ウォーナンブルの教室から 5

3月XX日

今日はコロイトのSt.Patrick's小学校に行きました。ここの学校では図書室で日本語を教えます。五年生と六年生の2グループです。日本の小学生と比較すると、オーストラリアの子供の特徴は積極的に手を上げるということです。(答えが間違っていても全然平気です)ある意味では、教えたことの反応がすぐ返ってきてやりやすいです。別の意味では、元気すぎる子供たちをどうやってコントロールするかが重要になってきます。

六年生のサムくんはとても活発です。ただ手を上げるだけではなくて、ちゃんと答えもあっているし、ゲームをしてもなかなか強いです。でもそれにやんちゃ坊主の要素が入るので出口先生としては、要注意です。彼に授業中のリーダーシップをとられかねないからです。ここで先生のクラスコントロールが試されるのです。まず、ゲームをする前には「コールアウト(叫ぶこと)をした人は選びません」とはっきり言っておきます。

これで子供たちは静かに手を上げて先生に選ばれるのを待ちます。サムくんは「僕を選んで !」 と叫んだので、いったん目を合わせておきながら、すっとそらせて他の子供を選びました。ゲームでは先生が審判をつとめます。ここでも子供たちが勝手にジャッジしないように注意します。

ようやくサムくんの番がまわってきました。ゲームで自分が不利になりかけると審判に文句をつけます。「審判は誰かな?」と私。「出口先生」とサムくん。納得してゲームを続けました。
でも、しばらくして、またもやサムくん「自分の方が早く正解を言った」と主張。審判にたいする執拗な文句ということで「警告」として黒板に名前を書きました。

ゲームは新しいプレイヤーを入れて次々と進みました。そして決勝戦になり、サムくんのチームが勝ちました。ご褒美はお菓子です。(信じられないでしょうが、こちらの学校ではお菓子をご褒美に使うことがあります)用意していた袋から、「ひとつずつ」とるように言いました。相棒のブレットくんはちゃんと1個だけとりました。サムくんの手の握り方がおかしいのと、まわりの友達がクスクス笑っていたので「サム、何個とったの」と聞くと、「2個」と正直に答えました。いくら優勝したとはいえ、これは完全にルール違反です。

オーストラリアのフットボールにたとえて、反則した時にどうなるか聞きました。「裁判にかけられる」「それから?」「出場停止になる」「日本語のクラスでも同じだよ。ルールを守らなかったら楽しいゲームはさせられないな。サムは警告を受けておきながらルール違反したんだから、次回から二回どんなゲームにも参加させません。」ゆっくりと低い大きな声で言ったので、教室が一瞬しんとなりました。

授業が終わってからサムくんを居残らせました。「叱る時は個別に、誉める時はみんなの前で」というのが基本です。サムくんとじっくり話しました。「日本語は楽しいか」「はい」「それじゃあ、ちゃんとルールを守ろうよ。そしたらもっと楽しくなるよ。先生も叱るのはイヤだし、サムも叱られるのはイヤだろう?」「はい」「次回はみんながゲームしている時には別のことをしてもらう。ルール違反したんだからな」「はい」

サムくんは潔く納得しました。子供をしかるというのは難しいです。英語では「叱る(Scold)」という単語ではなく、「躾る(Discipline)」という言葉を使います。感情的ではなく、きちんとした理由の元に客観的に納得できるように、子供たちに話さなければなりません。

私が今まで小学校で見てきて言えることは、担任の先生にきちんとした学習態度(話しをきちんと聞く、仲間をたたえる・助ける など)を教えられた子供たちは中高校へ行っても、頑張ってついていっているようです。