第十四話
めっきり秋になりました。ニッポンは春ですね。ニッポンには桜の花というのがあるそうですが、こちらのチェリーブロッサムとはちっと趣がちがうとデグチ夫婦はいいます。あの繊細な色、はかなさがこちらのチェリーフラワーにはないということです。
この四月、デグチ氏とワイフは二人そろって里帰りです。ワイフは桜をもう八年も見ていないといいます。四月のはじめにワイフはバースデー・ガールなので、桜の花はええプレゼントです。
今日は昼間散歩に連れていってもらいました。近くにウォーナンブル墓地があるのですが、お葬式に出くわしました。日本ではお葬式に黒い服を着るそうですが、こちらの参列者は平服です。いろんな色を着ています。
教会でのお葬式が済むと、遺族と参列者は車で墓地へ移動します。長方形に穴が掘られているところに、司祭が立ち、参列者がそのまわりを取り囲みます。こちらの棺桶は長方形ですが、正確にいうと左右がすこし三角になっていて取っ手がついています。男の人が数人で棺を運んできます。今日みた棺にはオーストラリアの国旗がかかっていました。どうやら、軍人さんやったみたいです。
基本的にオーストラリア人は土葬です。ウォーナンブルはカトリックが多いので、まず土葬にするのが普通です。新しく掘られた穴に紐で棺をおろすか、このごろはそういう装置があって、最後のお別れが済むと自動的に棺がスルスルと穴に降りていくというのもあります。オーストラリアは土地が余っているので、土葬ばかりでも土地に困るということはなさそうです。
火葬の場合は、全部灰にしてしまうそうです。日本のように『骨を拾う』というのはないみたいです。灰は日本にあるような陶器の骨壷や、お茶の葉っぱをいれるような筒状の容器にいれたりします。保管の場所は自宅だそうです。
デグチ氏がホームステイしてたお宅では、亡くなったご主人のアニバーサリー(命日)になると、奥さんが灰のはいった壺を出してきたそうです。デグチ氏は密かにこわがっていました。
「アロハ、ワイフもあそこにいつか埋まるんやで」とワイフは言いますが、日本人のくせにワイフは土葬にしてもらうつもりみたいです。私ももちろん土葬にしてもらいます。ペット用の墓石もあるので、うちのジャングルのような庭先に埋めてもらって墓石を立ててもらうつもりです。
三十になろうとしているワイフですが、日本に住んでいたらめったに考えない『死』をよく考えるそうです。結婚した年(25歳)にオフィシャルのウィル(遺言)を書き、サインをしたそうです。
「外国おったら他人に棺桶入れてもろて、葬式出してもらわなあかんから、いくら若くても準備しとかなあかんねん。明日車で事故するかもしれんし、飛行機が落ちるかもしれん、ガンや言われるかもしれへん。うちは子供もおらんし」
人生は、はかないそうです。だから桜の花のように派手に咲いて散らなあかんそうです。

