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平衡・反応速度
活性化エネルギー・触媒
- 熱化学のところでエネルギー図自体は説明しました。しかし、実際の反応は反応物からいきなり生成物に移るわけではなく、活性化状態といわれる、高いエネルギー状態を経由して進行します。
この活性化状態がないとすると、すべての分子は最も安定な系に移ってしまいます。
たとえば、今、目の前にデンプンがあったとすると、次の瞬間にはそこらへんの酸素を奪って水と二酸化炭素になっているでしょう。・・・むしろ私たち自体が存在できませんが・・・

- 上は熱化学でやったエネルギー図と同じなんだけど、化学反応の様子を厳密にあらわすとこうなる。まあ横軸は時間と思っていいかな。つまり反応物は生成物になるまでに活性化状態というエネルギーの高い状態を通らなければならない。これを越えられないと反応は進まないんだけど、そこで下の図。それぞれの分子がもっているエネルギーはばらばらで割合であらわすとこうなるんです。だから外部からエネルギーを加えないと一部しか反応に関与できません(実際は反応熱により進む場合もある)。見てのとおり温度を上げれば反応に関与する分子の割合は増えます。
- 触媒の作用なんだけど見てのとおり活性化エネルギーを下げてくれるんです。だから反応が速やかに進むんですね。ここで注意したいのは触媒を使っても反応熱は変化しないということ。見たまんまだけど。
- よくあるたとえだけどこの活性化エネルギーは出発点と目的地の間にある山だと思えば分かりやすい。山越えないと目的地へ行けないってこと。そこで触媒はさしずめトンネルっていったとこでこれがあると早く目的地に行けるんです。
化学反応の速さ(反応速度)
- 反応の速さってなんだろう。感覚的に速い反応、遅い反応は分かると思うけど実際は・・・。そこでここでは反応の速さと濃度の関係について考えてみよう(教育テレビ風)。
- 反応速度の定義だけどこれは普通の速度の定義とおんなじように考えればよいわけです。まあ物理やってない人のために順を追って説明します。まず反応の平均速度から。時間n(s)について、反応物の反応前の量(ここではmol)をm、反応後の量をm’とすると、反応速度vは
v=(m−m’)/n(mol/s)
となります。これはn秒間の平均で厳密な値とはいえません。ここでsをかぎりなく0に近づけます。このようにある瞬間の反応速度vを定義します。ここで反応速度はこちらの瞬間の速度について調べていきます。
- 上では省略したけど気体にせよ溶液にせよ反応物の量を考えるときは濃度で考えるもが普通。だって液体にだって体積あるし気体も反応容器があるから、その濃度で考えたほうが都合がいいんです(誤魔化し)。
- そこでvを定義しなおします。時間nについて反応物の濃度変化をΔ[反応物]として
v=−Δ[反応物]/n n→0(nを0に限りなく近づける) ・・・@
とします。ここまでごちゃごちゃしたことやってもほぼ正しい定義が得られました。さらに厳密を求めようと思えば出来ると思いますが、そんな必要は・・・。私が言いたかったのは反応速度は各瞬間で求めるってことです。
- ここで濃度との関係ですが具体例をあげて説明します。2H2O2→2H2O+O2という反応。まあオキシドールにレバーのかけらを入れた反応だと思ってください。そこでΔ[H2O2]を用いて反応速度を求めます(@より)。そこで求めた瞬間の速度vはその瞬間の濃度[H2O2]とある定数kを使って
v=k[H2O2]
となる。えっなにって感じかな。これの凄いとこはkは温度による定数で濃度によらないこと。つまり反応が進むと[H2O2]が小さくなり反応速度も遅くなるんです。感覚では分かるけど本当かな・・・といったところでしょう。でもこの分野はこの(速度)=(定数)(濃度)がすべてなんです。上の速度の定義はともかく、これだけは覚えといて!
- やっぱり私はうそつきかな。上みたいな(定数)×(濃度)が成立するほうが少ないみたいね。過酸化水素はほぼ成立するみたいです。でも厳密な考えると結構大変みたいで・・・。書物を調べたけどちょっと・・・って感じ。だからここでは(反応速度)=(定数)×(濃度)が成立する場合のみを考えます。
化学平衡
- やっと平衡に辿りついた。で、化学平衡ってのは見かけ上反応が進まない状態で、反応物と生成物の濃度がつりあって変わらない状態の事を言います。そこで問題になるのがはたしてそんなことが起こるのか?ってこと。たとえばブドウ糖を燃やしたりする反応は普通つりあうことなく、水とに酸化炭素になってしまいます。このような反応が一方にしか進まない反応を不可逆反応といいます。それに対して、エステルの酸による加水分解のように、反応がどちらにでも進みうる反応を可逆反応といいます。平衡という概念が存在するのは可逆反応のみで、その中でも鉛蓄電池のようなほぼ反応の方向が固定しているものでは考えないみたいです。まあ、高校では成立するものだけを扱うんで心配なく・・・(なんか無責任)
- 具体的な例を見てみましょう。H2とI2を容器に詰めて温度と圧力の条件を揃えておきます。そうするとHIが生成しますがH2、I2が残っていてもHIが増えなくなります。これが平衡状態。この反応は
H2+I2⇔2HI
ですが、⇔は反応が両方に進むことをあらわします。平衡状態が成立しているときこの濃度には
[HI]2/[H2][I2]=K(一定)
カンの良い人ならKが温度で決まり、濃度に関係しないことは考え付くでしょう。[HI]についている2乗ですがこれは係数の2です。何故か係数乗になるんです。こんなふうに平衡が成り立つのを、質量作用の法則といいます。これを一般化すると
aA+bB⇔cC+dD(abcdは係数)
という反応式では
K=[C]c[D]d/[A]a[B]b・・・@
となります。ここで例えばBを加えると反応が右向きに進んでKを一定に保ちます。計算問題では必須ですね。未知数のまま濃度を求めて定数の式に放り込むだけです。
- この平衡の意味について少し考えてみましょう。酢酸のときの平衡は右向きの反応の速さと左向きの反応の速さのつりあいにより生じるといいましたが、速さをきちんと定義した今、こんな誤魔化しは必要ありません。そう、平衡が成り立っているときには右向きと左向きの反応速度は同じになっています。速度に差が出ているのは平衡に達するまでの時間です。
aA+bB⇔cC+dDでは
aA+bB→cC+dDとaA+bB←cC+dDの反応があってそれぞれの速度をv1、v2とします。すると
v1=K1[A]a[B]b、v2=K2[C]c[D]d
となります。平衡状態ではv1=v2だから
K1[A]a[B]b=K2[C]c[D]dとなり
[C]c[D]d K1
――――=――=K(一定)
[A]a[B]b K2
@と一致してますね。速さに濃度の係数乗がかかわる理由は残念ながら説明できませんけど。まあこれが平衡の簡単な仕組みです。そうそう、こんなふうに定数が定まるのを質量作用の法則といいます。・・・・何処が質量なんだろう?
- 反応速度のグラフをあげておきます。

ここでの見た目の反応速度っていうのは正反応の速度と逆反応の速度の差です。十分時間が経過すると見た目の反応速度は0になって見た目上反応は進んでいないようになります。でも実際は、同じ速度で両方の反応が進んでるんですね。
- 平衡が成り立っているときに何らかの条件を変えると、それに伴って反応がどちらかに進みます。これを平衡移動というそうです。で、当然それには法則があります。ルシャトリエの原理といって、平衡状態での条件変化に対し、その影響を和らげる方向に平衡が移動するというものです。まあ、自然界ってのは保守的で、何か変化が起こるとそれを打ち消そうとするんです。アンモニアの平衡を例に見てみましょうか。
| 影響 |
移動方向 |
N2+3H2⇔2NH3+92kJ |
| 温度を上げる |
吸熱方向 |
← |
| 温度を下げる |
発熱方向 |
→ |
| 濃度を上げる |
その物質が減る方向 |
N2を加えると→ |
| 濃度を下げる |
その物質が増える方向 |
N2を減らすと← |
| 圧力を上げる |
気体分子数の減る方向 |
→ |
| 圧力を下げる |
気体分子数の増える方向 |
← |
| 触媒を加える |
平衡は移動しない |
× |
えっと、温度がかわんなきゃ、平衡定数Kもかわりません。だから濃度や圧力の変化の場合、具体的に濃度を求めることもできます。でも温度が変わるとKが変化するため、あらたにKを定めないと濃度まではでません。まあKが大きくなるか、小さくなるかぐらいは分かるけど。あっ、それと圧力は反応に関与する分圧の変化が関係します。だから、容器の大きさが一定のとき、そのなかにArを加えて全圧をあげてやっても平衡は移動しません。逆に全圧が一定になるように容器の大きさを調整しながらArを加えていけば、反応に関与するものの分圧は下がるため、←に平衡は移動します。さらに触媒についてですが、これを加えても平衡は移動しません。確かに正方向の反応速度が上がるため変化がありそうなものですが、あくまで触媒は活性化エネルギーを下げるもの。活性化エネルギーが下がれば当然逆反応も進みやすくなります。だから、全体として平衡が移動することはありません。ちなみに触媒には、広い意味では、反応速度を押さえる触媒、つまり活性化エネルギーを上げる触媒も含まれます(これを負触媒といい、普通の触媒を正触媒という。断りがなければ、触媒は正触媒をさす)。だからただ触媒と書かれたら、どっちのことか判断がつきません。もし触媒によって平衡が移動するなら、正解は1つに絞れませんね。
電離平衡
- ここからは具体的な平衡の例とそのときに使われる考えかたを紹介していきます。で、ここでは近似を沢山使います。とは言ってもすべては質量作用の法則(@の式)からほんのちょっと発展させただけです。(そのわりに苦手な人多い・・・)
- まずは酸の電離。おもに電離平衡の議論が必要なのは弱酸や弱塩基だから、ここでは酢酸の例をあげます。この酢酸の濃度をC(mol/l)、電離度をαとして、温度変化はないものとします。
CH3COOH⇔CH3COO−+H+
電離は可逆反応で平衡も成立します。そこで濃度を見てみましょう。
酢酸 CH3COOH⇔CH3COO−+H+
電離前 C 0 0
電離量 −Cα +Cα +Cα
――――――――――――――――――――――――――――
平衡状態 C(1-α) Cα Cα
平衡定数をKaとすると
[CH3COO−][H+] Cα2
Ka=――――――――――――=―――
[CH3COOH] 1−α
となりますが、この電離度αは普通の酢酸では1より十分に小さいので1−αはほぼ1として見なせます。すると電離定数KaはKa=Cα2となります。Kaは、平衡定数の一種なので温度が変わらなければ一定の値をとります。ここではっきりすると思うけど、電離度αは温度が一定でも一定の値を取るとは限りません。
- そこでこれを変化させます。まず電離度αは
α=(Ka/C)1/2
これで分かるように濃度が小さくなると電離度は大きくなり、薄くなってくると1−αを1と近似出来なくなります。
また、[H+]については
[H+]=(CKa)1/2
ですね。これでpHなんかを求めます。
- 弱塩基でもほぼ同様。ただアンモニアの電離にはH2Oがかかわりますね。[H2O]ってなんだ?と思うかもしれません。この場合[H2O]は変化しないと見なすので、平衡定数Kに[H2O]を掛けたものをKb(塩基の電離定数)として定義します。これならKb=Cα2が成立します。
電離にまつわるエトセトラ
- らしくない冗談です。すいません。まずイオン積。これは扱いましたね。分かってると思うけど
H2O⇔H++OH−という平衡から平衡定数Kが定まりそれに[H2O]を掛けたものがKw。これも一応近似だったんですね。(Kw=1.0×10−7)
- これも少し触れたんですが、緩衝液というものを考えてみましょう。ここまでくるとpHまで求まってしまいます。緩衝液とは弱酸とその(強塩基との)塩の水溶液または弱塩基とその(強酸との)塩の水溶液のこと。このような溶液では少量の酸や塩基を加えてもそのpHは殆ど変わりません。一応酢酸と酢酸ナトリウムを例に仕組みを見てみましょう。
CH3COONaほぼ完全に電離、CH3COOHは殆ど電離していません。つまり溶液中にはCH3COO−、Na+、CH3COOHが存在しています。H+、OH−は微量ですからここでは無視します。
H+を加えると CH3COO−+H+→CH3COOH
OH−を加えると CH3COOH+OH−→CH3COO−+H2O
とまあこんな感じにH+やOH−の作用を押さえるんです。
- 具体的なpHを求めてみましょう。つまり[H+]を求めるんです。上の例でやってみます。酢酸の電離定数をKa、はじめの酢酸の濃度をCa、酢酸ナトリウムの濃度をCsとすると
Ka=[CH3COO−][H+]/[CH3COOH]=Cs[H+]/Caですから
[H+]=Ca・Ka/Csとなります。水素イオン濃度はここから殆ど動きません。もっとも、量を加えれば影響が出てきますけど。
- 塩の加水分解ですが、酸・塩基で説明したときは、かなり無茶な説明をしてしまいました。そこで、酢酸ナトリウムを例にもう一度説明していきましょう。実際に[H+]を見てみれば良いですね。まず、酢酸イオンの振る舞いですが
CH3COO−+H2O⇔CH3COOH+OH−・・・@
酢酸ナトリウムはナトリウムイオンを塩として含んでいるため、殆どすべてが電離します(電離度αは1と近似)。だからはじめの[CH3COONa]=Cとすると、[CH3COO−]=Cα=C・・・Aと見なします。
また@から、[CH3COOH]=[OH−]=Kw/[H+]・・・B(Kw:水のイオン積)となる。
ここで、酢酸の電離定数をKaとすると
Ka=[CH3COO−][H+]/[CH3COOH]だから、これにABを代入して、
Ka=C[H+]2/Kwをえます。よって、[H+]=(Ka・Kw/C)1/2となります。
- これだけのことをすべて自力で解くのはきっと無理でしょう。すくなくとも、私もはじめてやったときは出来ませんでしたし、この解法も、現役時代に参考書+我流で作っただけです。とにかく解いたことがあれば、本番で出題されてもなんとかなるものです。なにより解き方を重視!これが考える化学!
溶解度積
- 上のに比べればぜーんぜんたいした事ありません。一応溶解度積というタイトルですが、私的には『難水溶性電解質の』をつけるべきだと思います。難水溶性電解質というのは・・・金属イオンのところで、沈殿として現れる物質のことで、AgCl,FeS,PbSO4,CaCO3,など沢山あります。
- 問題なんかで、一番一般的なAgClを例にしていきましょう。水にAgClを十分量加えると、
AgCl(固)⇔Ag++Cl−という平衡が成立します。ここでの平衡定数をKとすると、
K=[Ag+][Cl−]/[AgCl]となりますが、[AgCl]は殆ど変化しないのでK[AgCl]=Kspとすれば、
Ksp=[Ag+][Cl−]となります。このKspか溶解度積です。
- つまり、塩化銀の飽和水溶液に塩化ナトリウムを加えると塩化物イオン濃度が上がり塩化銀が析出するわけです。Ksp>[Ag+][Cl−]なら沈殿が出来て[Ag+][Cl−]=Kspとなるんです。
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