官能基と残基・アルカン
官能基と残基
  • 有機化合物の多くは反応に関与しやすい部分(官能基)とほとんど反応に関与しない部分(残基)が共有結合により結びついた形をしています(高校では上に挙げた程度のもの)。当然官能基のほうが重要になってくるんですが、残基について知識なしというのも問題です。
  • っというわけで、反応に関与しにくい残基のお話から。有機化合物の基本は『結合の手』を4本もつ炭素の骨組みです(本当に炭素骨格といいます)。この炭素がお互いに1本ずつ手を出し繋がっていき残った手は水素と手をつなぐ、つまり、
    CH−CH−CH−CH−CH−・・・−CH−CH
    という構造を持った物質はかなり安定で、無茶をしなければ反応に関与はしません。このうちの水素が上にある官能基と置き換わることにより、様々な性質の有機化合物ができるわけです。
  • で、こんなふうに物質を構成する元素が水素と炭素だけで結合がすべて単結合(一重の結合)の有機物をアルカン(飽和炭化水素)と言います。反応に関与しにくいためこの部分はよくR−と略されます。例えば
    −OH→R−OH
    CH−Cl→R−Cl
    みたいな感じです。反応に関係しないところは目障りだから消えて!なんでしょう(←結構酷い)。
  • 当然ですが、世の中の物質は、上のようなきちんとした鎖状のものばかりではなく、炭素の手の取り方が変化したものもあります。
    たとえばC10という分子を考えますと、





  • こんな具合に、分子式が同じなのに構造が違う、つまり、違う物質である組み合わせは有機では数限りなく存在します。このような組を異性体と呼び、炭素の骨組みが違う構造異性体、骨組みは同じだけど、官能基の位置が違う位置異性体、骨組み・官能基は一致しているのにその立体配置のみが異なる立体異性体などがあります。
  • 詳しくはあとで述べますが、異性体をうまく作り分けることは結構大変で、いつぞやに近所で脱税騒ぎを起こした某N氏は立体異性に含まれる、光学異性体をつくり分ける方法を開拓し、ノーベル賞までとりました。
  • おまけのお話です。ここまでで述べたとおり、炭素の骨組みを作り変えることと、異性体を作り分けることは、相当の困難を極めましたが、今日の大学ではそんなことあんまり研究していません。大変残念ですが現在の有機はそれらを既知のものとし、天然物に応用したり、錯体を使用したりと、かなり毛色の違う学問に感じます。
    以上、有機にあぶれた者の嘆きのコメントでした。
アルカン(Alkane)
  • では、有機化合物の骨組みとなるアルカンから見ていきましょう。
  • まず、アルカンのつくり方ですが、そんなものありません。もとい、あっても誰も使いません。炭素数10個程度のアルカンなら、大体のものは売っているんで、教授に頼んで買いましょう。むしろ、アルカン作るために他の化合物買ったら、教授に叱られます
    ・・・一応ノートに書いてあったから紹介します。酢酸ナトリウムを水酸化ナトリウムで処理しメタンができるそうです。
    CH3COONa + NaOH → CH4 + NaCO3
    まあ、メタンは買うときボンベだからなあ。
  • ただし、非常に複雑な骨格のアルカンがどうしても必要で、薬品会社にも売ってない場合は仕方ないのでつくります(そんな必要まずないけど)。この場合でも、それなりの官能基を足がかりに骨格を形成し、白金触媒下で水素と反応させてすべての官能基をぶっとばしてやります。白金触媒水素は無茶苦茶強力な還元剤で、温度、圧力を上げてやれば、ほぼすべての官能基を還元できます。ただし、ほとんどの場合無差別攻撃になってしまし、残したい官能基まで潰すので、工業的に大量の還元を行う場合以外、特に実験室ではあまり使いません。とりあえず、エチレンの還元でも挙げておきますか。
    CH=CH +H → CH−CH
    うわっ、意味ねえ。
  • 勘のいい人なら気づいているかもしれませんが、アルカンは安定すぎて反応に関与させるのは困難です。そんなわけで、アルカンを原料に反応させて、新しい物質をつくる反応はあまり行われません。
  • 実験室でできる反応といえばまあ、アルカンのハロゲン化ぐらいのものです。例えば、メタンに当量(同モル量のこと、2当量といえばモル量で2倍のこと)の塩素ガスを混ぜて強い光を当ててやります。たぶん爆発しますね。で、実験室は油っぽい汚れで満たされるでしょう(^^”。生成物はモノクロロメタンです。
    CH +Cl → CHCl + HCl↑
    できたモノクロロメタンに塩素を混ぜて光を当てれば水素を塩素に置換していくことができて、最終的にはテトラクロロメタン(四塩化炭素)になります。
  • この反応はラジカル反応で当量以外で制御するのは事実上不可能です。
    メタンを塩素化するなら問題はないんですが、例えばプロパンCHCHCHを塩素化する場合
    CHCHCH +Cl → CHCl−CH−CH(1-chloropropane) + HCl↑
    CHCHCH +Cl → CH−CHCl−CH(2-chloropropane) + HCl↑
    の2つの反応が起きてしまい、生成物は混合物になってしまいます。その気になれば分離くらいはできますが、手間もお金もかかりウザッたいんで普通やりません。それぞれ欲しいものを買ってください。
    ちなみに塩素の場合、末端の水素は6個、真ん中の水素は2個しかないにもかかわらず、生成物はおおよそ1:1の混合物になります。これは、Hの反応性の問題で、普通水素に対してラジカル反応を行う場合、より水素の少ない炭素についている水素ほど抜けやすいという事実があります。そのため、塩素より反応性の弱い臭素を使って置換を行うとCH−CHBr−CHが優先生成し、場合にもよりますが、分離が不要になります。
  • このようにハロゲン化を行ってやれば、ここを足がかりに色々な物質にもっていくことがでます。ただね、何度も言うようだけど、簡単に手に入る化合物なら買ってください。ほとんどの場合その方が安いから。
  • 話はがらっと変わりますが、炭素数3以上のアルカンには、環状の物質が存在します。もっとも、3員環・4員環はひずみによりかなり不安定です。
    (環状物質を呼ぶとき、その間を形成している原子の数を〜員環と表現するよ)
    名前は鎖状アルカンの名前の頭にシクロ-(cyclo-)をつけるだけですが、6員環のシクロヘキサン(cyclohexane)の立体構造についてはちょっと注意が必要です。



    さらに水素についても注意が必要です。








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