・・・・そう、フォルネシア・リフレウス 、だったかな?たぶん。オレ、人の名前覚えるのが、ほんのちょっとだけ苦手なんだ。それはさておき、この 娘は、父親の影響からか、ネクロマンサーなんてものをやっている。でも、あんまりネクロマンシーを使った 所を見たことはないな。ホーリーも、マサルに劣らないほどの強大な魔力を持っていて、魔術の制御において は、マサルを凌駕さえもしている真音魔術も操る。性格は、ネクロマンサーという職業の割には、のほほんと している。トロい、とも言える。この娘は我が最愛の義妹リミッツ、の一人娘なので、一応、オレの義姪に当 たるのだが、年齢が3歳しか離れていないと、まったくそんな気がしない。血はまったく繋がってないが、外 見はオレと同じ銀髪銀目で、肌は透けるように白い。しかも白いローブを着ているので真っ白け。まあ、可愛 らしく似合ってはいるが。ここいら辺は、さすが、我が最愛の義妹リミッツ!、の娘だけのことはあるな、う ん。 「なんだとぉ〜!この俺様が、わりいってか!?おお、上等だ!!ホーリー、表に出やがれ!!」 言うまでもなく、当然ここは表。 「アホ、ホーリーの言うとおりだろ。お前が全面的に悪いぞ」 オレは呆れる。自覚ないだろ。セシルやジョセも、もっともだってな風に、頷いている。ルーンはいつものこ とだが、ニコニコしている。分かってるのかなぁ? 「俺様が理由もなく、暴力を振るうと思ってるのか。コラ」 「そうですね、私と会ってから少なくとも10692回はありましたね。やはり、この数字から推測すると、 そうなんじゃないでしょうか」 さりげなくルーンが、いつも通りニコニコしながらも、誰よりも早くツッコミを入れる。それにしても、回数 、数えてたのか?マサルはマサルでルーンのツッコミを思いっきり無視し、マサルが一人で頷く。 「だろぉ〜。思わないだろぉ?今回の件も、あの食堂には全焼させらて、然るべき理由があったんだ、ボケ!」 「なによ、その理由って〜」 思いっきり口を開け、ふぁ〜っと欠伸をしながらジョセ。どうせロクでもない理由にきまってるがな。 「しれたこと、俺様の料理の味付け塩が、3ホイ少なかったんだよ。わかったか、腐れ馬鹿等!!」 ・・・・・・・・・・まあ、そんなことだろうとは思っていたが。しかし、それだけの理由で、食堂を全焼 させられたあの親父も哀れだな。食堂の親父、これからは客を選べよ。 「・・・・・・・・なんていうか、過ぎちまったことをアレコレ言ったって、始まらないし、野宿の準備しようぜ」 なんとなく悟った口調でセシルが提案する。 「そうだな。マサルについては今更じゃないしな。さて、今日の料理当番は誰だっけか?」 気分を切り替え、オレがみんなに聞く。 「あたしとルーンじゃなかったかしら。この前はあんたとマサルが作ったわよ」 なんか殺気のこもった目でマサルを睨みながらジョセ。 ああ、そっか。確かこの前はマサル特製海鮮スペシャルスープなる物をジョセが強制的に飲まされ、意識不明 の重体に陥るなんてことがあったな。 「んだ、コラ!!ガンたれてんじゃねえぞ。おら!!」 「なによ!!あんたが悪いんでしょ!!」 「じゃ、ジョセ、ルーン、夕食はまかしたぞ。後、セシルとホーリーは野営の準備を頼む。さて、マサル、 オレ達は水汲みと薪拾いだ」 こいつらのケンカに付き合ってると朝になるってことで、ケンカしてる二人を無視してそう言い、オレは胸の 前で手を組み合わせ、目をつぶり<水探知>の魔法に集中する。 「キュウラリ(いや、こんち。水の精霊さん。いや〜、いつ見ても、お美しい。惚れ惚れしちゃいますよ。 できれば、あなたのような精霊さんがたくさん、いらっしゃる場所を教えてくれませんか?いえいえ、お手数 はかけませんって。よろしくお願いしますよ〜)」 精霊の力を借りた呪文が発動し、水の場所が俺の頭の中に閃く。この反応からすると、どうやら近くに小川が あるみたいだ。う〜ん、さすがオレ、凄すぎ。早くも杖でジョセを袋叩きにしているマサルに教えてやる。 「マサル、あっちの方に小川があるみたいだぞ。水汲みたのむ」 「なに!本当か!!よし、この俺様が大物を釣ってきてやる!!ついでに、水汲みをしてやろう」 言うが早いか、全員分の水袋をかっさらっう。 「ド・グラ・ジェガー(俺様の体は空気より軽い。んなこたぁ分かってるよなぁ? んだと?そんなわけない? ざけんな、ボケ!俺様がルールブックなんだよ!だから俺様は飛べんだよ!それもおもいっきり早くな!死に たくなかったら、さっさとしろ!!)」 間髪置かず、きっちり3度笑いをあげながら<高速飛行>の呪文を唱えて飛び去っていく。 「モキュ〜」 目素も一鳴きしたかと思うと、マサルの<高速飛行>に負けない速度で、飛んでいった。相変わらず、こう いう事には迅速だな。あいつら。 「・・・・きょ、今日の所は、これくらいで勘弁してあげるわ・・・・」 地面に突っ伏したまま行っても説得力ないぞ、ジョセ。 「じゃあ、あとは任したぞ」 テントをホーリーと荷物から引っ張り出しているセシルが分かった、という風に片手を上げるのを確認し、 オレは薪を入れる籠を持って道をはずれ、林の中に入った。 そういや、まだオレ達の目的の話をしてなかったな。そう、話の発端は半月くらい前に溯る・・・・・・・・・・・・ A 「あ〜、いい天気だ。今日もファイブリア晴れだな〜」 今は朝。離れの寝床から廊下を通って表に出る。オレはめずらしく、早く起き出して、伸びながら誰ともな く言った。小鳥達は楽しげにさえずり、朝日はとても眩しい。あちこちの家からは朝食の準備であろう、 なんとも言えない良い匂いが漂ってくる。どこにでもある、ありふれた、朝の風景。だが、幸せな風景だっ た。平和だなぁ〜。 オレ達は「はるかかなたからきたりしもの」との戦いの後、ホーリーの故郷、そして、我が最愛の義妹リミ ッツのいる、このラパク村に帰ってきた。そこでオレ達も別に、急ぐ用事があるわけでもなく、リミッツの 強い勧めもあり、この村でしばらく骨休めをすることになった。リミッツの家は意外と広く、しかもなぜか は分からないが、宿屋風の離れもあったので、オレ、セシル、ジョセ、マサル、ルーンの5人が押しかけて 寝泊まりしても、差し支えはなかった。いろいろあってラパク村に来てから、1ヶ月が過ぎようとしていた。 そんな、ある日のこと。オレが朝の光を満喫していると後ろから声がかかった。 「おはようございます、ですぅ〜。ファン義叔父さん〜」 「お、おはようホーリー。頼むから義叔父さんと呼ばないでくれ。まだ19なんだ〜。だいたい君と3歳しか 離れていないじゃないか」 なんとなく、同年代の、しかも女の子から「おじさん」と呼ばれるのは抵抗があり過ぎる。そんな気持ちを 知ってか知らずか、コクンと頷きホーリーが答える。 「は〜い。わかったですぅ〜。そうそう、朝食が出来たので皆さんを、起こしに来たですぅ〜」 「わかった。みんな起こして行くよ」 「あ、わたしも行くですぅ〜。ジョセフィーヌさんは一応、女性ですから、わたしが起すですぅ〜」 男達は、離れの広い大部屋が、ジョセにはそこの個室があてがわれていた。 「今更って気もするけどな。野宿の時なんか、そんな事、気にしなかったじゃないか」 オレがそう言うと、ホーリーは右の人差し指を立てて、片目をつぶり、諭すように返す。 「わかってないですぅ〜。こういう平和な時だからこそ、女の子は女の子らしく扱ってほしいものなんです ぅ〜」 「ふ〜ん、そういうモンかねぇ。なら、深夜徘徊しないように鋼線でベッドにぐるぐる巻きに縛り付けとくの はマズイんじゃないか?って、そうしないと村の人に迷惑が掛かるから、これはしかたのないことか。」 「はいですぅ〜。それはあくまで、必要最低限の事ですぅ〜」 ついでにジョセの寝泊まりしている(させている)「個室」には窓はなく、壁には厚さ10ネェの魔法で強化 している鉄板埋め込まれていて、鍵も頑丈で複雑なものが、6重に掛けられるようになっている。そして、 ドアに太いカンヌキを掛けている。ま、このくらいないと安心できん。 「じゃ、頼むよ」 オレはそう言い、ホーリーを連れて、皆を起こすため、離れのドアに手をかけ開けた。するとちょうどルーン が、オレ達が寝室にあてがわれている大部屋から廊下に出てきた所だった。 「よう、おはよう。今日はめずらしく起きるのが遅かったな」 余談ながら、オレ達が起きる順は、野営の見張りとかそういう特別な状況でなければ、大抵、ルーン、セシル 、オレ、ジョセ、マサルの順だ。順番、と言ってもジョセとオレとの時間差はかなり大きいが。 閑話休題。 「ルーンさん、おはようございます、ですぅ〜。」 「あ、ファンさん、ホーリーさん、おはようございます。ちょっとお話がありますけどいいですか?」 「いきなりだな。なんなんだ、その話って?」 大した事じゃないんですけど、という前置きする。 「紅葉山脈の、ある場所に時空の歪みが発生しそうなんです」 「時空の歪みってなんですぅ〜?」 ルーンは、好奇心に溢れた表情のホーリーの質問に軽く頷き、続ける。 「時空の歪みとはこの次元と異次元、もしくは別の世界への通路みたいものです。歪みのうちは私がなんとか できると思いますが、時空の穴になったらちょっと、ほんのちょっとですけど、やっかいですね。私じゃ、 どうしょうも無くなるかもしれませんし、それに、歪みのうちは力や存在の弱いものしか来れませんが、穴に なると力の強いものや存在が強いもの、例えば「はるかかなたよりきたりしもの」のような存在、いえ、もし かしたら、それ以上の存在が来る可能性があります」 「・・・・・・おい、ルーン、それって、思いっきり、おおごとじゃないか?」 う〜ん、とルーンは腕を組んで思案顔になることしばし。そして、何かを思い付いたようにポンと軽く手を打 つ。 「確かにそうかもしれませんね、あはは」 「笑ってる場合じゃないですぅ〜。急いで何とかしないといけないですぅ〜」 ホーリーが意味もなく、両手をブンブン振り回し、珍しく、興奮した口調でいきり立つ。対照的に、ルーンは 相変わらず緊張感のない顔と声。 「 そうですねぇ。大変ですねぇ」 うっ!!こんな事をしている場合ではないことに、オレは突然気づいた。このままだとかなり、まずい事、 取り返しのつかないことになる可能性もある。思わず口元が強ばり、口の中が急速に乾いていくのがわかる。 オレは震える声で言った。 「ルーン、ホーリー。急がないとマズイ」 「そうですぅ〜。ファン義叔父さんの言う通りですぅ〜。早くその時空の歪み、というのを早く、何とかし ないと大変大変ですぅ〜」 「そうじゃない。確かに、そっちも早く何とかしないといけないが、オレが言っているのはもっと重要な、 観念的なことだ」 ホーリーの顔にさらに緊張感と好奇心の混ざった複雑な表情が走る。ルーンは相変わらずニコニコしている が。オレはホーリーの言葉に頭を振り、さらに震える声をなんとか押さえ込み、続ける。 「・・・・・・・・・・朝飯が冷める」 カクッ、ホーリーの体から力が抜けるのがわかる。ルーンはそういえば、そうですね、と呟く。力を取り戻し たホーリーが、怒った様子でオレに何か言おうと瞬間、オレ達が寝室として使っている大部屋のドアが爆発 的に開き大小2つの黒い影が飛び出した!! ヤバイ!!直感的にそう悟る。オレがそう悟ったと同時に黒い影達が言った。 「朝飯が冷めるだぁ〜!?ざけんな!!料理は出来立てが一番。んなことは基本中の基本。幼稚園児でもわ かっぞ。てめえらはそこでゆっくりしてな!!出来立ては、俺様がいただく!!」 「モキュウ〜〜!!」 そう一気に言いきると、黒い影――マサル――は凄まじい速さで、オレ達の隙間を、一陣の風のようにすり 抜け走り去った。その後ろにぴったりと影のようについていくのは、言わずと知れた目素。 「ちぃ!負けられるか!!ルーン、ホーリー、悪いが、皆を起こすのは任せた!!」 オレは2人の返事も聞かず、全力で走り出したのだった。 ・・・・・・・・・・という訳なんだな、うん。じゃあ、話は戻る。 「ああ、寒い。」 オレは、なんとなく両腕を摩りながら呟く。この時期の日の暮れた林は、予想以上に暗く、寒い。オレは精霊 使いでインフラビジョン――熱を見ることが出来る――があるから、明かりの問題はないが、寒さはどうしよ うもない。 「防冷っていう精霊魔法があればいいのにな」 魔法もかなり極めれば、自作の魔法を作れるって話だ。が、俺はどっちかっていうと、戦士の方にウェイト 置いてるから、一通りの呪文を使えるが、残念ながら極める所まではいってない。今度ルーンに作ってくれ るように頼んでみるか、とか考えながら薪を集める。ちょっとだけ<爆裂火球>でそこいら辺を燃やして、 暖を取るっていうのは、ナシだよな。やっぱり。火事になったら洒落にならんし。自分の考えを自分で否定 する。そんなことをしながら暗く寂しい林の中で薪を集めることしばし。 「ま、こんなもんでいいだろ。さあて、帰るか」 薪が籠いっぱいにやっと集まった。皆の所に戻るか、ってな風にクルっと振り返えると、目の端になにか引 っかかった。明らかに周りとは違う熱源が、地面に広がっている。何だろうと思い近づいてみると、なんと 、人が倒れている。オレは慌てて駆け寄り抱き起こす。 「おい!あんた、大丈夫か!?」 抱き起こしてみて分かったがどうやら女の子のようだ。村人風ないでたちをした、16,7くらいに見える。 肩まである茶髪がサラリと流れ、顔立ちは結構整っている。しかぁし!我が最愛の義妹リミッツの足元にも 及ばんがな!おっとっと、こんなこと考えてる場合じゃない。女の子をざっと見るが大きな外傷はないよう だし、呼吸も規則正しく苦しそうな様子もない。脈も正常。だけど暗いし、オレはそういう知識もあんまり ないので、大体のことしか分からないなぁ。 「おーい、大丈夫かー?」 オレは彼女の頬を軽くピタピタ叩き、体を揺すってみるが反応なし。 う〜ん、服装はどう見ても村人風だし、行き倒れのレンジャーとか冒険者ってわけでもなさそうだな。ここ いら辺に住んでいる、木こりの娘ってとこかな?オレは勝手に予想する。連れとか、持ち物がないか辺りを よく見回して確かめたが、暗い林が広がるばかりで、何も見つからなかった。まあ、なんにあれ、このまま 置いていくってわけにもいかないのは確かなことだ。 「しかたない、とりあえず、皆の所に連れて行くか」 薪の入った籠を片手に下げ、よっ、という掛け声とともにオレは落とさない様に気を付けながら女の子を背 中に担ぐ。さらに女の子の反応は無し。オレは漠然とあることを思っていた。 「また、厄介事に巻き込まれるな。絶対」 思わず口から考えが出る。こういうパターンで巻き込まれなかった試しはない。思いを確信にしながらオレ は女の子を担ぎ皆の所へ向けて歩き出した。                  B 「ファン、お前、薪拾いだけじゃ飽きたらず、人までさらって来たか・・・・・・わかった。なにも言うな。 悪いことは言わん。自首することを勧めるぜ」 おい・・・・・・・・セシル、いきなり、それか? 女の子を背負って林から出てきたオレを出迎えたのはセシルのやけに落ち着いた、そんな言葉だった。そりゃ 、あんまりだろ。オレはすぐさま反論しようとするが、皆がそれと同時に口を開く 「ちょっと待て!・・・・・・」 「そうですぅ〜、自首すれば罪は軽くなるですぅ〜。ファン義叔父さん、犯した罪は償わなくてはならない ものなんですぅ〜」 真剣な瞳で、あまつさえ、うっすらと涙まで浮かべながらホーリー。 「おまえら・・・・・・」 「塀の中で頑張ってお勤めしなさいよ。看守にいじめられても、囚役仲間にイビリ倒されても、冷や飯が不 味くても、挫けちゃだめよ」 ジョセがあからさまに、オレと視線を合わせない様に宙にさまよわせる。 「人の話を・・・・・・・・ 」 「誘拐ですか。罪としては重犯罪ですね。さらに、その女性の意識が無い所を見ると、おそらく傷害がつき ますね。前科がないとはいえ、情状酌量は難しいでしょう。」 ルーンがいつも通りニコニコしながら誰ともなく、冷静に説明する。 「聞け〜〜〜〜!!!!」 思わず絶叫するオレ。しかし、 「言い訳とは見苦しいぜ」 「罪を認めてくださいですぅ〜」 「ふ、無様ね。あたしは罪人に貸す耳は持ってないわ」 「一ヶ月に一回くらいはバナナ、差し入れしますよ」 ・・・・・・・・・・そう来るか。ならばオレにも考えがあるぞ。 オレは背中に背負った女の子を地面に静かに横たえると、自分の胸の前で手を組み合わせ呪文を詠唱し始め た。 「キュウリララララキュキュリラリ(よ!炎の大将!いつ見てもいい燃えっぷりだねぇ〜。この男前!にく いよ、この!その男っぷりのよさをあいつらにも分からせてやりましょうよ。分からせ方は簡単。熱い男は 体当たり!!古来の昔からそう決まってるじゃないですか。さあ、ガツーンと思いっきりいきましょう!!)」 組み合わせた手を左右に引き離すと、ぐぐっという手応えと共に、手の中に真っ赤な炎の塊が現れる。これ ぞ<爆裂火球>。オレは手の中に現れた<爆裂火球>を皆の中心に放り込む。 「よっと!」 セシルは軽い掛け声と共に、近くにいたホーリーを抱えて、身軽に軽々と迫る火炎をかわす。 「はい、<空間防御>。」 ルーンに襲いかかった炎は前に現れたオレンジの壁みたいもので完全に防ぎきる。さりげなく、料理や荷物 を守っているあたりはさすがだ。 「ぎゃ〜〜〜〜〜!!!!!」 ジョセは火炎を避けきれず、ゴォーッという音を立てて思いっきり火達磨になる。 「ちったあ、オレの話を聞けって。誘拐じゃねえよ。この娘が行き倒れてたみたいだから、連れてきただけ だ」 「なに、ほんの冗談だ。ファン、お前さんに誘拐なんて度胸のある事はできないってことは、よおーくわか ってるぜ。伊達に3年間、付き合ってないしな」 セシルが抱えていたホーリーを降ろしながらあんまりといえばあんまりな事さらりと言い放つ。ひどいな、 おい。 「そうそう、冗談ですよ」 ルーンはいつもどうりニコニコしながらオレが地面に降ろした女の子をいつの間にか広げた毛布の上に寝か せている。 「え?冗談だったんですぅ〜?全然わからなかったですぅ〜。ファン義叔父さんも人が悪いですぅ〜」 目を丸くして、本気で驚いている様子のホーリー。んなこと信じるなって。 「ちょっと!!いきなり、あんまりなんじゃない!?」 憤慨した様子のジョセ。真っ黒にすすで汚れてはいるが、火傷の跡はない。ジョセにとって炎にまかれるくら いは日常茶飯事だから免疫がついたかな? 「釈然としないが、まあいいか。それよりホーリー、この娘を診断してみてくれないか?」 ホーリーは生と死を操るネクロマンサーという職業からか、医学にもかなり精通している。こういう状況なら 、やっぱりホーリーに頼むべきだろう。ついでに、ジョセの抗議は完全に無視する。どうせ、ジョセだから平 気だろうし。 「わかったですぅ〜。」 頷き毛布の上に横たわっている女の子に近づく。しかし、ジョセがすばやくホーリーの行く手を阻む。 「ちょおっとまったぁ!!神官であるあたしが診断するのがスジってもんでしょ?本職に任せなさいって。 ほらほら、ボーッとしてないで、野郎どもはあっち行きなさい。」 服をパンパン叩いてすすを払いながら、やけに元気いっぱい言う。服のこげた様子すら無い。うーむー。加 減したつもりはないんだがなぁ。 「じゃあ、わたしも手伝うですぅ~」 「大丈夫よ。ホーリーはあたしの代わりに料理の用意でもしてて。一人の方が都合がいい・・・・ってもと い、えーと、その、いろいろやりやすいの」 思いっきりそわそわしている。なるほど。 「怪しいな。かわいい女の子だからって、いたずらしようとしてるだろ」 セシルが腕を組みながら言い、同時にオレをチラッと見る。セシルも同じ事を考えてたみたいだな。オレは 小さく頷き、少しずつジョセの後ろに回るべく移動し始める。 「な、なにを言うの。証拠、そう、証拠が無いわ」 やけに落ち着き無く、視線をキョロキョロさせるジョセ。 「今までの行動を考えれば、十分証拠になる」 もっともだ。はっきりいって、ジョセの場合、ほかの行動は考えられないと断言できる。 「残念ながら物的証拠がありませんね、状況証拠だけでは証拠とは言えませんよ」 「そうね、そうよね。なんだかよく分からないけどそんな事じゃ証拠にならないのよ!」 無意味に胸を張るジョセ。 「ルーン、お前はどっちの味方だ!?」 「私は客観的に述べただけですよ」 う〜ん。なんともルーンらしい。俺は思いながらジョセの後ろに回り込む。 「なんでもいいからあっち行きなさい!!」 よしよし、完全に後ろを取った。油断するとは迂闊だな!オレは思いっきり、踏み込み力いっぱい跳ぶ!! 「くらえ!!超絶!!天誅キィィィクゥ!!!!!!」 どがしゃあああああ!!!!!!!!! 魂の叫びと共にオレの全体重をのせた高角度なジャンプキックが、ジョセの頭を鋭くえぐる!! 「グベッ!!」 ガスッ。ブシャ。 カエルでも潰れたような音と共に、やけに生々しい音で派手に吹っ飛ぶジョセ。ゴロゴロと3回くらい転が って、轟音と共に木に激突しピクリとも動かなくなる。あ、白目剥いてる。それに首が変な方に曲がってる ような気がする。さらに、後頭部から凄まじい勢いで血が吹き出して見える。まあ、ジョセの事だから、気 にするほどの事ではあるまい。しっかし、我ながらすばらしい破壊力。かなりいい感じだったな。やはり思 った通り、つまさきに力を集中して、ひねりを加えると威力が倍増するな。よし、メモっておこう。 「よし、ナイスだ、ファン。おい、ルーン、鋼線借りるぜ」 セシルはルーンの荷物から鋼線を引っ張り出して手際よくジョセを鋼線で縛り上げ始める。前から思ってい たんだが、なんでルーンって鋼線を持ってるんだろ? 「じゃあ、ホーリー、この娘を診察してみてくれ」 「わかったですぅ〜」 ホーリーはその場で手早く診断を始める。しかし、倒れてた娘は、あの騒ぎの中で目を覚まさないとは、 傷やら病気やら疲労やらが、ずいぶんと、重いみたいだな。ちょっと心配だ。 「ふぅ〜。終わったですぅ〜」 ホーリーは、いつも持っている白いハンカチを懐から取り出して、汗をぬぐう様なしぐさをする。 「で、どうなんだ?」 いつの間にか、ジョセを縛り終わったらしいセシルが尋ねた。セシルの背後には、なにやら、ちょうどジョ セを一回り大きくしたような、大きさをした「ミノムシ」が転がっている。おっと、正確には「ミノムシ」 じゃないな。体を覆っているのが「ミノ」じゃない、鋼線だから「鉄」だ。「鉄虫」ってとこか。ジョセは どこにいったんだろう?まさか、あれがジョセって事はないだろう。ない。俺が決めた。今決めた。ゆえに あれはジョセじゃない。我ながら、みごとなまでの論理だ。 「安心してくださいですぅ〜。病気とか、怪我とかじゃなくて、ただ、眠っているだけなので、平気ですぅ 〜。疲労が原因、という訳じゃないと思うんですけど、そうなると、なんで林の中で寝ていたか、というの がわからないですぅ〜」 「どうして寝てたか、ということは本人が起きてから聞いても遅くはありませんよ。ただ眠っているだけな ら、まだ、寝かせておきましょう。食事の用意がもう少しで終わりますしね」 器用をキャベツを千切りにしながらルーン。いい匂いがしてきたな。 「それもそっか。問題が無いなら、寝かしておいてもいいか。じゃ、飯が出来るまで待ちだな。」 オレは焚き火にさっき拾ってきた薪を放り込む。 「ところで、セシルさん〜。あの鉄の塊はなんですぅ〜?」 「ああ、あれか。大したモンじゃないから、ほっといた方がいいぜ」 「気になるですぅ〜。調べてみるですぅ〜。えいえいですぅ〜。」 やけに嬉しそうに、杖であちこち、つつきまわる。 「それにしても、マサルはどこまで行ったんだ?」 そう、オレが言ったとたんに<瞬間移動>であろう、マサルが移動してきた。半秒遅れて、目素も移動して きた。マサルの性格から言って、目素を連れて一緒に瞬間移動なんて、奇特な事はしないと思うから、目素 はきっと自力で移動してきたのだろう。 「くそっ!!俺様ともあろうものが、1匹も釣れんとは!!あああ!!くそ!死ね!おら!」 怒りの赴くままに、近場に転っている、そしてホーリーがつつきまわしている「鉄虫」に893キックをか ます。蹴られた「鉄虫」はゴロゴロと転がって、丁度オレの目の前にあった焚き火の中で、きっちり止まっ た。 「あ」 オレ、セシル、ホーリーが思わず口にする。ルーンはまったく気にしていない様子で、いい匂いのする鍋の 中身を、箸でぐるぐるかき混ぜている。マサルに至っては、まだ気が晴れないのか、今度は目標を木に変え て、これでもかってくらい、893キックをかましている。そして思わず注目する事10秒あまり。 「あぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!おがおがあえうえああががせああ!!!」 「鉄虫」が叫び声を上げ、あちこちゴロゴロと転がりまわる。ぐるぐる巻きなのによく動けるもんだ。 「これ、なんなんですぅ〜?ものすごく動いて、何か鳴いてるですぅ~」 もう、これ以上無いくらい目をキラキラさせてホーリーがオレに尋ねてくる。 「別にほっといてもいいと思うが、うるさいな、これ。しかたない。」 オレは「てい」と軽く掛け声を掛けて、動き回る鉄虫の頭部と思われる当たりに、かかとをお見舞いする。 無論、手加減抜きの全力だ。 「ぐべっ!!」 鉄虫は一声鳴き、その動きを止めた。よし、一件落着。 「あれ〜?止まっちゃったですぅ〜?ファン叔父さん、どうなってるですぅ〜?」 「ああ、これはな、蹴っ飛ばしたりすると一旦は止まるけど、どーせすぐに動き出すと思うぞ。そうだ、 ホーリーもせっかくだから蹴っとけ。」 「わかったですぅ〜。」 そう言って頷くと、ホーリーはなにやら集中し始める。 「デ・ガリート(わたしの手に触られたモノは、何でかしら無いけど、とっても痛いですぅ〜。なんででし ょう〜?わからないけど、わたしが言ってることは正しいですぅ〜。あんまり反論ばっかりしてると、ゾン ビにしちゃうですぅ〜。)」 詠唱が終わり、鉄虫に右手を触れる。 「!!!!!!!!」 鉄虫は声にならない叫びをあげたようだった。一回激しく痙攣すると、そのまま完全に動かなくなった。 うーん、ホーリーはどうやら<死の手>の魔法でも使ったみたいだな。しかも手加減無用で。まあ、ささい なことさ。ホーリーが目を輝かせながら、新たに魔法を唱えているのを横目で見ながら、俺はルーンが敷い たであろう座るための布の上腰掛け、再び焚き火に薪を入れるのだった。                 C 「ごちそうさまー」 とりあえず、騒ぎも一段落したのでオレ達は焚き火を囲み、ルーンが作った飯を食べた。ついでにジョセは 地面に転がったままである。とりあえず、再び動き出すまではあのままでいいだろう。どうせ腹が減れば、 あの程度の束縛など自力で抜け出せるような奴なのである。メニューは干し肉をあぶった物と、色々な野菜 が入ったスープ、それとパン。ホントは今日は街につくはずだったので、大した材料は無かったはずだった のだが、ルーン曰く 「こんなこともあろうかと、前の街を出る時に野菜を買っておきました。」 だそうだ。いつの間に買ったのだろうか。前の街からはダッシュで逃げてきたはずなのに。まあ、うまい物が 食えたから文句は無いけどさ。 「ごちそうさん。うまかったぜ。」 「けっ!耳長男にしては、まあまあだな!」 「はい、お粗末さまでした。」 オレに続いてセシルとマサルも食べ終わる。ホーリーは、まだパンをかじっている。うちのパーティーでは ぶっちぎりにホーリーの食事が遅い。なのでホーリーが食べ終わると食事も終わりといった感じである。 「しっかし、あの女の子起きないな。まあ、腹が減ったら起きると思うが。お、悪いな。」 ルーンが差し出した食後のお茶を受け取る。 「疲れているのですよ。ゆっくり休ませてあげましょう。」 「そうだな。」 「おかわりぃ〜。」 「ん?おかわりとはめずらしい。ホーリー。」 俺はホーリーの方に向き直った。しかし、当のホーリーはまだパンを両手で持ちきょとんとしている。 「はい〜?今のはわたしじゃないですぅ〜。」 「あれ?」 その場にいる者の視線がふと、声のした方に集まった。それは俺の隣。 視線を一点に集めたにもかかわらず、その娘は変わらない。 「おかわりぃ〜。」 「どぁあああ!!!い、いつからそこにいた!?」 そう、さっきまで寝ていたはずの女の子である。オレは突然の事に驚いて座ったまま、ズサッと後ず去った。 「・・・・・・ん〜。ファ・・・さ・。・・ン叔父さん〜。ファン叔父さん〜。起きてくださいですぅ〜。」 「・・・・・・・・・・・・うう。なんだ?交代か?」 オレは重たいまぶたを無理やりこじ開ける。 「そうじゃないですぅ〜。変なんですぅ〜。おかしいんですぅ〜。」