第五章 コンセプトの情報化と具現化

 

 機会の情報」と「機会開発者」

 

「生活創造情報」「ビジネス創造情報」とは何か?



 「生活創造情報」とは、生活者が自分の求める生活を創造していく上で必要となる{機会の情報}のことです。
 同様に「ビジネス創造情報」とは、ビジネスマンが自分の求めるビジネスを創造していく上で必要となる{機会の情報}のことです。


 テレビの情報番組や一般的な生活情報誌やビジネス情報誌の伝える情報は、今こんな生活が流行っていますよ、いまこんなビジネスが儲かっていますよ、ということを報告する「生活報告情報」や「ビジネス報告情報」です。
 一方、イベントの開催情報や映画の放映情報を伝える「ピア」やパック旅行や航空チケットの情報を伝える「abロード」、求人情報を伝える「ガテン」、賃貸マンションやアパートの情報を伝える「アパマン」、競馬の情報を伝える「競馬新聞」などは、生活者の特定テーマの生活を実現するための{機会の情報}、つまり「生活創造情報」を掲載しています。

 「生活創造情報」の特徴を、「生活報告情報」との関係で解説するならば、特定テーマの生活についての「生活報告情報」をすでに知っている生活者に対して、その生活に参加する{機会の情報}を伝えることにあります。
 同様に「ビジネス創造情報」の特徴も、「ビジネス報告情報」との関係で解説するならば、特定テーマのビジネスについての「ビジネス報告情報」をすでに知っているビジネスマンに対して、そのビジネスに参加する{機会の情報}を伝えることにあります。

 「生活創造情報」や「ビジネス創造情報」は、マッチングメディアが{機会の提供者}と{機会の需要者}とを、それぞれのニーズに基づいてマッチングすることを目的にしています。
 一方、「生活報告情報」や「ビジネス報告情報」は、コンテンツメディアが取材編集したコンテンツを発信し、視聴者や読者に受信してもらうことを目的にしています。


 インターネットは、すべての「情報の領域」の情報、つまり「商品解説情報」「販売促進情報」「生活(ビジネス)報告情報」「生活(ビジネス)創造情報」の伝達手段となる情報インフラです。しかし、はじめてインターネットによって世界の個人や企業が自由に情報の受発信をできるようになったのは、特に「生活創造情報」と「ビジネス創造情報」です。つまり、eマーケットやオークションサイト、出会い系サイトに象徴される「マッチングメディア」としての側面を重視すべきでしょう。
 インターネットは、従来の{受動的な受け手}を対象としてきた情報メディアにはない展開と発展をしていく。すでに多様な個人や企業が発信する「生活創造情報」と「ビジネス創造情報」が、{能動的な受け手}が主体的に{機会の情報}を相互交流するマッチングをともなう形で、加速度的に拡大しかつ進化させています。
 「オフ会」なるライフスタイルは、もっともプリミティブな生活創造者の相互交流であり、「電子商取り引き市場」なるビジネススタイルはもっとも先鋭的なビジネス創造者の相互交流であると考えれば分かりやすいでしょう。

 

 

 

 

「生活創造者」「ビジネス創造者」とその人的循環



 「生活創造者」とは、自分の価値観で、自分流の生活を実現していく生活者のことです。
 生活のテーマやその生活を採用する人口の多寡を問わない。但し、単なる人真似ではなく、自分なりのやり方で新しい生活を実現することが条件です。何かについてのそんな最初の実践者のことを「元祖の○○生活創造者」と言いましょう。
 海外では多くの人が当たり前にやっている生活を日本で初めて実践した人も、「日本での元祖の○○生活創造者」と捉えて良いでしょう。

 そして原理的には、「元祖の○○生活創造者」のことを口コミで知るなどして現場に行き生のリアル情報に触れて、自分なりに○○生活を始めていく人々が「一般の○○生活創造者」になっていく、ということです。

 こうした新しい生活機会を自分なりに開発する{機会開発者}である両者をまとめて「生活創造者」と呼んでいます。


 「ビジネス創造者」とは、自分の発想と考え方によって独自の仕事を実践していくビジネスマンのことです。 
 ビジネスのテーマやその市場規模の大小を問わない。但し、単なる人真似ではなく、自分なりのやり方で新しい仕事を実践することが求め条件です。何かについてのそんな最初の実践者のことを「元祖の○○ビジネス創造者」と言いましょう。
 海外では多くの人が当たり前にやっているビジネスを日本で初めて実践した人も、「日本での元祖の○○ビジネス創造者」と捉えて良いでしょう。
 
 そして原理的には、「元祖の○○ビジネス創造者」のことを口コミで知るなどして直接交流し生のリアル情報に触れて、自分なりに○○ビジネスを始めていく人々が「一般の○○ビジネス創造者」になっていく、ということです。

 こうした新しいビジネス機会を自分なりに開発する{機会開発者}である両者をまとめて「ビジネス創造者」と呼んでいます。


 「生活創造者」は、単にモノを真似て買い揃えていく消費者(=顔のない人種)ではありません。
 独自の嗅覚から自分らしい生活創造の{機会の情報}を求めて思考し行動する機会開発者です。自らも実践を通じて「生活創造情報」を発信する主体性ある生活者(=顔のある人となり)であります。

 同様に「ビジネス創造者」も、単にモノを真似て作ったり売ったりするだけのビジネスマン(=顔のない人種)ではありません。独自の嗅覚から自分らしいビジネス創造の{機会の情報}を求めて思考し行動する機会開発者です。自らも実践を通じて「ビジネス創造情報」を発信する主体性をもつ企業家(顔のある人となり)であります。
 「ビジネス創造者」と、一般的なモノ真似開発スタッフ、人真似企画スタッフとの大きな違いは、彼らが{他の人では替えが利かない}ことです。
 彼らは、事情が許せばその会社でなくてもやっていける独自性という名の本物の個性をもっています。常に独自性を伸ばし発揮したいという熱意をもっています。つまり、何らかの専門分野の単なる知的能力の持ち主(=人種)ではなく、{個人的なリスクを背負ってでも自分の可能性に賭けうる}態度能力の持ち主(=人となり)であることが、成功する人ほど強い特徴です。
 

 

 

 

 

 


 現代において着目すべき重要な現象は、「生活創造者」が容易に「ビジネス創造者」になり、また「ビジネス創造者」の新しい商品(品態)や商売(業態)や店舗(店態)が新しい「生活創造者」を生む、その中の特に深く共感した「生活創造者」がさらに・・・という人的循環であります。

 ボランティア活動に強い熱意をもった「生活創造者」は、同士が集まれば容易にNPO 事業に関わる「ビジネス創造者」になりうる。そして新しいNPO事業は、さらに新しいボランティア活動に助けられる「生活創造者」を生む、その中の特に深く共鳴した「生活創造者」がさらに・・・という人的循環が、すでに生じています。
 もちろん、この人的循環はボランティア活動に限りません。
 
 たとえば、若者や主婦の職業につくつき方が多様化している現象にも見受けられます。
 かつてパソコンブームにおいて、ゲームソフトづくりやパソコン通信に興じていた「オタク」がいた。パソコンライフにおける「生活創造者」であります。彼らがソフトハウスを立ち上げたりネットベンチャーに就職してプログラマーになれば、それはパソコンライフに関わる「ビジネス創造者」の一員になったということです。そして彼らがユニークなソフトやITサービスを生み出せば、新しい性向をもったゲームファンやインターネット利用者という、パソコンライフにおけるさらに新たな「生活創造者」を生んでいきます。

 ユニークな発想の料理好きや収納好きの主婦は、その段階では「生活創造者」です。しかし、テレビや生活情報誌で取り上げられたりすれば、自他ともに認める料理研究家や収納研究家という「ビジネス創造者」であります。彼女たちのノウハウの指導や提案は、料理や収納におけるさらに新たな「生活創造者」を生んでいきます。


 こうした人的循環は、個人のアイデアや少数精鋭の試みが鍵をにぎる「生活文化産業」だから起こり得るのです。
 たとえば重厚長大の重化学の装置産業や先端科学がものをいう超ハイテク産業では起こりようがない。だから、大した事ではな些末な循環ということにはなりません。企業と就労者と対象とする顧客の総数から言えば、車や家電から食品などにいたるメーカー、それを売る多様な大規模から小型までの小売りそして多様な飲食娯楽その他のサービス業、そしてそれらについて情報提供する情報産業、そうした総体である「生活文化産業」の方が圧倒的であります。重厚長大の重化学の装置産業や先端科学がものをいう超ハイテク産業の受け皿に他なりません。成長の見込まれるIT産業は、川上から川下までを対象としますが、当然工場や研究所以外の「生活文化産業」の時空を対象とする割合は大きい。


 「生活創造者」と「ビジネス創造者」の人的循環がもたらすいわば{開放系の知識創造}は、このような「生活文化産業」に特有のものです。
 それは、重厚長大の装置産業や先端科学の超ハイテク産業がそうした人的循環を必要としないいわば{閉鎖系の知識創造}であることと対照的です。
 私は、前者を「ニーズ主導型の知識創造」
    後者を「シーズ主導型の知識創造」として峻別しています。
そして、専門としているマーケティング戦略やコミュニケーション戦略の対象を前者に絞り込んでいます。「コンセプト思考術」も前者において有効なものであります。

 
 21世紀は「知識産業社会」になると言われています。
 「知識産業社会」は、単に専門知識を高度化し知識資産をためこめばそれで済むといったものではありません。
 そのようなことならば、これまでの「シーズ主導型の知識創造」{モノ割り・縦割り}の知識体系においても行われてきました。
 これからの「ニーズ主導型の知識創造」{コト割り・横断的}の知識体系においては、「生活創造者」と「ビジネス創造者」のボーダーレスな人的循環が生ずることによって、新しい生活テーマ=ビジネステーマ自体がどんどん創出されていきます。新しい送り手と受け手の需給関係つまり市場自体がどんどん創出されていく訳です。
 {新しい生活テーマの創出}は、「シーズ主導型の知識創造」において科学者の新事実の発見や技術者の新技術の発明が{生命線}であるように、「ニーズ主導型の知識創
造」
の{生命線}であります。



 社会における価値形成のダイナミズムには、おおよそ2種類あります。

 1つは、送り手側の事業資源という{手段}が先にあってその活用を目標に4つの「情報の領域」が関わっていくダイナミズムです。
 高度成長期のメーカーが主導した最も効果的だった価値形成パターンであります。
 このパターンは、まったく新しい必需品、たとえば遺伝子治療薬や超ハイテク基幹部品や水素エンジンなどにおいて有意義に反復されましょう。

 いま1つは、そうした送り手側の前提がなく、受け手側にとって有意義な{新しい生活テーマ}という{目的}が先にあってその達成を目標に4つの「情報の領域」が関わっていくダイナミズムであります。
 堅実生活期の現代、生活創造者とビジネス創造者が主導する最も効果的な価値形成パターンであります。
 このダイナミズムは、{生活文化が経済と政治をコントロールしていく21世紀}、社会的に有意義なテーマライフを追求する「生活創造者」がそのテーマに関連するビジネスの「ビジネス創造者」に変容するといった人的循環のエンジンです。


 一つ具体的な事例をあげましょう。
 日本の「路面下空洞探査車両」を製造しているハイテクベンチャーに、対人地雷の撤去活動をする世界的NGOが、金属探知器で検知できない地雷を空洞探査技術で検知する探知器の開発を依頼しました。この企業は大手電機メーカーその他との協力体制でこの依頼に見事に答えました。現地での実証実験を成功させ、今後は実地トレーニングに入るそうです。私は、テレビのレポート番組で知りました。NGOからは、「ハイテクの平和利用先進国の日本ならではの国際貢献」として高い評価を受けているそうです。

 このケースで、技術力の粋を結集した技術者たちですが、損得を度外視した「生活創造者」として依頼を受け入れて仕事に着手していました。
 ベンチャーの社長は「人を殺すために技術を開発した奴がいることが腹立たしい。そんな奴に負けない人を活かすための技術を開発しようと思った」と語っていました。
 そんな彼の「人となり」が大手企業の同様に損得を度外視した協力を引き出せたのではないか、と私は想像します。
 世界中に埋まっている対人地雷は一億コともいわれるが、やがて多くのボランティアがこの探知器を使うでしょう。また、埋設地域に暮らす多くの子供たちもこの探知器を目にするでしょう。そういう中からハイテクを平和利用する新しい商品やサービスの開発を志す「ビジネス創造者」が出てくるに違いありません。
 この社長は「ビジネス創造者」でありながら、人から助けを求められ「生活創造者」として「公」のための仕事に励んだのでした。それに協力した技術者たちや、その成果を使用して地雷撤去活動をするボランティアたち、そんな共鳴する特定テーマの濃密な実践体験をした「生活創造者」の中から、共感と使命感を抱いて「ビジネス創造者」を目指す者が出てくる。それが感動という名の「人となり」の相互作用だからです。



 モノづくりをするメーカーもモノ売りをする小売りも、すでに「生活創造者」と「ビジネス創造者」の人的循環を自らの知識創造活動に活かしたり、知識創造体制に取り入れることが不可欠になっています。なぜなら、

 「品態」とは、生活創造情報を含んだ商品
 「業態」とは、生活創造情報を含んだ商売
 「店態」とは、生活創造情報を含んだ店舗

だからです。
 それらを企画したり運営する人材は、自らが「生活創造者」であるか、「生活創造者」の協力を得るかしなければ、有効な<受け手側のコト実現の論理>に立脚した「ニーズ主導型の知識創造」をしていけません。

 また業務向けの場合、

 「品態」とは、ビジネス創造情報を含んだ商品
 「業態」とは、ビジネス創造情報を含んだ商売
 「店態」とは、ビジネス創造情報を含んだ店舗

だからです。
 それらを企画したり運営する人材は、自らが「ビジネス創造者」であるか、「ビジネス創造者」の協力を得るかしなければ、有効な<受け手側のコト実現の論理>に立脚した「ニーズ主導型の知識創造」をしていけません。