第二話

 ワイフとなると話は別です。彼女の仕事が終わる昼から夕方まで一緒に過ごすので、
彼女は私のイタズラにそれだけたくさん付き合うことになります。
いままでいろいろさせていただきましたが、そのたびに「NO!ALOHA!」とさんざん
叱られています。


 
しかし、彼女を本気で怒らせると英語ではなくて日本語になるので、このときばかりは反省のポーズをとることにしています。ちなみに私が初めて覚えた日本語は「こらっ!」です。「おすわり」は「Sit」と英語で命令されても大丈夫です。出口氏は自分の研究課題である「子供の第ニ言語習得課程」のサンプルとして、私にもその役目を期待していたようですが、私が愛想を振りまくことが使命の、愛玩小型犬にすぎないということに、ようやく気がつきはじめたようです。

先週から学校にも通い始めました。パピースクールといって、子犬ばかりのクラスで犬としての一般常識とオーナーに愛される身のこなしを教わるわけですが、クラスメイトは17匹、みんなこどものくせにおとなしくおすわりしています。その中に私と同じような顔かたちの子がいたので、出口氏がオーナーに尋ねたところ、私と同じブリーダーからもらわれてきた子で、要するに私の従兄弟もしくは姉妹だそうです。

 
それから、ブラワ―高校のジャパニーズ・ティーチャ―であるアンドレアさん所の子もいました。黒い毛皮がつやつやで、鼻のとがった子でした。アンドレアさんは去年一年間青森に住んでいたので、津軽弁がぺらぺらです。アンドレアさんの二人のお子さんは小学生でさらに気合のはいった青森弁で話します。もしかしたら、あの子もバイリンガル・ドッグを目指しているのかしらん。

 私はクラス一の暴れ女だそうで、小型犬であるにもかかわらずみんなに恐れられているボクサーのギネスちゃんとお友達になりました。私よりずっとりっぱな体格です。
学校は楽しくて、うれしくて、出口氏に「アロハ!」と呼ばれようが、おしっこ漏らそうがお構いなしです。他のオーナーたちもあきれたそうです。家に帰ってから「あんたの本性見せてもらった。あんたを選んだのはブリーダーのおばちゃんが、あんたは性格が一番ええっていうかたからやのに!」と出口氏に言われました。ワイフは「アロハはかわいいのが特技やねんからしゃあない」とあきらめ顔です。

 でも、学校でもっと勉強してあの二人をあっと驚かせるつもりなのです。このコーナーでは、オーストラリア国籍で日本人家庭に飼われている、自称「バイリンガル犬」のひとり言を、これからも載せていきたいと思います。

ちなみに、私が理解している二カ国語命令形は
   NO  = 「こら」 「あかん」
STAY = 「まだやで」
SIT  = 「おすわり」

以上です。それではまた。

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