第二章 「物事の価値」と「パラダイムの転換」

 

 

  そもそも物事の「価値」とはいったい何だろう?

 

 
物事の「価値」とは


 私たちは「価値」という言葉を頻繁に使って物事を考えています。
 しかし、物事の「価値」とは、いったい何なのか?という本質的な問い掛けをすることはあまりないのではないでしょうか。
 それでは物事を本質的に考えているとは言えませんね。
 そこでまず、「価値」の概念の厳密な分析から始めることにしましょう。

 

 


 物事の価値には、2つの側面があります。
 それは「モノ」としての側面と、「コト」としての側面です。
 
 さらに物事には、3つの価値の要素があります。
 それは「意味」の価値の要素と「感覚」の価値の要素と「機能」の価値の要素です。
 
 そして、この2 つの側面と3つの要素とを、重ね合わせる。
 すると、
「意味」の価値の要素は、イコール「コト」の側面であり、
「機能」の価値の要素は、イコール「モノ」の側面であることが了解され、
「感覚」の価値の要素には、「コト」「モノ」の両方の側面があることが了解されます。 
 以上を整理すると、概念図1のように、物事には4つの「価値の領域」があることが明らかです。
 これは、物事は4つの概念要素から成り立っているということに他なりません。



 

 

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 物事にモノの側面とコトの側面があるというのは、文字通りの洒落ではない。 英語のthingもstuffも独語のdas Dingも、モノを表現する場合とコトを表現する場合がある。
 もともと人類は、ものごとをそのように認識したり表現してきたのであって、その頭脳の働きをなぞって言語が形成されたのである。
 森羅万象をモノでありまたコトである融通無碍な現象として、人類は認識し表現した。だから森羅万象を表わす言語は、ある時はモノをさし、ある時はコトをさした。
 それは、森羅万象を多様な意味と感覚と機能を合せ持つ物事として捉えそして創りだす営みでもあったのだ。
 物事の4つの「概念要素」は、こうした価値の現象を改めて整理して確認したに過ぎない。

 

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 たとえば、「重役向けベンツ」という車の概念を分析してみましょう。

 すると、
 [領域1]コトとしての側面である意味的価値には、
          「乗る人のステータスシンボル」という概念があります。

 [領域2]コトとしての側面の感覚的価値には、
          「乗っている人が偉そうである」という概念があります。

 [領域3]モノとしての側面の感覚的価値には、
          「車に重厚感があり色や形に品がある」という概念があります。

 [領域4]モノとしての側面の機能的価値には、
          「車のサイズが大きく重量が重く速度が速く安全性が高い」
           という概念があります。

 物事は、このように

 [領域1]の「コト意味」を表す、
      抽象名詞ないし「・・・であること」といった抽象句で表現される内容、

 [領域2]の「コト感覚」を表す、
      抽象的な形容詞や形容動詞ないし「・・・な」「・・・に」といった
      形容句
で表現される内容、

 [領域3]の「モノ感覚」を表す、
      具象的な形容詞や形容動詞ないし「・・・な」「・・・に」といった
      形容句
で表現される内容、そして

 [領域4]の「モノ機能」を表す、
      具体的な数量と単位、型式、メカニックな機構や化学式、システムや
      制度
で表現される内容、

 以上の「4つの概念」から成り立っています。

 そして、「4つの概念要素」への着眼は、物事の概念を概念要素に分析したり、概念要素を組み立てて新しい概念を構築する「コンセプトワーク」という作業の土台になります。

 

 

「パラダイム」は4つの概念要素の組立方



 「パラダイム」とは、「考え方の基本的な枠組」のことである。
 そして「概念」とは、「・・・についての考えないしその考え方」のことである。
 よって、「パラダイム」とは「概念の基本的な枠組」と言えます。

 そして、物事の概念は「4つの概念要素」で成り立っているのですから、「パラダイム」とは「4つの概念要素」の組立方のことである

 つまり、「パラダイム転換」とは「4つの概念要素の組立方」の転換のことなのです。
 また、<無意識のパラダイム>を客観視するとは、現状を「4つの概念要素の組立方」として解き明かすことなのです。


 「考え方の基本的な枠組」についての物言いだけでは、あまりに抽象的です。人や立場によっていかようにも解釈できる。それでは客観的な知識として共有できません。
 一方、{概念要素の組立方}という構造を明示するならば、客観的で合理的な知識として明快に共有できます。
 そこに、<無意識のパラダイム>を意識化して「パラダイム転換」の全体像を分かりやすく魅力的に提示するコンセプト思考術の核心があります。

 まずは、みなさまにこのコンセプト思考術の核心の真偽と有効性とを確認してもらいたい。
 そこで、日本の80年代から活発化してきた「価値形成構造の転換」を象徴する現象の数々を提示していきますので、それらをコンセプト思考術の核心をもっていかに適切に分析できるかをともに検証して参りましょう。