臨床栄養に関する最近トピックス・・・・
このページでは臨床栄養に関する最近のトピックスを紹介していきます。
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◆ 2002.1.16 尿路結石の再発予防、動物性蛋白と食塩の制限食が有用
高カルシウム尿症の人は尿路結石を繰り返し発症しやすいことが知られているが、イタリアで行われた臨床試験で、食事中の動物性蛋白と食塩を制限すると、カルシウムを制限する食事療法を受けた人よりも、結石の再発率が5年間で半減することがわかった。
ただし、食塩の1日摂取量は2.9gと厳しく制限されており、日本人の平均的な食塩摂取量が12.3g(厚生労働省「平成12年国民栄養調査」)であることを考慮すると、日本人にとってはかなり困難な食事療法といえそうだ。研究結果は、New England Journal of Medicine(NEJM)誌1月10日号に発表された。
この研究を行ったのは、パルメザンチーズなど乳製品の特産地として名高いイタリアParma大学臨床科学部門のLoris Borghi氏ら。Borghi氏らは、尿路結石の再発で附属病院の外来を受診した男性患者のうち、特発性高カルシウム尿症(尿中カルシウム量が1日300mg以上)があり、食事療法を2〜3カ月継続できた人に、食事療法の効果を調べる臨床試験への協力を依頼。試験の意義を理解し、今後5年間食事療法を続ける意思が確認できた120人を無作為に2群に分け、2種類の食事療法の効果を比較した。
食事療法の一つは、食事中のカルシウムを制限するもの。カルシウム摂取量を減らすと、尿中のカルシウム量が減ることが確認されているが、結石の成分であるシュウ酸がかえって増えるとの報告もあり、評価が分かれる食事療法だ。研究グループは、牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品を控えて、カルシウムの1日摂取量を10mmol(400mg)未満とするよう指導した。
もう一つの食事療法は、カルシウムは通常通り(1日30mmol:1200mg)で、動物性蛋白と食塩の摂取を控えるもの。動物性蛋白や食塩については、摂取を控えると結石の再発率が減るとの報告があるが、長期的な効果はわかっていない。研究グループは、総カロリー(2540kcal)の15%を蛋白、33%を脂質、52%を炭水化物から摂取するモデルメニューを作成。総蛋白93gのうち動物性蛋白を52g未満、食塩摂取量を塩化ナトリウム換算で50mmol(2.9g)未満に制限した。
なお、両群共に、ほうれん草やチョコレートなどシュウ酸を多く含む食品を避け、水分を夏季は1日3リットル、冬季は1日2リットル飲むよう指導を受けた。この厳しい食事療法を5年間やり遂げたのは、カルシウム制限群が60人中51人、動物性蛋白・食塩制限群が60人中52人だった。
その結果、5年間で結石が再発したのは、カルシウム制限群が23人、動物性蛋白・食塩制限群が12人。カルシウムを制限するよりも、カルシウム摂取量はそのままで動物性蛋白と食塩を控える方が、結石の再発率がほぼ半減することが明らかになった。食事療法を受けている間、尿中のカルシウム量は両群共に1日量が約170mg減少した。しかし、尿中へのシュウ酸の分泌量は、カルシウム制限群で1日量が5.4mg増加したのに対し、動物性蛋白・食塩制限群では逆に1日量が7.2mg減少していた。
研究グループは、「動物性蛋白と食塩を制限すると、尿中のカルシウムとシュウ酸がどちらも減少したことが、結石の主成分であるシュウ酸カルシウムの生成を防いだ」と推察。カルシウムの摂取を制限する食事療法よりも、カルシウムの摂取量は変えずに動物性蛋白と食塩を控える食事療法の方が、尿路結石の再発予防には有用だと結論付けている。
この論文のタイトルは、「Comparison of Two Diets for the Prevention of Recurrent Stones in Idiopathic Hypercalciuria」。アブストラクトは、こちら <http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/346/2/77> まで
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医師も戸惑う健康情報 / 小内 亨(おない内科クリニック副院長)
◆抗酸化作用をうたう健康食品と高脂血症治療薬の併用に注意を (2002.1.16)
臨床医学の場合、人間の頭の中だけで考える理論には限界があり、実際に臨床試験による裏付けが必要である。このことを示す一例としてCAST(Cardiac Arrhythmia Suppression Trial)と呼ばれる臨床試験が挙げられる(1)。
心筋梗塞後の心室性不整脈が増加すると突然死のリスクが増す。したがって、抗不整脈薬により心筋梗塞後の不整脈を抑制できれば突然死を予防することができるに違いない。この理論に基づいて行われたのがCASTである。ところが、心筋梗塞後、抗不整脈薬(Naチャンネル遮断薬)を投与された群では心室性不整脈が抑制されたものの死亡率はかえって上昇してしまった。
臨床医学の世界ではこのように当初の理論が覆されてしまうことがたびたび起こるが、今回発表された研究もその一つと言えるだろう。
動脈硬化の始まりはLDL(低比重リポ蛋白)の酸化にあるという説が有力である。したがって、このステップを防ぐことができれば動脈硬化を予防できるはずだ。最近、抗酸化物質による動脈硬化の予防がしばしば話題にのぼっているが、これは「抗酸化物質はLDLの酸化を抑えることにより動脈硬化を抑制する」という仮説に基づいたものだ。
今回発表された研究では、冠動脈疾患を有し、LDL正常、HDL低値の160人をランダムに4群に分け、冠動脈狭窄の程度、心血管イベントを3年間観察している(2)。
4群とは、
A:シンバスタチン(スタチン系の高コレステロール血症治療薬)+ナイアシン群
B:抗酸化物質(ビタミンE、ビタミンC、βカロチン、セレニウム)群
C:シンバスタチン+ナイアシン+抗酸化物質群
D:プラセボ群
である。
LDL酸化説に従えば、C群がもっとも冠動脈疾患の進行が遅いと予測される。ところが、実際にはC群はA群より悪いという結果となってしまった。すなわちシンバスタチン+ナイアシンの抗動脈硬化作用は逆に抗酸化物質により妨げられてしまったということになる。研究者らは抗酸化物質がHDL2を低下させてしまったためではないかと推測している。
この研究では、冠動脈疾患を有し、LDL正常、HDL低値という限られた人たちにスタンとナイアシンと投与しているので、一般の人たちには当てはまらないのではないという意見もある。しかし、今までに行われてきた抗酸化ビタミン(ビタミンE、ビタミンC、βカロチン)による冠動脈疾患への介入試験の結果は、抗酸化ビタミンの抗動脈硬化作用を必ずしも支持していない。Clinical Evidenceによれば、冠動脈疾患に対する抗酸化物質の一次予防に関して充分なエビデンスはなく、βカロチンなどはむしろ害となるかもしれないという。また、二次予防に関しても、これら抗酸化ビタミンの役割は不明であるとしている(3)。
健康食品の問題点としてたびたび指摘されていることは、「基礎研究に基づいた理論が先行し、臨床的な効果の実証が遅れがちである」ということだ。健康食品の中でも特に抗酸化物質は種々の病気を予防するとしてもてはやされているが、これも例外ではない。今回の研究は高脂血症治療薬と抗酸化作用をうたう健康食品との併用に注意を喚起するものといえる。
■参考文献■
1) N.Engl.J.Med. 321:406,1989
2) N.Engl.J.Med. 345:1583,2001
3) Clinical Evidence, Issue 6, BMJ Publishing group, 2001
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厚労省がボケ予防の「通説」検証で1万人調査
「編み物や陶芸など細かな手仕事はボケ予防にいい」「サバやイワシなど青魚を食べるとボケない」――世間で流布している、そんなボケ予防をめぐる“通説”が本当に正しいかどうか、厚生労働省の研究班(主任研究者=朝田隆・筑波大臨床医学系教授)が検証に乗り出した。全国の高齢者1万人を対象に調査相手を抽出し、通説どおりの生活をしてもらうなどして、その効果を調べる初の試みだ。
調査は、筑波大をはじめ福岡大、愛媛大、東京都老人総合研究所、国立精神・神経センターなど国内8つの大学・研究機関が担当。茨城県利根町、東京都世田谷区、京都府網野町、愛媛県中山町に在住の65歳以上の高齢者を対象に、研究班独自の知能レベルを見る統一の評価法や簡単なアンケートを実施。これらの人たちから、「MCI(軽度の知能低下)」と診断された人に焦点を当て、本人や家族に協力を求める。
MCIの高齢者は、米国の研究では約1割が1年以内に痴ほうに進行するとされる。これらの人たちに、「栄養」「睡眠」「運動」「余暇活動」の4点にポイントを絞り、ボケに効果があるとされてきた食事や睡眠、個人に合った有酸素運動やサークル活動などを指導しながら、痴ほうの進行率を数年間、追跡する。
ボケ予防をめぐっては様々な生活習慣が提案されているが、実際の効果については大半が科学的に証明されていない。現象だけをとらえ、科学的な検証がなされないまま独り歩きしているものも多いという。
その一方で、30分間の短い昼寝をとる人は痴ほう症にかかりにくいとの研究結果や、痴ほう症患者は魚や緑黄色野菜の摂取量が少ないとの調査結果が発表されている。また、趣味を持ち続ける人はボケにくいなど、臨床レベルで痴ほうと生活習慣とを関連づける様々な研究が報告されている。
研究班は、調査は各自治体と協力して行い、高齢化に伴って予想される痴ほう症患者の増加を阻止するための「生活法」を確立させたい考えだ。ボケ予防に効果があると見られたものは、積極的に地元の保健活動に生かしていくという。(読売新聞)[1月23日15時29分更新]
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◆ 2002.6.11 食品アレルギー、「キス」も引き金に
特定の食物に対するアレルギーがある人では、その食物を食べた人からキスされただけで、蕁麻疹や呼吸困難などのアレルギー症状が出ることがある。米国で行われた調査では、食品アレルギーの人の約5%が、こうした「キスによるアレルギー発作」
を経験していたという。調査結果は、New England Journal of Medicine(NEJM)誌6月6日号に掲載された。
この調査を行ったのは、米国California大学Davis校のRosemary Hallett氏ら。ナッツなどに対する食品アレルギーがある379人に病歴を書いてもらったところ、特に質問項目に含まれていたわけではないのに、20人(5.3%)が「アレルギーの出る食べ物を食べた人からキスされて、アレルギー発作が起きた」との経験を記入してきた。
アレルギー源となった食品は、ピーナッツやアーモンドなどのナッツ類が大半。症状の多くは、キスされて1分以内に、唇やほほ、首などキスされた場所が赤く腫れ、痒くなるというものだ。しかし、4人は呼吸困難など命に関わるアレルギー発作を経験していた。相手が食品を食べてからキスをするまでの時間は数分から数時間と様々だが、うち4人では、相手が歯を磨いた後にキスをしたにも関わらず、アレルギー反応が出たという。
Hallett氏らは「食品アレルギー患者のほとんどは、その食品を食べた人とキスするだけでアレルギー反応が起こり得るとは夢にも思わない」と指摘。調査対象者の3分の1はデート中に発作を経験しているため、「異性とつきあい始める年頃の患者には、メキスされただけでも発作が起こり得るモことを友人に話すよう促す必要がある」と強調している。
この論文のタイトルは、「Food Allergies and Kissing」。NEJM誌の通信(Correspondence)欄に掲載されている。
<2型糖尿病>病気の進行予期する遺伝子発見 和歌山県立医大
日本人に多い2型糖尿病患者が将来インスリン治療が必要になるかどうかなど、病気の進行を見極めるのに役立つ遺伝子を、和歌山県立医大臨床検査医学講座の三家登喜夫教授と第1内科の研究グループが発見し、サンフランシスコで開かれている米国糖尿病学会で発表した。効果的な治療方針づくりに有効な成果として注目されそうだ。
2型は生活習慣や体質など複合的な要因で起きる糖尿病。発症後間もなくは血糖値を下げるためのインスリン注射の必要がない。
しかし、グループの調査では10年後には約20%、20年後は約50%、30年後は約70%と時間の経過とともにインスリンが必要な患者の割合が増える。
研究グループは、インスリンの分泌や効き方に関与する「シンタキシン1A」と「PI3K」という二つの遺伝子に注目。糖尿病患者220人を対象に調査したところ、二つの遺伝子の一部分にそれぞれ特定の塩基があるという特徴を持った患者は41%が発症から10年後にインスリン治療を受けていた。一方で、両遺伝子とも別の塩基を持つ患者は約6分の1の7・1%にとどまった。(サンフランシスコ共同)(毎日新聞)
<肥満治療>脂肪吸収を促進するホルモン特定 京大研究グループ
消化管ホルモンの一種「GIP」が、脂肪細胞による脂肪吸収を促進して肥満の原因になっていることを、京大大学院医学研究科の清野裕教授と山田祐一郎助教授らのグループが動物実験で突き止め、17日発行の米医学誌「ネイチャー・メディシン」に発表した。脂肪細胞の増殖を抑える薬は開発されているが、このGIPの働きを抑えることで新たな肥満治療薬の開発につながりそうだ。
グループは、消化管内のホルモンのうち、十二指腸や小腸の入り口近くで分泌されるGIPに着目。脂肪細胞にあるGIPの受容体を機能させないようにしたマウスを作り、高脂肪食や通常食をそれぞれ1年間与え、普通のマウスと比較した。
普通のマウスは、高脂肪食だと通常食の場合より平均約35%も体重が重くなってしまった。しかし、GIPの受容体が機能していないマウスは、高脂肪食を食べても、通常食のマウスと同じ体重のままで、「太らない」という結果が出た。
さらに、寝ている時の呼気を分析したところ、受容体が機能しないマウスはエネルギー源として脂肪を燃やしているのに対し、普通のマウスは炭水化物を燃やしており、脂肪が体内に蓄積される形になっていた。就寝直前の食事が肥満を招くことも分かった。
山田助教授は「欧米人に多くみられる過度の肥満の治療に応用出来る」という。しかし「標準体重よりやせようとするダイエットには効果がないだろう」と話している。