世界選手権出場報告

 

【はじめに】

 

 はじめに、今回世界選手権に出場するに当たって、本当に多くの方々に様々な形でサポートをしていただくことができました。李博之副委員長をはじめとする在日本朝鮮人総連合会愛知県本部の皆様、成斗嬉副会長をはじめ在日本朝鮮人体育連合会の皆様、朴秀成会長をはじめとする在日本朝鮮人愛知県体育協会の皆様、共和国本国の皆様、朝鮮新報社の皆様、浜松OLCの皆様、様々な交渉に協力していただいた落合公也さん、金井塚智仁さん、IOF正式加盟の際に力を貸していただいた村越真さん、トレーニング機会を提供してくださった、羽鳥和重さん、中村弘太郎さん、その他多くの方にこの場ではありますがお礼の言葉を述べさせていただきます。本当にありがとうございました。

 

 そして、この大会を運営してくださった運営者の皆様、本当に面白く、楽しい舞台を作っていただき本当にありがとうございました。

 

 

【報告】

 それでは、この度の私の結果報告の方に入りたいと思います。結果は以下のとおりです。

 

8月7日 ミドル予選

 

Men-A

 

1  アンダシュ ノルドベルグ 0:28:07  ノルウェー

2  クリス テルケルセン     0:28:11  デンマーク

3  カレ ダリン             0:29:11  スウェーデン

 

15  トマス ドラバヤ        0:32:07  チェコ

 

--------------ここまで予選通過-------------------------

 

23  キョンサ リ            0:36:45   朝鮮民主主義人民共和国

 

(top +8:38 130.7%)

(qualified time + 4:38 114.4%)

 

 

 

8月8日 ロング予選

 

Men-B

 

1  アンドレイ ハラモフ     1:03:21  ロシア連邦

2  マリウス マズリス       1:03:27  リトアニア

3  デービッド シュナイダー 1:05:09  スイス

 

15  トロイ デ・ハス        1:10:40  オーストラリア

 

--------------ここまで予選通過-------------------------

 

22  リ キョンサ            1:23:30  朝鮮民主主義人民共和国

 

(top + 20:09 131.9%)

(qualified time +12:50 118.1%)

 

 

8月10日 スプリント予選

 

Men-B

 

1  マティアス メルツ          0:15:51  スイス

2  マッツ ハルディーン        0:15:59  フィンランド

3  ジェミー スティーブンソン  0:16:16  英国

 

15  スヴァユナス アンブラザス 0:18:52  リトアニア

15  ペドロ パシオン           0:18:52  スペイン

 

 

--------------ここまで予選通過-------------------------

 

23  リ キョンサ               0:19:55  朝鮮民主主義人民共和国

 

(top +4:04 125.7%)

(qualfied time +1:03 105.6%)

 

8月11日 ミドルB決勝

 

1  キム ファゲルッド     0:32:14  フィンランド

2  アレクサンダ ミナコフ 0:35:29  ロシア連邦

3  ライン エンソル       0:35:38  エストニア

 

27 リ キョンサ      0:46:44  朝鮮民主主義人民共和国

 

(top +14:30 145.0%)

 

 

8月12日 ロングB決勝

 

1  モルテン ボストロ         1:06:47  フィンランド

2  キム ファゲルッド         1:08:27  フィンランド

3  スヴァユナス アンブラザス 1:09:16  リトアニア

 

23  リ キョンサ             1:35:49  朝鮮民主主義人民共和国

 

(top +29:02 143.5%)

 

 

 

【雑感】

 

 一言でいって「crazy!」(日本語でいうと、「やばかった!」というのが感想)これが初めて世界選手権に出場しての感想。

 

 本当に何もかもがすごく、地図、テレイン、コース、競技者のレベル、開会式、バンケット、その他

世界選手権の全てがすごく1週間本当に興奮しっぱなしだった。

 

 その中でも地図は本当にたまならく良く、鳥肌が立った。レース中、一回地図を見るたびに、地図の虜になっていくのを無意識のうちに感じていた。大会期間中に、ふと白地図に見入っていたときに、あまりのすばらしさに、感動のせいか、うっすら涙があふれた。今でも世界選手権で使用した地図を見ると、その地図でオリエンテーリングをしたい衝動に駆られる。それだけ、もうたまらなく、たまらない、言葉では言い表すことができない、それだけ「crazy!」だった。たまらん。

 

 あと、「crazy!」のはバンケットと二次会。バンケットは終始僕は緊張しっぱなしだったが、各国のバンケット用のパフォーマンスは本当に「crazy!」個人的には、国を忘れてしまったけれども、最初にエアロビクスの踊りをしていたものがかなり印象に残っている。

 

 その後、二次会会場へと向かうバスの中で、英語の歌の大合唱。僕も一緒にバスの中で大声で一緒に合唱した。今の、日本ではそうすることにできない経験。みんなで歌を大声で合唱すること。昔子どもたちは友達とどっかに行く度に、大声で元気に歌っていた。

 

 日本だと、大人になるとそうやって、大きな声で歌を歌う人が本当に少なく、歌を元気に歌っている人を変な目で見る人があまりにも多い。文化の違いと言われるとそれまでかもしれないが、彼らはその歌を歌うことにおいてさえも「crazy!」だった。僕も心から「crazy!」だった。

 

 二次会会場でもそのテンションはとどまる所をしらず、野外教育センターの食堂がディスコに大変身。結局深夜1時ぐらいまでそのテンションが続いていた。僕も一緒に1時ぐらいまでひたすら歌って、踊っていた。本当に「crazy!」だった。

 

 あと、「crazy!」ことがもう一つ。レースの結果と、7日間計8レースというスケジュール。

 

 レースの結果については、簡単に言って、「今後の取り組みによって、2〜3年のうちに予選通過はできて、将来、取り組み次第では、世界のトップになることができる」と感じる結果だった。

 

 北欧などに比べて簡単なテレインで、しかも地元開催というある程度のアドバンテージがあった日本での世界選手権であったが、それでも、それまでとある話で、いかに予選通過をするかという議論があったが、僕個人の感触としては、予選通過については、「なんだ、いけるやん」という感じだった。思った以上に、世界に近づいていた自分の実力を感じ取ることができた。

 

 しかし、日本のテレインは、(今年の世界選手権のテレインも同様に)難易度が低いので、難しい北欧などのテレインで今年と同様以上の結果が出せるかどうかを見据える必要はある。そういう意味では、来年のデンマークの世界選手権はいい機会だと思う。

 

 あと、7日間8レースというスケジュールは、全体的には普通にこなすことができた。中日あたり(ロング、ミドルB決勝)では、少しパフォーマンスが落ちているのを感じていたが、「なんだ、まだまだいけるやん」と感じた。将来、個人全種目でA決勝をパフォーマンスを維持して走ることを考えると、これくらいのスケジュールを簡単にこなすことは当たり前になるのは当然だけど。これも「crazy」

 

 

【これから】

 

 さて、これからのことについて書きたいと思う。

 

 上の雑感を読むと、人によっては「本当に一国の代表として世界選手権に出場した選手の書くことか?」という固定観念に捉われた意見があるかもしれない。大会期間中に「もっと選手らしくしてくださいよ」といっていた人や、思っていた人なんかは特に。でも、これは僕の考えであるので、僕の考えに従って書く。

 

 これから、本当に世界と戦って、トップレベルになって、結果を残すためには、まさに雑感に書いたように、今より一層、自分の感情に正直になって「crazy!」になればいいと感じた。難しい言葉で書くとそうなる。もっと簡単に言うと、「バカになる」ことだと思う。もっともっと簡単に言うと、オリエンテーリングを本当の意味で心から楽しみ、愛することだと思う。そういう意味では、僕は「crazy」なので、世界のトップになれる素質があると思う。

 

 ここで言う、楽しみ、愛するというのは、単に趣味的な感覚で「好き」とか「楽しい」というレベルではない。それこそ、生活をなげうってでも、それでも「オリエンテーリングしたい。速く走りたい」という気持ちになることができるか否か、それくらいのレベルである。それこそ、純粋に一つのことに向かうことができる、「バカ」である。

 

 バカな人っていうのは、自分の好きなことに全てのことを投入することができる人だと僕は思う。確かに、他の事と両立するという考え方は本当に尊敬できることだし、すごいことだと思う。(例えば、仕事とOLを両立して競技に取り組むなど)しかし、世界のトップを目指すのであれば、それこそ、オリエンテーリングに専念できる環境が絶対に必要だと思う。いわゆるプロもしくはセミプロのような形で取り組むということだ。

 

 僕が今、考えていること。それは、「世界選手権で勝ちたい」という僕の今の気持ちに正直になるのであれば、オリエンテーリングに専念でき、高いレベルで切磋琢磨する為には、北欧に渡って、常にオリエンテーリングができる環境に自ら入っていく必要があるということ。

 

 今、スウェーデンで体育関係の学校に通ってスキーOのトレーニングを積んでいる堀江(東北大OB)のように、専門的にやる必要が絶対にある。そうでないと、世界で活躍して、それこそ、世界選手権で優勝しようと考えるならば、そのような環境に自分を置いて取り組まないとできないと思う。

 

 

 逆に言うと、その環境に身をおくことが出来、そして、これが最も重要であるが、自分が心から「世界チャンピオンになりたい、世界選手権で勝ちたい」という気持ちを常に持ち続けることが出来、行動することが出来れば、目標へは限りなく近づくことが出来ると思う。(100%と絶対に出来るとは言うことは出来ないが、可能性としては(以下に挙げる数字に妥当性は無いが)80〜90%ぐらいは出来るだろう。きっとそのレベルまで行けば、もう既にいつでも世界チャンピオンになることの出来るレベルに達しているはずである。そこまで行くことが出来れば、あとは自分のパフォーマンスを引き出すだけ。)

 

 僕はこの場で批判を述べるつもりは毛頭ないということを前提にした上で書かせてもらうと、今年の日本代表を見て、上記のように感じたということは否めない。僕自身、日本代表と一緒にトレーニングをさせてもらっているが、話などを聞くと、選手のほとんど全ての人が日本で仕事を持ちOLを両立して日本で競技生活を行っている。

 

 しかし、今年の地元の世界選手権では、地元開催という大きなアドバンテージがあったにも関わらず(僕はいろいろ考えたが、地元開催というアドバンテージはそれほどなかったと今になって感じているのだが・・)、日本代表の結果は、優勝はおろか入賞というレベルには大きな差があった。(僕はスイスの選手がどのような形でOLに取り組んでいるかはわからないが)2003年にスイスが地元の世界選手権で大活躍した例を比べると、そのことを感じずにいられなかった。(もちろん、理由は他にもあると思うが)

 

 ここまで、いろいろ書いてきたが、最後に、一つ考えてみたいと思う。「なぜ、僕はオリエンテーリングをやるのか?」答えは簡単。「勝ちたいから」。じゃあ、「何で勝ちたいのか?」これも簡単。「自分のため」。じゃあ、何で「自分のために勝ちたいのか?」

 

 一つは、一つの目標に向かってまっすぐ目指すことが自分を限りなく成長させてくれるから。もう一つは、いわゆる、ハングリー精神からくるもの。今回の世界選手権で本当に多くの人々に応援していただいて感謝しているが、しかし、残念ながら、僕が在日朝鮮人、しかも、現在日本では変人扱いされている朝鮮民主主義人民共和国の代表選手であったせいかわからないが、偏見の目で、見ていた人が少なからずいたことは確か。

 

 そして、僕の普段の行動や(それこそ固定観念的考えを持っている人からすると、その行動が「選手らしくないふるまい」に映ったのだろう。)、英語があまり話すことが出来ずに戸惑っている僕の姿を見て感じているかどうかわからないのだが、変なまなざしで僕を見ている人もいたことも確か。両方とも僕の直感で感じたことだが。だから、その人たちを見返してやりたいと強く想う。

 

 その為には、やはり全日本大会で優勝しなければならない。しかも大差をつけて優勝すること。昔在日朝鮮人が、日本人に対してハングリー精神を持って様々な活動を行ってきたことを踏襲するわけではないが、いずれにしても、僕は必ず一回は全日本大会で優勝しなければならない、と強く想う。

 

 いずれにしても、今回の世界選手権は、自分に更なる成長の機会を与えてくれ、自分に力を与えてくれた。そして、今、早くも来年のデンマーク世界選手権、スロバキアのユニバーシアードに向けて動き出そうと思う。

 

 目標は、2008年の世界選手権までに、一種目以上予選通過を果たし、2009年のハンガリーでの世界選手権で結果を残したい。2009年の世界選手権は、僕が世界選手権を目指すきっかけとなった世界ジュニアオリエンテーリング選手権大会が開催されたミシュコルツでの開催である。

 

 想い出の地で結果を残したい。結果を残すときは、もちろん、普段の姿のまま、No compassでひたすら走るという、この最も至極単純(しかも最も理にかなっていると僕は考えているのだが・・・)なスタイルで勝ちたい。そして、もうひとつ。1年でも早く、朝鮮代表で世界選手権のリレーに出場すること。

 

 自分の信念を貫き通そうとするならば、周りは関係ない。ただ、純粋に、自分の信念のみを真っ直ぐ、力強く、貫き通せばいい。

 

 再び、足跡をつけ始めよう。

 

 2005年9月1日 筑豊にある実家にて  李敬史

 

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