北朝鮮観光

 私が朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)を訪れたのは、一九九一年の六月と七月の二回である。
最初の、つまり私にとって生まれてはしめての北朝鮮訪間は、朝鮮国家観光総局の日本総代理店で
ある中外旅行社が「日朝国交正常化直前限定ッアー」と銘打って主催した、日本人を対象とした観光
旅行固の一員としてであった。北京経由の航空路で北朝鮮入りし、平壊−開城−平壊−妙香山−平壌
を回る四泊五日のツアーである。
 二回日の訪間は親北朝鮮三団体(「朝鮮の自主的平和統一を支持する日本委員会」「日朝文化交流協会」「日
本教職員チュチェ思想研究会」)が主催した総勢二百九十九人からなる「日朝友好親善の船」に便乗した
観光旅行であり、新潟港から元山港へ二目をかけて船で渡った。こちらは三元出−平壊−ロ頭由−平
壌−1南浦−開城−平壌1元山を回る十泊(船中四泊)十一日の旅行だった。
 本書は、私がこの二回の北朝鮮訪間で見たこと、体験したこと、そして感じたことを一冊にまとめ
てみたものである。だが一読してわかるように、この本は普通の旅行記にはなっていない。北朝鮮の
観光名所の紹介よりも、そこで出会った人ぴととの短い会話(ごく普通の北朝鮮市民とゆっくり話を
することは、外国人には許されていない)や道端に落ちていた電話帳の切れ端(秘密社会・北朝鮮で
は電話帳の存在すらほとんど知られていない)、あるいは街で見つけた郵使局や電話ボックスのことに
ついて、多くのぺージを割いているからである。