*ガルー=カンガルーの事です。

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プレママ編

出 産 編
聖母病院での6日間)



1

7月9日

夜中、12時過ぎ頃から痛みが規則的に襲って来るようになった。
傍らに時計を置いて、間隔を計ると、ほとんど10分程で波が来る。
今度こそ本当にいよいよか。
とてもベッドで横に寝られそうにないので、相方とは別々に居間のソファで横になっていたが、午前2時過ぎ、だんだん強くなる陣痛らしき痛みに遂に耐え切れず、病院へ行くことを決意した。
昨日は確かにフライングだったが、今度は間違いなく「歩けません」という痛さだ。
少なくとも入院にはなるだろう。
眠りについて間もない相方を起こしに行く。さすがに前兆もあり、予測していたので、普段の朝と違って(?)むくっと起き上がる。彼も少なからず緊張しているようだ。

支度をして、相方の運転で3時頃家を出た。念のため車の中で相方に痛みの間隔を計ってもらう。やはり10分切っている。昨日みたいに追い返されることはないだろう。(→いや追い返しちゃいないんだろうけど)
さすがに真夜中の道路は空いていて、30分程で病院に到着。いつもなら駐車場がなくて困るのだが、そこは夜中だけにがら空きだ。痛みの合間を見て車から降り、なかへ。受付は相方にやってもらう。さすがに病院の一番奥にある産婦人科が遠い。私は分娩室の一歩手前で痛みに襲われ、思わず足が止まる。

まず、痛みに耐えながら内診を受ける。子宮口は昨日の2Bから3.5B(いや5Bだったか、もうろうとして覚えていない)程しか開いていない。またまた先走ってしまったのか?
しかし、昨日とは違い、やはりお産は進んで来ているということで、入院決定。相方が手続きに行った。
私は産褥衣なるものに着替え、一旦陣痛室へ入る。大きな部屋に、カーテンで仕切られたベッドが数台置いてある。
お産に時間帯はあまり関係ないが、どうやら私だけのようだ。ベッドの脇に、椅子が置いてある。基本的にはここで、分娩直前まで陣痛の痛みを逃しつつひたすら耐えるのである。
聖母病院では、立ち会い出産を希望しない限りこの陣痛室には夫すら入れない。
私は、もともとは立ち会い出産を望んでいたが、もともと相方が渋っていたのと、立ち会いするには両親学級に参加するのが条件なのだが彼のスケジュール的に無理だったことで、1人で長時間陣痛に耐えることを覚悟した。
分娩室などの外にある面会室に産婦が出ていけるなら、そこなら夫や家族と一緒に居てもいいので、私は出来るだけそこで粘ることにした。
何しろ初めての出産。そこから、どんな世界が待っているのか想像もつかないのだ。正直とても心細かった。

相方は入院手続きのあと、とりあえず空腹でヘロヘロだったので、近くのコンビニに買い出しに行った。
助産婦が、「(お産が)長くかかりそうなので、旦那さん一目顔を見てから一旦帰るそうです」と言いに来た。
<帰っちゃうのか...>とちょっと寂しくなる。でも、前の日も仕事を休ませてしまったので、何かと用事があるみたい。大丈夫かな?
こんな時、とはいえ、彼も客商売、お客さんにはこちらの事情は関係ないのだから。お産だってそうすぐには分娩にならないだろう。そうとなったら連絡してもらえばきっと平気だ。
私はのそのそと面会室に出て行った。そうこうしているうちに、そこでまた陣痛の波が来た。
「◎×▲◇■?%!〜〜!!」
すでに冗談の通じなくなっている妻の姿に、
「居てやるよ」
と言ってくれた。正直とても嬉しかった。何もしなくてもいい、そばに居てくれるだけで心強い。
しかし、前日の午前3時から前駆陣痛らしき痛みのせいで丸2日ほとんど眠っていない私も辛かったが、睡眠第一の相方が2時間も寝ていないのだから、かなりきつそうである。私の腰をさすってくれつつ、半分眠りかけている。しかも当然の事ながら院内は禁煙だし。
ごめんねぇ〜(涙)
モモちゃん(仮)、早く出て来なさい。

そして私も半分眠りながら陣痛と戦う。
眠りながら、と言うのは、決して”眠ってしまう程楽”なのではない。もともと寝不足な上に、何度も陣痛の波に耐えているうちに、疲労で眠くなるのである。波が来ているうちは、眠いどころの話ではないが、波が去って痛みが一旦引くと、今度は睡魔が襲って来る。私は横になっているより座っている方が楽な気がするので、ずっと椅子に座った状態で居たが、ときどき眠ってしまいかくっとなった。
陣痛の波が来ると、一生懸命、本に書いてあった呼吸法を思い出し、自分でやってみる。それに合わせ、助産婦さんが一緒にやってくれる。のどが乾いてきた。「冷たいお茶持ってきましょうか」と言ってくれたので、ウーロン茶を期待して居たが、マグカップに入っていたのは砂糖入りのアイスティーだった。どうやら体力を消耗するので、糖分が必要らしい。実はこれ飲んでいる最中はいいのだが、後味が残って嫌なもんだって感覚、わかります??
まだなんとか呼吸法で我慢できるうちに、夜が明け朝になった。
「何か食べた方が、お産が進みますよ」
「はあ...」
すでに甘い紅茶で口の中がぬたぬたになっている私は、なんだか気が進まない。
しかしすでに入院手続きの済んでいた私にちゃんと朝食がついてきた。あ、そういうことか。
朝食はサラダにパン、牛乳、紅茶、バナナ。
長期戦を覚悟した私は、パンとバナナくらいは、と思って手を出してみるが、どちらももそもそと喉につまる感じ。
呼吸法を頑張っているせいか、口の中がカラカラ&ぬたぬたで気持ちが悪い。まだまだ降りて来ないモモ(仮)に蹴られて胃が圧迫され、遂に吐いてしまった。
ごめんダーリン、目の前でリバースするの何度目だっけ?
私は相方が”居てくれる”というのに甘えて、面会室で出来るだけ頑張ることにした。助産婦さんも、基本的に必ず1人は付きっきりで側に居て、陣痛の波が来ると腰をさすり、一緒に呼吸法をやってくれる。相方は見よう見まねで腰や背中をさすってくれる。手のひらが痛くなりはしないか、いつもの肩凝りがひどくなりはしないかと案じたが、大変有り難かった。
「あと7時間だって」
相方の声に、気が遠くなる。
朝御飯が出てきて7時くらいとすると、14時。うーん...
私は時計を見ないことにした。

陣痛はだんだん強さを増していく。最初息だけだった呼吸法が、息だけじゃなく声になっている。
しかし、お産の方は遅々として進まない様子。

朝食後しばらくして、助産婦が交代になった。附属短大の研修生が、実習をさせて欲しいとついてきた。
別にイヤではないが、仮に断るにもその元気はもはやない。
「どうぞ」と相槌を打つのがやっと。
それでも、陣痛の波が引いて冷静な時は、彼女も初めてなんだから
きっと緊張しているだろうと思い、わざと「○○してください」と役割を与えてあげた。
交代した助産婦さんも、どの人も皆親身に世話をしてくれた。
なかなかお産が進まない私を前に、あれこれと策を練る。
8ヶ月頃からむくみがひどくなった足が、もう赤ちゃんの足のようにむちむちパンパンになっていて、スリッパも入らない状態だった。部屋の中は冷房がきいていて割と冷えていたので、足先も冷たかった。そこで足湯をやってくれることになった。
片方ずつバケツを用意し、何度も熱い湯に交換して、マッサージしながら足を温めてくれる。背中をさすってくれる人と、片足に1人ずつついてくれて、辛い中でもなんだか女王様気分。さすが女性だけにアロマオイルまで持ってきてくれて、ちょっと気分が和む。足もホカホカ。

しかし、それとは別の所で痛みはどんどん強くなって行った。
大波に続いて小波が来る。その後しばらくして中波が来る。どうやらこれがパターンになっている。
その波間を見計らってトイレに行くが、途中で大波が来てしばらく立ち止まり、波が引くのを待つ。たった10メートル先のトイレがものすごく遠い。トイレの中でも陣痛に襲われ、動けなくなること、しばし。
「お風呂に入るか、少し歩いてみます?その方がお産が進みますよ」
助産婦さんのせっかくの提言にも、耳をかす余裕がなくなっている。動きたくない。小さく首を横に振る私。

私はもう、何時間も面会室で粘っていた。
ケアしてくれる助産婦さんは何人もいるのだけれど、やはり相方が横に居てくれるだけでどんなに心強いことか。
産褥衣は、結構あられもない格好である。簡単に言えば、裸に割烹着ってところだ。
陽も高くなると面会者も入って来るので、ついたてを立ててくれた。
ついたての向こうでは、やはり分娩が近付いたらしい妊婦が、「イライラする〜〜むかつく!」と連発したり、やはり何時間も待たされている御家族一同など千客万来。
私がついたてのこちら側で、陣痛の波に耐えながら「フーウン、フーウン、フーウン...」と一生懸命呼吸法をやっているのが判ろうものなのに、いいおじさんおばさんが携帯を取り出してちゃかちゃかメールを打ち出し、絵文字について語っている。黙ってろとは言わないけど、妊婦は大変なんだゾウ(怒)
その前に、病院内で堂々と携帯を使うなっ。早速私付きの助産婦に叱られておりました。
(ちなみに、専門の産院など一部では携帯使用が許可されている所もあるようです)

トイレに立ったのをきっかけに、私は入浴することを決意した。(というかハメられた?)
しかしトイレに行くだけで陣痛が3回。風呂の中では5〜6回か。いやあキツかった。
お風呂はすぐに入れるようにすっかりスタンバイしてあった。ご丁寧に入浴剤まで入れてくれてある。
一人暮らしのマンションにあるようなバスルームで、病院であることを忘れてしまいそう。などと悠長なことは考えていられず、子供のように着衣を脱がされて風呂に入る。
湯舟に浸かっても「あ−極楽」と言う訳には行かず、湯気と熱気でサウナ状態の中陣痛に耐える。研修生ちゃんが、お湯の中に手を入れて腰をさすり続けてくれる。出血し、お湯が濁る。仕事とはいえ、大変だなあ...とは、今になって思うこと。

お風呂の中では結構汗だらだらだったが、外は冷房がきいて冷やっとしたくらいだ。
お風呂から上がると、もう自分ではマトモに立っていられない私は、やはり子供のように体を拭いてもらい着替えをしてもらう。その後は面会室の相方の所へは戻らずに、本来の陣痛室へ行った。
お風呂に入った効果か、大分お産が進んできたようで、呼吸法の呼吸はいつのまにか声どころか叫びに変わっている。
他に妊婦さんがいたのかどうか、私はそんなのもお構い無しで叫んでいた。
ベッドの脇に椅子が置いてあって、私はやはりとても横になっては居られないので、椅子の上にクッションなどを積んでもらい、椅子の手すりを握りしめてクッションに寄り掛かっていた。
研修生ちゃんは付きっきりで私の腰をさすり続けてくれた。
いや、もはや腰よりも、お尻の穴をずっと押さえてもらっていた。とても比較にはならないけど、『痔なのに便意がある』方向としてはそんな感じだ。
しかしあまりの痛さに、いい歳して半泣き状態。
「皆さん勢ぞろいしてます」面会室の相方から伝言だ。田舎の父母も到着したようだ。
まずい、いくら何でもこんな大絶叫していたら聞こえているよなあ...その度にみんなで大笑いしていたりして(汗)
でも、まあいいか。一生のうちそう何度もあることじゃないし。つらいのは私なんだもん!

子宮口が全開大にならないと、いきませてもらえないので、それまでは出そうなのを(!)我慢しなくちゃいけない。
お尻の穴から赤ちゃんが出て来るはずないんだがそんな感覚なので、陣痛の波が来ている間はお尻の穴を押さえてもらわないと我慢できない。時々モニタを付け、胎児の心音をチェックしたり、陣痛の間隔もほとんどなくなってきている状態で内診を受ける。

「いきみたい感じ、ありますか?」
そうきかれても、何しろ初めての事なので、その時はこれがいきみたいんだか何だか良く判らない。返事もろくに出来ないので、とにかくもう我慢の限界だと思い、首を立てに振る。
いやあ、子宮口が8Bから10Bになるまで、なんと長く辛い道のりだったことか。
もういいだろう、と思ってもGoサインが出ない。痛みの中で、これはひょっとしたら分娩室が使用中で、私は待たされているんじゃなかろうかと疑う。
早く産ませろ−!

「それじゃあもういきんでいいですよ」
っていうか、もう大分お尻の方に力入っちゃってるんですけど(汗)
ともあれお許しが出たので、いきみ方を教わり、せーので思いきりいきんでみる。
分娩室には行かないの?やっぱり混んでるのかな?? いきんだからってそんなにすぐ出て来る訳ないか。
でも変な話、具が出ちゃったらどうしよう?! と思ってしまう。まあ皆さんプロだし、見慣れてるかな。
噂の浣腸は、この後すぐ?!
そう思ったけど、本物が出そうな気配はないし、スタンバイもされないようだ。大丈夫なのかな??
「赤ちゃんの頭、見えてきましたよ−!」
えぇ、マジ?!
いきなり「我が子」の存在が現実味を帯びて来る。辛いことは辛いが、何だかちょっと楽しみになってきた。
そしていきみ方を復習しつつ、分娩室へベッドごと移動。やっと部屋が空いたらしい(←勝手な想像)。
やっとだあ〜...
この時点で、すでにホッとしてしまった。
分娩室に入ってからが長かった人もいるというのは後で知ったことで、やっと本気でいきませてもらえるのが嬉しい。
分娩室の時計を見る余裕も出た。午後の2時半...病院に来てから、12時間が経とうとしている。
長かったなあ...9割方終わったような気分。
いきみのイメージを掴みやすいとの事で、鏡で赤ちゃんの頭が出て来る所を見せてもらいながら、陣痛に合わせていきむ。
「上手ですね〜〜!すごく上手!!」などとおだてられながら頑張る”もうすぐママ”。ここまで来ると、後は赤ちゃんに早く会いたい一心。痛みも、いきみよりも助産婦さん達がそれに合わせて入り口をグイグイ指で広げているのかそっちの方がどうもヒリヒリして痛い。でも陣痛を我慢しているよりよっぽどましだ。
「ふん...っ!」
赤ちゃんの頭が見えている部分が徐々にではあるが大きくなってきている。目一杯いきんで、早く出してあげたいけど、なぜか
「ゆっくり出してあげましょうね」
と、いきみきらせてもらえない。これは、会陰がさけてしまったり、赤ちゃんが急に飛び出してきたりするのを避けるためだろう。
「はい、いきんで.............................................はい止めて!」
途中で止めるのはきついけど、先刻の痛みに比べたらどうってことはない。
助産婦さんの指示に従い、いきむこと数回。
「赤ちゃんが出やすいように、少しだけ切りますね」
やっぱり切るのかあと思ったが、陣痛と、会陰を引っ張られていたのが大分痛かったので、切ったのなんてほとんど感じない。(今でも思い出せない)その時になってみると、”赤ちゃんのためならばどうぞ切ってくれ”という気持ちになる。
取り上げるのは助産婦達の仕事だが、切った縫ったは医師じゃないとダメらしく、ここでおもむろに産婦人科医登場。本来は主治医がやるのだが、私の担当医は超多忙のため(というかどの先生も忙しそう)、名前しか知らなかった別の先生が来た。しかし手際良く処置し、切るのは最小限一ケ所だけにしてくれた。
その後2度程いきんで、15:24、ホゲ、ホゲと小さな産声が聞こえ、無事我が子と御対面。
泣いちゃうかと思っていたけど、意外にそこまで実感が湧かないというか、不思議な気持ちだ。
「あー、これはご主人に似てるわねー」
ずっと一緒に面会室に居たので、すっかり顔を覚えられ、助産婦一同口を揃えて言う。
しかし取り上げられた直後に初うんちするわ、羊水を吸ってもらうなど処置をしている間に「へっくしょん」とくしゃみをするわ、うちの子は笑わせてくれた。
感動と言うよりも、とにかく、ホッと一安心。無事に産めて無事に生まれてきたのが何より嬉しかった。

ありがとう、モモちゃん(仮)。

しかし、疲れた〜〜〜〜〜〜〜!

口には出さなかったけド(笑)



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