書き下し文
故に兵は詐を以て立ち、利を以て動き、分合を以て変を為す者なり。故に其の疾きこと風の如く、其の徐なること林の如く、侵掠すること火の如く、動かざること山の如く、知り難きこと陰の如く、動くこと雷の震うが如くして、嚮うところを指すに衆を分かち、地を廓むるに利を分かち、権を懸けて而て動く。迂直の道を先知する者は、此れ軍争の法なり。
訳
軍事行動はだますことによって成り立ち、利益の為に行動し、分けたり集めたりすることによって変化を作り出すものである。
よって、時には風のように速く、時には林のように静かで、時には火のように侵掠し、時には山のようにどっしりと構え、時には雷鳴の如くすぐに動き、偽りの進路を敵に示すのには軍を分け、陣を広げるには利となるものを分散し、形勢を動かしてから動く。回り道を近道とする術を知っておくことは、軍を以て争う時の必須条件である。
書き下し文
兵は彼を知り、己を知らば、百戦殆うからず。彼を知らずして、己を知らば、一勝一敗す。彼を知らず、己を知らざれば、戦う毎に必ず敗れる。
訳
相手の状況を知り、自分の状況も把握していれば、戦争において負けることはない。自分の状況しかわかっていなければ、相手によって勝敗が決まる。どちらの状況も分かっていないようなら、戦うたびにまける。
注
最初の文で、双方の状況を分かっていれば負けることはない、とあるがこれはそのまま受け止めてはいけない。「孫子」において戦争とは戦う前に勝敗が決まっているものとされており、双方の状況が分かっていれば、勝てる時だけ戦えば良く、また負けそうな時も、どこを補充すればよいか分かるので、負けることはない、としているのである。