ハロゲン化アルキル・求核置換反応
ハロゲン化アルキル(Alkyl Halid)
  • えー、他のとこもそうなんですが、全体の分子量のでかいのを考えると、他の官能基とか色々面倒そうなんで、とりあえず、
    CH3CH2−Cl
    みたいな小さな分子に限定して扱っていきます。あしからず。
  • 物理的性質ですが、何よりも電気陰性度の大きなハロゲンがくっついているがけあって、水素を全部同じハロゲンで置換したもの以外、その多くが極性をもち、分子間引力が大きくなって(水素結合)融点・沸点が高くなる。当然、臭素やら、ヨウ素やらで置換してやると、一気に分子量が上がるんで、やっぱり分子間相互作用は大きくなります。
  • では、ハロゲン化アルキルを作ってみましょう。って言うかさっきやった。
    CH +Cl → CHCl + HCl↑
    アルケンに対するハロゲンのラジカル的置換です。ただ、この反応、制御がしんどいんで、もう少し大人しいのでやってみましょう。
    CH3−CH=CH2+ HCl → CH3−CHCl−CH3 
    みたいな感じで、アルキンにハロゲン化水素を付加してやります。
    さらっと反応式書きましたが、二重結合にハロゲン化水素を付加する場合、水素の多いほうに水素が付加、水素の少ない方にハロゲンが付加します(マルコフニコフ則)。これはアルケンに対してH+を付加する場合なら原則として、ハロゲン化水素でなくても、たとえば、酸触媒での水の付加、酢酸、硫酸の付加の場合でも成立します。
    また、HClをガスではなく水に溶かした塩酸で処理すると、アルコールになってしまいます。
  • あと、HBrを付加させる場合、ラジカル反応を促進する過酸化カルボン酸が存在する場合、かなりの精度でマルコフニコフ則に逆らった付加をさせることができます。まあ、このへんはあとのアルキンのとこでやっときます。
  • 工業的にはアルコールからハロゲン化水素ガスで置換してやります。
    CH3−CH2−OH + HCl → CH3−CH2−Cl + H2
    ちなみに、ハロゲン化アルキルを加水分解することでアルコール合成することもできるので、この反応を円滑に進めるには脱水剤でも使って生成する水を除いてください。
  • 実験室規模でもアルコールから誘導することができます。この場合ハロゲン化水素ガスは扱いが面倒なんで、例えば塩化チオニル(SOCl2)などの試薬で塩素化してやります。
    CH3−CH2−OH +SOCl2 → CH3−CH2−Cl + SO2 + HCl
    他にもPCl5などもハロゲン化に用います。これらは、カルボン酸の−OHを−Clに置き換えるときにも出てきます。
  • ハロゲン化アルキルは様々な試薬に誘導できます。最も有名で使えるのがグリニャード試薬(Grignard reagent)と呼ばれるもので、マグネシウムと反応させてつくります。
    CH3−CH2−Br + Mg → CH3−CH2−Mg−Br
    具体的には乾燥エーテル(ジエチルエーテルやTHFが一般的)にハロゲン化アルキルと粉状のマグネシウムを混ぜて、置いておきます。
    このグリニャード試薬は容易に電離します。
    R−MgBr → R- + MgBr+
    このR-は反応性が高く、分子内の+に帯電した箇所に攻撃を仕掛け新たな結合を形成します。
    当然反応系に水が存在すると
    - + H−OH → R−H +OH-
    全体では
    R−MgBr + H2O → R−H + MgBr(OH)
    と、まあ、あっさり加水分解してしますため、グリニャード試薬は無水条件で合成し、反応させるさせる必要があります。
  • さて、早速ですがグリニャード試薬でなんか作ってみましょう。いろいろと使える反応はありますが、とりあえず代表的なものでケトンと反応させてみましょうか。
  • まずは、ブタンあたりを臭素でラジカル置換して2-ブロモブタンを作ります。

    できたブロモブタンを乾燥エーテル中でマグネシウム粉と混ぜて、グリニャード試薬にします。

    未反応のマグネシウムを取り除いた後、脱水のアセトンとでも反応させて、水を加えて加水分解してやります。

    っと、さきほど難しいだのできないだの言ってきたC―C結合の形成がいとも簡単にできてしまいます
    まあ、立体配置が気にもなるところですが、ここでは考えないことにしますね。(^^”
    こんなふうに、グリニャード試薬はC―C結合形成に怖くなるほど有用です。
  • グリニャード試薬は、マイナスの電荷をもった反応試薬で、核に対して攻撃を仕掛けるため、求核試薬と呼ばれます。グリニャード試薬は反応性が高く、色々な官能基と反応します。言い換えると、何か保護し変化させたくない官能基があったとしても、その官能基と反応して壊してしまう可能性があります。こんな場合、できるなら何らかの方法で官能基を保護してやる(保護基に誘導する)といいんですが、そうそううまく保護ができるとは限りません。そこで、反応性の異なる試薬が開発されています。例えば、
    R-Li (アルキルリチウム:グリニャードに似る)
    R-ZnBr (レフォマスキー:エステルを保護し、ケトンと反応)
    LiCu-R2 (ジアルキル銅リチウム:酸ハロゲン化物と反応しケトンと反応しない)
    などがあります。でてきたらはなしますが、高校の範囲は逸脱しまくりです。
  • あと、ハロゲン化アルキルから誘導できる反応試薬に、リンイリドなんてのがあります。
    これは、トリフェニルホスフィン(3-フェニルリン)と臭化化アルキルを混ぜ、強力な塩基(n-BuLi)でHBrを引き抜きます。

    当然、根元の炭素に水素のない、3級ハロゲン化アルキルでは作れません。
    これは、ケトン、アルデヒドと反応しアルケンを作ります(ウィティッヒ反応)。

  • 最後に、ハロゲン化アルキルはハロゲンの電気陰性度のため、ハロゲンの付いている炭素が、正に帯電しています。そのため、原子核に攻撃を仕掛ける求核試薬と反応し求核置換反応を起こします。詳しくは下でダラダラとやっていきますが、例えば、塩基による加水分解
    CH3−CH2−Cl + NaOH →  + CH3−CH2−OH + NaCl
    も、求核置換の一種です。
求核置換反応(Nucleophilic Substituion)
  • 求核って言うのは、原子核に対して結合をつくろうとすること。置換反応って言うのは、何かと何かが入れ替わる反応です。うん、呼んで字の如く!
  • で、求核置換反応をみていく前に、一般的な反応のメカニズムの解釈から。有機化学では反応の仕組みを、主に電子対の動きで理解しようとします。量子論の観点から見れば、電子対の動きなんてもので反応を理解しようと思うのはナンセンスですが、有機では反応の厳密理解より『何ができるか』に要点が置かれるんで、多くの反応にうまく適応できる近似としてこの方法がとられていると、物理化学の研究室に所属しながら合成メインのここの管理人は思っています。
  • つまり、『電子対が原子間に移動する=新たな結合ができる』が機構説明の大原則なんです。そこで、有機では電子対の移動を矢印で表現するものとします。つまり、非共有電子対や、多重結合の共有電子対が矢印の根元から矢印の先端に移動すると考えて表現していきます。
  • 例として、エタノール水溶液に塩酸をちょっと加えた状態を考えてみます。HClから放出されるH+はそれだけでは大変不安定なので、水溶液ならそのほとんどは水分子のもつ酸素の非共有電子対に配位結合してオキソニウムイオンH3+になっていることは知っていますね。もしエタノールの酸素上にも非共有電子対があるのでH+の一部はアルコールと結合していきます。その様子を矢印で表現すると、

    仕組み的には配位結合ですが、O−Hは共有結合と区別がつかなくなります。つまりもともと酸素のものだった非共有電子対の2個の電子のうち1個はH+のものとなり、水素の電荷はなくなり、酸素は電子1個を失い正電荷を持つことになります。
    でも、この説明には大きな落とし穴があります。水素・炭素・酸素のうち最も電気陰性度の大きい原子は酸素です。つまりこれらが共有結合をつくった場合、たとえ全体で正電荷をもっていたとしても酸素上により大きな正電荷が集まっているなんてことはありえないということです。このように形式的には電荷が存在していても、それが電気陰性度に逆らっているの電荷のことを文字通り『形式電荷』と呼び、日本、むしろ名古屋の一部の大学では電荷を四角で囲って表現します。当然この電荷は形式的なものですから、求核試薬の標的にされることはめったにありません。
  • すっごく余談ですが、形式電荷の表現法が名古屋限定である理由なんですが、この表現法を提唱したのが野依良治教授で彼に息のかかった教授が有機化学を教える場合、テストで形式電荷を無視すると即刻×にされるともっぱらの噂です。ちなみにこの表現法は世界的に一般化されているわけではないので英語のテキストではお目にかかれないと思います。僕個人としてはべつにこのような表現法に反対するわけではないのですが、ただでさえ写しにくい有機化学の黒板がさらにごちゃごちゃして見にくくなるのでやめてもいい気がしますが、それは名古屋地区から逃げない限り無理でしょう。
  • ちょっとした言葉の解説ですが、上のように電子対が原子核に対して新たな結合をつくろうとすることを『攻撃』あるいは『アタック』と表現します。上の例だと『酸素上の非共有電子対がプロトンに攻撃する』あるいは『酸素上の非共有電子対がプロトンにアタックする』と表現します。なんかかっこいいですね。
  • 補足!電子対の移動の場合→を使いますが電子1個が移動するラジカル反応の場合、片矢印を使います。一般に電子対の移動は電子過多(electron rich)の場所から電子不足(electron poor)の場所へ電子が流れるのでまだ理解しやすいのですが、ラジカルはそれ自体が電荷をもっているわけではないので、反応しうるところにかったぱしから攻撃を仕掛け無差別的になりがちなので制御がしにくいです。多くの場合、生成物が安定な方に攻撃は行くはずですが、副生物も多くなりやすいです。
  • さて、求核置換反応のお話に入りましょう。まず、置換反応は
    R−A + B → R−B + A
    のように何かと何かが入れ替わる反応です。つまり本体Rに対して新たに結合を作るAとRから離れていくB(脱離基)が必要になってくるわけです。求核置換反応はAが電子過多の化学種で核に攻撃を仕掛ける必要があるわけです。
  • では、どんな化学種が求核試薬として優れているんでしょうか?当然攻撃を仕掛ける電子対や多重結合がなければ話になりません。でも、たとえ電子対をもっていてもそれが反応に関与できないほど安定だったら反応は起きないか、起きても遅すぎて使えないわけです。どんな反応試薬でもそうですが反応試薬はそれ自体が不安定で反応により安定な化合物になれることが重要なんです。
    例えば非常に強い酸の共役塩基であるHSO4-やI-はそれ自体が安定に存在するため、これらを求核試薬にすることは困難で、もし起こそうとするなら、イオンの安定化のまったく得られない無極性溶媒下で本体Rの方を極めて不安定な+(カルボカチオン)にするなどの必要があります。
    逆に弱酸であるHCNやCH3COOHから生じるCN-CH3COO-、もっと言うなら強塩基から生じるOH-、さらには水酸化ナトリウム以上の塩基性をほこるナトリウムアルコキシドから生じるアルコキシドイオン(CH3CH2-など)は発生させることができれば優れた求核試薬になります。
  • もう気づいているかもしれませんが『優れた脱離基』も考えることができます。言うまでもありません。求核試薬として優れているものほど脱離基には向かないってことです。抜けて安定じゃなきゃ抜けようとはしないってことです。例えばハロゲン化アルキルのR−Clは溶媒として水があればCl-として圧倒的安定化が得られるんで、反応系に大量の水があればそこそこの脱離基になります。上で紹介したR−OH2+も脱離後の水は安定なので脱離機として使えます。さらに脱離基として改良されたものとして、トシル基(Ts−:パラトルエンスルホニル基)なんてのもあります。
  • ここからは置換の機構について考えていきます。単純に考えると2つのパターンがありえますね。
    • 先に求核試薬が炭素と結合を作り、あとから脱離基が抜けていく(N2反応)
    • 先に脱離基が抜けて、あとからそこに求核試薬が結合をつくる(N1反応)
    いずれの方法で反応が起きるかは条件によりますし、両方が同時におこっている可能性もあるんで、ある反応をいずれかに分類するのはナンセンスな気もしますが、一応、起きやすい条件を元に議論していきましょう。
  • まず、SN2反応ですが、この段階で例をあげることのできる反応がハロゲン化アルキルの合成法とその加水分解のみってのが深刻ですが、まあ、ブロモエタン(CH3CH2−Br)の加水分解が例として妥当でしょう。
    CH3CH2Brを水酸化ナトリウム水溶液と混ぜてちょっと加熱してやると、エタノールと臭素化ナトリウムができます。
    CH3CH2Br + NaOH → CH3CH2OH + NaBr
    この反応はSN2反応で、先にOH-がBrのついている炭素を攻撃します。

  • この機構の要点はいくつかあります。
    第一に、この反応では求核試薬は臭素の反対側から攻撃(背面攻撃)を仕掛けなくてはいけないこと。そのため臭素の反対側が立体的に込み合っていると反応が起きない点です。そのためSN2反応は脱離基のついている炭素が他の炭素と結合しているほど起きにくいということです。ちなみにある官能基が結合している炭素にいくつの炭素鎖が結合しているかを『級』で表現します。例えば、CH3CH2BrはBr根元の炭素と結合している炭素は1つだけなので『1級』となります。この言葉を使うと『3級のハロゲン化アルキルはほとんどSN2反応を起こさない』となります。

    さらに、背面からの攻撃により反応が進むため立体反転が確実に起こる点です。さっきの反応で、水素の1個を質量数2の水素(重水素・デューテリウム:Dで表現)に置き換えてやると

    のような立体保持の物質はできてこないわけです。つまり立体選択性があるわけですね。
    最後に、SN2反応は2個の化学種が衝突して起こる反応なんで、どちらの濃度を上げてやっても反応が早くなる点です。ちなみにSN2反応の『2』は2個の化学種が衝突しなければ起きないの意味の2だそうです。
  • では、求核試薬との衝突が極めて起きにくい3級のハロゲン化アルキル、例えば(CH3)3C−Brは、塩基で加水分解できないのでしょうか?そんなことはありません。むしろ3級ハロゲン化アルキルのほうが速やかに加水分解されます。
    (CH3)3C-Br + NaOH → (CH3)3C-OH + NaBr
    もう分かりましたね。N1反応です。SN2反応との対比から、R−BrのBrが、他の分子に衝突することなく脱離することで進行することはきっと読めてましたよね。つまり
    (CH3)3C-Br → (CH3)3+ + Br-
    がおきてから
    (CH3)3+ + OH- → (CH3)3C-OH
    がおきてアルコールになるわけです。
  • 当然この反応のネックは『(CH3)3+ができるかどうか?』にかかっています。一般に共有結合を好む炭素は自分の上に電荷や不対電子(ラジカル)が乗るのを非常に嫌います
    よって、R+(カルボカチオン),R-(カルボアニオン),R・(カルボラジカル)はいずれも不安定で、すぐに何かと反応してしまいます。当然、不安定な化学種を作る反応は起きにくいわけです。
  • じゃあ、何で(CH3)3+は生成するのかというと、やっぱりカルボカチオンの安定性が問題になっているんです。『カルボカチオンおよびカルボアニオン・カルボラジカルはいずれも3級が最も安定で2級、1級になるに従い安定度が下る』ことが知られています。つまり、3級のハロゲン化アルキルからはある程度カルボカチオンが生じるけど、1級ハロゲン化アルキルからカルボカチオンは非常に生じにくいわけです。ただし、いくら安定だからといってもどんな条件でも簡単にハロゲンがはずれるわけではありません。カチオンを安定化する要因、つまり、溶媒としてイオンを安定化する極性溶媒(例えば水やアルコール)を用いなくてはならず、溶媒安定化の望めない無極性溶媒中ではSN1反応はほとんど起きず、極めて遅いSN2反応が起こるか、まったく反応が進行しません。
    さらに、ハロゲンを脱離する場合、電子不足の化学種であるAlCl3などのルイス酸-OHを脱離する場合、脱水剤の濃硫酸といった具合に脱離を促進する試薬が必要になります。
  • また、中間体となるカルボカチオンは平面の構造をとっています。

    そのため、求核試薬はいずれの面からも攻撃することができます。

    だから生成物は原料の立体を反転したものと保持したものの混合物になってしまいます。
  • 反応速度ですがSN1反応はカルボカチオンになる確率はきわめて低いが、カルボカチオンができれば速やかにOH-と結合するのが特徴です。つまり、OH-の濃度がある程度高ければ、カルボカチオンができる速度がそのままアルコールのできる速度になるわけです。よって、反応速度はハロゲン化アルキルの濃度をあげれば早くなるが、求核試薬の濃度を上げてもほとんど変化しないってことになります。
  • まとめると下の表のようになります
    反応物と機構
    攻撃をうける化合物
    反応機構
    3級ハロゲン化アルキル:R3-X イオン化を促進する溶媒ならSN1反応
    そうでない場合遅いSN2反応、あるは反応しない
    2級ハロゲン化アルキル:R2H-X 溶媒・反応条件によりSN1反応・SN2反応が決まる
    あるいは両方が同時に起きる
    1級ハロゲン化アルキル:RH2-X N2反応で進行
    無理に脱離を促進する場合、転移やハロゲン化水素の脱離が起こる
    それぞれの反応の特徴
    機構 反応物 速度 立体
    N2 1級で速やかに進行
    3級では遅いか進まない
    反応物・求核試薬両方の濃度に依存 反転する(選択性あり)
    N1 3級で速やかに進行
    1級では遅いか進まない
    反応溶媒は極性溶媒
    反応物の濃度に依存
    求核試薬の濃度を上げても速度はほとんど上がらない
    反転・保持の両方の混合物
    (選択性なし)
  • 求核置換に関連した脱離反応(E反応)を紹介します。SN反応とE反応は多くの場合同じ反応条件で進行するため注意が必要です(競争反応)。ちなみにSN反応にSN1反応とSN2反応があるようにE反応にもE1反応とE2反応があります。
  • 脱離の代表的な例はアルコールからの脱水で、アルケンをつくる反応です。例えばエタノールに硫酸を加え加熱還流してやると
    CH3CH2-OH → CH2=CH2 + H2
    みたいな反応が起きます。硫酸による脱水ですが、エタノールに硫酸加えて煮る場合こんな反応が起きます。
    2CH3CH2-OH → CH3CH2-O-CH2CH3
    できてくるのはエーテルです。まあ脱水が分子内で起きるか2分子間で起きるのかの違いですが上がE反応、下がSN反応です。ちなみにこの反応は温度である程度制御できますが。
  • 細かい機構はやはりアルコールのところで紹介します。とりあえずE1は1分子で脱離、E2は2分子の絡んだ脱離ってことだけ覚えといて。
  • 最後にカルボカチオンの転移のお話です。転移はカルボカチオンが中間体として生成する場合、例えばSN1反応やE1がこれにあたりますな。
  • 例として、イソブチルアルコール(2-メチル-1-プロパノール)の臭素置換を考えます。イソブチルアルコールは1級のアルコールなので、普通に臭化水素と混ぜて反応させるとSN2反応が起きてイソブチルブロマイドができます。

    しかし酸であると同時に強力な脱水剤である硫酸を臭化水素に混ぜイソブチルアルコールと反応させると脱水が優先されて、不安定な1級カルボカチオンができます。
    すると、この不安定さを少しでも解消するため、隣接する水素が転移し安定な3級のカチオンに移行し、そこに臭素が付加して結局t−ブチルブロマイドができてきます。

  • これを利用するとこんな反応も起こせます。って言うかむしろ起こってしまいます。

    たぶん製薬会社から買うと、生成物より原料の方が高い気もしますが・・・
    この転移は2級から2級への転移なので、一見すると安定化が得られないようにも見えます。しかし、ここで安定化しているのはカチオンよりむしろ、ひずみの大きい四員環であることに注意してください。5・6員環はひずみが小さく安定なので、原料の四員環はカルボカチオンの生成によりひずみを解消できるようになったわけです。
    いずれにしても、生成物が不安定で、より安定な中間体に移行するため転移がおこることに違いはありません。注意してください。

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