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テクノストレス(卒論)
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97.6%―これは2002年の日本で事務部門においてコンピュータを導入している事業所の割合である。生産台数も出荷台数も右肩上がり。現在の職場において、もはやコンピュータがなくては仕事にならない。繰り返し作業、管理作業、ほんの10数年前までは人間によって手作業でなされていた仕事が現在コンピュータによって処理されている。大量のデータを素早く、正確に処理してくれる、コンピュータはこんな機械なのである。このような利点が注目され、多くの企業で企業も最新の機能のついたコンピュータを導入する事に力を注いできた。しかし近年、便利さとは裏腹に、コンピュータを使う事による、心身への影響が注目されるようになってきた。
はじめにコンピュータによる心身への影響を提唱したのはアメリカのクレイグだが、それ以降わが国でも研究がなされ、コンピュータの使用が多い人はそうでない人に比べて心身症状に問題があることも明らかになった。コンピュータの急速な普及に伴ってさらに心身に障害を持つ労働者が急増する事が予測される。それを未然に予防するために、VDT作業従事者の今ある障害を正しく認識し、対策を考え、実行する事が大切である。今回3Eを受診した人をVDT群と非VDT群に分類し、日常生活についてカイ2乗検定、心身の項目についてT検定を行った。さらに年齢が深く関係していると仮定し、30代、40代、50代ごとにわけて年代ごとのT検定を行った。
結果は日常生活の項目ではほとんどの項目に有意差が見られた。VDT群は日常で仕事をする中でも残業があったり、変化が多かったりなど、仕事そのものからのストレスが大きくまた、人間関係がよくなかったり、環境がよくなかったりなど、職場を取り巻く環境からのストレスも非VDT群に比べて大きい事が分かった。
心身項目のT検定で有意な差が見られたのは、「疲労」「食欲」「消化器」「抑うつ不安」「意欲関心」「対人不安」「自我感情」「攻撃性」「自殺」「肩こり」「頭痛」の項目である。今、職場では過労死、リストラ自殺、うつ病、心身症などが問題とされているが、特にVDT群ではこのような問題に注意を払う必要があるだろう。「疲労」についてであるが、コンピュータという人工的な画面を長時間見つづけることによる目の疲労、同じ姿勢で作業をする事による筋肉の疲労、キーボードを繰り返し打つ事による手の疲労は多くの人に見られる症状である。それ単独では誰にでも起こりうる症状だが、慢性化すると心身に影響を及ぼす可能性があるので、予防策を考える必要がある。まずは光の加減を考えたり、自分にあったいすを使ったりする事ができる。精神的なもので『抑うつ不安』に関してはいつリストラされるかわからない雇用不安、職場の人間関係に対する不安、高齢化社会に対する不安という現代社会に共通の不安に加えて、VDT群には、コンピュータの発展が目覚しく常に新しいことを学ばなければならないという変化に対する不安、新しい技術ができたら、新しい人でも作業が容易になり、がんばって習得した技術が十分発揮できないという不安が考えられる。『自我感情』については作業がマニュアル化されていて変化に乏しく自分でコントロールしにくく、機会のペースで作業が進められ拘束性が高いことでコンピュータが中心になってしまっていることから、自分の存在感が感じにくいことが考えられる。そのような状況では責任をもって決定を下す機会も乏しいだろう。意欲関心ではコンピュータを使う人に関しては、システムは常に新しくなるので、勉強しても勉強しても新しい事が常にあることや、今の仕事も最新のシステムができたら、コンピュータにとられることなどが考えられる。また、コンピュータに熟達しても昇進できる機会が少ないこと、自分の能力を高める教育の機会が少ないことなども一因であると考えられる。中高年に絞っていうと、コンピュータが普及してきたのは最近で、若い部下のほうがコンピュータに精通していて上司としての威厳がもてないことも考えられる。対人不安ではコンピュータは人間同士の直接のコミュニケーションの必要性や機会を少なくしてしまい、孤独に黙々と働くことが多くなってしまう。また、個人ワークが増え、人よりコンピュータのほうが身近な存在になってしまい、人付き合いに不安を感じるようになる人もいると考えられる。この問題はテクノ依存を引き起こす要因ともなるので気をつけていきたい問題である。
年代別のT検定では30代、50代において多くの項目で、VDT群と非VDT群に有意差がみられた。入社当時からコンピュータの導入が進んでいたと考えられる30代で多くの有意差が見られた事はこれから、ますますコンピュータが発展していくと予測される世の中で将来が心配である。特に40代50代で有意差が見られなかった「意欲関心」について有意差がみられたことはこれからの世の中を創っていく若者がこうでは明るい将来が期待できない。「疲労」についても若いうちからためていくと、10年、20年と経過したときの影響が心配である。50代については「心気症」「消化器」といった「不安」によるストレス反応が見られたのが特徴である。この年代では今まで主流でなかったコンピュータの導入にうまく対応できない「テクノ不安」との関連が考えられる。
コンピュータを良く使う人は心身症状が不健康だという事ができるが、もはやコンピュータと人間は切りはなすことができない。厚生労働省はVDT作業者の心身の負担をより軽減し、作業者がVDT作業を支障なく行ことができるようにするため、2002年4月5日に新しい「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を策定した。この中で作業環境、作業時間、健康診断について定めている。このように予防できるところは予防し、上手く付き合っていくことが大切である。
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