|
有機化学(脂肪族)
有機化合物とは・・・
- 有機化合物とは一酸化炭素、二酸化炭素、炭酸塩、シアン化合物を除く炭素を含む化合物。主に出てくる原子をあげるとC,H,O,N,S,P,あとハロゲンかな。結構少ないでしょ。金属原子やったときなんか・・・。でも出てくる化合物は無限にあります(マジ)。入試なんか名前も知らない化合物がどんどんと・・・。まあいい返せば高校でやれる程度のことが理解できれば無数の化合物が扱えるわけですから。頑張ってきましょう!
- えっとまず覚えて欲しいことは下。官能基っていうんだけどあとで詳しく見ていくのでここでは暗記の必要はないけど、名前知っとくと話が円滑に進むかな。
| 結合(形) | 名称 | 総称 | エトセトラ |
 | 二重結合 | アルケン | 付加反応 |
 | 三重結合 | アルキン | 付加反応、アセチレド |
| −O− | エーテル結合 | エーテル | 催眠性、Naと反応しない |
 | エステル結合 | エステル | 加水分解(けん化) |
 | アミド(ペプチド)結合 | アミド(ペプチド) | 加水分解、タンパク質 |
| −OH | ヒドロキシル(水酸)基 | アルコール、フェノール類 | アルコールか、フェノールかで性質が異なる |
 | アルデヒド基 | アルデヒド | 還元性(銀鏡、フェーリング反応) |
 | カルボニル基 | ケトン | 還元性はない(アルデヒドと区別) |
 | カルボキシル基 | カルボン酸 | エステル化、弱酸だが炭酸より強い酸 |
| −NO2 | ニトロ基 | ニトロ化合物 | 還元を受け−NH2に |
| −NH2 | アミノ基 | アミン | 弱塩基性、ジアゾ化 |
| −SO3H | スルホ基 | スルホン酸 | 強酸性 |
- 今後はC−Hの結合はCH、カルボキシル基は−COOHの様に省略して書きます。
さらに、骨格中の水素は面倒なので省略します。炭素の手が足りない場合、そこには水素があると思ってください(省略1)。
さらに炭素Cも書くのが面倒なんで、結合の線が折れ曲がっているところには炭素があるという約束の下、省略してやります(省略2)
- ある物質に含まれる元素を調べるときの方法を紹介します。でもあんまり役に立つとは思えません。あくまで形式として。
- 炭素:燃焼させて生じる二酸化炭素を石灰水により検出(白濁)。
- 水素:燃焼させて生じる水を無水硫酸銅(白から青)か、塩化コバルト(桃色から青)で検出。
- 窒素:試料(物質)をソーダ石灰(NaOH+CaO)と共に加熱し発生するアンモニアを水に湿らせた赤色リトマス紙などで検出(塩基性の気体はあまり無い)。
- 硫黄:試料を水酸化ナトリウムと共に加熱し、酢酸鉛(U)紙にかざすか、この水溶液に通して、PbSの黒色により判断。
- 塩素:焼いた銅線に試料をつけバーナーの外炎で焼く。CaCl2の炎色反応として青緑の炎が観察される
- 有機で使うと便利な原子価というものを紹介しときます。これが酸化還元で匂わせておいた有機の酸化数に変わる道具です。この原子価は早い話『結合の手の数』です。ただ厳密性を高めるため『共有結合の手の数』としておきます。普通、物質の中ではこの『手』はすべてなにかと結合を作っていて余ったりはしません。だから構造特定のときにはこの『手』の数を目安にするんです。具体的に炭素は4、酸素・硫黄は2、窒素・リンは3、ハロゲンと水素は1となります。例えばメタン(CH4)確かにCに4つ、Hはそれぞれ1つの共有結合を持ってます。これを利用すると
CH3−CH3(エタン)、CH2=CH2(エチレン)
などにある炭素間の結合の数もはっきり分かります。
- とまあ、つかえるとすげー便利な原子価なんだけど、万能じゃあないんです。なにより配位結合に弱い。酸素や窒素、硫黄やリンは配位結合により手の数が増えてしまいます。さらに金属では配位数のほうが便利です。まあそのリスクを考慮しても便利だけどね。
元素分析
- 有機分子の分子式を決定するには元素分析を行うのが一般的。大学にいけばそれこそ機械に放り込むだけで、勝手に分析してデータが出てきますが、高校までの範囲でもC,H,Oから成る有機物質ならわりと簡単に元素分析できます。
- まず、原理ですが、C,H,Oから成る有機物は燃やすと水と二酸化炭素まで酸化されることを利用します。つまり、一定量のサンプルを持ってきてこれを完全に燃やしてしまい、出てきた水と二酸化炭素をそれぞれ回収してやって質量をはかります。これによってサンプル中のCとHの質量が分かるので、はじめの質量からこれらの質量を差し引いた分がOの質量となるわけです。
- 原理は簡単なのですが、いざやろうと思うとはっきり言ってしんどいです。まずは実験装置ですが、以下のような感じに作っていきます。

- 左のバーナーでサンプルを気体にして、加熱したCuOメッシュに通すと完全に酸化されて、水と二酸化炭素になります。水(水蒸気)は塩化カルシウムに、二酸化炭素はソーダ石灰に吸着されるため、あらかじめ塩化カルシウム管とソーダ石灰管の質量を測っておけば、吸着後との差分をとることによって、発生した水と二酸化炭素の質量が分かります。ここで注意することは、管をつなぐ順番です。もし先にソーダ石灰管をつないでしまうと、ソーダ石灰は酸性の気体(二酸化炭素)の吸着剤であると同時に、かなり強力な脱水剤でもあるため、発生した水蒸気までも吸着してしまいます。これでは発生した水と二酸化炭素それぞれの質量を知ることはできません。よって、それ自体は中性で二酸化炭素を吸着しない塩化カルシウム管を先につないでおきます。
- 普通この実験はmgのオーダーで行うため、素手で器具に触れるだけですぐに誤差が出てきます。っていうか、そもそもかなり精度のよい天秤がないとデータ自体が信頼できないものになってしまいます。まあ、そんな苦心を乗り越えたとして、めでたくデータが取れたとしましょう。文字使って説明すると、説明している私がわかんなくなるので、実際の生データ使ってといてみましょう。
- データ
『サンプル(白色粉末)100mg 天秤はmgまで測定可能』
| ソーダ石灰管の質量変化 |
147mg |
| 塩化カルシウム管の質量変化 |
60mg |
まず、発生した二酸化炭素が147mg、発生した水が60mg。これはOKね。
C=12,H=1,O=16とすると、CO2=44,H2O=18。これも大丈夫だよね。

- ちょっと注意です。天秤の精度はmgまでなので水の60mgの有効数字2桁が有効な桁数です。つまり3桁目は既にあやしいために3桁目を四捨五入します。4桁目は計算してもあんまり意味ないわけね。
- さらに重要な注意!!ここででてきたのは組成式であって、分子式ではありません。CH2Oの分子式をもつ物質としてホルムアルデヒドが挙げられますが、これは常温常圧で液体です。結局(CH2O)nの分子式を持つ分子ならすべて同じ結果が出てしまいます。よって受験では気体の状態方程式や沸点上昇、あるいは凝固点降下を利用して分子量を求め分子式を決定するのが普通です。ちなみに大学ではマススペクトルと呼ばれる方法で分子量を決定するのが一般的かな。
官能基と残基・異性体
- 有機化合物の多くは反応に関与しやすい部分(官能基)とほとんど反応に関与しない部分(残基)が共有結合により結びついた形をしています(高校では上に挙げた程度のもの)。当然官能基のほうが重要になってくるんですが、残基について知識なしというのも問題です。
- っというわけで、反応に関与しにくい残基のお話から。有機化合物の基本は『結合の手』を4本もつ炭素の骨組みです(本当に炭素骨格といいます)。この炭素がお互いに1本ずつ手を出し繋がっていき残った手は水素と手をつなぐ、つまり、
CH3−CH2−CH2−CH2−CH2−・・・−CH2−CH3
という構造を持った物質はかなり安定で、無茶をしなければ反応に関与はしません。このうちの水素が上にある官能基と置き換わることにより、様々な性質の有機化合物ができるわけです。
- で、こんなふうに物質を構成する元素が水素と炭素だけで結合がすべて単結合(一重の結合)の有機物をアルカン(飽和炭化水素)と言います。反応に関与しにくいためこの部分はよくR−と略されます。例えば
C4H9−OH→R−OH
CH3−Cl→R−Cl
みたいな感じです。反応に関係しないところは目障りだから消えて!なんでしょう(←結構酷い)。
- 当然ですが、世の中の物質は、上のようなきちんとした鎖状のものばかりではなく、炭素の手の取り方が変化したものもあります。
たとえばC4H10という分子を考えますと、


- こんな具合に、分子式が同じなのに構造が違う、つまり、違う物質である組み合わせは有機では数限りなく存在します。このような組を異性体と呼び、炭素の骨組みが違う構造異性体、骨組みは同じだけど、官能基の位置が違う位置異性体、骨組み・官能基は一致しているのにその立体配置のみが異なる立体異性体などがあります。
- 詳しくはあとで述べますが、異性体をうまく作り分けることは結構大変で、いつぞやに近所で脱税騒ぎを起こした某N氏は立体異性に含まれる、光学異性体をつくり分ける方法を開拓し、ノーベル賞までとりました。
- おまけのお話です。ここまでで述べたとおり、炭素の骨組みを作り変えることと、異性体を作り分けることは、相当の困難を極めましたが、今日の大学ではそんなことあんまり研究していません。大変残念ですが現在の有機はそれらを既知のものとし、天然物に応用したり、錯体を使用したりと、かなり毛色の違う学問に感じます。
以上、有機にあぶれた者の嘆きのコメントでした。
アルカン(Alkane)
- では、有機化合物の骨組みとなるアルカンから見ていきましょう。
- まず、アルカンのつくり方ですが、そんなものありません。もとい、あっても誰も使いません。炭素数10個程度のアルカンなら、大体のものは売っているんで、教授に頼んで買いましょう。むしろ、アルカン作るために他の化合物買ったら、教授に叱られます。
・・・一応ノートに書いてあったから紹介します。酢酸ナトリウムを水酸化ナトリウムで処理しメタンができるそうです。
CH3COONa + NaOH → CH4 + NaCO3
まあ、メタンは買うときボンベだからなあ。
- 勘のいい人なら気づいているかもしれませんが、アルカンは安定すぎて反応に関与させるのは困難です。そんなわけで、アルカンを原料に反応させて、新しい物質をつくる反応はあまり行われません。
- 実験室でできる反応といえばまあ、アルカンのハロゲン化ぐらいのものです。例えば、メタンに当量(同モル量のこと、2当量といえばモル量で2倍のこと)の塩素ガスを混ぜて強い光を当ててやります。たぶん爆発しますね。で、実験室は油っぽい汚れで満たされるでしょう(^^”。生成物はモノクロロメタンです。
CH4 +Cl2 → CH3Cl + HCl↑
できたモノクロロメタンに塩素を混ぜて光を当てれば水素を塩素に置換していくことができて、最終的にはテトラクロロメタン(四塩化炭素)になります。
- この反応はラジカル反応で当量以外で制御するのは事実上不可能です。
メタンを塩素化するなら問題はないんですが、例えばプロパンCH3CH2CH3を塩素化する場合
CH3CH2CH3 +Cl2 → CH2Cl−CH2−CH3(1-chloropropane) + HCl↑
CH3CH2CH3 +Cl2 → CH3−CHCl−CH3(2-chloropropane) + HCl↑ の2つの反応が起きてしまい、生成物は混合物になってしまいます。その気になれば分離くらいはできますが、手間もお金もかかりウザッたいんで普通やりません。それぞれ欲しいものを買ってください。
- このようにハロゲン化を行ってやれば、ここを足がかりに色々な物質にもっていくことがでます。ただね、何度も言うようだけど、簡単に手に入る化合物なら買ってください。ほとんどの場合その方が安いから。
- 話はがらっと変わりますが、炭素数3以上のアルカンには、環状の物質が存在します。もっとも、3員環・4員環はひずみによりかなり不安定です。
(環状物質を呼ぶとき、その間を形成している原子の数を〜員環と表現するよ)
名前は鎖状アルカンの名前の頭にシクロ-(cyclo-)をつけるだけです。6員環のシクロヘキサンなんかが有名です。
ハロゲン化アルキル(Alkyl Halid)
- えー、他のとこもそうなんですが、全体の分子量のでかいのを考えると、他の官能基とか色々面倒そうなんで、とりあえず、
CH3CH2−Cl
みたいな小さな分子に限定して扱っていきます。あしからず。
- 物理的性質ですが、何よりも電気陰性度の大きなハロゲンがくっついているがけあって、水素を全部同じハロゲンで置換したもの以外、その多くが極性をもち、分子間引力が大きくなって(水素結合)融点・沸点が高くなる。当然、臭素やら、ヨウ素やらで置換してやると、一気に分子量が上がるんで、やっぱり分子間相互作用は大きくなります。
- では、ハロゲン化アルキルを作ってみましょう。って言うかさっきやった。
CH4 +Cl2 → CH3Cl + HCl↑
アルケンに対するハロゲンのラジカル的置換です。ただ、この反応、制御がしんどいんで、もう少し大人しいのでやってみましょう。
CH3−CH=CH2+ HCl → CH3−CHCl−CH3
みたいな感じで、アルキンにハロゲン化水素を付加してやります。
さらっと反応式書きましたが、二重結合にハロゲン化水素を付加する場合、水素の多いほうに水素が付加、水素の少ない方にハロゲンが付加します(マルコフニコフ則)。これはアルケンに対してH+を付加する場合なら原則として、ハロゲン化水素でなくても、たとえば、酸触媒での水の付加、酢酸、硫酸の付加の場合でも成立します。
また、HClをガスではなく水に溶かした塩酸で処理すると、アルコールになってしまいます。
- 工業的にはアルコールからハロゲン化水素ガスで置換してやります。
CH3−CH2−OH + HCl → CH3−CH2−Cl + H2O
ちなみに、ハロゲン化アルキルを加水分解することでアルコール合成することもできるので、この反応を円滑に進めるには脱水剤でも使って生成する水を除いてください。
- 実験室規模でもアルコールから誘導することができます。この場合ハロゲン化水素ガスは扱いが面倒なんで、例えば塩化チオニル(SOCl2)などの試薬で塩素化してやります。
CH3−CH2−OH +SOCl2 → CH3−CH2−Cl + SO2 + HCl
他にもPCl5などもハロゲン化に用います。これらは、カルボン酸の−OHを−Clに置き換えるときにも出てきます。
有機化学っぽい反応の解釈と矢印の振り方
- タイトルが長すぎるうえ、高校の範囲は無視です。でも覚えとくと便利かも・・・。有機化学では反応の仕組みを、主に電子対の動きで理解しようとします。量子論の観点から見れば、電子対の動きなんてもので反応を理解しようと思うのはナンセンスですが、有機では反応の厳密理解より『何ができるか』に要点が置かれるんで、多くの反応にうまく適応できる近似としてこの方法がとられていると、物理化学の研究室に所属しながら合成メインのここの管理人は思っています。
- まず結論。『電子対が原子間に移動する=新たな結合ができる』が機構説明の大原則なんです。そこで、有機では電子対の移動を矢印→で表現するものとします。つまり、非共有電子対や、多重結合の共有電子対が矢印の根元から矢印の先端に移動すると考えて表現していきます。
- 例として、エタノール水溶液に塩酸をちょっと加えた状態を考えてみます。HClから放出されるH+はそれだけでは大変不安定なので、水溶液ならそのほとんどは水分子のもつ酸素の非共有電子対に配位結合してオキソニウムイオンH3O+になっていることは知っていますね。もしエタノールの酸素上にも非共有電子対があるのでH+の一部はアルコールと結合していきます。その様子を矢印で表現すると、

仕組み的には配位結合ですが、O−Hは共有結合と区別がつかなくなります。つまりもともと酸素のものだった非共有電子対の2個の電子のうち1個はH+のものとなり、水素の電荷はなくなり、酸素は電子1個を失い正電荷を持つことになります。
でも、この説明には大きな落とし穴があります。水素・炭素・酸素のうち最も電気陰性度の大きい原子は酸素です。つまりこれらが共有結合をつくった場合、たとえ全体で正電荷をもっていたとしても酸素上により大きな正電荷が集まっているなんてことはありえないということです。このように形式的には電荷が存在していても、それが電気陰性度に逆らっているの電荷のことを文字通り『形式電荷』と呼び、日本、むしろ名古屋の一部の大学では電荷を四角で囲って表現します。当然この電荷は形式的なものですから、求核試薬の標的にされることはめったにありません。
- すっごく余談ですが、形式電荷の表現法が名古屋限定である理由なんですが、この表現法を提唱したのが野依良治教授で彼に息のかかった教授が有機化学を教える場合、テストで形式電荷を無視すると即刻×にされるともっぱらの噂です。ちなみにこの表現法は世界的に一般化されているわけではないので英語のテキストではお目にかかれないと思います。僕個人としてはべつにこのような表現法に反対するわけではないのですが、ただでさえ写しにくい有機化学の黒板がさらにごちゃごちゃして見にくくなるのでやめてもいい気がしますが、それは名古屋地区から逃げない限り無理でしょう。
- ちょっとした言葉の解説ですが、上のように電子対が原子核に対して新たな結合をつくろうとすることを『攻撃』あるいは『アタック』と表現します。上の例だと『酸素上の非共有電子対がプロトンに攻撃する』あるいは『酸素上の非共有電子対がプロトンにアタックする』と表現します。なんかかっこいいですね。
- 補足!電子対の移動の場合→を使いますが電子1個が移動するラジカル反応の場合、片矢印
を使います。一般に電子対の移動は電子過多(electron rich)の場所から電子不足(electron poor)の場所へ電子が流れるのでまだ理解しやすいのですが、ラジカルはそれ自体が電荷をもっているわけではないので、反応しうるところにかったぱしから攻撃を仕掛け無差別的になりがちなので制御がしにくいです。多くの場合、生成物が安定な方に攻撃は行くはずですが、副生物も多くなりやすいです。
アルコール・エーテル
- アルコールは-OH(ヒドロキシル基・水酸基)をもつ化合物です。アルキルハライド(ハロゲン化アルキル)同様、基本的には他に官能基を持たないアルコールを例にしていきます。ちなみに1分子中に2つの-OHを持つ分子をジオール、3つ持つものをトリオールと呼んだりします。また2個-OHを持つものを2価のアルコール、3個持つものを3価のアルコールと呼んだりもします。
- -OHは分子間に強い水素結合を作るため、分子量が同程度のアルカンに比べ融点・沸点がぐっと高くなります。その最たる例は水ですね。プロパンやブタンが常温常圧で気体であるのに対し、メタノールやエタノールは液体で存在しています。また、極性分子なので水との溶解度が高い(といっても炭素数4のブタノールぐらいまでですが)のも特徴です。このおかげで水割りが楽しめるわけですが、下戸の私はその恩恵に与ることは少ないです。むしろせっかく脱水のエタノールを買っといたのに使おうとしたら空気中の水吸ってたってことのほうが印象が強かったりします。
- ちょっと教科書的な分類法を紹介します。アルコールは-OHのついている炭素がいくつの炭素と結合しているかにより分類されて、0個(メタノールCH3OH)および1個の場合1級アルコール、2個の場合2級アルコール、3個の場合3級アルコールと呼ばれます。言葉で書いても分かりにくいことこの上ないんで構造式とあわせて見ておいてください。
分子式C4H10Oのアルコール
〜級という呼び方はアルコールに限った話ではないのでハロゲン化アルキルなんかの場合も同じように呼びます。ただし、高級アルコールといった場合は3級アルコールをさすのではなく、分子量の大きなアルコール指すので注意が必要です。どっからが高級アルコールかについては特に取り決めがあるわけではないので(ひょっとして私が知らないだけ?)分子量のおっきいものの総称ですな。
- アルコールの作り方ですが、ハロゲン化アルキルを水酸化ナトリウムなどで加水分解すれば得られます。
R−Cl + NaOH → R−OH +NaCl
ただし、普通ハロゲン化アルキルは対応するアルコールより高いのであんまりやりませんな。
- じゃあ、どうやって作るかというと、多くはアルケンに水を付加さて作ります。
CH2=CH2 + H2O → CH3CH2−OH
ただしちょっと注意が必要です。一般にアルケンに水を付加させる場合、2重結合のうち水素の多いほうに水素が、水素の少ない方にそれ以外のものが付加する傾向があります。これをマルコフニコフ(Markovnikov)則といいます。
- アルコールの絡んだ反応ですが、まずアルコキシドをやってみましょう。例えばエタノールに金属ナトリウムを直で加えます。
2CH3CH2OH + 2Na → 2CH3CH2ONa + H2
高校ではまあ、準メジャーくらいのナトエイウムエトキシドができます。金属ナトリウムというとヤバ気なイメージが強いですが、反応は案外大人しく進行し水素ガスを発生します。高校の参考書ではこれでエーテルとアルコールを区別するのに使うと書いてありますが、これほど有用な反応試薬を持ってきて『アルコールの判別法です』は勘弁してくれって感じです。詳しくは省略しますが、ナトリウムエトキシドは水酸化ナトリウムを超える強力な塩基で求核置換などに利用されます。まあ、水酸化ナトリウムより強力な塩基なんで水溶媒中では加水分解によりアルコールになってしまいますが。
- 硫酸の脱水性を利用すると、エーテルやアルケンを作ることができます。
まずはエーテルですが
2R-OH → R-O-R + H2O
って感じで、分子間の脱水で、機構はこんな感じです。わかんなくてもかまわないけど。

当然異なる2種のアルコールを混ぜてこんな反応をやろうとすると、
R1-OH + R2-OH → R1OR2 + R1OR1 +R2OR2
と、いろんなエーテルが混じって出てきてまともに使えません。この反応だけのことではありませんが、同じものが2つくっついてできる反応は、一般に2種の異なるものを混ぜてもいろいろな化合物の混合物になりまともに使えません。さらに、何らかの方法で異なる2種から反応を行うことを交差反応と呼びます。
- アルケンは脱離反応からできてきます。

エタノールからエタンを作る場合、何の問題もありませんが、脱離する水素が複数ある場合どちらが抜けるかが問題になります。-OHのついている炭素の両側の炭素両方にHがある場合、普通はより水素の少ない炭素から水素が抜けます。これをザイツェフ(Saytzeff)則といいます。
- 上の2つはいずれも硫酸加えて煮てやれば(還流してやれば)できるんですが、じゃあ、どうやって作り分けるか?
これは、温度によって区別でき、エタノールの場合、130〜140℃でエーテルが、160℃程度でアルケンができてくるそうですが、参考書なんかで低温でエーテル、高温でアルケンなんて書いてありますが、温度を入れてくれ。頼むから。
- 高校の範囲でアルコールの重要な反応としてエステル化があります。詳しくはカルボン酸のところに持っていきますが、まあ、簡単に説明していきましょう。
- エステルはカルボン酸とアルコールを混ぜて硫酸触媒で還流すれば得られます。
R1COOH + R2OH → R1COOR2 +H2O
この反応は酸触媒で進行する可逆反応ですから、硫酸は触媒と同時に脱水剤として働き平衡を右に寄せる働きをします。
- さて最後に、アルコールの過マンガン酸カリウムやニクロム酸カリウムによる酸化を紹介します。これらは酸性条件で強力な酸化剤で、他に官能基があるとそれらを潰してしまします。まあ、その辺のことは考えないものとして話をすすめます。生成物は原料のアルコールによってきまってきます。

1級アルコールはアルデヒドを経由して酸化されますが、アルデヒドで反応を止めるのは難しく(って言うか過マンガン酸カリウムではほとんど不可能)、カルボン酸まで行ってしまいます。高校の段階でまともにアルデヒドでとめる方法は、加熱酸化銅による酸化、あるいは中性塩基性条件下で過マンガン酸カリウムで何とかとめるって感じですか。
- エーテルいきます。エーテルはR-O-Rの構造、つまり、酸素の両端をアルキル鎖で挟んだ構造を持つ化合物です。組成式はアルコールと同じですが、水素結合の強い-OH基がないため分子間の相互作用は弱く、沸点・融点はあまり高くなりません。また-OHがないためにアルコールと違って金属ナトリウムと反応しません。むしろエーテルはアルコールより反応性が低く、エーテルを原料として何かを合成することはあまりまりません。むしろ反応溶媒として使うほうが一般的です。
- エーテルの合成法ですが上で紹介したとおりアルコールから脱水してやればできます。
2R-OH → R-O-R + H2O
当然この反応では左右のR-が異なるエーテルは合成できません。そこで左右の異なるエーテルを作るにはナトリウムアルコキシド利用した反応を用います。
R1-ONa + R2-Br → R1-O-R2 + NaBr
代表的な求核置換反応ですが、エーテルを実験室で作ること自体希なんで有用性は微妙です。ちなみに左右の異なるエーテルは合成が面倒なためか買うと案外高いです。まあ一番メジャーなジエチルエーテルも結構高価な溶媒ですが、さらに身近な溶媒の純粋エタノールは、酒税がかかって値段があがっているためエーテルの高価さはあまり伝わりません。
- さて、もっともメジャーなエーテルはやはりエタノールから脱水して作られるジエチルエーテルでしょう。常温常圧で液体で有機反応では欠かすことのできない溶媒のひとつです。ただし、こいつはかなりの曲者です。まず、引火性が極めて高く、消防法では特殊引火物なんてたいそうな名前までいただいています。実験室で使うときにはまず蒸気がたまらないよう気をつけましょう。さらに電気製品などから発生する火花にも注意しましょう。一番やばいのはやっぱり冷蔵庫で間違ってもふた開けたまま放り込んだりしないでください。
- またジエチルエーテルの蒸気には催眠作用があるそうで、吸ってると眠くなるみたいです。ただ、エーテルの蒸気には相当のにおいがあって、私的にはこいつのにおいをかぐと眠くなる前に実験室から逃げ出したくなります。たしかスズメバチの巣を駆除するときにハチを眠らせるために使うと聞きましたが、『眠る』よりは『気絶』だと思うのは私だけでしょうか。
アルキン・アルケン
- アルキンは炭素−炭素間に二重結合を持つ化合物、アルケンは炭素−炭素間に三重結合を持つ化合物です。このように炭素−炭素間に多重結合を持つ化合物を『不飽和』といったりします。多重結合の検出法としては臭素の脱色が有名です。臭素は赤褐色の液体で、これを適当な溶媒にとかしておきます。ヨードチンキに似た感じの色かな。これに不飽和化合物を通してやると多重結合部に臭素が付加することで褐色が消えます(当たり前ですが臭素は入れすぎないでください)。付加する臭素の量から多重結合がいくつあるか分かるそうですが、私としては極力臭素は使いたくないのが本音です。
- まずアルケンからいきますか。作り方はアルコールで紹介したように、アルコールから脱水することで得られます。
CH3CH2OH → CH2=CH2 + H2O
予断ですが、エタノールを工業的に合成するためにはエチレンに水を付加させますが、有機合成では二重結合を誘導するためにアルコールを利用するのが一般的です。
- エチレンの炭素と水素はすべて同一平面に存在します。さらに炭素−炭素の結合はこの平面に垂直方向に存在するため、自由に回転することはできません。よって、2-buteneには

という2種類の異性体が存在します。これを幾何異性体と呼びますがもっぱらシス−トランス異性体といわれています(どーも俗語のようでテストでは幾何異性体と書いたほうがいいかも)。念のために書いておきますが、シスートランス異性体は明らかに別の物質です。沸点や融点も異なりますし分離も可能です。
- アルキンに関する反応としては、まあ付加反応を覚えておけばいいでしょう。二重結合は電子があまっているため、プラスに帯電したもの、たとえば水溶液中のH+(プロトン)などに攻撃を仕掛けます。これにより水の付加が起こります。

この手の付加反応、つまり2本目の結合がプロトンにアタックする場合、より水素の多いほうに水素が付加します(マルコフニコフ則)。たとえば、
CH3-CH=CH2 + H2O → CH3-CH(OH)-CH3(主生成物) + CH3-CH2-CH2-OH(副生成物)
みたいな感じです。これはHClやHBr、CH3COOHなどの付加でも原則同じですが、HBrを付加させる際にラジカル反応を促進する試薬(過酸化カルボン酸など)を加えるとマルコフニコフ則に逆らった付加物を与えます。
- また、若干反応機構が異なりますが、H2やBr2などの二原子分子なども付加させることができます。
CH2=CH2 + Br2 → CH2Br−CH2Br
臭素水の色が消えるのはこのためですね。また、水素の付加はニッケルなどを触媒にして進みますが、これを利用したのがマーガリンです。植物油は一般に多重結合を含み融点が低くなるため液体ですが、これに水素を無理矢理付加させて単結合にすると融点が上がり固体になります。そんなわけで、マーガリンは植物生まれなんですな。
- アルキンは炭素炭素3重結合を含む化合物です。最も簡単なアルキンはアセチレンで、実験室で作るにはカーバイド(炭化カルシウム)というちょっと珍しい化合物を用います。受験ではカーバイド→アセチレンと覚えたほうがいいでしょう。
CaC2 + 2H2O → HC CH + Ca(OH)2
- 三重結合も多重結合なのでアルケン同様付加反応を起こします。付加させる物の量を考えないとできたアルケンにさらに付加が進んでしまいますが。
HC CH +HCl → CH2=CHCl (塩化ビニルモノマー)
また、水を付加させると一時的に水酸化ビニルができますが、この二重結合に-OHがついた形(エノールと呼びます)は一般に不安定ですぐにアルデヒドに異性化してしまいます。
HC CH +H2O → CH2=CH(OH) → CH3CHO (アセトアルデヒド)
- えーっと、アセチレンの水素のように、3重結合を持つ炭素にくっついている水素は結構酸性度が高く(とはいっても水溶液中では酸にはなりませんが)、銀イオンを含む水溶液(アンモニア性硝酸銀水溶液)に通すと銀アセチレドという化合物ができます。
HC CH +Ag+ → AgC CH +H+ この反応は確認に使えますが、できてくるものは爆発性のある固体なのであまり扱いたくはありませんね。ろ紙で水分をふき取ってハンマーでたたくと『パン』といい音を立てて爆発します。
アルデヒド・ケトン
カルボン酸
カルボン酸誘導体
アミン・ニトロ基
|