このコーナーでは栄養学の常識を覆す話を中心に紹介します。
食塩摂取と高血圧の常識を疑う
医師も戸惑う健康情報
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食塩摂取と高血圧の常識を疑う
塩分を摂取しすぎると血圧があがる---いわば常識とされているこの定義にのっとって、塩分と脂肪を減らそうと努力している方は多いだろう。では逆に減塩すれば血圧が下がるというのは本当か。食のありよう、食文化を考えるとき、栄養学の常識に振り回されてはいけないのではないか。
木枯らしの季節が来た。寒い朝は血圧が高くならないか、気になる方もいらっしゃるだろう。今回は世間で言われる、塩分摂取は高血圧を起こすムムという常識について考えたい。厚生労働省の「健康日本21ホームページ」(http://www1.mhlw.go.jp/topics/kenko21_11/top.html)は新世紀の栄養摂取目標として、脂肪と塩分の摂取を減らそうとしている。27〜28%にもなる「20〜40歳代の1日あたりの平均脂肪エネルギー比率の減少目標値:25%以下」と、13グラムある「成人の1日あたりの平均食塩摂取量の減少 目標値:10g未満」を同時に掲げている。どちらも結構な目標のように見えるが、以前から両立するのか気になっていた。前者は食生活欧米化への抵抗であり、後者は日本食文化へのいわば「否定」だ。京大農学部の伏木亨教授(栄養化学)に久しぶりにお会いし話をしているうちに、食のありよう、食文化を考えるとき、栄養学の常識に振り回されていてはならないと思い至った。
●減塩しても血圧が下がらない人が多数派!?
2000年12月に日本医学会シンポジウム「高血圧の診断と治療」(http://www.med.or.jp/jams/symposium/kiroku/118/118con.htm)があった。「高血圧=食塩過剰」説一色だ。例えば家森幸男・京大教授は「 2.高血圧性疾患の生活環境因子ム世界調査からみた食環境の重要性ム」(http://www.med.or.jp/jams/symposium/kiroku/118/pdf/118020.pdf)で「食塩の摂取量を下げていくと、ほぼ1日6.3グラムで脳卒中発症がゼロになる。このことからWHOのいう1日6グラムがやはり食塩摂取の目標として正しいと考えられる」と断定してしまう。最近では、この数字を安易に生活の目標にしてしまう「知ったかぶりの情報源」が増えている。これでは通常の食品に含まれる分でいっぱいになりかねない。
遺伝的に高血圧を起こすネズミが京大で開発され、それを対象にした実験がベースになっている。発表後の質疑で人間について実験はないのかと尋ねられて、紹介された実験結果に笑ってしまった。実験には医学部の学生からボランティアを募ったという。黒人と日本人、ブラジルの白人である。「ブラジルの白人は代々食塩をとり慣れていますので、高食塩に対しても平気で、食塩の摂取量も日本人以上です。それで1日3グラムの減塩食から21グラムの高塩食に切り替えたところ、1週間で血圧が上がったのは黒人だけでした」
自然の食べ物に人工的に食塩を添加する習慣がなかったマサイ族にはほとんど高血圧患者がいなかったが、食塩を使うようになると血圧が上昇した。この医学部の黒人も、やはり食塩に対する抵抗性を持たなかったのだろう。米国に奴隷として移された黒人の子孫も同様な傾向にある。塩分への抵抗性はかなり長時間かけて形成されたものらしい。遺伝子の問題は現在、解明の途上にあって、どのような遺伝体質なら塩分摂取で血圧があがるのか、よく分かっていない。しかし、ヒトゲノムの全解読が終わった今、それが明かされるのも遠い先ではないだろう。
1988年の塩分摂取に関する国際共同調査「インターソルト・スタディ」が、タケヤみそのホームページ(http://www.takeya-miso.co.jp/ta-ken05.html)で紹介されている。商売柄取り上げた面もあるが、内容は曲げられていない。
世界52カ国で調べた、横軸に尿中のナトリウムと縦軸に高血圧罹患率のグラフは、両端部を除き中央に位置する大半の国でばらばらにプロットされるばかり。「1日3グラム以下くらいの極端に食塩摂取の少ない民族では高血圧がほとんどないことと、1日30グラム以上のような極端に食塩摂取の多い民族では高血圧が多いことは明らかになりました。しかし、その中間に属する大多数の民族については、食塩摂取と血圧の相関関係は認められませんでした」
亡くなられた名古屋市大の青木久三教授は、先に述べた高血圧ネズミを京大で開発した一人だ。同門の家森教授とは異なって、高血圧の大半を占める本態性高血圧は塩摂取とは無関係とする立場をとり、『減塩なしで血圧は下がる』という本も書かれていた。生前にお会いしたとき、減塩強制による負の面を問題視されていたことを思い出す。
食塩感受性の高血圧患者は確かに一部に存在し、この場合は減塩が重要であることは疑えない。しかし、無意味な減塩も一方で存在していて、極端な場合は日々の生活の中で「やる気」が失せてしまう。いわゆる無気力状態である。性生活も含めて、そうなのだという。
元弘前医大の佐々木直亮教授は著書「食塩と健康」をネット上で公開されている。立場は正統派なのだが、「17食塩説に対しての反論」(http://hippo.med.hirosaki-u.ac.jp/~sasakin/nao-h/salt17hannron3-7-13.html)などの章で青木教授らの反対説も丁寧に紹介されている。国内外でかなり多数の異説が出ていることが見て取れよう。
また、同書「18人によって違う食塩との関係」(http://hippo.med.hirosaki-u.ac.jp/~sasakin/nao-h/salt18hito3-7-31.html)では自らの調査結果としてこんなデータも示している。
「一地域内の夫婦・親子の血圧について」「親子・兄弟姉妹の血圧水準間には有意な相関があることが認められるのに、一方結婚後同じ家に長年住み、同じような生活を営み、食塩摂取量にも相関があると考えられる夫と妻の血圧の間には相関関係がほとんど認められていない」
過去の東北地方などにあった1日数十グラム摂取が解消された現在、食塩の問題よりも、体内で対抗するカリウムの摂取をどうするのかがもっとクローズアップされるべきだ。生体の細胞内を支配しているカリウムは、細胞外支配のナトリウムと拮抗している。カリウムが十分に摂取されていれば、余分なナトリウムを排出させてしまうことが昔から知られている。ただし、野菜や果物に多いが、水に溶けやすく熱に弱い。
藤田敏郎・東大教授は日本医学会シンポジウムの「生活習慣の修正」(http://www.med.or.jp/jams/symposium/kiroku/118/pdf/118058.pdf)で、カリウムは「食塩による血圧上昇に対して降圧効果が著名であり、食品加工の過程において食塩が添加されカリウムが失われてゆくことが、文明化に伴う高血圧の頻度増加の一因と推定されている」と述べている。
●食文化を考えずに栄養だけ論じていいのか
伏木さんら栄養化学の研究から、食用油脂の美味しさの秘密が分かり始めている。霜降りのステーキやマグロの大トロの脂肪、あの言いようのない「甘さ」は何なのか。砂糖の甘味のように舌の先で感じるものではない。
伏木さんの「脂肪の美味しさのメカニズム」(http://www.nutrchem.kais.kyoto-u.ac.jp/fushiki/TasteOfFat/FatTaste1.html)は、ネズミは「コーンオイルやミネラルオイルも好んで飲む」「飲んだオイルが消化管に到達しないようにした状態でも」「好んで飲むことから、脂肪が吸収されて代謝された後に嗜好性が生ずるのではなく、脂肪を摂取したという情報が口腔内で受容され、口から脳へと伝達されていると考えられる」とする。
「脂肪酸、トリグリセリド、バター、霜降り肉の脂をラットの舌に垂らしても、鼓索神経の興奮は観察されなかった」。「脂肪の刺激は鼓索神経を介するものではない」。甘味や酸味などを感じる「鼓索神経は舌の先端部分に近い領域の信号を伝える神経である。脂肪の美味しさは、むしろ舌の奥や周辺部分で強く感じられる」。この感覚は消化器細胞から続くものではないかという。そこでの特殊な感じ方についても実験が紹介されている。
このように、油脂を食べれば大きな満足感が与えられる。洋風料理の満足感に対し、昭和の初期まで大トロを捨てて食べなかったほど、油脂から遠かった日本食の満足感はどこにあるのか。それは「だし」が源である。実験するとネズミは「だし」も大変好む。油脂と水を並べると、油脂に走るが、「だし」を加えると油脂の摂取量が減る。
そして、「だし」を最も巧みに修飾してくれるものこそ塩分である。
お吸い物にしたって、人間の血中塩分濃度0.8%はないと美味しく感じにくいという。そうだろう。飲むほどに体内の塩分濃度が薄まるのでは、美味しいと感じられるはずがない。一杯150ミリリットルのみそ汁ならば0.8%で塩分1.2グラム。だが、これが飲めない塩分計算ばかり、まかり通っている。
カリウムとの調和について、東城百合子さんのエッセイ「自然が癒す」第6回「高血圧と塩分」(http://www.emile.co.jp/kanjagaku/shizen/shizen_right6.html)はある意味で真理をついている。カリウムが良いと言えばカリウムだけとろうと走るのは愚かだ。
「野菜・果物が健康や美容によいと多食したりする。これも肉食の人には必要で、欧米のたべ方ですが、穀菜食の日本の風土では、大量の果物、生野菜はカリウム過多のナトリウム不足となり、細胞が軟化して活気を失う」「冷え性となり、内臓下垂型で、疲れやすく、根気のない体質となってしまう」
「健康でよく働く長寿者は、みそ汁は具をたくさん入れ、麦飯に漬物という方も多い。あるみそ汁の実験で、一つは具のないみそ汁。一方は具をたくさん入れたみそ汁を作り、塩分は両方とも同じにした。そして尿中に出てくるナトリウムの量を調べたら」カリウムが多いイモとかワカメなど「具だくさんのみそ汁の人はナトリウム排泄量が非常に多かったという」
塩分があるというだけで、栄養の宝庫のようなみそ汁を追放してよいはずがない。「塩分を減らしなさい」という単線思考から転換する時が来ている。それは内外ともにだ。
Mmedical Tribuneの「第12回 米国高血圧学会特集 Report」(http://www.medical-tribune.co.jp/mtbackno/3033/33hp/M3033371.htm)には日米の研究者からいろんな観点が出されている。
「欧米では,体重減少・高脂肪食の抑制などが叫ばれ,植物性蛋白に富む豆腐などの大豆食品やコンニャクなどの繊維に富む食品,さらに魚を中心とする良質な脂肪の摂取など,日本食の優れた点が科学レベルで再評価され,実生活に応用され始めているにもかかわらず,日本では逆に高動物性脂肪食に傾きつつある。それが冠動脈疾患や糖尿病につながる」
脂肪からのエネルギー摂取比率が40%にもなる欧米ではこうなのだ。
「既に高血圧を来して治療されている患者群のほうが正常血圧群よりもカリウムの多量摂取の降圧効果が顕著であり」「尿中Na排泄量が多い群はそれが少ない群よりもその降圧効果が著明であることが見出されている」「果実・野菜に富むダイエットも有効だが,さらに低脂肪食などを加味した総合的な食事療法がより効果的であることが示されている」
最初に取り上げた「健康日本21」のスローガンは、洋風の高動物性脂肪食も、塩分が多い日本食もどちらも退けるものである。いいとこ取りしているようでいて、現実の人間のことを考えていないと思える。私には本来の日本食に傾斜する方が正解だと感じられてならない。世界人口と食糧資源のバランスが崩れる時代が来る。国内が高脂肪食に向かった象徴的なターニングポイントは、30年前のハンバーガーチェーン上陸だった。
最近の健康志向に、今回の狂牛病騒ぎと牛肉離れも手伝って、我々日本人の食がこれまで進んできた方向を転換する可能性があり、むしろ、それを期待したい。適度な塩分で気分をしゃきっとし、生活の質・食の満足感を確保しつつ、肉食中心に比べ環境や資源への負荷が少な目な日本食で賢く生きていく方法を、自らの食生活で見いだしていただきたい。
もし、ナトリウムに対してカリウムが多い食品を知りたければ、連載第101回「食の成分データベースを使う」(http://dandoweb.com/backno/20010412.htm)で紹介した、インターネット上の「食品成分データベース」(http://food.tokyo.jst.go.jp/)で簡単に一覧表が手に入る。
例えば重量100グラム当たり熱量200カロリー以下とした場合に、ナトリウムが500ミリグラム以下で、カリウムが500ミリグラム以上の食品を検索する。カリウムが多い順に挙げると、コンニャク精粉2900、焼きノリ2400、乾し椎茸2100各ミリグラムといったものがあり、グレープフルーツなどジュース類も大量に含む。一般的な野菜では里芋、ブロッコリー、ニンジン、枝豆など500〜600ミリグラムあたりにある。
カリウムはナトリウムの3分の1以上の摂取が望ましいとされている。データベース検索結果から、魚ではサケの焼き物もカリウムを510ミリグラム含んでいる。1.5%程度の薄塩ならば塩ざけ単体でもカリウムはオーケーだし、野菜から追加できれば、もう少し塩分が濃くてもよいことが知れる。市販の塩辛いサケなら2%の食塩水に2時間くらい浸けて食べれば十分に味も楽しめ、健康にも良い。
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医師も戸惑う健康情報 / 小内 亨(おない内科クリニック副院長)
◆ミミズ酵素を使った健康食品って何(その1) (2002.1.31)
「ミミズ酵素???」。電子メールによる問い合わせが私のところにあったとき、私には何のことかわからなかった。インターネットで調べてみると、確かにミミズを原料にした健康食品があることを知った。
インターネットで見つけたこの健康食品の広告によれば、その有効成分はルンブロキナーゼと呼ばれる物質であるという。ルンブロキナーゼを手がかりに文献を調べてみると、これは元宮崎医大生理学教授がミミズから発見した線溶作用を持つ物質であることが分かった(1)。
彼が大学の動物実験施設の担当となったとき、動物のし尿処理に困り、ミミズによる分解を思いついた。動物のし尿を焼却処分するためには重油が必要であり、それにはコストがかかるからだ。ミミズにし尿を分解してもらえば重油代は浮くし、その産物は肥料として再利用可能である。ところが、今度は増殖したミミズの処理に困ってしまった。
ミミズは地竜とも言われ、漢方薬でも使われる。きっと何か有効成分が見つかるだろうと研究を重ねた結果、彼はミミズ(Lumbricus rubellus)から線溶作用のある物質を発見し、ルンブロキナーゼ(lumbrokinase)と命名したのだった(2)。しかし、これはミミズから抽出した6種の線溶酵素精製分画の総称であって、アミノ酸組成程度しか分かっていない。そのため、健康食品として流通しているものはルンブロキナーゼそのものではなく、ミミズの乾燥粉末をカプセルに詰めたものである。
衆議院議員となったことでも知られる帝京大学教授栗本慎一郎氏は、ミミズ酵素に関する本を書いている(3)。彼はかつて脳梗塞を発症したことがあり、以来この健康食品を利用しているらしい。彼はその著作の中で、ルンブロキナーゼは脳梗塞や糖尿病にも効果があると主張している。ルンブロキナーゼは血栓を溶かすことにより微小循環を改善し、脳梗塞ばかりではなく糖尿病を始めとした種々の内臓の機能回復に効果があるのだという。他の健康食品の本と同様、いろいろな病気に効果があるように書かれているが、よく読むとそれらは仮説の域を出ていない。確かに線溶作用があれば、脳梗塞の予防・治療薬となりうるかも知れなが、糖尿病にも効くといっては言いすぎなのではないか。
そこで、ルンブロキナーゼに関する臨床論文がないものか探してみた。Medlineにて、ただひとつ中国で行われた脳梗塞に対する一重盲検ランダム化比較試験を見つけた(4)。残念ながら原文を手に入れることができなかったが、著者は効果があったと判定している。しかし、その他の論文は基礎研究論文のみであった。ルンブロキナーゼを、糖尿病にはもちろん脳梗塞の治療に利用するためには、まだまだ効果や安全性について更なる検証が必要だ。
ところが、インターネット上の広告の中に、この健康食品が血栓治療剤、糖尿病治療剤として特許を取得しているとの記載を見つけた。どのようなデータをもとに特許を取得したのか、本当に治療剤として臨床的に効果があるのか、私は興味を覚えたので特許広報を調べてみることにした。次回のコラムではその内容を紹介しよう。
■参考文献■
1) Jpn.J.Physiol. 41:461, 1991
2) 日本生理誌 53巻231頁、1991年
3) 栗本慎一郎著 脳梗塞糖尿病を救うミミズの酵素 <http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/3b2583c9d6a3b010347b?aid=01bookr0010&bibid=02021917&volno=0000> たちばな出版、2001年
4) Clin.Hemorheol.Microcirc. 23:213, 2000
ミミズ酵素第2弾
医師も戸惑う健康情報 / 小内 亨(おない内科クリニック副院長)
◆ミミズ酵素(その2)
用途特許を取得した健康食品、必ずしも臨床効果を保証せず (2002.3.1)
ミミズを原料にした健康食品の公開特許広報を調べてみた。確かにそこにはマウスを用いた基礎研究とともに人を対象とした臨床研究結果が掲載されていた。
血栓症治療剤として特許を取得した際のデータでは、ミミズ乾燥粉末を10人に投与している(1)。一人は健康な人、その他の9人は高血圧、高脂血症、深部静脈血栓症など様々な病気を持っている。これらの人たちにミミズ乾燥粉末を25日間服用してもらい(450mg/日)、その間の血液中フィブリン分解産物(FDP)の変化を見ている。FDP値はそれぞれの症例で上がったり下がったりしており、一定の傾向が見られない(と私は思った)。
しかし、文章中では症例ごとにいろいろ解説を加え、効果があったと結論付けている。プラセボなどの対照群も設定しておらず、統計学的に解析した形跡もない。これらのデータだけで血栓治療剤として効果があるといえるのだろうか。
一方、糖尿病治療剤にて特許申請をしたデータには、アロキサンという薬剤で糖尿病を発症させたマウスの実験結果がある。アロキサンを投与すると膵臓のベータ細胞が障害され、その動物は糖尿病となるのだ。確かにこの実験結果を見るとアロキサン糖尿病マウスにミミズ乾燥粉末を投与すると(300mg/kg、人間に換算すると18g/60 kg)、対照群に比べて血糖が低下した。しかし、この効果はルンブロキナーゼの線溶作用と関係なさそうに思えるが・・・。
さらに5人の糖尿病患者に6カ月間この健康食品を服用させ(450mg/日)、各食前食後の血糖値を見ている。確かに血糖値は低下しているようにも見えるが、同時に行った食事療法の効果も否定できない。しかも、人数が5人と少なすぎること、対照を設定していないこと、グリコヘモグロビンを測定していないことなど、臨床研究としてはデータが不十分である。
健康食品であっても病気に効果があるという特許は取得可能である。これを用途特許という。健康食品の場合、その成分や抽出方法で特許をとってもすぐ他社から類似品が出てしまう。このため企業は、権利をより強固にするため、用途特許をとる場合があるのだそうだ。
ただし、特許取得の際に重要視されることは新規発見であるかどうかだ。そこがわれわれの考えている臨床試験と異なるところである。したがって、上記のように臨床的にはきわめて不十分なデータであっても、特許取得という点においては問題ないのであろう。すなわち、たとえ用途特許を取得した健康食品であっても、必ずしもそのことが臨床効果を保証することにはならないのである。
■参考文献■
(1) 公開特許広報 平3−72427、公開 平成3年3月27日
(2) 公開特許広報 昭64−47718、公開 昭和64年2月22日
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