|
現代において着目すべき重要な現象は、「生活創造者」が容易に「ビジネス創造者」になり、また「ビジネス創造者」の新しい商品(品態)や商売(業態)や店舗(店態)が新しい「生活創造者」を生む、その中の特に深く共感した「生活創造者」がさらに・・・という人的循環であります。
ボランティア活動に強い熱意をもった「生活創造者」は、同士が集まれば容易にNPO 事業に関わる「ビジネス創造者」になりうる。そして新しいNPO事業は、さらに新しいボランティア活動に助けられる「生活創造者」を生む、その中の特に深く共鳴した「生活創造者」がさらに・・・という人的循環が、すでに生じています。
もちろん、この人的循環はボランティア活動に限りません。
たとえば、若者や主婦の職業につくつき方が多様化している現象にも見受けられます。
かつてパソコンブームにおいて、ゲームソフトづくりやパソコン通信に興じていた「オタク」がいた。パソコンライフにおける「生活創造者」であります。彼らがソフトハウスを立ち上げたりネットベンチャーに就職してプログラマーになれば、それはパソコンライフに関わる「ビジネス創造者」の一員になったということです。そして彼らがユニークなソフトやITサービスを生み出せば、新しい性向をもったゲームファンやインターネット利用者という、パソコンライフにおけるさらに新たな「生活創造者」を生んでいきます。
ユニークな発想の料理好きや収納好きの主婦は、その段階では「生活創造者」です。しかし、テレビや生活情報誌で取り上げられたりすれば、自他ともに認める料理研究家や収納研究家という「ビジネス創造者」であります。彼女たちのノウハウの指導や提案は、料理や収納におけるさらに新たな「生活創造者」を生んでいきます。
こうした人的循環は、個人のアイデアや少数精鋭の試みが鍵をにぎる「生活文化産業」だから起こり得るのです。
たとえば重厚長大の重化学の装置産業や先端科学がものをいう超ハイテク産業では起こりようがない。だから、大した事ではな些末な循環ということにはなりません。企業と就労者と対象とする顧客の総数から言えば、車や家電から食品などにいたるメーカー、それを売る多様な大規模から小型までの小売りそして多様な飲食娯楽その他のサービス業、そしてそれらについて情報提供する情報産業、そうした総体である「生活文化産業」の方が圧倒的であります。重厚長大の重化学の装置産業や先端科学がものをいう超ハイテク産業の受け皿に他なりません。成長の見込まれるIT産業は、川上から川下までを対象としますが、当然工場や研究所以外の「生活文化産業」の時空を対象とする割合は大きい。
「生活創造者」と「ビジネス創造者」の人的循環がもたらすいわば{開放系の知識創造}は、このような「生活文化産業」に特有のものです。
それは、重厚長大の装置産業や先端科学の超ハイテク産業がそうした人的循環を必要としないいわば{閉鎖系の知識創造}であることと対照的です。
私は、前者を「ニーズ主導型の知識創造」、
後者を「シーズ主導型の知識創造」として峻別しています。
そして、専門としているマーケティング戦略やコミュニケーション戦略の対象を前者に絞り込んでいます。「コンセプト思考術」も前者において有効なものであります。
21世紀は「知識産業社会」になると言われています。
「知識産業社会」は、単に専門知識を高度化し知識資産をためこめばそれで済むといったものではありません。
そのようなことならば、これまでの「シーズ主導型の知識創造」の{モノ割り・縦割り}の知識体系においても行われてきました。
これからの「ニーズ主導型の知識創造」の{コト割り・横断的}の知識体系においては、「生活創造者」と「ビジネス創造者」のボーダーレスな人的循環が生ずることによって、新しい生活テーマ=ビジネステーマ自体がどんどん創出されていきます。新しい送り手と受け手の需給関係つまり市場自体がどんどん創出されていく訳です。
{新しい生活テーマの創出}は、「シーズ主導型の知識創造」において科学者の新事実の発見や技術者の新技術の発明が{生命線}であるように、「ニーズ主導型の知識創
造」の{生命線}であります。
社会における価値形成のダイナミズムには、おおよそ2種類あります。
1つは、送り手側の事業資源という{手段}が先にあってその活用を目標に4つの「情報の領域」が関わっていくダイナミズムです。
高度成長期のメーカーが主導した最も効果的だった価値形成パターンであります。
このパターンは、まったく新しい必需品、たとえば遺伝子治療薬や超ハイテク基幹部品や水素エンジンなどにおいて有意義に反復されましょう。
いま1つは、そうした送り手側の前提がなく、受け手側にとって有意義な{新しい生活テーマ}という{目的}が先にあってその達成を目標に4つの「情報の領域」が関わっていくダイナミズムであります。
堅実生活期の現代、生活創造者とビジネス創造者が主導する最も効果的な価値形成パターンであります。
このダイナミズムは、{生活文化が経済と政治をコントロールしていく21世紀}、社会的に有意義なテーマライフを追求する「生活創造者」がそのテーマに関連するビジネスの「ビジネス創造者」に変容するといった人的循環のエンジンです。
一つ具体的な事例をあげましょう。
日本の「路面下空洞探査車両」を製造しているハイテクベンチャーに、対人地雷の撤去活動をする世界的NGOが、金属探知器で検知できない地雷を空洞探査技術で検知する探知器の開発を依頼しました。この企業は大手電機メーカーその他との協力体制でこの依頼に見事に答えました。現地での実証実験を成功させ、今後は実地トレーニングに入るそうです。私は、テレビのレポート番組で知りました。NGOからは、「ハイテクの平和利用先進国の日本ならではの国際貢献」として高い評価を受けているそうです。
このケースで、技術力の粋を結集した技術者たちですが、損得を度外視した「生活創造者」として依頼を受け入れて仕事に着手していました。
ベンチャーの社長は「人を殺すために技術を開発した奴がいることが腹立たしい。そんな奴に負けない人を活かすための技術を開発しようと思った」と語っていました。
そんな彼の「人となり」が大手企業の同様に損得を度外視した協力を引き出せたのではないか、と私は想像します。
世界中に埋まっている対人地雷は一億コともいわれるが、やがて多くのボランティアがこの探知器を使うでしょう。また、埋設地域に暮らす多くの子供たちもこの探知器を目にするでしょう。そういう中からハイテクを平和利用する新しい商品やサービスの開発を志す「ビジネス創造者」が出てくるに違いありません。
この社長は「ビジネス創造者」でありながら、人から助けを求められ「生活創造者」として「公」のための仕事に励んだのでした。それに協力した技術者たちや、その成果を使用して地雷撤去活動をするボランティアたち、そんな共鳴する特定テーマの濃密な実践体験をした「生活創造者」の中から、共感と使命感を抱いて「ビジネス創造者」を目指す者が出てくる。それが感動という名の「人となり」の相互作用だからです。
モノづくりをするメーカーもモノ売りをする小売りも、すでに「生活創造者」と「ビジネス創造者」の人的循環を自らの知識創造活動に活かしたり、知識創造体制に取り入れることが不可欠になっています。なぜなら、
「品態」とは、生活創造情報を含んだ商品
「業態」とは、生活創造情報を含んだ商売
「店態」とは、生活創造情報を含んだ店舗
だからです。
それらを企画したり運営する人材は、自らが「生活創造者」であるか、「生活創造者」の協力を得るかしなければ、有効な<受け手側のコト実現の論理>に立脚した「ニーズ主導型の知識創造」をしていけません。
また業務向けの場合、
「品態」とは、ビジネス創造情報を含んだ商品
「業態」とは、ビジネス創造情報を含んだ商売
「店態」とは、ビジネス創造情報を含んだ店舗
だからです。
それらを企画したり運営する人材は、自らが「ビジネス創造者」であるか、「ビジネス創造者」の協力を得るかしなければ、有効な<受け手側のコト実現の論理>に立脚した「ニーズ主導型の知識創造」をしていけません。
|