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************************ 閑話休題************************
IR(投資家向け広報)や株式評価において、「○○態」開発に力をいれる企業が有利なことは、すでに蛇足であろう。
トヨタの株式時価総額とホンダのそれとを比べると、両社の売上比以上の何倍かの開きがある。
それは、トヨタの成長見込みがホンダのそれより高くマーケットに評価されているということだ。では、その根拠は何なのか。
特に影響しているのは、
環境世紀に向けての「品態」カテゴリーである「ハイブリッド車」をはじめ とするエコカー開発。
IT世紀に向けての「業態」カテゴリーである「自動車向け情報提供サービス(ITS)」や「eコマース(ガズー)」。従来から自動車保険や販売金融の利益が大きいトヨタゆえの「業態」カテゴリーである「クレジットカード」などであろう。
{同じ顧客からの利益源泉を多層化する経営戦略}が、ホンダを遥かに凌駕するものとマーケットが評価している。つまり、{顧客数比を反映する販売台数比}以上の何倍かの評価をしているのだ。
企業のステークホルダーは、株主、顧客、従業員、債権者、そして地球であると言われる。
企業の「○○態」開発志向は、まず顧客や地球を優先した「生活効率」のためになり、従業員の「働きがいや独創性」のためになり、株主の利益「株価向上」のためになる。借金のある企業の場合、債権者は、旧来からの鳴かず飛ばずの「○○種」路線による良くて金利だけの支払いよりも、新たな「○○態」を打ち出してのヒットによる元本返済を求めるということもあろう。
つまり「○○態」志向は、ステークホルダーという経営戦略のすべての受け手からも必要不可欠と見なされているのだ。
もちろん、古くは鉄鋼、新しくは半導体など、基盤的な技術シーズと量産体制というハード体制がすべてを決める「○○種」の産業というものもある。そこでの「○○態」開発にはそもそも限界があったり、開発可能な特殊な「○○態」はすでに他社が特許を独占してやっていて参入できない、といった状況もあろう。
しかし、そこで通用しているルールは、わずかな優位企業がスケールメリットによって安定できるということだ。
わずかな優位企業にのみ有利なルールを、すべての企業が正しい筈だと右へ倣えしていて済むわけはない。
確かに、事業提携やソウトソーシングという「事業効率」を維持向上させる戦術はある。
しかし、優位企業同士が提携すれば、劣位企業同士が提携しても対抗できない。また、アウトソーシングは仕事を外に出すことであり、事業提携は、部分的な合併みたいなもので2つの会社が1つになる方向、つまり合併に近づくことを意味する。その分雇用者にとっては、仕事が減る。優位企業同士の合併となればリストラの大鉈も振るわれる。それこそが「事業効率」の追求だからだ。
私は、企業が「事業効率」の向上を目指すのは当然であると思う。しかし、従業員がただ単純に「事業効率」の向上を目指すしかない「○○種」路線に没入していることは、被雇用者としての自分の首を絞めていることとしか思えない。長期的に将来をのぞむ賢明な者ならば、リストラの可能性の高い「○○種」路線に、心安らかに全力を尽くすことがどうしてできようか。
それで出世して厚遇されるのは、一部の成績トップの高級管理職と不可欠な独自技術をもったスペシャリストだけではないか。あとの交換可能なすべての従業員は、常にコスト圧力にさらされる宿命にある。終身雇用制が崩れたということは、きつい言い方をすれば「替えがきく人材は買いたたかれる」ということだ。
私が「○○態」開発志向にこだわる理由は、それを成功させた部門が世の中で「替えがきかない組織」となり、そこで蓄積された経験やノウハウが世の中で「替えがきかない人材」を育成することになるからだ。
世の中で「替えがきかない組織」の「替えがきかない人材」は、買いたたかれるどころか、ヘッドハントされたり、ことによってはみんなで協力してWBOをしたり、自分でベンチャーを立ち上げたりできるようになる。
大方の企業でみうける閉塞状況は、過去の「○○種」開発の成功体験をもった経営幹部が、現場や若手の「○○態」開発志向の芽を潰しているケースである。
そして、はなから「○○種」志向以外の発想ができない官僚的な中堅幹部が、保身のために「○○態」へのパラダイム転換を拒絶しているケースである。
平成不況がデフレ経済として定着したとさえ思える21世紀初頭の日本、経済的には「マイナス・サム社会」である。そんな状況下、企業の経営の先行きを判断することは、バルブまでの「右肩上りの時代」や平成不況初期の「ゼロ・サム社会」の時期に比べて、とても容易である。
その企業が「○○種」路線であれば、事業効率の最高の優位企業であるかどうか。
その企業が「○○態」路線であれば、高度成長期のような技術開発主導の「やってみなはれ」やバブル期のような販売促進主導の「イケイケドンドン」ではなくて、確かな<受け手側のコト実現の論理>にのっとった需要創造戦略主導のロジックとインテリジェンスを組織として戦略的にもっているかどうか。
それを見れば誰の目にも一目瞭然だ。
<送り手側のモノ提供の論理>にある<無意識のパラダイム>を意識化して
<受け手側のコト実現の論理>への転換をはかることを怠る
そんな企業や部門に先行きの安定はない。
それがビジネス史が教えている原理原則である。
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