ミステリ
最近読んだ本の感想でございます
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評価は五段階です



            4/02 『愚者たちの街』スチュアート・カミンスキー
               3/30 『カムバック・ヒーロー』ハーラン・コーベン
            3/24 『偽りの目撃者』ハーラン・コーベン

               3/20 『ホット・ロック』ドナルド・E・ウエストレイク
               3/18 『迷路』フィリップ・マクドナルド  
               3/15 『ブラックライト』スティーヴン・ハンター
            3/08 『真夜中の死線』アンドリュー・クラヴァン
            3/04 『黒と青』イアン・ランキン


BOOK・69

「愚者たちの街」スチュアート・カミンスキー
  原題:Lieberman's Folly
  訳者:棚橋 志行
  出版:扶桑社ミステリー 1999年6月 (1991年作品)
  定価:648円+税

  評価:4点

 刑事エイブ・リーバーマン・シリーズの第1作。主人公のリーバーマンは60歳で相棒のハンラハンは48歳という渋いコンビである。表紙からしてもう渋い。作品世界はもっと渋い。テキサスの売春宿で姉妹が元締めを殺ろし、金を奪い逃走するプロローグで幕が開く。二人の元に情報屋の売春婦から一晩だけ護衛を頼まれる。しかしちょっと目を離した隙に殺されてしまった。しかも現場のアパートには、二人の上司が住んでおり、大失態のなか捜査が始まる。シンプルだがじっくりと追い詰めるストーリーに
は味がある。さらに私生活の書き込みにはもっと味がある。引退し隠居生
活を促す妻、秀才で意固地な娘の離婚問題、常に回復途上の膝の関節炎の
こと、ユダヤ人教会の存続問題、相棒の酒の事、悩み多き老刑事である。
この独自の世界にいつまでも浸っていたいと思わせる、すこぶる臭い立つ
作品である。深い皺にきざまれた全てを受け入れてくれそうな目をした、
何となく懐かしいじいさんの臭いだろうか。(00.04.01)

BOOK・68

「カムバック・ヒーロー」ハーラン・コーベン
  原題:Fade Away
  訳者:中津 悠
  出版:ハヤカワ文庫 1998年10月 (1996年作品)
  定価:880円+税
  評価:5点

 スポーツ・エージェントのマイロン・ボライター・シリーズの第3作。アメフト、テニスときて今回はマイロンのお家芸バスケである。水を得た魚のごとく、いきいきと動き回るマイロンや得体の知れないウィンも健在。
 バスケ界にカムバックしてくれとスカウトされるマイロン。しかし探偵としての仕事つきで。ドラゴンズの看板選手グレグが失踪したのだ。そのため選手としてチームに入り、 グレグを捜し出して欲しいという。彼はマイロンの学生時代のライバルだった。調査をするにしたがってマイロン自身の過去の真相をも浮かびあがることに・・・。
 グレグの失踪をメインに、極左グループ『カラス旅団』がからみ、マイロンの昔の彼女や、バスケに対する未練、心の葛藤と恋人ジェシカとの進展ぐあいと盛り沢山。しかも グレグを見つけることがマイロンを引退に導いた負傷の真相を見つけだすことに繋がり、彼自身がかかえている心の鬱積を探ることでもあるという展開に脱帽。ただ、しだいにマイロンの行動にあまりにも正義であり健全であり、おぼっちゃま的すぎて、尻拭いしてるクールなウィンがますますかっこよく見えてきた。(00.03.30)

BOOK・67

「偽りの目撃者」ハーラン・コーベン
  原題:Dropshot
  訳者:中津 悠
  出版:ハヤカワ文庫 1998年1月 (1996年作品)
  定価:820円+税
  評価:4点

 スポーツ・エージェントのマイロン・ボライター・シリーズの第2作。今回の背景になるスポーツはプロ・テニス界である。相変わらずの軽妙な台詞(とマイロン自身は信じて疑わない)も健在であり、読者の期待を裏切ることなく満足させてくれる。
 マイロンの顧客であるプロ・テニス選手のデュエンの試合中に、カムバックを目指していた女子プロ・テニスの元天才少女が射殺された。彼女はカムバックに向けて自分の代理人になるよう、マイロンに頼んでいた。その日に二人は会う約束だったのだ。義憤を感じて調査に乗り出すと、上院議員の息子である彼女の婚約者が殺害され、犯人の少年が行方不明であることが分かる。この二つの事件には関連があると信じ、真相を探ろうとすると、あらゆるところから調査妨害が入る。背後にあるのは何なのか・・・。
 表の顔であるマイロンと裏の顔である相棒のウィンとのコンビが秀逸。前作よりもウィンが、よりダークにそしてクールに殺人も厭わない描写に迫力は増しているが、謎を解く過程においての盛り上がりは前作にはかなわないかも。しかし、この結末には人間のそして親としての思い、善と悪のあやふやさ、真実の重みを感じずにはいられない。マイロンと恋人ジェシカの今後の展開も気になるな。(00.03.23)

BOOK・66

「ホット・ロック」ドナルド・E・ウエストレイク
  原題:The Hot Rock
  訳者:平井 イサク
  出版:角川文庫 1972年6月 (1970年作品)
  定価:780円+税
  評価:5点

 こんなに面白かったのか。御存じ『悪党パーカー』シリーズのリチャド・スタークの別名義で書かれた映画化もされてる名作、スラップスティック・ミステリー。
 出所したばかりの盗み専門の天才的犯罪プランナーであるドートマンダーに、仕事が
入ってくる。アフリカのタラブウォという国の国連大使の依頼で、現在ニューヨークのコロシアムで展示されているエメラルドを盗み出して欲しいという。ドートマンダーは四人の仲間を駆り集め、あの手この手でエメラルドを手に入れようとするのだが・・・。
 個性抜群の分かりやすいキャラクターがばっちり。かっこいいドートマンダーを筆頭に、義理のいとこのケルプ、天才運転手のマーチ、ジゴロな賭博師のグリーンウッド、鉄道おたくな錠前師のチェフウィック。この5人がエメラルドを盗み出すのだが、警察に捕まったり、悪徳弁護士の横やりが入ったりと、なかなか手に出来ない。その展開を読んでてクスクス笑いが止まらない。愛すべき男たちですぞ。また国連大使のアイコー少佐が最初の登場は影のフィクサーかと思う雰囲気を醸し出してるのだが、しだいに彼等に振り回されてるように見えてきて可愛くてしかたない(笑)。この表紙も相まって彼等5人が、黒装束に身を包み、口の周りにマジックでひげを書いたドリフのドロボー・コントが頭に浮かんできた。(00.03.19)

BOOK・65

「迷路」フィリップ・マクドナルド
  原題:The Maze
  訳者:田村 義進
  出版:ハヤカワ・ポケミス 2000年2月 (1932年作品)
  定価:900円+税
  評価:2点

 ロンドン郊外の高級住宅地の主人が書斎で殺害された。捜査の結果、外部からの侵入は無し。故に犯行当夜、屋敷に滞在していた家族や友人や使用人たち十人の男女の中に犯人が・・・。しかし、検死審問では彼等の意外な動機が次々と分かり真相は薮の中に。ロンドン警視庁は、名探偵ゲスリン大佐に推理を依頼した。
 本書は推理の練習問題という副題がついており、書簡と証言記録だけで構成されていて、読者はゲスリン大佐と同じ情報を与えられて犯人を推理してみなさいというもの。試みは面白いが、それだけという印象であり、まさに練習問題ですな。犯人に至る道筋、発想の転換は良しとしても、犯行の動機がこんなもんでは何ともはや、こりゃどうでしょう。微妙な人間心理を突いてきてると言えなくもないが、あんまり微妙すぎて私には納得出来ません。本書の構成のあり方のため仕方ないが、ゲスリン大佐の人物像の描写が無かったのは残念。何者なんでしょうか。さあ、あなたも問題を解いてみて下さい。ちなみに著者はヒッチコックの映画『レベッカ』のシナリオを担当したそうです。(00.03.18)

BOOK・64

「ブラックライト 上・下」スティーヴン・ハンター
  原題:Black Light
  訳者:公手 成幸
  出版:扶桑社ミステリー 1998年5月 (1996年作品)
  定価:上・下各667円+税
  評価:5点

 『極大射程』『ダーティホワイトボーイズ』に続くシリーズの3作目。前2作の一見独立した物語が、本書で見事に融合する。三つの家族の受け継がれて行く血の流れが織り成す紋様は絶品です。
 『極大射程』での壮絶な事件の後、アリゾナの片田舎でひっそりと暮らすボブ・リー・スワガーのもとに、これまた『ダーティホワイトボーイズ』で壮絶な出来事があった善と悪を背負い込む警官バド・ピューティーの息子ラス・ピューティが訪れる。ボブの父アールの本を書きたいというのである。1955年に殺されたアールの事件を調べ直し、当時の状況を追っている二人は、何ものかによって命を狙われ始める・・・。父の死の裏に、ある真相が隠されているのだ。
 うますぎるぜ、S・ハンター。相変わらず銃を通して描写される人間の心理や本質、そして男にとっての父親という一番身じかにいる越えなければならない存在であり、一番尊敬に価するであろう存在を通して見つめる自分の存在。いろんな思いを乗り越えてラスが、離婚して別に暮らす父のもとを訪れる場面に胸がうたれる。前半のネタふりがちょっとだるかったのだが、中盤からの謎とき、ボブの対決ともう一気にラストへ。そしてまさかこんな結末がまっていようとは。ぜひとも順番にお読み下さい。(00.03.14) 


BOOK・63

「真夜中の死線」アンドリュー・クラヴァン
  原題:True Crime
  訳者:芹澤恵
  出版:創元推理文庫 1999年11月 (1995年作品)
  定価:960円+税
  評価:4点

 クリント・イーストウッド主演『トゥルー・クライム』のタイトルで映画化もされた、死刑執行まで残された時間は17時間というデッド・リミット型のサスペンス。
 真夜中12時に死刑になるフランク。この担当だった記者が事故に会ったために、急きょ死刑囚フランクへのインタヴュー記事のピンチヒッターに立った主人公エヴェレット。下調べで現場を見たエヴェレットは不審な点に気付き、ひょっとすると彼は無実なのではと思い始め、フランクの顔を見るや記者の勘で
無実を確信する。どうすれば死刑を止められるのか。しかし本当に無実なのか。残された時間はもうほとんど無い・・・。
 死刑制度の是非を問うものでは無く、12時までに死刑を止められるのかどうかの時間との戦いの面白さ。そして無実を訴え続けるが死刑が迫るフランクと妻ボニーや彼等を世話する牧師フラワー、刑務所所長ルーサーたちの心情の描写が抜群である面白さ。特に、仕事は出来るが浮気が止められないくそったれ野郎エヴェレットである。最初は上司の妻との浮気がばれ、無実を証明するという特ダネを掴めば、会社や家庭での窮地に落ちた自分の立場を回復できるのではという一点のみで動いていたが、しだいにそれよりも無実の彼を救わなければならないという目的になってそれに突き進むのである。しかしそこにうさん臭い大上段に構えた正義感が漂って来ないのもいい。
 1日でしかも1人でどうにか成るのかというポイントをそれなりに納得出来たので大きな気持ちで受け入れて読んでみましょう。(00.03.07)

BOOK・62

「黒と青」イアン・ランキン
  原題:Black and Blue
  訳者:延原泰子
  出版:ハヤカワ・ポケミス 1998年7月 (1997年作品)
  定価:1800円+税
  評価:4点

ヲリーバス警部・シリーズ第8作ヲ
 今やポケミスの看板シリーズとなったリーバス警部は前作『血の流れるままに』の事件の罰としてアパッチ砦で呼ばれる辺境の地、クレイグミラー署に飛ばされる。
 スコットランドの伝説の絞殺魔バイブル・ジョンの事件から30年後。同じ様な手口で犯罪が起こる
。そのため犯人はジョニー・バイブルと呼ばれるようになる。伝説の犯人が再び犯罪を犯し始めたのか。それとも模倣犯なのか。その時、リーバスはエジンバラの石油産業の労働者の転落死を捜査しており、また昔の事件で犯人が自殺したことにより誤認逮捕ではなかったのかとマスコミの注目を集め始める。それら全てが微妙に絡み合い、リーバスは巻き込まれていく。リーバスの地道な捜査が続く。
 前作よりもリーバスがいきいきと魅力的でかっこいい。 内部調査でリーバスの監視に付く昔の相棒ジャックと、次第にまたコンビに戻ったごとくに捜査に乗り出し、一匹狼でいるよりいい雰囲気を醸し出している。しかし長い。いくつもの事件、事柄が同時進行し、話を広げるだけ広げてこの仕舞い方には、ツッコミたくなるでしょう。また、メインの連続殺人鬼に魅力なく吸引力がないので、話を広げた分だけ散漫な印象が残る。しかしそこに挟まれるリーバスの元上司や部下に対する思い、犯罪を憎む気持ちが伝わってきて、彼を好きになった。やっぱりシリーズ物は順番に読まないとだめである。リーバス、お前も
禁酒か。(00.03.03)



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