6章 下水利用の現状と課題

 

1.調査の目的

日常生活の中で、私たちが出した排水がどのような形で環境に影響を与えるのかを、今日の下水処理の現状から見ていく。普段あまり目にすることのない下水道の機能等を知り、私たちの生活と下水道がどのように関わりあっているのかを理解する。そして、現在かかえている水問題に対してどんな対応策・改善策があるのかを考え、実行していく。

 

2.調査方法

@下水道を知る

・下水道の役割、下水道の種類をしらべる。

 

A排水の経路を知る 

・家庭生活の中から出る排水が、どのように処理されていくかを調べる。

 

B公共下水道(流域下水道)

・特徴を理解し、メリット・デメリットを考える。

・県内の浄化センターの特徴を知る。

 

C合併処理浄化槽

・合併処理浄化槽とは何かを知る。

・メリット・デメリットを考える。

 

D下水道未整備区域の現状を知る。

・南風原町を例にあげ、現在の整備状況、これからの事業の方向性を知る。

 

E改善策を考える

・環境をより良くしていくために、日常生活の中で私たちにも実践できることを中心に考える。

 

3.下水道を知ろう

(1)下水道の役割

@生活環境の整備

汚染が速やかに排除され、周辺環境の整備が図れる。

*整備されないと…家庭や工場等から排出される汚染が住宅周辺に停滞し、蚊やハエの発生源になり、悪臭の原因となる。

 

A雨水の排除

大雨が降っても、すばやく流して浸水の心配がなくなる。

 

B水質の保全

汚染を集めて運び処理場で処理してきれいな水を放流するので、川や海が汚れるのを防ぐ。

*整備されないと…汚染が処理されないまま流れ、川や海が汚染されていく。

 

Cトイレの水洗化

トイレの水洗化により、文化的で快適な生活が送れる。

*整備されないと…汲み取り式トイレでは非衛生的であるばかりではなく、悪臭に悩む原因となる。

(2)下水道の種類

@公共下水道

市街地の汚水と雨水を収集排除する。

*単独公共下水道…汚水を独自の終末処理場で処理し、河川や海域等に放流する。

*流域関連公共下水道…流域下水層につないで処理する。

 設置及び管理は、市町村が行う。

 

A流域下水道

二つ以上の公共下水道より排除される下水を集め、終末処理場で処理する施設。公共下水道を使う市町村同士が地形的に近い場合には、まとまって下水を処理すると効果的である。設置及び管理は、都道府県が行う。

 

B特定環境保全公共下水道

市街化区域等において、観光地等の自然保護、農山漁村の生活の改善等を目的として下水道を整備する。設置及び管理等は、市町村が行う。 

 

C都市下水路

市街地の雨水を海や川にすみやかに排除する。公共下水道に先立って整備する必要のあるときなどに実施される。設置及び管理等は、市町村が行う。 

 

(3)流域下水道

 二つ以上の市町村からの下水を集め、県の管理する処理施設(浄化センター)で処理する下水道のこと。沖縄県には、中部流域下水道、中城湾流域下水道、中城南部流域下水道がある。那覇、宜野湾、具志川の三浄化センターでは、微生物を利用した活性汚泥法による高級処理を行っている。浄化センターできれいにされた処理水の一部は樹木に散水したり、トイレ用水として再利用されたりしている。また、処理により発生する汚泥(下水に沈んだ泥)は、コンポスト(肥料)として緑農地へ利用されている。

                     

 

 

 

 

@中部流域下水道

○那覇浄化センター

 那覇市の西海岸に位置し、沖縄県で最初の下水処理場として、昭和44年に簡易処理による下水処理を開始した。昭和52年からは活性汚泥法による高級処理を開始し、現在1日に約134,000㎥の下水を処理している。那覇市、浦添市、南風原町、豊見城村からの下水を処理している。

 


<消化ガス発電設備>

昭和59年より那覇浄化センターに導入された汚泥消化ガスを燃料とした発電システムである。発電した電気は、浄化センターの機械を動かすのに利用される。このシステムにより、浄化センター電力使用量の約3割をまかなっています(写真1)。

写真1 消化ガス発電設備

資料:「みんなの下水道」

沖縄県下水道管理事務所


 

○宜野湾浄化センター

宜野湾市の西海岸に位置し、昭和45年に簡易処理による下水処理が開始され、昭和51年から活性汚泥法による高級処理が行われている。

 現在1日に約95,000㎥の下水を処理している。浦添市、宜野湾市、沖縄市、北谷町、嘉手納町からの下水を処理している。

 


<生物脱臭装置>

平成5年度より宜野湾浄化センタ−に導入されたバイオテクノロジー(生物を利用した技術)による最新の脱臭システムである。各施設から発生した悪臭は、本装置に集められ、微生物の働きによって悪臭の成分が分解され、においがなく害のない空気として外に出される(写真2)。  

 

 

写真2 生物脱臭装置

資料:「みんなの下水道」

沖縄県下水道管理事務所



 

 

 

A中城湾流域下水道

○具志川浄化センター

具志川市の中城湾新港地区の一角に位置し、昭和62年活性汚泥法による下水処理が開始された。現在は1日に約8,100㎥の下水を処理している。

 具志川市、沖縄市、勝連町、与那城町、北中城村からの下水を処理している。

 

<高度活性炭処理>


平成5年より、処理水の一部を、活性炭を利用した下水の高度処理を開始した。活性炭処理装置は、処理した水をさらに活性炭の入った筒に通して、においやゴミを取り除き、もっときれいな水にする。処理された水は浄化センター玄関ロビーの池などに利用されている(写真3)。


                        

                         

 

写真3 高度活性炭処理

資料:「みんなの下水道」

沖縄県下水道管理事務所


 

B中城湾南部流域下水道

○西原浄化センター

西原町の東海岸に位置し、平成8年度に事業認可され事業に着手している施設で、佐敷町、与那原町、西原町、中城村の下水を処理する予定になっている。

 

(4)流域下水道の特色

・メリット1

 川や湖、海の水質を保全するために広い範囲の地域をカバーすることにより、効率的水質保全が図られる。

 

・メリット2 

 都道府県が主体となって下水処理場や幹線管を整備するので、単独では下水道整備を行うことが財政的、技術的に難しい市町村でも下水道の整備が円滑に進められる。

 

・メリット3 

市町村界にとらわれず、効率的に下水を集めて処理することで、経済的に整備・維持管理が行える。                                                   

 

 

 

 

 

4.下水道未整備区域の現状

ここまで、下水道の役割やしくみ、各浄化センターの特徴等を述べてきた。下水道の知識も深まり、私たちの生活には下水道が不可欠なこともわかってきた。では、下水道がまだ整備されていない区域の現状はどうなっているのか。ここで、下水道未整備区域のなかで、沖縄県南風原町を例にあげてみてみよう。

 

*南風原町*

・認可面積・・・・406(ha

・整備済面積・・・161(ha

・整備率・・・・・41

 

 南風原町の大部分は流域関連公共下水道事業区域となっており、ここから出る排水は那覇浄化センターに運ばれ、処理される。神里地区は、農業集落排水事業区域となっている。これは、区域内に処理施設を設けて、そこで処理された水は周辺の川、用水路、畑等に流れる。あくまでも、農業目的で利用する。合併処理浄化槽の設置をしているのは、わずかであった。

 南風原町役場の方のお話によると、南風原町では、昭和56年から下水道整備事業を開始しているが、現在まだ3分の1程度しか整備されていない。時間がかかっている理由の1つは、下水道整備にはかなりのコストがかかることだ。整備を1m進めるのに約100万円もかかってしまうという。もう1つの理由は、老朽化したヒューム管の修復である。昔に整備した下水管(ヒューム管)の一部が溶けてしまったり、木の根が入り込んだりなどして十分に機能を果たさなくなってしまう。

 このような理由も含めて、下水道整備事業は限りないものであると役場の方は話していた。

 最近、「合併処理浄化槽」が注目されている。そのしくみや役割とはどのようなものか。

そして、私たちの生活面・環境面からみて、何がメリットでデメリットなのかを知ろう。

 

**合併処理浄化槽**

 台所やお風呂などの生活雑排水をトイレの排水とあわせて処理できる浄化槽のこと。し尿だけを処理する「単独処理浄化槽」は、し尿以外の生活排水を未処理のまま放流するため、公共用水路へ流れ出す水質汚濁物質の量は「合併処理浄化槽」と約8倍にもなる。

 

【特徴】

@処理機能が優れている

・下水処理場の高級処理並に排水を浄化する。

 

A設置コストが格安 

・人口密度の比較的低い地域では公共下水道と比べて設置費が安く、地元負担も軽くなる。

 

B短時間で設置ができる

・取り付け工事が簡単で、工期が約1週間という短時間で設置できるため投資効果がすぐ現れる。

 

 

C地形の影響を受けず、どこにでも設置可能

・駐車場一台分の面積があれば充分。コンパクトなので、設置場所を選ばない。

 

D自然の浄化能力も活用し、清流を回復

・小河川の自然の浄化能力を活用するとともに、河川の水量確保も可能になる。

 

資料:全国合併処理浄化槽普及促進市町村協議会(http://www.zenjyohkyou.net)

 

※BОD(生物化学的酸素要求量)

溶存酸素のもとで水中の分解可能性有機物質を生物学的に分解するのに必要な酸素量をr/lで表したもので水質汚濁の重要な指標の1つである

 

設置にかかるコストや時間、機能等からみると、合併処理浄化槽のメリットは多いが逆にデメリットもいくつかある。

・排水を100%処理することはできない。

・設置費用の問題

・半年に1度の点検が必要。これは業者に頼んで行うもので、個人負担になる。

環境面から考えると、公共下水道の方が浄化率は高い。しかし、浄化センターで処理された水は、海に流すので、公共下水道が100%を占めると周辺の河川の水がなくなってしまう可能性がでてくる。

 そうなると、合併処理浄化槽の普及を推進していくべきなのだが、前のほうでも述べたようにこちらにも問題点がありどちらが良いと決めるのは難しい。 

下水道が未整備の区域(南風原町)では、普段の生活を送る上では特に不便な点はないということだが、家庭の中から出る生活雑排水が河川等を汚染してしまう確率は整備済みの区域より高い。そのため、水を使用する際には汚染を最小限に押さえなければならない。油やしる物を流しに流さないといった簡単に実践できることをきちんとやっていかなければならない。もちろんこのことは、整備済みの区域にも同様のことがいえる。

5.快適な生活を送るために

(1)トイレの水洗化、排水設備工事に協力しよう。

公共下水道が完成して供用開始の公示がされると、各家庭の排水設備を公共下水道につなぐ工事を速やかに行うことになる。特に、汲み取り式トイレは公示後3年以内に水洗トイレに改造することが、法律で義務づけられている。

  

@    排水設備とは

宅地や建物からの汚水や雨水を公共下水道に流すために設置する排水管やますなどをいう。一般的に各家庭の台所、風呂、トイレなどの流し口から公共ます(接続ます)までの部分のことをいう。

  

A排水設備工事はどこで? 

トイレの水洗化改造や排水設備工事は、各自の負担で行うことになる。工事は、一定の技術水準によって正しく行われないと、詰まって故障の原因になり、公共下水道の機能に悪影響を及ぼすことになる。そのため、工事に必要な専門知識と技術をもった「指定(公認)工事店」で行うことになっている。

※下水道が完成し、隣近所が水洗トイレにしても、一部の人だけが汲み取りのままでいると、その地域の環境はよくならない。トイレの水洗化は、地域ぐるみで普及を進めていく必要がある。

(2)普段の生活の中から 〜私たちにもできること〜

@台所では… 

野菜くずやご飯の残り、てんぷら油やサラダ油などの食用廃油などを流さないようにする。

       

A水洗トイレでは… 

 トイレットペーパー以外の紙や異物を流さないようにする。

 

Bマンホールには…

 土砂や廃油、木片などを捨てない。マンホールをむやみに開けてはいけない。

 

C下水道には…

 有害物を流さないようにする。

・ガソリン、シンナー、石油、アルコール類など揮発性の高いい危険物を流すと、大爆発を起こす原因となる。

・ますや側溝に土砂や木片、ビニール類を捨てないようにする。 

 

 

6.考察

今回の調査を通して、下水処理の重要さを十分に理解することができた。同時に、様々な問題点もあり、解決の難しさも知ることができた。下水道建設には、膨大な費用がかかり、多くの時間がかかる。公共下水道、合併処理浄化槽等のメリット・デメリットから考えると、どちらを推進していく方がよいのか難しいところだ。環境面から考えると、合併処理浄化槽の方が有効であると思われる。しかし、私達の家庭生活の中からの視点でみると、個人負担が多い点や管理の面からも現在の状況では難しい。「下水道」と聞くとまず、汚い・臭い等というイメージをもってしまう。しかし、下水道の役割や排水の利用・処理の仕方を知ることにより、下水道の存在をより身近に感じることができた。下水処理設備が充実していく中で、生活に欠かすことのできない『水』にもっと関心を持ち、私達一人一が生活していく中での常識的な行動が、今日の環境問題(水問題)を善くも悪くもしていくと思う。

 

7.今後の課題

・水質汚染についてもっと詳しくまとまめる。

・水問題(下水関係)の改善策についてもっと考える。

 

8.参考文献・引用文献

・『沖縄県の下水道〜平成133月〜』沖縄県土木建築部下水道課

・県庁からの資料

・南風原町役場からの資料

 

 

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