|
第五章 コンセプトの情報化と具現化
。 現代において有効な階層分類
コンシューマー狙いとカストマー狙い
階層分類とは、人々をいくつかの括りに分類することです。
そして、商品や商売や店舗は、ある括りのお客さんをターゲットに想定します。
そのやり方はいろいろですが、大きく分けて2通りです。
1つは、送り手側の論理で、単純に{わが社の商品を買ってくれる人}{わが社の商売を利用してくれる人}{わが社の店舗に来てくれる人}をターゲットとする場合です。「買ってくれる人がお客さんだ」では、「お客がお客だ」と言っているだけですから、ターゲットの説明になっていません。
もう少し具体的に{わが社の商品は若い女性が買ってくれているから、ターゲットは若い女性だ}{わが社の商売は中年のビジネスマンが利用しているから、ターゲットは中年ビジネスマンだ}{わが社の店舗は年寄りが来ているから、ターゲットは年寄りだ}と言ったとしましょう。しかし、それでも、{どんな若い女性なのか}{どんな中年ビジネスマンなのか}{どんな年寄りなのか}ということを説明しない限り、前述の「お客がお客だ」と言っているのと本質的な違いはありません。
つまり以上は、送り手側のモノ提供の論理で、モノを消費してくれる人、つまり消費者=コンシューマーをターゲットにする、という考え方なのです。
(カストマー=顧客とコンシューマー=消費者の概念の違いを正確に知りたい方は、研修資料サイトの「カストマー概説」をダウンロードしてください。)
コンシューマー狙いの場合、ターゲットを、性別、年齢、職種、最終学歴、居住地などの<交換不可能な属性>で階層分類します。この階層分類によるターゲット設定が有効なのは、<交換不可能な属性>の組み合わせによって本当に消費者が高い確率で確定できる場合です。そのためには、想定されたターゲット階層が本当に高い確率で当該品種の消費者であること(とういうことは、当該品種の消費者の内の、想定以外の非ターゲット階層の占める割合が本当に小さいこと)が条件です。
たとえば、{普通の洗濯洗剤}のようなコモディティの場合、主婦のほとんどが購入者であって、主婦や女性以外の購入者の割合はとても小さいから、条件を満たしていて有効です。
一方、コモディティではない品態の場合、条件を満たさないので、有効ではありません。たとえば、{化学洗剤を使っていない洗濯洗剤}というものが東急ハンズに売っています。買うのは主婦とも女性とも限らない。男性でもエコライフに関心のある人ならば買っている。いや、エコライフに関心のある老若男女が買っている、と言うべきでしょう。
<交換不可能な属性>の組合わせによるターゲット設定は、スーパーのような業種、店種には有効です。たしかに主婦や女性の利用が大半を占めます。
しかし、ドンキホーテのような業態、店態には有効ではありません。深夜に車で移動して気晴らししたい老若男女が利用している。彼らを<交換不可能な属性>の組み合わせで括ることはできません。
品態、業態、店態は、ある特定の生活テーマにこだわる顧客=カストマーをターゲットとしています。
ドンキホーテならば{深夜の気晴らしライフ}であり、エコ品態ならば{エコ志向ライフ}にこだわるという属性によってターゲット設定するしかないのです。
つまりカストマー狙いの場合、本人が交換できる属性、つまり<選択可能な属性>でターゲットを階層分類します。エコ志向にこだわることもこだわらないことも本人には自由に選択できる。これは、受け手側のコト実現の論理に他なりません。
(蛇足ですが、職業という属性は選択は可能ですが、店頭で何かに気づいてこだわりを覆すように転職はできないので、選択不可能な属性と捉えます。引っ越しできる居住地や転換できる性もについても同様です。)
ある括りのお客さんをターゲットに設定するやり方は大きく分けて2通りあると述べたもう1つは、受け手側の生活実現の論理で、ある生活へのこだわりを持ちたいあるいは持っている顧客=カストマーをターゲットにする、という考え方なのです。
カストマー・ターゲットは、まず<選択可能な属性>を明快にした階層分類によって想定します。
そして次に、ターゲットへのアプローチというステップをふみます。
コンシューマー・ターゲットの場合、<交換不可能な属性>を常態としているので、ターゲットなら誰にでも同じようにまた常に同じようにアプローチすれば済みます。
一方、カストマーがターゲットの場合、<選択可能な属性>を選択してもらうことから始める必要があります。特定の生活テーマへのこだわりが選択的なだけに、こだわりのない人にもこだわる選択をしてもらって、まずカストマーになってもらわなければ何も始まらないのです。既に存在するターゲットにアプローチするだけでなく、潜在的なターゲットを顕在化することが必要です。
「エコ志向へのこだわりのある人がターゲットである」とは、こだわりのない人を相手にしないというのではありません。こだわりのなかった人にも喜んでこだわる人になってもらう、という顧客創造のアプローチから始めるということです。
それをしなければ、ニッチな先端的な階層だけをいつまでも相手にすることになり、市場規模を拡大できない。それでは成功的な成長ビジネスにはなりません。
さらに次に、ターゲットのヘビーユーザー化というステップをふみます。
コンシューマー・ターゲットの場合、ポイントカードやマイレージサービスの会員特典等による顧客囲い込みをすればいい。
一方、カストマー・ターゲットの場合、カストマーのこだわりを深化させて競合には抱けない顧客期待と顧客満足を提供していかなくてはなりません。品態はさらなるこだわりの品態にして、業態はさらなるこだわりのサービスにして、店態はさらなるこだわりの買いたい商品、利用したいサービスを情報発信して、それぞれがもつ「生活創造情報(新しい生活を創造する機会の情報)」を常に深化させていかなくてはなりません。
(業務用の品態、業態、店態の場合は、{特定のビジネステーマへのこだわり}に置き換えて捉えてください。)
以上のようなターゲットへの対応ステップを展開していくには、潜在的および顕在的なカストマーの全体をモレなくダブリなくいくつかの括りに分けて、それぞれに適切な対応をしていくことが必要です。
結論から言うと、カストマー個々人に対して、それぞれの「情報対応特性」に応じた情報提供をしていく、ということが不可欠なのです。
コンシューマーは、たとえばトイレットペーパーのようなコモディティが無くなったので買う必要のある人たちです。彼らは、トイレットペーパーを買って家に帰ってお尻を拭くという共通の購入意図を持っています。この場合、彼らの銘柄選択の思考パターンは画一的です。価格、ロール長、シングルかダブルか。一般にやわらかさや香などの品質は価格に比例すると考えられていて、さほど選択に悩むことはありません。
しかし、{化学洗剤を使っていない洗濯洗剤}のような品態の場合、東急ハンズの店頭には異なる方式や価格や大きさや形態の数種の銘柄が並んでいます。人によって購入意図は多様であり、しかも同じ人でも学習によってこだわりを深めることで容易に変化していく。そしてお客樣はある購入意図をもった後、その意図にどの銘柄が最適なのかを判断します。その際、人によって異なる思考パターンをとる訳です。
この自分の購入意図を明快化して購入銘柄を選択する際、どのような思考パターンをとるか、それが「情報対応特性」です。
個々人の「情報対応特性」を把握してそれに適した情報提供の仕方で即応することは、カストマーによる店態や業態や品態の選択と習慣的利用を勝ち得るための必須のマーケティング活動です。
以下、具体的に「情報対応特性」による階層分類を提示して解説していきたいと思います。
|