証券抄
(編集長責任編集)

 朝の会議が終わると、新入社員たちが次々に表のドアから出ていく。だが、その前にそれぞれが部屋の中に向かって、大声で次のような意味の言葉を叫ぶ。「これからお客さまサービスに出向き、最新の趨勢をお知らせしてきます!」それから、彼らは仲間たちに最敬礼をして、ドアから文字どおり飛び出していく。まるで愛機に向かって走っていくカミカゼ・パイロットのようだ。
 『YEN!(円がドルを支配する日)』D.バースタイン著より

はじめに
 「編集長より」のページにて何度か触れました通り、編集長は1988年4月から1995年阪神大震災の直後まで準大手証券の営業マンとしてバブル経済の絶頂と崩壊を体験してきました。現在は不況に強いニッチ産業の会社に勤務しており、株式市場とは無縁の生活をしておりますが、元証券マンとしての体験を生かした作品を『言語道断』にも過去少なからず発表してまいりました。Webサイトにて『言語道断』にはじめて触れられた読者の方々から、是非、読んでみたいとの声もあり、調子にのって(でなきゃ証券マンはつとまりません)雑誌時代、電子ブック時代の作品から抜き出して、若干の解説を加えて編集してみようとこのページを企画しました。このころの時代は
 
別冊宝島147『我らがバブルの日々』中、「地獄に堕ちた勇者ども」
 『五百兆円のおごり』(朝日新聞社)
 『株価のからくり』(奥村宏著・教養文庫)
 『株は死んだか』(日本経済新聞社)

 などの書物で知ることができます。少し時代が遡りますが、『野村証券残酷物語』(結城練太郎著・エール出版)という本もリアルな現実を描いています(恐ろしい位に)。私の作品は、同時代を生きた無名の青春を描いたものとしてお読みいただければ嬉しく思います。ただし、小説ですからあくまでフィクションであり、事実とは限りません。
 証券マンとして、私は出来た時もダメだった時もありましたが、「証券マンを三年続ければ、どの世界でも通用する」ことは事実だと今も信じています。実際、強烈な人格にもまれて、楽しい二十代を過ごすことができましたし、この期間の経験がその後の自分にも生かされていると思います。まあ、生まれてきた子どもの顔を見た時には「このままじゃイカン」と真剣に除隊後を考え、半年後にソフト・ランデイングいたしましたが。
 加えて申し上げますと、昨今の証券業界の衰退ぶりは「否定されゆく『日本型システム』そのもの」の姿と重なって映る気がしてなりません。
 初めて読まれる方は気にせず気楽に読んでやってください。
なお、今回の企画に大いなるインスピレーションを与えてくれた元証券マンのノビタ氏に感謝を捧げます。氏のページも楽しいものがありますので、是非御訪問ください。 ノビタの証券ドタバタ日記

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