総合的な学習の時間に関する情報のコーナー

   

私の「総合的な学習の時間」への思い
        ―総合的な学習,ますます重要な位置を占めるようになります―
日本生活科・総合的学習教育学会 第6回シンポジウム
「総合的な学習の時間における指導の工夫と改善」
「総合的な学習の時間の全体計画の改善と運用」
総合的な学習における「子どもの目標」と「教師の目標」
有田和正氏の「現場に見る総合的学習の問題点」
    ― 教材(内容)のない指導案が多いのはどうしてか ―
総合的な学習の時間 ―研究目標の設定にあたって考えること―
総合的な学習の時間でつけたい力  「子どもたちのねらい」と「教師のねらい」
門脇厚司氏の講演を紹介します
           「社会力」をはぐくむ総合的な学習を
“総合的な学習の時間”をどうとらえるか?
                       ―“子どもの社会力”を育成する総合的な学習―
総合的な学習の時間”の目指す力
                  21世紀を生きる子どもたちのためにつけたい力とは?
小中一貫9年間の教育課程の編成と体系的な評価の研究
 文科省研究開発学校「一色町立4小学校1中学校の総合的な学習の取り組み」
見直しが必要!“総合的な学習の時間” Part2
見直しが必要!“総合的な学習の時間” Part1
「生活科」を終えた人が「生活科」をふり返る
“総合的な学習における「体験活動」の意義”
“人間力戦略研究会” 内閣府,厚生労働省,経済産業省,文部科学省
「学校教育に関する意識調査」15年9月17日
                   “総合的な学習の時間”に関する調査結果より
これからの生活科で目指すもの
                 ―地域に根ざした単元づくりでねらうものは―
総合的な学習における「目標」「内容」「方法」の明確な区別を
主義・主張がものを言う
            総合的な学習の自校化を ―私の勤務校の例を紹介します―
総合的な学習を展開するための“4つのポイント”
  今からでも取り組んでみませんか?  佐賀大教授 新富康央氏の小論から
見直そう!今年度の総合的な学習
           来年度に向けて今年度の実践をチェックするときです
“近代化遺産”って,聞いたことがありますか?
            総合的な学習(地域学習)に使えそうなネタです
[1]総合的な学習の評価
        年度末が近づきました!どうしますか?指導要録への記入
「世界でいちばん受けたい授業」
           ご存じですか?藤原和博氏の提唱する「よのなか科」
『個性を生かした教育』とは?
 総合的な学習の実践に見られる間違ったとらえ方 立教大:奈須正裕氏
[1]嶋野 VS 藤井 VS 奈須 オピニオンリーダートーク
[2]有田和正氏の講演記録
        14.12/06 山口大学教育学部附属山口小学校研究発表会より
ここが大事だ!総合的な学習
            「総合的な学習」が学校教育に占める位置の重み
総合的な学習を見直す!
             症状別“5つの視点と17の対策”
総合的な学習で発揮すべき教師の意図性・指導性
             神戸大附属住吉小 勝見健史氏の小論
文化創造 ―学びのネットワークを築く子ども―
             愛知教育大学附属岡崎中学校の実践から考える
授業参観の視点 ― 総合的な学習の時間の場合 ―
             愛知教育大学:布谷光俊氏の主張を紹介します
地域から世界が見える
       教材・授業開発研究所代表 有田和正氏の主張を紹介します
“総合的な学習の時間”の目指すもの
        21世紀を生きる子どもたちのためにつけたい力とは?
総合的な学習の時間の要点を指導要領総則から読みとる

                 加藤 明氏(京都女子大教授)の提案
総合的な学習の時間,悩んでいませんか?
基礎・基本が身についていなければ
   総合的な学習の時間は実践できないのか
   茨城大:藤井千春氏
総合的な学習の時間の指導要領をつくる            奈須正裕氏
総合的な学習の時間の行方は? 
総合的な学習の時間の落とし穴  ― 「目標」と「方法」の区別を明確に―
日本生活科・総合的学習教育学会茨城大会参加報
総合的な学習の時間への私の思い
    第11回日本生活科・総合的学習教育学会茨城大会での提案から

総合的な学習の時間でつけたい力
総合的な学習で培う「確かな学力」とは「何か」「どう培っていくか」
                           玉川大 山極隆氏
総合的な学習の成果は「測定」できる!!      静岡大 弓野憲一氏
「総合的な学習の時間で育つ子の具体的な姿」        嶋野道弘氏
「総合的な学習の時間の問題点」はどういう意味か?    奈須正裕氏
「手応えのある学びの成立に向けて」 総合的な学習の時間の創始 
「知の総合化」を進める学校の教育計画            板良敷 敏氏
再考「生きる力」とは? 来年度に向けてしっかりおさえておきたい
総合学習は死んだか? 「週刊アエラ」の衝撃的な記事
来年度からの「総合的な学習の時間」
「教育評価研究会」に参加しました        寺西和子氏と野田敦敬氏
― 総合的な学習の時間 ― 本格実施!!
子どもは発表させられている? 有田和正氏のきつ〜いひと言!
有田氏の「現場に見る総合的学習の問題点」
「教育の流れを変える 総合的学習」 東京学芸大教授 児島邦宏:著
総合的な学習の時間実践のための10カ条
私の「総合的な学習の時間」への思い
        ―総合的な学習,ますます重要な位置を占めるようになります―
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 あちこちでいろいろな授業を見ました。
 またいろんな雑誌や書籍でさまざまな実践を読みました。
 私が今思うこと,それは「自分の学校でできることをやろう」です。
 評判のよい学校と自分の学校を同じレベルで見てはならないのです。
 自分の足下をよく確かめて,地道に,そして確実に歩を進めることが大事なのです。
 以下に私の思いを述べます。
 ……………………………………………………………………………………………………
 今,私が考えていることは,総合的な学習では「できないことは指導する」「教師はシ
ナリオライターであり,演出家であるべき」ということです。
 研究先進校や書籍で紹介されている実践では「子ども自らが課題を設定し,個性を生か
した追究をしていく」と謳われていることが多々あります。
 しかし,これは極めてむずかしいことです。
 そして,これは小3から高3までの9年間共通のねらい(新学習指導要領では「目標」
となる)です。
 これを小学校だけで完結させようとする必要ないのです。
 小学校では小学校でできることをやればいいと思うのです。
 小学校レベルで大人がイメージする「自ら課題を設定し,個性を生かした追究」などで
きるわけがありません。
 ですからこれをどうとらえるかが問題となってくるのです。
 子どもレベルで捉えなおすべきなのです。
 また,これを「方法」と誤解している人が多いと思うのです。
 自ら課題を設定して,各自が個性を生かした追究をしなきゃいけないと思っている方が
多いと思います。
 これは「目標」ととらえています。
 「自ら課題を設定することができる子」「個性を生かした追究ができる子」を育てるの
です。
 話をもどします。
 教師は「できないことは指導する」「シナリオライターであり,演出家であるべき」だ
と思うのです。
 私は現在までに7つの総合的な学習を実践してきました。
 そして思うことは「1年間やったのに,この子たちにどんな力がついたのだろう?」と
いうことです。
 自分の思うように学習が進められない子,例えば取材などを通して得た情報を自分のも
のにできない子,自分の感動や発見をうまく文にまとめられない子,自分の思いを発表で
きない子,まとめの表現物作りができない子など,数多く見てきました。
 そこから分かってことは,教師が「こうしてみたら」「こういう方法もあるよ」などと
声をかけ,ともに追究していくという姿勢が欠かせないということです。
 追究の基礎・基本が身についていない子にとっては「体験あって中身なし」なのです。
 そこで問題となるのが総合の「基礎・基本」とは何か?です。
 私は,
 1 追究する力〈問題を発見する力/計画を立てる力資料を集める力/資料を活用する
         力/事物を観察する力/集めた事実を分析する力/自分なりに判断す
         る力〉
 2 自分の思いを表現する力〈作品(レポート,新聞,パンフレットなど)にまとめる
               力/発表する力,その他の表現する力〉
 3 学習をふり返り,高めていく力〈自分の学習を評価する力/お互いの学習を評価し
                  合う力/自分の生活を見直す力〉
 とおさえています。
 確かに,事後のアンケートでは「楽しかった,おもしろかった」という回答が圧倒的で
す。しかし力がついていないのです。ですから次学年になってもまた振りだしから,とい
うことになるのです。
 総合的な学習の時間では,教師が子どもに「知的創造力を習得」させる,そして子ども
が自分の意志で「活用」していく,ということが大切です。
 こう考えてみると,単元構想をどうするか,評価をどうするか,といった問題も少しは
見えてくると思いますが,いかがでしょうか。
 最後にひと言,学習スキルを身につけるだけが総合的な学習ではないとも思っていま
す。設定したテーマに迫ることは言うまでもありません。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

これからの小学校教育と生活科・総合的な学習の時間
        ―日本生活科・総合的学習教育学会 第6回シンポジウム―
            平成19年11月23日(金) 於:立教大学 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 見出しの会に参加しました。
 その概要をお知らせします。
 論者は,嶋野道弘氏,田村 学,そして谷川彰英氏です。
…………………………………………………………………………………………………
1 嶋野道弘氏(本学会会長:文教大学教授)
 ○ パラダイムの転換が必要  (注)パラダイム:時代の支配的な考え方
  ・生活科は一体的にとらえるという理論を作り出してきた。10数年前、質的転換と言
   われた。
  ・科学、学問の視点から教育を考える→生活者の立場から教育を考える
  ・社会や環境が変化し、子どもも変化…パラダイムの転換、質的転換が必要
  ・生活科の提唱する考え方、哲学がこれからの教育には必要
  ・生活科,総合的な学習の時間は教育の質的転換を図るための教育
2 田村 学氏(文科省教科調査官:生活科・総合的な学習の時間担当)
 ○ 中教審教育課程部会での審議状況 
  ・「総合的な学習の時間はやはり大事だ」という結論…70時間を確保できた
  ・「生きる力」を育てるという理念は変わらない。
  ・学校教育法の30条2項で「学力」を規定
・理念実現のための5つの手立て
  ・指導要領改正の7つの柱
 ○ 今後の予定
  ・11月:教育課程部会(関係団体ヒヤリング)・国民からの意見募集
・12月:教育課程部会(答申に向けた審議)  12/4 PISAの結果が発表される。
  ・1月:中教審答申
  ・3月:小中学校学習指導要領改訂(告示)
・20年度:周知期間
  ・21〜22年度:移行期間  総合…意義の再確認と役割の明確化
  ・23年度:実施
 ○ 小学校の標準時数について(検討素案)
  ・1・2年生は2時間増,3年生以上は1時間増
    時数増:国語・算数・社会・理科・体育
    時数減:総合
    新設:外国語活動(5・6年生)
  ・外国語活動
   「目標」「内容」は国が示す。担任が主となって指導する。
 ○ 総合的な学習の時間の位置づけ
  ・テーマは「探究」
    「思考力」や「判断力」は教科学習でも実施する。
  ・指導要領の総則から取り出して「解説編」が作成される。
教育課程における位置づけを明確にし,各学校における指導の充実を図るため。
    育てたい力の視点を3点例示する。
「学習方法に関すること」「自分自身に関すること」「他者や社会とのかかわり
    に関すること」     
     *何をやっていいかわからないという現場の声に応える。→画一化する恐れ
  ・3つの視点から考えられる育てたい力の例。
    ◆学習方法に関すること:情報を収集し分析する力、分かりすくまとめ表現する
     力など
    ◆自分自身に関すること:自らの行為について意思決定する力、自らの生活の在
     り方を考える力など
    ◆他者や社会とのかかわりに関すること:他者と協同して課題を解決する力、課
     題の解決に向けて社会活動に参加する態度など
   こうした力をより具体化すると、例えば、地域の川を対象として環境問題について
  探究する活動では、次のように考えられる。
    ◆学習方法に関すること:生息している生物を採取し、他の川と比較するなどし
     て分析する、分かったことなどをグラフや地図に表すなど
    ◆自分自身に関すること:日常生活において、川にゴミを捨てない、生活排水を
     少なくするなど、自らの生活を見直し身の回りの環境問題に関して意思決定し
     行動しようとするなど
    ◆他者や社会とのかかわりに関すること:他の子どもと協力して調査したり、地
     域の人々から話を聞いたりして探究する、地域の人々と協力して川を守る活動
     に参画しようとするなど
  ・あくまでも各学校において「育てたい力」「学習活動」「内容」を定め,適切に評
   価する。
  ・学習活動の例示として加えられるもの
    「地域の人々の暮らし」「文化や伝統」
  ・3・4年が5・6年生の「英語活動」を実施することへの歯止め規定
   「国際理解に関する学習を行う際には,問題の解決や探究的な活動を通して,諸外
   国の生活や文化などを体験したり調査したりするなどの学習活動が行われるように
   配慮する。」
         *3・4年生が総合の時間を使って英語活動をやってはいけない。
 ○ 生活科の位置づけ
  ・「気づき」の質を高める。→ そのために活動や体験をいっそう充実させる。
            → 見つける,くらべる,たとえるなどの多様な学習活動を。
  ・自然の不思議さやおもしろさを実感する学習活動を取り入れる。→理科的能力の向
   上
  ・「安全教育」を充実させる。 
・活動や体験したことをことばや絵で表す学習活動の重視
  ・入学当初は他教科の内容をあわせて生活科を核とした単元を構成したり,他教科で
   も生活科と関連する内容を取り扱った合科的・関連的な指導のいっそうの充実を図
   る。
  ・幼児教育との連携…低学年の児童が幼児といっしょに学習活動を行うことなどに
   配慮する。
3 谷川彰英氏 前会長(筑波大副学長)
 ○ 氏は中教審教育課程部会 生活科・総合的な学習専門部会主査
  ・70時間確保の意義
   「総合は軽視されて削減されたと受け止められがちであるが,70時間を確保する
   ことができたのは,その存在が重要視されているから。35時間にされてもおかし
   くない状況」
  ・総合的な学習の時間のこれからは今後の実践にかかっている。
 ○ シティズンシップ教育…総合的な学習の時間が担う。
  ・社会の一員として,地域や社会での課題を見つけ,その解決やサービス提供に関す
   る企画・検討,決定,実施,評価の過程に関わることによって・・・・
・社会人基礎力
   前に踏み出す力…体性・働きかけ力・実行力
   考え抜く力…課題発見力・計画力・創造力
   チームで働く力…発信力・傾聴力・柔軟性・状況把握力・規律性・ストレスコン
            トロール力
 ○ 学力から実力へ
  ・633制から543制へ
  ・子どもの能力は10歳で決まる…小学校で決まる
  ・「学習」と「勉強」はちがう。
    学習ラーニングは習得≠勉強スタディは自己の目標に向けて努力する
  ・「読解能力が低い」の誤解 
国語の読解力とはちがう。状況把握・判断能力・解決能力
 ○ 授業研究lesson study
  ・世界に類を見ない優れた方法…現在,世界中に広がっている。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[1]「総合的な学習の時間における指導の工夫と改善」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 前号の「総合的な学習の時間の全体計画の改善と運用」に続き,今号は「総合的な学習
の時間における指導の工夫と改善」について紹介します。
 ご意見がいただけると幸いです。
…………………………………………………………………………………………………
 総合的な学習の時間は「体験あって中身なし」とか「打ち上げ花火」と指摘される実践
があることも事実である。勤務校でも「体験活動」と「問題解決学習」をキーワードとし
て取り組みを重ねてきたが,反省すべき点も多い。主題1で述べた全体計画を推進してい
くため,次のような指導の工夫と改善を実践的に進めていきたい。
 1 スタートは “子どもの知的好奇心”
   学習の始まりは子どもたちの知的好奇心をくすぐること。子どもは本来「知りたが
  り屋」である。「なぜ?」「どうして?」という気持ちを刺激すれば,必ず学習はス
  タートする。
 2 地域に根ざした生活密着型の単元を設定
   自分たちの住んでいる地域を取り上げ,行動しやすくすることで,いろいろな調査
  活動を体験し,常に地域を肌で感じながら学習を進めることができる。いつでも行け
  る,いつでも体験できる,思ったときすぐに対象に向き合うことができる,これは総
  合的な学習の時間では不可欠の条件である。また,地域単元の最大のメリットは,地
  域の人々との交流を通して,人々の生き様に直接触れることができるという点にあ
  る。これは計り知れないほど貴重な体験となる。このことが「自己の生活に生かす」
   ことの原動力となる。
 3 間口が広く,奥行きのある題材を 
   個性を生かした深まりのある追究が期待できる教材を開発すべきである。だれもが
  興味・関心を持つことができ,そしてどこからでも切り込んでいける間口の広さが必
  要。これは個の能力差に対応することにも有効に機能する。
 4 ミクロの追究からマクロへの追究へ 
   いきなりテーマに迫るような立派な追究問題を設定できる子はいない。些末な問題
  でもまずは認め,追究にかかる。些末に思えても,実は大きな問題を内包している場
  合もある。思ったことを直ちにやってみよう,できることからやってみよう,であ
  る。これも個の能力差に対応してる。
 5 地域や関係外部機関との連携を
  学校外の方々と関わることで新鮮な刺激を受け,かつ貴重な情報を得ることができ
  る。また,別の見方をすれば,子どもたちの追究を専門的な立場から評価していただ
  くことができることも見逃せないメリットである。
 6 情報掲示板をフルに活用する
   お互いの追究結果を発信しあい,相互に情報交換することは,子どもたちの自己評
  価,相互評価にも有効に作用する。ポートフォリオ評価の初期段階の導入という点か
  らも情報掲示板を中心とした追究を取り上げたい。「計画カード」と「結果カード」
  の2種類を用意し,1回の学習が終わるたびに追究の結果と次の時間の計画をカード
  に書く。そしてそれを全員が情報掲示板に掲示する。次回からもどんどん重ねて貼っ
  ていく。
 7 表現する場を多く設定する
   自分の追究の成果をさまざまな手段で表現することは,2つの点から有効な手だて
  となる。一つは,自分の追究をふり返り,そしてまとめることで次への見通しを立て
  ることができる点である。二つ目は,友だちに情報として発信することで相互評価の
  手段とすることである。自分の追究を友だちから評価され,そして自分も友だちの追
  究を知り,そして評価する。メディアリテラシーの観点からも育てたい力である。
 8 多面的な評価を
   以下の3つの評価を心がけたい。
  1)子どもが自分(たち)の学習を確かめるための自己(相互)評価
                             【子どもがする評価】
  2)子どもたち一人ひとりの学習の成果と問題点を確認する評価
                         【教師がする子どもへの評価】
  3)今後の指導の改善に向けた自己評価【教師の自己評価】
〈筆者が他で発表済みの「成功する総合的な学習の時間10カ条」より抜粋〉
 最後に,総合的な学習の時間に限らず,「よい授業」をめざすなら,教師の力量向上が
最も大切である。計画が机上の空論にならないためにも,実践と研修を重ね,日々力量向
上に努めたい。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[1]「総合的な学習の時間の全体計画の改善と運用」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 総合的な学習の時間に関する2つのレポートを書く機会がありましたので,今号と次号
に分けて紹介します。
 今号は「総合的な学習の時間の全体計画の改善と運用」がテーマです。
 ご意見がいただけると幸いです。

   「総合的な学習の時間における指導の工夫と改善」

 学習指導要領総則の一部改正(15年12月)により,総合的な学習の時間のいっそうの充
実が求められ,あわせて各学校において「総合的な学習の時間の目標及び内容を定めるこ
と」そして「総合的な学習の時間の全体計画を作成すること」が規定された。
 このことの背景には,期待を持って導入された総合的な学習の時間であったが,昨今の
学力低下論議に押されるなどの理由で低迷化しているという現状がある。これを機に,創
設当時の理念に立ち返り,勤務校の実情を見直したい。
 ・ 学校としての目標や内容の具体性が十分でないまま活動を実施し,つけたい力が身
  についたかどうかの検証,評価が十分行われなかった。
 ・ 教科との関連に十分配慮していない実践が見られた。
 ・ 総合的な学習の時間の「ねらい」を誤解し,必要かつ適切な指導を実施していない
  状況も見られた。
 ・ 学校行事の準備や教科学習の補充学習や発展学習など,不適切に行われている例も
  見られた。
 このように,当初の趣旨や理念が必ずしも遵守されていない状況が見られた。これらを
克服するため,今回の一部改正で追加されたねらい「各教科で身につけた知識や技能等を
相互に関連づけ,学習や生活に生かし,それらが総合的に働くようにすること」にも留意
しながら改善点を考えてみたい。
 ■本校版「学習指導要領」の作成
  総合的な学習の時間では,ねらいと内容の例示がされているだけであり,各教科のよ
 うに具体的な目標や内容は規定されていない。指導要領解説編が各教科にはあるが,総
 合的な学習に時間には 存在しないことがこれを示している。
  これは各学校の特色を生かし,創意・工夫ある取り組みをが求められている所以でも
 ある。ならば,以下の点を柱として,本校版「学習指導要領」を作成する。
 1 全体計画に盛り込むべき学校全体の目標と内容を明確にする。
   児童や地域の実態に合わせた本校の独自性のある全体計画づくりに取り組む。そこ
  には「目的」「育てたい資質・能力」「学習活動」「指導方法や指導体制」「学習の
  評価」「教科等との関連性」を盛り込む。特に,教科横断型の学習について意識した
  取り組みを推進し,全体計画に明示する。
 2 各学年の目標と内容,方法,指導上の留意点を明確化する。
   全体計画を受け,各学年別に子どもにつけたい力や学習活動の構想などについて具
  体的に検討する。目標達成のため,どのような内容で,どのような方法で学習を進め
  るのかを明確にさせる。また,学校全体の系統性をとるため,学年別の指導系統表
 (指導段階表)を作成するなど,細部にわたる検討も必要である。これらの作業を通し
  て,評価活動についても先が見えてくるようになる。
 3 指導上の留意点を明確化する。
   このことについては,次号でふれる。
 ― 全体計画の運用について ―
   これまで勤務校では,各学年ごとに体験と問題解決学習をキーワードとして取り組
  んできた。しかし,その実践は各学年に任され,全体的なバランスが見られなかっ
  た。そこで授業研究や情報交換の場を持つようにしたり,週案で実践状況をチェック
  するようにしたい。
   また,運用にあたって特に留意する点は,追加された第3点目のねらいである「各
  教科・道徳・特活でつけた力を総合的な学習に結びつけ,総合的な学習の時間で育っ
  た力を学習や生活に生かす知の総合化」である。単元設定の段階から先を見通した位
  置づけをし,計画的に進めていきたい。
   あわせて学校図書館の活用,他の学校との連携,公民館,図書館,博物館などの社
  会教育施設や社会教育団体などの各種団体との連携,地域の教材や学習環境の積極的
  な活用などについても工夫していきたい。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[1]総合的な学習における「子どもの目標」と「教師の目標」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 前号の続きです。
■《目標の二重化構造》■ 
 総合的な学習の時間における児童の「学習目標」って,どんなものか考えて見たいと思
います。
 例えば次のような実践を考えたとします。長いスパンの話で申し訳ありませんが。
例:4年生での実践:学区のおもしろガイドをつくろう
  この単元での子どもの目標は
 「学区のよさや問題点を個性を生かして調べることができる」
 また,
 「絵地図や1枚新聞,パンフレットなどにまとめて家庭や地域の方に紹介することがで
 きる」
 とします。
 つまり,子どもたちは
 「調べて,まとめて,紹介しよう」
 という目標のもとにがんばるのです。 
 しかし,教師には
 「地域に根ざした問題解決学習を設定し,それを解決していく過程において生きる力を
 育てる」
 という単元の目標があります。例えば,次のような観点から。
  1 知ることの喜びを味わい,自ら学ぼうとする意欲をもつことができる。
  2 ものごとを見つめる新たな目や考え方を伸ばすことができる。
  3 自分の生活と結びつけて考え,これからの生き方を考えることができる。
 つまり,子どもたちは学区のよさや問題点を多くの人に知らせるために追究活動を重ね
ます。指導者はその過程において,学ぶ楽しさを味わわせたり,自分の生き方を振り返ら
せたいのです。
 これらは教師が子どもたちに身につけてほしいと願っている力であって,子ども自身が
1〜3のことがらを目標としているわけではありません。
 このあたりが教科の学習と異なる点だと思うのです。
 総合的な学習の時間はご承知のように教科ではありません。時間です。私たちはともす
れば,総合的な学習の時間を教科と同じレベルで考えていやしないでしょうか。目標だけ
にとどまらず,単元構想にしろ,評価にしろ,さまざまな面で。これは大きな落とし穴だ
と思うのです。
 このことが私が目標の二重構造化に関心を持った理由です。きちんと考えていけば総合
的な学習の時間の実践も少し変わってくるのではないかということです。
■《奈須正裕氏の論》■
    ★★★★子どもは活動を目指し,教師は内容を目指す★★★★★★
      活動と内容の区別は重要である。しかも,子どもたちが目指すの
     は活動であって内容ではない。子どもからすれば,活動こそが目的
     であり,内容は活動展開の手段として,あるいは活動に伴って,結
     果的に学ばれてしまったものなのである。
      子どもたちはおいしいジャムをつくりたい,山羊を飼いたい,筏
     で川下りをしたいのである。彼らは何も,現代の食をめぐる切迫し
     た状況や命の大切さ,学級みんなで団結して何かをなし遂げること
     の素晴らしさを学ぼうとしたのではない。それらは活動の展開の中
     で,結果的に学ばれてしまったのである。しかも,大事なことは,
     子どもたちもそれによって,より深く納得し,活動に取り組んでよ
     かったという気持ちが強くなることであろう。
      〜中略〜 活動の自然な展開の中で,教育的に価値のある内容の
     学習を実現することこそが教師の目的であろう。 
       奈須正裕著「総合学習を指導できる教師の力量」明治図書刊
     ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
 ここに書かれていることはまさに「目標の二重化構造」ではないでしょうか。子どもの
目標と教師の目標は明らかにちがいます。
 私が二重化構造を初めて知ったのは鳴門教育大付属小での世羅教授のお話でした。はじ
めは「当たり前だ」と思ったものでしたが,案外これは盲点になっていると思うようにな
りました。
 子どもたちに「さあ,今日の授業では,ジャムづくりを通して食糧問題について考える
んですよ」なんてことを言う教師はいないと思います。
 これは評価の観点にもつながってきます。
 「現代の食をめぐる切迫した状況を理解することができたか」
 とか
 「命の大切さを感じ取ることができたか」
 といった観点は教師がする評価であり,子どもたちは
 「おいしいジャムをつくることができたか」
 「見事に筏下りを成功させることができたか」
 という観点になります。できなかったら「なぜできなかったのだろう」を考えればいい
のです。できたグループになぜできたのかを尋ねればいいのです。これは方法知重視の授
業にもつながります。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[2]私が最近読んだ本
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
             おやすみです  
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[1]有田和正氏の「現場に見る総合的学習の問題点」
    ― 教材(内容)のない指導案が多いのはどうしてか ―

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 『教材(内容)のない指導案が多いのはどうしてか』という見出しに誘われ,読んでみ
ました。
 ……………………………………………………………………………………………………
 「指導する」とはどういうことなのか。これに対して有田氏は,「子どもが見えない
(分からない)ことを見える(分かる)ようにすることが指導であり,そのプロセスで
学び方を体得させ,学習することはおもしろいという学習意欲を引き出すことが指導で
ある」
 ……………………………………………………………………………………………………
と言われている。
 さらに次のようなことを言われている。
 ……………………………………………………………………………………………………
 指導案には「こんな子どもだから(実態把握)」「こんな教材を使って(教材選定)」
「こんな指導をして(指導法の選定)」「こんな力をつけたい(ねらいの決定)」を書く
べきなのに,「こんな指導をして」ばかりを強調して,「こんな教材を使って」「こんな
力をつけたい」がない。
 教材がないのに,どうして指導が成り立つのか私には分からない。子どもの実態にあっ
た教材を選定し,それを使って多様な指導をし,ねらう力をつけるのが「指導」というも
のである。「指導する」とはどうすることなのか,が忘れられている。
 ……………………………………………………………………………………………………
 方法論ばかりが論じられていることを訴え,さらに,教材(内容)のない指導案の具体
例を挙げ(これについては省略),指導案を書くことの2つの目的について言及されてい
る。
 ……………………………………………………………………………………………………
 1つ目は,自分が本時にどんな内容を使って,どのような指導をして,どんな力をつけ
させるかを書くもので,自分のための指導案である。2つ目は他人に見てもらうもので,
見る人に「ねらい・内容・方法」が分かるように書かねばならない。
 ……………………………………………………………………………………………………
 最後に,なぜこうも「方法」ばかりが前面に出てきたかということについて,総合的な
学習の時間の特質の誤解をあげておられる。総合的な学習の時間では何でもあり,何をや
ってもいい,何かをやればいいと誤解されていることを述べておられる。
 ……………………………………………………………………………………………………
 ごく最近あったことです。初任者が指導案について助言をもとめに来ました。一通り読
んで感じたことは,文字通り「指導案」であり,「授業案」であることです。「学習案」
になっていないのです。
 つまり「こうやって結論にたどり着かせよう」という教師の思惑が強すぎるのです。こ
れは教師の指導メモであり,子どもの「学習案」ではないのです。つまり子どもサイドか
らは「学習」になっていないのです。先生から「授業」されるのです。有田氏の言われる
《「こんな指導をして」ばかりが強調されている》は,このことにあてはまりそうです。
 また,くだんの指導案は《子どもの実態にあった教材を選定し,それを使って多様な指
導をし,・・・・》が弱かったのです。
 独創的で個性ある教材を開発することは勇気がいることです。「学校でこんなことやっ
ていいの?」という不安もつきまといます。しかし,これからはそんなこと言っていられ
ないと思います。独創的な教材を持ってくれば,子どもは必ず個性ある多様な追究を始め
ます。
 意識改革,発想の転換が大切です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[1]総合的な学習の時間 ―研究目標の設定にあたって考えること―
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 見出しのことについての私見です。総合的な学習の時間に疑問を感じておられる方,も
う一度考え直してみたい方,ぜひ最後までお読みください。
…………………………………………………………………………………………………
◇ 総合的な学習の時間の最も重要なねらいは「自己の生き方を考えることができるよう
 にすること」であろう。いわゆる「生きる力」を育てることである。では「生きる力」
 とはいったいどんな力なのか,もういちど原点に戻って考えてみたい。
  総合的な学習の時間では,子どもたちは現実の社会や自然の場に出て,そこから自ら
 問題を見つけ出し,解決を目指す学習をする。その複雑で多岐にわたる問題との取り組
 みを通して,自分の生活や生き方について考え,自ら実践する資質や能力,態度を育て
 ることを目指す。このように実践的,実際的な学習を通して,最終的に,自己の生き方
 を考えることができる自立的な生き方や主体的に生きる力を身につけた人間の育成をね
 らう。
◇ 目の前の社会や自然といった身近なところから自ら解決課題を発見し,それをさまざ
 まな体験を通して解決する。この過程で子どもたちはうれしい体験や苦しい体験など,
 さまざまな体験をする。この取り組みを通して自己の生き方をふりかえり,今後の生き
 方を模索するだろう。また,獲得した知識や技能などを,自分の生活上に直ちに反映さ
 せるであろう。
 (「自分自身や自分の生活を考える」学習を重視することで,生活科と総合的な学習の
  時間との 関連性,つまり同じベースで取り組むことの理論づけが図れるだろう。)
◇ 総合的な学習の時間の特色は,ちがう側面から見ると,問題を解決する際,教科・道
 徳・特別活動といった既成の枠を越えた(時間はもちろん,目標も)学習を展開する,
 言い換えればその学校独自の創造的な学習を展開していく,ということであろう。
  例えば,社会科で「明治用水」を扱った場合,「きょうどを開く」単元であり,指導
 すべき目標が指導要領に示されている。しかしこれを総合で扱った場合,方法はもちろ
 ん,一人ひとりの子がそれぞれ異なった視点からの知識・技能を獲得しても差し支えな
 いだろう。また,それぞれの子が自分なりの目標に到達すればよいのであって,追究の
 結果に内容差があったとしても,それほど問題とはならないのではないだろうか。この
 あたりのことが「教科」と「時間」の違いに由来するのではないかと思う。
◇ しかしながら,これを達成するためには,子どもたち自身が知識獲得意欲を満たすこ
 とが不可欠である。これが満たされたとき子どもたちは身をもって喜びを味わうことが
 できる。身の回りから自分が抱いた疑問を解決できることがまず第1だと思う。そして
 そこからさらに新たな追究が広がっていくのである。この過程がなくては,前述の「こ
 の取り組みを通して獲得した知識や技能を自分の生活上に生かす」ことはできない。し
 たがって,「問題解決的な学習や体験的な学習」を進める中で「調べ方」や「学び方」
 を身につけることも大事なことである。
  この力は他教科でももちろん育てることはできる。しかし,これまで教科指導で行わ
 れてきた問題解決的な学習は,学習のねらいや内容を効果的に到達させ,習得させるた
 めの方法・手段として進められてきた傾向があった。これは「課題解決学習」であると
 思う。ところが総合的な学習の時間で言うところの「問題解決学習」とは,単に子ども
 の学習活動を活発にして,知識や技能を能動的に習得するためのだけの方法論ではない
 と思う。
  子どもたち一人ひとりが人間としてどう生きるか,自ら問い,自ら考え,自ら学びな
 がら,自立的に生きる生き方を学んでいくための人間教育の方法論なのである。その根
 底には,子どもを知識・技能を身につけさせる対象として見るのではなく,独自性を持
 った「主体的な存在」「自立的な存在」と考える人間観が必要であろう。
◇ 追究の広がり
  同じ入口から入っても,子どもたちの道はさまざまな方向へ進んでいく。子どもたち
 が切実な課 題意識を持って主体的に取り組めば,教師の予想もつかない方向へと展開
 していくだろう。また, 自然に教科の枠は超えていくものである。
  教科は,系統性を図る意図的に仕組まれたものである。しかし,子どもたちの持つ疑
 問は無限に 広がり,今流の言い方をすればオープンエンドである。際限がない。そし
 てそれは学校教育の範疇 だけでなく,生活の中にまで広がっていく。「生きる」とい
 う概念を追究する過程においては,こ のことは好ましい学習展開ではないだろうか。
 自分の生活すべてが追究のフィールドとなる。
  これは,自らの生活を切り開いていく,いわば「創造的な知」である。我々教師は子
 どもの思考 の広がりを認め,教師サイドの結論に誘導しないよう常に配慮すべきであ
 る。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[2]総合的な学習の時間でつけたい力
      きちんと区別していますか? 「子どもたちのねらい」と「教師のねらい」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 総合的な学習の時間の実践をめぐって,いろいろ問題点が明らかになってきています。
その一つに「子ども中心」をどうとらえるか,そして「体験あって中身なし」という実践
があります。これは「子どもたちのねらい」と「教師のねらい」がきちんと区別されてい
ないことが原因ではなかろうかと思います。
 このことについて具体例をあげて考えてみます。
…………………………………………………………………………………………………………
     例:4年生での実践:単元名「学区のおもしろガイドをつくろう」
 この単元での子どもの目標は,
・  学区のよさや問題点を個性を生かして調べることができる。
・  絵地図や1枚新聞,パンフレットなどにまとめ,家庭や地域の方に紹介することがで
きる。  とします。
 つまり,子どもたちは「調べて,まとめて,紹介しよう」という目標のもとに学習を進
めていくわけです。しかし,教師は子どもと同じ目標ではいけないと思うのです。一緒に
なっておもしろガイドをつくることに夢中になっていてはならないと思うのです。
 教師には教師の指導すべき目標がなくてはなりません。例えば,「地域に根ざした問題
解決学習を設定し,それを解決していく過程においてさまざまな学習スキル(学習技能)
を身につけさせる」というような単元目標が必要です。さらにこれを具体化させると,
 1 課題解決に必要な学習スキルを身につけ,知ることの喜びを味わい,自ら学ぼうと
  する意欲をもつことができる。
 2  ものごとを見つめる新たな目や考え方を伸ばすことができる。
 3 自分の生活と結びつけて考え,これからの生き方を考えることができる。
 さらにミクロに見ると,問題を発見する力,情報を集める力,それを処理する力,まと
める力,発表する力,などです。
 つまり,子どもたちは学区のよさや問題点を多くの人に知らせるために追究活動を重ね
ます。指導者はその過程において,学ぶ楽しさを味わわせると同時に確かな力をつけさせ
ねばならないのです。
 これらは教師が子どもたちに身につけてほしいと願っている力であって,子ども自身が
1〜3のことがらを目標としているわけではありません。子どもたちはあくまでもおもし
ろガイドを一生懸命作成すればよいのです。
 このあたりが教科の学習と異なる点だと思うのです。総合的な学習の時間はご承知のよ
うに教科ではありません。時間です。私たちはともすれば,総合的な学習の時間を教科と
同じレベルで考えていやしないでしょうか。確かに「学習」には違いありません。しか
し,つけたい力をダイレクトに子どもに要求することはできないのです。子どもは子ども
で自分の目標に向かって学習をする。その過程で教師は教師の目標を意図的,継続的に達
成させるのです。
 目標だけにとどまらず,単元構想にしろ,評価にしろ,さまざまな面で,今までの教科
学習と見方,考え方を変える必要がありそうです。目指す学力のベクトルが違うのです。
これは大きな落とし穴だと思います。
 このことを鳴門教育大付属小では「目標の二重化構造」を呼び,きちんと区別して実践
しています。このことをきちんと考えていけば総合的な学習の時間の実践も少し変わって
くるのではないかということです。
 以下に引用したのは立教大学の奈須氏の著書からです。参考になると思います。
   ★★★★子どもは活動を目指し,教師は内容を目指す★★★★★★★★
     活動と内容の区別は重要である。しかも,子どもたちが目指すの
    は活動であって内容ではない。子どもからすれば,活動こそが目的
    であり,内容は活動展開の手段として,あるいは活動に伴って,結
    果的に学ばれてしまったものなのである。
     子どもたちはおいしいジャムをつくりたい,山羊を飼いたい,筏
    で川下りをしたいのである。彼らは何も,現代の食をめぐる切迫し
    た状況や命の大切さ,学級みんなで団結して何かをなし遂げること
    の素晴らしさを学ぼうとしたのではない。それらは活動の展開の中
    で,結果的に学ばれてしまったのである。しかも,大事なことは,
    子どもたちもそれによって,より深く納得し,活動に取り組んでよ
    かったという気持ちが強くなることであろう。
     〜中略〜 活動の自然な展開の中で,教育的に価値のある内容の
    学習を実現することこそが教師の目的であろう。 
      奈須正裕著「総合学習を指導できる教師の力量」明治図書刊
   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
 以上のことを頭に入れ,自分の実践ではこんな力がつけられそうだという意識を持ちな
がら取り組んでみてください。まだ間に合いそうです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
門脇厚司氏の講演を紹介します
           「社会力」をはぐくむ総合的な学習を

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 平成17年1月7日  演題:「社会力」をはぐくむ総合的な学習を
                     講師:門脇厚司先生(筑波学院大学学長)
○ 子どもたちの成長の仕方‥‥きわめて好ましくない
             ‥‥なぜこのような育ち方しかできないのか
○ 「社会力」をはぐくむ総合的な学習を
  ・「社会力」‥‥人が人とつながり,もっといい社会をつくろうとする意欲・態度
                 「よりましな社会をつくろう」
         もっとよくするにはどうすればよいか‥‥考える力(構想力)
                  できるじゃないか‥‥実行力
 ・脳科学‥‥どれだけ優れた力を発揮できるか(脳科学の面から分析)
       社会力を高める→脳の機能を高める→学力はつくはず
  ・知的能力を高めることからの転換
        英語が話せる,数学ができる→社会的な能力を高める→人間の価値を高める
        このことが「社会力」を高める‥‥教育の目的に
  ・社会力の大もと‥‥自分以外への関心や愛着を持つこと,社会と関わること,そして
           実行すること。
                  ‥‥他者を取り込むこと,その人のことをすっぽり自分の中に取り込
           むこと。
○ 「非社会化」の進行
 ・「社会化」‥‥次の社会を担う資質をつけること
         さまざまな人といい関係を持ち,毎日をスムーズに生活し,しかも楽
        しい。   
                →高度な能力を身につけている証拠
                現状:スムーズでない,楽しくない,人間関係がつくれない
                      他者に関心を持たない,人と関わりたくない
 ・こんな子に‥‥私も社会の一員である,私も役立っているという自覚を持てる子
○ こんな総合的な学習を
 ・生きる力の中核は「社会力」‥‥他者に共感し,他者と関わる
  ・舞鶴市中筋小の例‥‥市総合計画に盛り込まれている町の課題に取り組む
            住みやすい町にするために,市民の協力を得ながら
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[1]“総合的な学習の時間”をどうとらえるか?
                       ―“子どもの社会力”を育成する総合的な学習―

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  No.149に続き,第2弾です。私の考える総合的な学習のめざすところは「社会力」の育
成です。その「社会力」の概念の生みの親である門脇厚司氏の講演を聴く機会がありまし
た。講演の内容については次号でお知らせします。
 今回は来年度からの見直しに役立つ資料第2弾を紹介します。具体的な話にまで立ち入
っているため,かなり長文です。総合的な学習を何とかしたいとお考えの方,どうか最後
までお読みください。
 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
1 指導要領総則に見られる総合的な学習の時間の「ねらい」と「学習活動」 
 ■ ねらい(総則 3の3の4 P45)に関する記述
  (1)自ら課題を見つけ,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解
    決する資質や能力を育てること。
  (2)学び方やものの考え方を身につけ,問題の解決や探求活動に主体的,創造的に
    取り組む態度を育て,自己の生き方を考えることができるようにすること。
 ■ 学習活動(総則 3の3の5 P48)に関する記述
    例えば   ・国際理解,情報,環境,福祉,健康などの横断的・総合的な課題
           ・児童の興味・関心に基づく課題
          ・学校や地域の特色に応じた課題
2 これをどう解釈するか(本校の「総合的な学習の時間」の定義づけ)
  総合的な学習の時間には2つのねらいがあります。1つは総則の(1)にある「問題
 追究能力を育成する」こと,2つ目は(2)にある「社会的認識を高める(新たなもの
 の見方・考え方)」ことです。以上の2つのねらいを達成させるためには「学習」を展
 開させねばなりません。
  今までは(1)の方に力を入れて実践してきましたが,今後の実践にあたって(2)
 の方も考えていく必要がありそうです。
  (2)は「子どもたちの社会的認識を広め,そして高める(地球市民としての資質を
 身につける)」ということです。総則の中にも「学校で学ぶ知識と生活との結びつき,
 知の総合化の視点を重視し,各教科等で得た知識や技能等が生活において生かされ総合
 的に働くようにすることが大切 p47」という記述が見られます。自分の追究を通して社
  会を見,そして自分なりの主体的な社会への認識を持つ,ということです。指導要領総
 則に例示されている内容の「国際理解」「情報」「環境」「福祉・健康」は,これから
 の社会を生きる子どもたちに考えさせたい社会問題なのです。これらの問題に主体的に
 対応できる力が「生きる力」であろうと考えます。対応できてこそ「自立」できるので
 す。かつての低学年社会科が「○○ごっこ」であったのが,生活科では「○○探検」と
 なり,自由な探究・追究活動をさせ,自立への基礎をねらうこととなりました。総合的
 な学習の時間はこれを受けて,さらに「社会の中での自立」を目指すものであると解釈
 できます。そしてこれを小3から高3まで9年間かけて完成させるのです。
3 どう実践するか
  これを達成させるために留意すべきことが1つあります。それは「活動だけに目を奪
 われた学習になってはいけない」ということです。例えば,日本の食についての問題を
 扱った場合で言えば,子どもも教師も「米を育てて食べておわり」という実践すらあり
 ます。これは活動だけでおわり,教師が(1)や(2)を意識して実践しなかった結果
 です。特に,(2)を意識して指導すれば,「現在の我が国が抱える食生活の問題」,
 例えば狂牛病や日本ハムの問題などにまで子どもたちの意識は広がっていくはずです。
 こういう認識を高めることは,総合的な学習の時間でつけたい力として,見逃せない大
 切なことです。
  知を総合化させて学習したにもかかわらず,子どもたちに意識変革が生じなければそ
 の実践は失敗だと思います。追究技能が身につくだけでは総合的な学習の場合,目標を
 達成したことにはならないのです。言い換えれば,その実践では「生きる力」が身につ
 かなかったからです。21世紀を生きる子どもたちに,現代社会の抱えるさまざまな諸
 問題にどう対応していくのか,そんな認識を育てることは総合的な学習の時間に課せら
 れた大きな使命だと思います。
  総合的な学習の時間では,子どもたちが自ら疑問に思ったことを追究課題として取り
 組んでいくわけですから,異なる目標が複数存在します。しかし,この目標はばらばら
 であって,実は大枠では同じところに向かっているのです。その根拠は次の通りです。
  指導要領に書かれている総合的な学習の2つの目標は,小3から高3までの9年間で
 完結させることを前提としていると理解しています。小学校の段階では何ができるかを
 考えた場合,目標(2)に関しては,社会の仕組みやその様子を知ることができればい
 いと思っています。社会認識の第1歩です。例えば5年生で「米づくり」を総合的な学
 習で扱った場合,日本の抱える食糧事情を理解し,自分なりの社会認識ができればいい
 のです。これが教師の指導目標(つけさせたい力)だと考えます。この頂上を目指して
 子どもたちはさまざまな道具を使い,それぞれの装備で,登山路を自分で開きながら登
 っていくのです。稲作問題を追い続ける子もいるだろうし,野菜や果樹栽培を通して追
 究する子もいるでしょう。なかには狂牛病への関心から畜産を追究する子も出てくるか
 もしれません。しかし,最終的に「現代の日本が抱える食糧問題」に迫ることができれ
 ばいいのです。一見「異なる目標(異論)が共存する環境」のように見えますが,しか
 し,大枠は同じではないかということです。これを教師がどう指導していくかはひじょ
 うに大きな問題点となりますが,大事 なことは以下のことではないでしょうか。
  まず,それぞれの子が話し合いや発表会でお互いに関わりを持ち,お互いに評価しあ
 い,高め合うことが必要です。「学びの共有化」であり,自己評価や相互評価が重要で
 あるゆえんでもあります。独立独行,我が道を行くではないと思うのです。共通の「大
 目標」がはっきりしていて,進む方向が明確であって初めて子どもたちは自分の追究問
 題を設定でき,解決への方向性を模索することができるのです。小学校の段階ではでは
 そうであるべきだと思います。
4 教師の指導のあり方は
  また,指導法の問題になりますが,教師はとんでもない方向に進んでいこうとしてい
 る子に対して指導すべきです。どう考えても大目標である「日本の食糧問題を考える」
 というものの見方・考え方が育たないと判断される子への指導です。これが「教師はシ
 ナリオを持つべき」ということです。失敗することが目に見えている子に対しては教師
 が方向修正してやるべきだと考えます(少なくとも小学校レベルでは)。それが支援で
 あると思います。
  経験を積み,さまざまな自己判断能力(周囲を見ながら自分の追究を比較対照できる
 能力など)が身についている中高生なら話は別ですが。はい回るのも経験であり,そこ
 に学習意義を見いだそうとする考えもあるようですが,最後まではい回って終わった子
 (もちろんまとめができない,報告もできない,という状況になると思います)は必ず
 総合嫌いになります。いえ,問題解決学習そのものが嫌いになります。さらに言えば勉
 強嫌いにまで発展するやもしれません。自己の追究課題が設定できない,どうやって追
 究していけばよいのか分からない,という子が大部分なのです。そういった意味からも
 教師はシナリオを描き,時には演出家にもならねばならないというわけです。
  例えば,4年生でのごみの学習を発展させ,総合的な学習の時間で扱う場合を考えま
 す。ごみの問題は極めて意義ある教材だと思っています。多くの場合社会科では「ごみ
 の種類と量」「ごみの分別と収集」「クリーンセンター(焼却場)の仕組み」「ごみの
 リサイクルと環境保全」といったことを学習します。これらを地域をフィールドとして
 見学や観察といった体験を通して学習していきます。しかし,私も過去に感じたことが
 ありますが,実際の授業では,それぞれの子が獲得し知識は断片的で,単に事実(実
 態)を知っただけで終わってしまうことが多いのではないでしょうか。主たる原因は
 「時間数」です。いつまでもごみの問題を続けているわけには行かない事情がありま
 す。そこで総合的な学習の時間でという発想です。社会科での学習だけでは本当に「ご
 みの問題」を理解したことにはならないのです。そこには「新たな社会認識(地球市民
 としての資質)」,言い換えれば「生きる力」がついていないからです。例えば「おじ
 いちゃんが子どもの頃の昔のくらしとごみの問題は?」「アメリカではどうか?アフリ
 カではどうか?」などという視点が必要だと思うのです。もっと言えば,ビニールやプ
 ラスチックを燃えるごみで出す自治体もあるそうです。分別の仕方も自治体によって異
 なるようです。
  教師は,学習前にこのような展開を描くのです(単元をデザインする)。そして,追
 究対象レベルで言う「異なる目標(異論)が共存する環境」を意図的につくります。子
 どもたちがさまざまなものさしで追究し,そして共有化し,自他を比較してこそ判断や
 比較の基準となる「自分のものさし」が明確になるのです。いろいろな視点からそれぞ
 れの子どもたちが追究して,それを学習者全員が共有することではじめて真の意味で
 「ごみの問題」を理解したことになるのではないでしょうか。最終的にはごみ問題を通
 して「新たな社会認識(地球市民としての資質)」を育てるのです。こういった,この
 ような学習を展開させ,子どもたちに新たな「ものの見方,考え方,生き方」を身につ
 けさせたいという展望を持つことが,シナリオを持つということです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[1]総合的な学習の時間”の目指す力
                  21世紀を生きる子どもたちのためにつけたい力とは?

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 総合的な学習をうまく実践できる教師は“力量のある教師”といわれています。委まで
は「活動あって中身なし」という実践は減ってきたようですが,今一度ふり返って,来年
度の計画を見直してみてはどうでしょうか。少々理屈っぽい小論ですが,参考になれば幸
いです。
 総合的な学習でほんとうにつけたい力とはいったい何なのでしょうか。私は一貫して
「地球市民としての資質を身につける」ことと考えています。
 総合的な学習の時間が創設された背景をもう一度考えてみましょう。受験地獄に代表さ
れる教育への反省と改革から,84年に臨教審が教育の抜本的な改革に着手しました。こ
こから生まれたのが「ゆとり教育」です。これを受けて
第14次中教審が91年に最終まとめを発表し,その中に「新しい学力観」が盛り込まれ
ました。当時の文部相は93年に「新しい学力観に立つ教育課程の創造と展開」という指
導資料を作成しました。これはみなさんご覧になったことがあるでしょう。
 その中に「激しい変化が予想されるこれからの社会においては,子ども一人ひとりが主
体的,創造的に生きることのできる資質や能力の育成を図る」と述べられ,さらに「自ら
学ぶ意欲や社会の変化に主体的に対応できる能力」という文言も見られます。
 さらに「新しい学力観」に基づく教育の展開を目指して,96年に第15期中教審が第
1次答申「21世紀を展望した我が国の教育のあり方について」を発表しました。ここか
らさらに「生きる力」がクローズアップされてくるのです。なぜ「生きる力」なのか?そ
の背景として次のようなことが書かれています。
〈以下,本文引用〉
 我々はこれからの子供たちに必要となるのは、いかに社会が変化しようと、自分で課題
を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質
や能力であり、・・・中略・・・・
 我々は、こうした資質や能力を、変化の激しいこれからの社会を「生きる力」と称する
こととし、これらをバランスよくはぐくんでいくことが重要であると考えた。
〈引用終〉
 さらに答申第1章 (2)「これからの社会の展望」では,今後子どもたちが直面し,解決
しなければならないであろう問題を5点あげてあります。
〈以下,本文要約〉
 我が国の社会は、今後、様々な面で変化が急速に進むと考えられる。ここでは基本的な
展望を述べておくこととする。
1 国際化の進展
  冷戦の終焉や交通手段の発達、情報化の進展を背景に、経済、社会、さらには、文化
 の面で交流が一層進み、国際的な相互依存関係がますます深まっていく。一方、様々な
 面で国際的な摩擦や競争も生じてくると考えられる。
2 情報化の進展
  世界的な規模の情報通信ネットワークを通じて、不特定多数のものが、双方向に文字
 ・音声・画像等の情報を融合して交換することが可能となりつつある。このような高度
 情報通信社会の実現は、地球規模で今後の社会や経済の姿を大きく変えていくものと考
 えられる。
3 科学技術の発展
  科学技術の発展は、人類にとって豊かな未来を築く原動力になると考えられるが、と
 りわけ、人間の知的創造力が最大の資源である我が国にとって、諸外国以上に科学技術
 の発展は重要である。しかしながら、一方、科学技術が著しく高度化・細分化・専門化
 する中で、国民にとって科学技術は分かりにくいものとなり、不安感がさらに高まって
 いくことも懸念される。
4 人類の生存基盤を脅かす問題
  地球環境問題、エネルギー問題なども生じてきている。これらは、大量生産・大量消
 費・大量廃棄型の現代文明の在り方そのものが問われる問題であるが、今後、地球規模
 でこれらの問題に取り組んでいく必要性はさらに高まり、この面で、我が国の貢献がさ
 らに強く求められるようになっていくことが予測されるところである。
5  高齢化や少子化の急速な進展
  かつて経験したことのないような少子・高齢化社会を迎えることが確実と見られてい
 る。また、男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分
 野に参画する機会が確保される「男女共同参画社会」づくりも重要な課題となってい
 る。
〈要約終〉
 さらに次のように結んでいます。 
〈引用始〉
 これからの社会をどのように展望するかについては、様々な変化や要素を考える必要が
あり、一概に言い表すことは難しいが、いずれにせよ、変化の激しい、先行き不透明な、
厳しい時代と考えておかなければならないであろう。
〈引用終〉
 みなさんの目の前にいる子どもたちは,このようなきびしい時代を生きていかなければ
ならないのです。そのためにどんな力をつけてやらねばならないのでしょうか?これが大
きなキーポイントです。
  よく「学校の勉強なんか,社会に出たら何の役にも立たない」と言われます。これまで
の教科学習が子どもたちと意味のある結びつきがなかったからです。新指導要領の目指す
ところは,断片的になりやすい知識・技能を自分の必要性,自分の生活に動機づけさせ,
体系化させ,血肉化させることです。これは「21世紀の変化の激しい社会」を生きる子
どもたちに必要な力です。
 私は義務教育の目指すべき方向はまさしくこれだと思います。新指導要領では,教科学
習もただ単に「知識・理解」だけでなく「関心・意欲・態度」そして「思考」を重視して
います。ただ単に知識人間では21世紀を生き抜けないのです。変化の激しい社会と関心
や意欲をもって関わり,そして思考し,さらに実践できる人間を育てて行かねばならない
のです。
 そのために設けられたのが総合的な学習の時間であると解釈します。義務教育における
「社会力」(注:門脇厚司氏「学校の社会力」朝日選書)の養成だと思っています。以上
が私の「地球市民としての資質を育成する」ことの根拠です。
 総合的な学習の時間をより充実させることが「21世紀を生き抜く子どもたち」を育て
ることに大きく作用すると考えています。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[1]小中一貫9年間の教育課程の編成と体系的な評価の研究
           文科省研究開発学校「一色町立4小学校1中学校の取り組み」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 愛知県一色町の4小学校と1中学校は,生活科から小中学校の「総合的な学習の時間」
まで9年間を見通した教育課程の編成と体系的な評価の研究に取り組んでいます。4小学
校の卒業生は全員同じ中学校に進学します。
 特徴的な取り組みとして,全小中学校が同じ曜日の同じ時間に2時間続きの「総合的な
学習の時間」を設定し,各校の児童生徒が一緒に課題に取り組むなど学校間交流,異年齢
集団による学習ができるような体制をとっています。4小学校の児童は一色中学校に入学
することや,学校間の距離がそれほど離れていないことから,児童生徒が一緒にうなぎの
養殖場や全国一の生産量を誇るカーネーション,エビせんべいの生産現場に一緒に出向く
地域学習などを想定している。
 各学校で蓄積した「町の先生」の人材データや効果的な地域教材を作成,コンピュータ
などで共有化することも視野に入れて整備する。
 「小中一貫で『総合的な学習の時間』を行うことで,9年間の発達段階に合わせた支援
が可能になることや,学校間交流で教職員の意識が変わってくることなどの効果を期待す
る」ということです。
 この4小学校1中学の研究発表会が11月19日に開催され,私も参観してきました。
  小中学校9年間の学習の内容系列表がしっかりしているのにはとても驚かされました。
発達段階ごとのねらい,そして5つの分野「伝統・文化」「福祉・社会」「産業・経済」
「環境・自然」「命・生き方」にわたる内容系統が,まるで指導要領のごとく組織されて
います。
 ■ 一色中部小学校授業参観
   5年総合「われら一色のえびせんべい応援団」を参観した。子どもたちは自己の課
  題意識を持って追究活動を展開し,活発に意見交換がなされていた。しかし,子ども
  たちの意識の根底にあるのはどういう気持ちなのかはっきり伝わってこなかった。業
  者の生き残りが問題なのか,えびせんべいの生き残りが問題なのか,どちらなのか。
  野菜せんべいなどのバリエーションを増やして業者が生き残ることが大事なのか?地
  域の名産であるびせんべいそのものを残していくことが大事なのか?問題点を追究し
  たのち,それからどうするのか?ポスターをつくるだけでよいのか?つまり,追究の
  結末がはっきりしていないように感じた。単元の入り口はよかったが,出口をどうと
  らえているのかがよくわからなかった。
 ■ 全体会
      指導者からすると「指導と評価の一体化」であるが,学習者からすると「学習と評
  価の一体化」である。言われてみればごく当然のことであるが,案外指導者側の立場
  に終始してしまいがちである。このことは学習者がしっかりと自己評価のめあてを意
  識していなければできないことであろう。
      このことから考えると,指導案に示されている評価基準には,子どもの具体的な姿
  や教師の関わりが見られないように感じた。総合的な学習の評価基準であるから,単
  元の内容にまで踏み込み,いっそう子どもの姿に寄り添ったな基準にした方がよいと
  思う。それが子どもの自己評価の目安にも生きてくる。
      新しく耳にした「問題解決評価観」ということば。指導と評価の一体化をどう図る
  かという点で参考になりそうな考え方である。
 なお,本研究には国立教育政策研究所の高浦先生が深く関わっておられます。同研究所
のHPから詳細な資料を得ることができます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[1]見直しが必要!“総合的な学習の時間” Part2
             ― 総合的な学習に関心がおありの方,ぜひご一読を ―
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 前号での続きです。前号では,
  ・指導要領総則に見られる総合的な学習の時間の「ねらい」と「学習活動」
  ・これをどう解釈するか(各学校の「総合的な学習の時間」の定義づけ)
 について述べました。今回はもう少し具体的な話をします。
 ……………………………………………………………………………………………………
■ どう実践するか?
  これを達成させるために留意すべきことが1つあります。それは「活動だけに目を奪
 われた学習になってはいけない」ということです。
  例えば,日本の食についての問題を扱った場合で言えば,子どもも教師も「米を育て
 て食べておわり」という実践すら見られます。これは活動だけでおわり,教師が(1)
 や(2)を意識して実践しなかった結果です。特に,(2)を意識して指導すれば,
 「現在の我が国が抱える食生活の問題」,例えば狂牛病や日本ハムの問題などにまで子
 どもたちの意識は広がっていくはずです。
  こういう社会的な認識を高めることは,総合的な学習の時間でつけたい力として,見
 逃せない大切なことです。
  知を総合化させて学習したにもかかわらず,子どもたちに意識変革が生じなければそ
 の実践は失敗だと思います。追究技能が身につくだけでは総合的な学習の場合,目標を
 達成したことにはならないのです。言い換えれば,その実践では「生きる力」が身につ
 かなかったからです。21世紀を生きる子どもたちに,現代社会の抱えるさまざまな諸
 問題にどう対応していくのか,そんな認識を育てることは総合的な学習の時間に課せら
 れた大きな使命だと思います。
  総合的な学習の時間では,子どもたちが自ら疑問に思ったことを追究課題として取り
 組んでいくわけですから,異なる目標が複数存在します。しかし,この目標はばらばら
 であって,実は大枠では同じところに向かっているのです。その根拠は次の通りです。
  指導要領に書かれている総合的な学習の2つの目標は,小3から高3までの9年間で
 完結させることを前提としていると理解しています。
  小学校の段階では何ができるかを考えた場合,目標(2)に関しては,社会の仕組み
 やその様子を知ることができればいいと思っています。社会認識の第1歩です。
  例えば5年生で「米づくり」を総合的な学習で扱った場合,日本の抱える食糧事情を
 理解し,自分なりの社会認識ができればいいのです。これが教師の指導目標(つけさせ
 たい力)だと考えます。
  この頂上を目指して子どもたちはさまざまな道具を使い,それぞれの装備で,登山路
 を自分で開きながら登っていくのです。稲作問題を追い続ける子もいるだろうし,野菜
 や果樹栽培を通して追究する子もいるでしょう。中には狂牛病への関心から畜産を追究
 する子も出てくるかもしれません。しかし,最終的に「現代の日本が抱える食糧問題」
 に迫ることができればいいのです。
  一見「異なる目標(異論)が共存する環境」のように見えますが,しかし,大枠は同
 じではないかということです。これを教師がどう指導していくかはひじょうに大きな問
 題点となりますが,大事なことは以下のことではないでしょうか。
  まず,それぞれの子が話し合いや発表会でお互いに関わりを持ち,お互いに評価しあ
 い,高め合うことが必要です。「学びの共有化」であり,自己評価や相互評価が重要で
 あるゆえんでもあります。独立独行,我が道を行くではないと思うのです。共通の「大
 目標」がはっきりしていて,進む方向が明確であって初めて子どもたちは自分の追究問
 題を設定でき,解決への方向性を模索することができるのです。小学校の段階ではでは
 そうであるべきだと思います。
■ 教師の指導のあり方は?
  また,指導法の問題になりますが,教師はとんでもない方向に進んでいこうとしてい
 る子に対して指導すべきです。どう考えても大目標である「日本の食糧問題を考える」
 というものの見方・考え方が育たないと判断される子への指導です。これが「教師はシ
 ナリオを持つべき」ということです。失敗することが目に見えている子に対しては教師
 が方向修正してやるべきだと考えます(少なくとも小学校レベルでは)。それが支援で
 あると思います。
  経験を積み,さまざまな自己判断能力(周囲を見ながら自分の追究を比較対照できる
 能力など)が身についている中高生なら話は別ですが。はい回るのも経験であり,そこ
 に学習意義を見いだそうとする考えもあるようですが,最後まではい回って終わった子
 (もちろんまとめができない,報告もできない,という状況になると思います)は必ず
 総合嫌いになります。いえ,問題解決学習そのものが嫌いになります。さらに言えば勉
 強嫌いにまで発展するやもしれません。自己の追究課題が設定できない,どうやって追
 究していけばよいのか分からない,という子が大部分なのです。そういった意味からも
 教師はシナリオを描き,時には演出家にもならねばならないというわけです。
  例えば,4年生でのごみの学習を発展させ,総合的な学習の時間で扱う場合を考えま
 す。ごみの問題は極めて意義ある教材だと思っています。多くの場合社会科では「ごみ
 の種類と量」「ごみの分別と収集」「クリーンセンター(焼却場)の仕組み」「ごみの
 リサイクルと環境保全」といった ことを学習します。これらを地域をフィールドとし
 て,見学や観察といった体験を通して学習していきます。しかし,私も過去に感じたこ
 とがありますが,実際の授業では,それぞれの子が獲得し知識は断片的で,単に事実
 (実態)を知っただけで終わってしまうことが多いのではないでしょうか。主たる原因
 は「時間数」です。いつまでもごみの問題を続けているわけには行かない事情がありま
 す。そこで総合的な学習の時間でという発想です。社会科での学習だけでは本当に「ご
 みの問題」を理解したことにはならないのです。そこには「新たな社会認識(地球市民
 としての資質)」,言い換えれば「生きる力」がついていないからです。例えば「おじ
 いちゃんが子どもの頃の昔のくらしとごみの問題は?」「アメリカではどうか?アフリ
 カではどうか?」などという視点が必要だと思うのです。もっと言えば,ビニールやプ
 ラスチックを燃えるごみで出す自治体もあるそうです。分別の仕方も自治体によって異
 なるようです。
  教師は,学習前にこのような展開を描くのです(単元をデザインする)。そして,追
 究対象レベルで言う「異なる目標(異論)が共存する環境」を意図的につくります。子
 どもたちがさまざまなものさしで追究し,そして共有化し,自他を比較してこそ判断や
 比較の基準となる「自分のものさし」が明確になるのです。いろいろな視点からそれぞ
 れの子どもたちが追究して,それを学習者全員が共有することではじめて真の意味で
 「ごみの問題」を理解したことになるのではないでしょうか。最終的にはごみ問題を通
 して「新たな社会認識(地球市民としての資質)」を育てるのです。こういった,この
 ような学習を展開させ,子どもたちに新たな「ものの見方,考え方,生き方」を身につ
 けさせたいという展望を持つことが,シナリオを持つということです。 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[1]見直しが必要!“総合的な学習の時間” Part1
                     (長文ですので2回に分けて掲載します)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    ― 総合的な学習について関心がおありの方,ぜひご一読を! ―
 平成15年10月7日付けで,中央教育審議会から「初等中等教育における当面の教育課程
及び指導の充実・改善方策について(答申)」が出されました。
 その中の第2章「新学習指導要領のねらいの一層の実現を図るための具体的な課題等」
の第3項に「総合的な学習の時間の一層の充実」という項目があります。
 そこに書かれていることを略記します。
 【学校において具体的な「目標」や「内容」を明確に設定せずに活動を実施し、必要な
  力が児童生徒に身に付いたか否かの検証・評価が十分行われていない実態や、教科と
  の関連に十分配慮していない実態、教科の時間への転用なども指摘されているところ
  である。このほか、児童生徒の主体性や興味・関心を重視するあまり、教員が児童生
  徒に対して必要かつ適切な指導を実施せず、教育的な効果が十分上がっていない取組
  も指摘されているなど、改善すべき課題が少なくない状況にある。
  さらに、「総合的な学習の時間」については「時間」であるという名称から、教科等
  とともに教育課程を構成するものであると受け止められにくく、計画的な指導の必要
  性が理解されにくくなっているとも指摘されている。】
 また,平成15年12月26日には,15文科初第 923号「小学校、中学校、高等学校等の学習
指導要領の一部改正等について(通知)」が出されました。これはみなさんの学校にも届
いてことと思います。その中にも 「(2)総合的な学習の時間の一層の充実」という項目
が見られます。
 つまり,総合的な学習をもう一度見直す必要があると言っているのです。 
 これを受けて,再度総合的な学習について考えてみたいと思います。私の思うところを
書き連ねます。これは以前校内配付資料として作成したものです。

        ― 総合的な学習のいっそうの充実に向けて ― 

■ 指導要領総則に見られる総合的な学習の時間の「ねらい」と「学習活動」 
 1 ねらいに関する記述(総則 3の3の4 P45)
  (1)自ら課題を見つけ,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解
    決する資質や能力を育てること。
  (2)学び方やものの考え方を身につけ,問題の解決や探求活動に主体的,創造的に
    取り組む態度を育て,自己の生き方を考えることができるようにすること。
 2 学習活動に関する記述(総則 3の3の5 P48)
    例えば  ・国際理解,情報,環境,福祉,健康などの横断的・総合的な課題
          ・児童の興味・関心に基づく課題
         ・学校や地域の特色に応じた課題
■ これをどう解釈するか(各学校の「総合的な学習の時間」の定義づけ)
  総合的な学習の時間には2つのねらいがあります。1つは総則の(1)にある「問題
 追究能力を育成する」こと。2つ目は(2)にある「社会的認識を高める(新たなもの
 の見方・考え方)」ことです。以上の2つのねらいを達成させるためには「学習」を展
 開させねばなりません。
  今までは(1)の方に力を入れて実践してきましたが,今後の実践にあたって(2)
 の方も考えていく必要がありそうです。
 (2)は「子どもたちの社会的認識を広め,そして高める(地球市民としての資質を身
 につける)」ということです。総則の中にも「学校で学ぶ知識と生活との結びつき,知
 の総合化の視点を重視し,各教科等で得た知識や技能等が生活において生かされ総合的
 に働くようにすることが大切 (P47)」という記述が見られます。自分の追究を通して社
 会を見,そして自分なりの主体的な社会への認識を持つ,ということです。
  指導要領総則に例示されている内容の「国際理解」「情報」「環境」「福祉・健康」
 は,これからの社会を生きる子どもたちに考えさせたい社会問題なのです。これらの問
 題に主体的に対応できる力が「生きる力」であると考えます。対応できてこそ「自立」
 できるのです。かつての低学年社会科が「○○ごっこ」であったのが,生活科では「○
 ○探検」となり,自由な探究・追究活動をさせ,自立への基礎をねらうこととなりまし
 た。総合的な学習の時間はこれを受けて,さらに「社会の中での自立」を目指すもので
 あると解釈できます。そしてこれを小3から高3まで9年間かけて完成させるのです。

 以下,次号に続く。(内容:どう実践するか?教師の指導のあり方は?)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[2]「生活科」を終えた人が「生活科」をふり返る
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 日本生活科・総合的学習教育学会愛知支部の5月例会に参加しました。そこでの情報を
一つだけ紹介します。
 それは「生活科を学習し終えた人」が「生活科」をふり返る,という調査の結果です。
つまり,小学生・中学生・そして高校生に対し,さまざまなアンケート調査を実施し,今
後の生活科のあり方を考えようという調査です。全国の小中高生2500人を対象とした信頼
性の高い調査です。今回出されたのは中間報告です。
 その中から1項目だけ紹介します。なかなかおもしろい結果が出ています。みなさんど
うお考えになりますか?
 ……………………………………………………………………………………………………
■質問:心に残る生活科の活動は何ですか。
  ○ベスト3は,
    1位:アサガオやチューリップなどの草花やミニトマトやキュウリなどの野菜を
      育てた。
    2位:校内のいろいろな教室や場所を探検したり,先生など学校で働いている人
      と話をしたりした。
    3位:通学路や学校の周りを歩いたこと,近くの公園や野原などに出かけたりし
      た。
  ○ワースト3は
    1位:1年間にできるようになったことの発表会をした。
    2位:休日や長い休みに家族でどんなことをしてすごそうかを考え,実行した。
    3位:バス停や駅について調べ,実際にバスや電車に乗ってでかけた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[2]“総合的な学習における「体験活動」の意義”
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 中教審の「初等中等教育における当面の教育課程及び指導の充実・改善方策について」
で,総合的な学習の重みが増したような気配があります。総合的な学習の柱となるのは体
験学習です。このことについての加藤幸次氏の論考を紹介します。
 ……………………………………………………………………………………………………
Q:今までの「体験的学習」とどう違う?
  過去にも「ゆとりの時間」がありましたし、体験学習も増えてきています。それらと
 総合的な学習の時間とはどこが違い、どこが共通しているのでしょうか。「ゆとり」や
 特活の拡大と考えてもいいのでしょうか。
A:子どもに基づく課題追求   【上智大学教授 加藤幸次氏】
   体験的学習と総合的学習はどこが違うのか、というのは大きな問題。教育課程審議会
 の答申でも、体験の重視は再三強調されている。でも、体験的学習がそのまま総合的学
 習とはいえないようだ。
  例えば、今は多くの学校がお米づくりの活動を実践している。田植えを手伝い、多少
 手入れをして収穫する。昔の道具で脱穀してみる。腰は痛いし草取りは暑くて、農家の
 人は本当に大変だと実感する。ただ単に技術を学ぶだけでなく、米づくりに伴う感情や
 情意的な側面も同時に習っているわけだ。
  体験活動は、Head頭とHand手とHeart心の頭文字を取って3Hと言われている。教科書
 を読むのは頭だけだけど、体験はさらに体を動かしたり「農家って大変」と感動した
 り、知情意が一体化した強さがある。体験することは本当に、豊かな学習の素材だと思
 う。
  でもそれと、総合的学習とはイコールじゃない。総合的学習は、答申で言うように
 「自ら課題をとらえ、自ら考え、自ら解決していく問題解決学習」なんだ。だから同じ
 お米づくりでも、体験活動から学ぶだけでなく、品種による値段の違いに気付いて調
 べてみるなど、疑問を持ち追求する中に位置付けないと、総合的学習になってこない。
  追求する疑問、課題が子どもの生活や経験、興味・関心に基づいていることも、大切
 な要素。言葉の問題になるが、子どもの興味・関心に根ざした学習を私たちは昔から
 「総合学習」と言ってきた。今、「総合的学習」というのは、その関わりが少し弱くて
 もいいというニュアンスを感じるけれど。
  いずれにせよ、子どもの関心が薄い課題を設定しても総合的学習とは言えない。単な
 るやらせ。米づくりだって、無理矢理やっている学校もあるでしょう。ほとんどの作業
 を農家の人にやっても らって、子どもはちょっと田植えをするだけ。あとは収穫して
 食べて、と楽しいところだけ。これでは総合的学習どころか、体験活動にもならない。
  今、私たちは子どもの興味関心の出方を四つの場面に分けて考えている。
  一つは、例えば学校に外国の子どもが転校してくる、校門の前で道路工事が始まる、
 など日常生活で起こる子どもにとっての問題。外国では、同級生が事故で入院した、親
 が離婚しそうだ、といったことも追求のテーマにしている。子どもの日記や子どもとの
 会話の中に、素材はたくさんある。教師がこれまで目をつぶってきただけです。
  次に、地域社会の行事。祭りや神社、お寺など、地域社会に子どもの日常生活があ
 る。また、毎日目にする地元の産業。サクランボを作っているとか、鋳物工場があると
 か。
  教科から生ずる総合的学習だってある。授業でお茶について調べたら、今度はコーヒ
 ーについてやりたいという声が出てくる。日頃は言わせていないだけ。教科の発展的学
 習のようなイメージですね。四つ目は学校行事。修学旅行や林間学校だって、なぜやる
 んだろう、行って何をしようというところから考え始めれば、体験的学習を超えられ
 る。 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[2]“人間力戦略研究会” 内閣府,厚生労働省,経済産業省,文部科学省  
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 内閣府が「人間力戦略研究会」という組織を立ち上げたことをご存じでしょうか。
   http://www5.cao.go.jp/shimon/ningenryoku/menu.html  に報告書が掲載されてい
ます。ぜひ一度ご覧ください。
 この研究会の座長は市川伸一氏(東京大学)で,メンバーには奈須正裕氏(立教大)も
名を連ねています。奈須氏は雑誌の中で次のようにコメントしています。
《 確かな学力を育む上で重要な視点の一つとして「子どもたちと実社会との関わりとい
 う視点から,社会の仕組みと個人の関わりに関する理解を深めさせ,勤労観,職業観を
 育成し,在り方を考えさせることも重要となろう。》
 とし,さらに
《 内閣府,厚生労働省,経済産業省,文部科学省の総合的な学習政策として打ち出され
 た「人間力戦略」では,総合的な学習の時間の適正な運用として「豊かな社会参画の経
 験を通して自己の生き方を考え,しっかりとした将来展望を持って誠実に努力し続けら
 れるよう児童・生徒を育成することが重要である。》
 と述べています。
 このことは当ML No100で紹介した「キャリア教育」と密接な関係を持っていると思わ
れます。
 諸富祥彦氏(千葉大)は「キャリア教育」について,自分の将来をどう生きるかという
視点から次のようなお話をされました。
《 進学→就職→結婚→出産→?という幸福の一般的なルートが崩れ去った現在,文科省
 は「生きる力」は自分でつけなさいと言っている。どんな自分になりたいか,どんな人
 生をおくりたいのか,時代から取り残されないように自分の生き方を自分で考える力を
 育てることが大切である。》
 新入社員の3分の1が1年でやめてしまう現実,若者の5人に1人がフリーターという
現実,高齢化社会がどんどん進み,年金問題や福祉問題で大きな不安を抱えている現実,
などなど。このような未来をどう生きていくか?子どもたちに真正面から現実と対面さ
せ,そして考えさせ,その力をつけてやるのは我々大人の義務ではないかと思います。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[1]「学校教育に関する意識調査」15年9月17日
                   “総合的な学習の時間”に関する調査結果より
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 文部科学省が9月17日の中教審・教育課程部会に提出した「学校教育に関する意識調
査(中間報告)」の中から,総合的な学習の時間に関する結果を紹介します。
 本調査は今年6月〜7月にかけて全国の小中学校170校を対象に実施されました。回
答者は小学生(5年)2400名,中学生(2年)2300名,教員2100名,保護者6700名となっ
ています。
  ────────────────────────────────────
◆ 総合的な学習の時間の満足度
  ────────────────────────────────────
      好 き/どちらかと言えば好き/どちらかと言えば嫌い/嫌 い
  ………………………………………………………………………………………………
  小学生 40%    50%         7%     2%
  中学生 20%    58%        16%     6%  
  ────────────────────────────────────
 ○ 好きな理由
  小学生 ふだん体験できないことが体験できる 自分のやり方でとことん追究できる
  中学生 ふだん体験できないことが体験できる 
      他のクラスの人と話し合ったり活動したりできる
 ○ 嫌いな理由 
  小学生 自分のやりたいことがよくわからない 
      地域の人や他のクラスの人と話したり活動するのは緊張する
  中学生 自分のやりたいことがよくわからない
      地域の人や他のクラスの人と話したり活動するのは緊張する
「どちらかと言えば好き」まで含めると小学校で90%,中学校で78%と,なかなかいい評
価ではないでしょうか。
 嫌いな理由を読むと,反省すべきは指導者の側,と言わざるを得ないような気がしてき
ます。
  ────────────────────────────────────
◆ 総合的な学習の時間の認知度
  ────────────────────────────────────
      名前だけは/どのような/ねらいも知って/ねらいは知らな/しらない
      知っている ねらいか知 おり,授業の様 いが,どんなこ
            っている  子も知っている とをやっている       
                          かは知っている
  ………………………………………………………………………………………………
  保護者  30%   11%    28%     17%    11%
  (小)
  保護者
  (中)  33%   13%    26%     14%    11%
「ねらいも知っており,授業の様子も知っている」が小28%,中26%で,高いパーセン
テージです。これは意外です。
  ────────────────────────────────────
◆ 総合的な学習の時間による児童生徒の変化
  ────────────────────────────────────
 「自ら学び考える力などの主体的な学習態度や意欲が高まった」
  ────────────────────────────────────
      そう思う/どちらかと言えば/どちらかと言えば/そう思わない     
             そう思う    そう思わない
  ………………………………………………………………………………………………
  小教員  8%     50%      19%     8%
  中教員  3%     36%      28%    22%
 小学校58%,中学校39%と,小中の落差が大きいですね。
  ────────────────────────────────────
 「思考力や判断力,表現力を身につけた」
  ────────────────────────────────────
      そう思う/どちらかと言えば/どちらかと言えば/そう思わない     
             そう思う    そう思わない
  ………………………………………………………………………………………………
  小教員  5%     52%      22%     6%
  中教員  3%     37%      30%    18%
 これまた小中の差が激しいですね。このあたりは教師側の取り組みの差がそのまま数字
となって現れているような気がしてなりません。
  ────────────────────────────────────
 「学校で学ぶ知識を生活の中で実感を持って理解できた」
  ────────────────────────────────────
      そう思う/どちらかと言えば/どちらかと言えば/そう思わない     
             そう思う    そう思わない
  ………………………………………………………………………………………………
  小教員  4%     37%      28%    10%
  中教員  3%     25%      36%    22%
  ────────────────────────────────────
 「総合的な学習で得た興味関心などから教科の勉強を熱心にするようになった」
  ────────────────────────────────────
      そう思う/どちらかと言えば/どちらかと言えば/そう思わない     
             そう思う    そう思わない
  ………………………………………………………………………………………………
  小教員  3%     29%      37%    13%
  中教員  2%     14%      39%    32%
  ────────────────────────────────────
 「体験や活動に一生懸命で,学力を伸ばすことができなかった」
  ────────────────────────────────────
      そう思う/どちらかと言えば/どちらかと言えば/そう思わない     
             そう思う    そう思わない
  ………………………………………………………………………………………………
  小教員  8%     32%      28%    17%
  中教員 14%     37%      22%    16%
 これも教師の取り組み方に問題があるのではないでしょうか。しっかりとした全体計画
を立て,子どもたちの実情にあった単元作りを工夫すべきではないでしょうか。
  ────────────────────────────────────
*注:合計が100%にならないのは「わからない」「無回答」を省略したためです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[2]]「指導の力量をつけるための10か条」 京都ノートルダム女子大 加藤 明
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 教科の指導において,プロセスである単元計画に組み込むとともに,指導の力量として
身につけなければならない要素は次のことがらである。
 1 単元の前提条件となる既習の学習内容の理解や定着のチェックとその養成
 2 導入時の揺さぶりと終了後の深まりや広がりのための呼びかけ
 3 単元の評価規準とそれを実現するための形成的評価の指標となる小単元または1時間
 の評価規準の設定
 4 教育機器の使用や板書計画も含めての教科内容のポイントについてのまとめと共有化
 5 主体的な追究活動
 6 練り上げによる高まり合い
 7 くさびとなるような効果的な体験
 8 拡散的思考による個性の出会いの場
 9 ドリルによる習熟と定着
10 形成的テストと補充または発展学習
                    〈日本教育新聞 2003 10/3 より転載〉
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[2]これからの生活科で目指すもの
                 ―地域に根ざした単元づくりでねらうものは―
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 これからの生活科はどうあればよいのでしょうか。草創期の生活科は「ごっこ遊びに終
始」「理科と社会の方がよかった」などと言われていました。
 私は,指導要領解説編に繰り返し出てくる「社会とのつながり」「社会とかかわる」
「社会へ直接働きかける」という文言に注目しています。どちらかというと「自然」「身
近な人」「自分自身」という部分は多く実践がなされていますが,「社会」に目を向けた
実践は少ないのではないかと思っています。「社会」をどうとらえるかで判断が異なって
きますが,「自立への基礎を養う」生活科にとって「社会と関わり,社会を知り,社会認
識を育てる」ということは今後の方向性として大事なことではないかと思っています。
 このことに関して,愛知教育大学の布谷教授からのメッセージを紹介します。
 ……………………………………………………………………………………………………
 これからの生活科・総合的学習では、是非とも社会とのかかわりや社会参加の学習によ
る社会での一員(成員)意識、自己効力感、共生意識等の耕しが必要ですよね。
 そのためにも、ただ対象にかかわるだけでなく、例えば、ふるさとに学ぶ(ふるさとの
人々の思いや生き方、物や事の意味・本質から学ぶ)学習、身近な社会の問題や課題に
チャレンジし学ぶ学習等が求められます。
 その過程で、子どもたちは当然ながら従来教科学力を身に付けることの必要感や知の総
合・創造等を生み出すことになるでしょうし、自他の問い直しや見つめ直しによる自己の
生き方づくりを可能にしていくのだと思います
(もちろん教師の教材観や個の見取り、目標設定、授業構想、具体的な支援・評価等の力
量次第ですが‥‥)。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[2]今年度の実践を再点検
          総合的な学習における「目標」「内容」「方法」の明確な区別を
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 奈須氏が次のように言われています。
《自分たちが畑で育てたそばでそばを打つという単元がある。農から食へと流れる単元構
 成である。ところが指導案の目標には,みんなで力を合わせてそば打ちができるように
 なる,と書いてあったりする。クラスみんながそば屋さんになるなら,その目標で自己
 の生き方を考えることができるようになるだろう。しかし,そうではあるまい。
  ―中略― 私なら次のような目標を立てる。1)土づくりや肥料,農薬をどうするかを
 考えることを通して,環境問題が・・・・,2)健康食品であるそばへの着目からふだん
 の食生活を見つめ直し,・・・・,3)なぜこの地域でそばづくりが昔から盛んなのかを
 考えることから,・・・・。》(「悠」5月号:ぎょうせい刊)
 奈須氏の論点は「活動と内容をしっかり区別しよう」です。このことに関して第40号に
以下の記事を掲載しました。再掲します。参考にしていただければ幸いです。
  ……………………………………………………………………………………………………
 総合的な学習では,「子ども自らが課題を設定しなければならないから,教師が課題を
与えてはいけない」とか「子どもの主体性を尊重しなければならないから,教師が口出し
してはいけない」などと本気で考えている教師がいます。
「自ら課題を見つけ,自ら学び,自ら考え,・・・」そして「問題の解決や探究活動に主
体的,創造的に取り組む・・・」という指導要領総則に書かれているおなじみの文言。
 これをどう解釈するかが問題です。方法論レベルでとらえている教師が思いの外多いの
です。だから前述のような誤った認識が生まれるのです。
 この文言はあくまでも「目標論レベル」でとらえなければならないと思うのです。具体
的に言うと,
  1 自ら課題を見つけられる子どもを育てる。
  2 自ら学べる子どもを育てる。
  3 個性を生かして主体的,創造的に学習に取り組める子を育てる。
 これらは「目標」と解釈されるべきなのです。
 このことは総則にもきちんと「次のようなねらいをもって指導を行うものとする」と書
かれています。(余談ですがここには「指導」という言葉が用いられています。「支援」
ではありません。)
 1〜3の子どもを育てるためにどういう総合を展開するのか,からスタートしなければ
ならないのです。1〜3を到達目標と考えて実践に取り組めば,そんなにむずかしくない
と思うのですが。
 もう1つ,我々現場の教師はついつい目が「内容」にばかり向いてしまいます。総合で
どういう学習に取り組むかを考えるとき,目がいくのは「学校の近くに川があるから環境
でいこうか」とか「近くに介護施設があるから福祉でいこうか」といった具合に,ついつ
い内容論レベルの話になってしまいます。
 これではいけないと思うのです。1〜3の子どもを育てるためにどういう方法で学習を
進めるのかをはじめに考えるのです。ああして,こうして,こういう手順で学習を進め,
こういう手だてをとりながら,到達点はここ,というふうにシナリオを書くのです。それ
から,ぴったりくる学習の対象を考えるのです。それをしないから,学習の内容だけがは
いまわってしまうのです。行き着く先が見えなくなってしまうのです。川がおもしろそう
という安易な動機で学習に取り組むことは慎むべきでしょう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[2]主義・主張がものを言う
            総合的な学習の自校化を ―私の勤務校の例を紹介します―

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 これからの総合的な学習は今までの実践との差別化,つまり自校化が一層求められてい
ます。今までの「何でもあり」とか「おもしろそう」という構えでは,前号で紹介した苅
谷氏夫人と大村はま氏の次のことば
●刈谷夫人〈本当に覚悟と実力がある先生が取り組まないと,ちょっと楽しそうだという
  程度のことで単元学習をしたらとても危ういという気がする。楽しいから誰も文句は
  言わないけど,終わってみたら何のための取り組みだったのかよくわからないという
  ような・・・〉
●大村はま氏〈単元学習には非常の教師の力がいる。この単元で目指すものはこれって決
  めて,そこへ向かって具体的に手を尽くさなければならない。これはよさそうだ,こ
  れは楽しそうだなんてやっていたら学力低下になるのは決まっている〉
 という結果になってしまいます。
 ここでは4年生での学習展開の例をあげてみます。なお,これは明治図書「総合的学習
を創る」5月号に掲載されたものです。
 ……………………………………………………………………………………………………
▼ 総合的な学習でつけたい力とは何であろうか。まずはじめにこのことをきちんと押さ
 えておかねばならない。このことをきちんと見据えた上で,4年生で展開させたい学習
 ドラマを考えてみたい。1年生から6年生までの系統性の中でとらえるべきであって,
 四年生だけを単独で考えることはできない。少し長くなりそうであるが,このことから
 述べていく。
▼ 総合的な学習でつけたい力は「地球市民として生き抜く資質を育てること」と考え
 る。目の前の子どもたちは,困難で変化の激しい21世紀を生きていく運命を背負って
 
 いる。そんな子どもたちにとって欠くことのできない能力は「世の中を自分なりに認識
 し,そして主体性を持って対応できる力」である。
  これを達成させるためには,子どもたちに現実の社会を直接体験させる必要がある。
 地域単元学習はこのような点から有効性が高い。地域単元学習を通して,家や学校の周
 り,そして学区や市全体へと,自分を取り巻く社会を認識していく。この過程を通して
 「主体性を持って対応できる力」を育てていくのである。このような視点から地域単元
 学習のフィールドの一例を考えてみると次のようになる。これに基づき学習の「目標」
 そして「内容」を設定していくことになる。
▼ ・1年生:自分の家や学校の周り ・2年生:学区全体 ・3年生:市全体 ・4年
 生:市そして県全体 ・5年生:日本,そして世界 ・6年生:日本,そして世界
  つまり,地域単元学習の基本的なスタンスを「地域から世界を見つめる目を育てる」
 ことにおく。日常的で身近な地域から入り,成長とともに社会認識を次第に広げ,高め
 ていこうというわけである。
▼ 設定したい内容の一例をあげてみる。 ・1年生:公園の四季 ・2年生:私の学区
 のお気に入り ・3年生:昔から残る伝統行事 ・4年生:明治用水のひみつを探ろう
 ・5年生:知立の農業から世界が見える ・6年生:住みよい日本の国づくり
  それぞれの学年で確実にねらいを達成させることで子どもたちのものの見方・考え方
 は広がりを見せ,そして高まってくる。
▼ 以上の全体計画から4年生を例として,展開したい学習を考えてみたい。4年生では
 「明治用水」を取りあげたい。3年生での総合単元「昔から残る伝統行事」,そして社
 会科での「古くから残る道具・それを使っていた頃のくらし」で培ってきた力をベース
 として,これをさらに発展させ,5年生へとつないでいきたい。3年生と4年生の総合
 的な学習は教科発展型の歴史教材である。
▼ 「明治用水の秘密を探ろう」は社会科の学習を取り込んだ総合的な学習単元である。
 私の市では「地域の発展に尽くした先人の具体的事例」として「明治用水」が取り上げ
 られている。明治用水の学習を通して,地域をよりよくしようと努力してきた先人の知
 恵や苦労を理解する。総合的な学習ではさらに,自然と共生しながら生きてきた人々の
 様子を知り,現在そして未来の地域社会のあり方をその子なりに考えさせたい。
  明治用水はその名の通り,明治期に都築弥厚が開いた用水である。この用水は市内を
 網の目状に流れている。しかし,現在では管路化により地下を流れ,目には見えなくな
 っている。埋設された流水管の上部は遊歩道となっており,花木などが植えられ快適な
 歩行空間ができあがっている。また,用水の流れは所々で地上に導かれ,「せせらぎ」
 と呼ばれる庭園池が設置されている。子どもたちは毎日この遊歩道を通って登下校して
 いる。あまりに身近すぎて,逆に意識が低いという傾向が見られる。
▼ 学習はここから始まる。ふだん歩いている道の下に太い管があり,そこを水が流れて
 いるということを知る子は少ない。「えっ,あの下を水が流れているの」と,子どもた
 ちの知的好奇心をかなり刺激する。ここから明治用水の追究が始まる。子どもたちは追
 究を通して明治期以前,碧海台地が不毛の地であったことを知り,そして都築弥厚の地
 域を愛する熱い思いを知る。ここまでは社会科学習である。
  総合的な学習では,明治用水を通して地域の歴史を知り,地域を見直し,地域の持つ
 すばらしさを理解することをねらいとする。地域への愛着をより一層強いものにし,こ
 の地域を大事にしていこうという気持ちを高め,地域の一員としての自覚を高める。地
 球市民としての資質の芽生えである。ここまでくれば「自分たちにできることはないだ
 ろうか」という積極的・主体的な社会認識が育ってくる。こうなれば明治用水だけにと
 らわれるのではなく,子どもたちの視点は様々な方向へと広がっていく。公園や地域セ
 ンター,介護施設などの公共施設,地区を流れている川,さらに地域のために力を尽く
 している人々など,興味・関心に応じたその子なりの広がりを見せるようになる。
▼ 4年生での「学習ドラマ」を展開する上で大切なポイントは,自分たちの住んでいる
 地域への所属意識を十分に高め,地域での問題を自分の問題としてとらえることができ
 る力をつけておくことである。これが「この時期だからこそ起こさなければならない学
 習ドラマ,4年生らしい学習ドラマ」である。5・6年生ではさらに追究対象を広げ,
 そして高める。地域から日本を,そして世界を見つめることができる力を育んでいく。
 地域を扱うのはあくまでも窓口であり,最終的には,市民・国民・地球人としての資質
 を身につけていくことができる。そんな総合的な学習を組み立てていきたい。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[1]総合的な学習を展開するための“4つのポイント”
      今からでも取り組んでみませんか?  佐賀大教授 新富康央氏の小論から
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 4月から新単元をスタートさせる総合的な学習。異動後の新メンバーで心新たに推進さ
れていくことと思います。今年度の実践をもとに,さらに積み上げ,充実した意義ある
時間にしなければなりません。もう一度足元を固める意味あいで新富氏の小論を紹介しま
す。この資料は私のPCに保存してあった資料です。出典が不明ですので,転載はご遠慮
ください。要旨を引用します。
 氏は総合的な学習を展開するための4つのポイントを上げておられます。
 ……………………………………………………………………………………………………
(1)無理をしないで学校,教師独自の取り組みを
(2)「はじめ活動ありき」が原則
(3)指導過程は,「ハッとして,パッとして,グッとくる」
(4)思いきった発想の転換を
  1)「教師は授業で勝負する」から,「授業の前と後で勝負する」へ
  2)「教科の枠を超える」とは,質的なレベルを下げること,ととらえる日本教育界の
   神話から脱却すること
  3)学校の既存の枠組みにとらわれないで,様々な可能性に挑戦してみること
 ……………………………………………………………………………………………………
 以下,各項目について紹介します。
(1)無理をしないで学校,教師独自の取り組みを
  「やはり」と言うべきか。総合的な学習の進め方に関して今日,混乱が見られる。し
  かし,その混乱の素(もと)を知ることも,総合的な学習の在り方を探る上で,肝要
  である。それは,2つに大別できる。
   一つは,狭い意味での「総合的な学習」すなわち「総合学習」の要点のとらえ方か
  らの混乱。もう一つは,教育課程審議会答申の「中間まとめ」(平成9年11月)か
  ら「最終答申」(平成10年7月)への総合的な学習の質的変容からの混乱である。
   最近これを象徴する2件の電話があった。一件目は,「総合学習」を形式的にとら
  えた電話である。「総合学習の某伝統校に行くと,そこでは牛を飼っていましたが,
  うちでは校庭が狭く飼えそうもない。そこで,山羊にする案が出されたが,余り手応
  え感のない動物でも総合的な学習になるのだろうか。」という問い合わせである。
   総合学習はわが国では,大正新教育運動以来の伝統がある。総合的な学習が目指す
  精神を,そこから大いに学びたい。だが,いま教育現場で進められているのは,総合
  的な学習である。もっと自由の幅のある実践形態である。この時間の取り扱いは狭い
  ものではない。教師の思いや願い,また自由な発想が十分に生かされる「教師にとっ
  ての創意工夫の時間」でもある。
   もう一件の電話は,「中間まとめ」の発想を引きずったものである。「週3時間の
  うち,1時間目を福祉,2時間目を国際理解に当てることにしたが,3時間目は何を
  当てるといいだろう。」という質問。「中間まとめ」から「最終答申」の間には,い
  くつかの違いがある。中間まとめの段階では,総合的な学習の時間は新教科的な性格
  を残していたといえる。現教科体制ではカバーできない現代社会が抱える課題を追究
  する教科,という発想である。
   中間まとめでは,内容の例示も「例えば,国際理解・外国語会話,情報,環境,福
  祉」のみであった。そこで,「要するに,国際理解とは英会話の時間,情報とはコン
  ピュータの基礎的操作を教える時間」という風説すら流れるようになった。
   それに対して,最終答申では「例示」にはさらに,「児童生徒の興味関心に基づく
  課題,地域や学校の特色に応じた課題など」が,つけ加えられた。つまり,この時間
  にかける教師の思いや願いこそ,何よりも優先されるべき,ということである。
   そこで,不謹慎と思われるかも知れないが,敢えて「無理をしない」ということを
  提言しておきたい。今できること,これまでやってきたことを,総合的な学習の時間
  として「翻訳」し直すことから,まずはじめてみることである。総合的学習の諸理論
  も,その実践を窮屈にしては何にもまらない。
(2)「はじめ活動ありき」が原則
   では,身近な実践を総合的な学習に「翻訳」するための主な原則は何だろうか。各
  教科(生活科を除いて)は,教材研究から始まる。はじめ内容ありきである。実は,
  各教科と総合的な学習は目指す頂上は同じように子どもの人格的な変容である。だが
  その迫り方を異にする。総合的な学習では,何よりも体験活動の質が問われる。子ど
  もたちは,社会に出て,社会の現実や実際(リアリティ)に触れることで,彼らなり
  の切実な問題や関心を見つけるのである。
   先に述べたように,教課審の「中間まとめ」から「最終答申」にかけて,その点が
  さらに明確にされたと言ってよい。中間まとめでは,例示として「国際理解・外国語
  教育」となっていたが,最終答申では,外国語教育が外され「国際理解」のみの表記
  となった。逆に,「福祉」には,「健康」が付け加わり「福祉・健康」となった。こ
  れの意味するものは何だろう。
   外国語教育が入ると,どうしても教科的な発想に陥り易い。また,子どもの体験で
  きる身の回りの世界から授業を発展させるには「健康」は不可欠な素材である。たし
  かに「食」に関する事柄は,子どもに身近な問題で,しかも国際理解や環境問題など
  に発展させ易い。学校給食研究指定校に総合的な学習の先進校が多く見られる。体験
  活動から生まれる,子どもたちの意識の連続こそ大切というわけである。例えば,あ
  る小学校では,ALTの先生たちと有明海の潟で遊ばせ,「なぜ日本人はこんな汚い
  ところで遊ばせるのか」と問わせている。子どもたちは,彼らに答えようと必死にな
  って各方面・分野から有明海の豊かさを調べ,様々な方法で伝えようとした。また,
  ある小学校(鹿児島市立明倫小学校)では,プール掃除での「どうして緑色の水に変
  わったか」の言葉をとらえて,「環境」問題に迫っている。
(3)指導過程は,「ハッとして,パッとして,グッとくる」
  「はじめ活動ありき」「子どもから」などは,総合的な学習の大原則である。これら
  は生活科において強調されたものである。中野重人氏の言を待つまでもなく,生活科
  は,総合的な学習の基礎・基本である。生活科の発展の上に,総合的な学習はある。
  しかし,両者には子どもの心身の発達区分からくる相違がある。低学年の子どもには
  彼らの身の回りの経験の中から興味や関心を伸ばしてやる必要がある。だが,高学年
  になるにつれ,より抽象的な事象や概念に興味を持つようになる。それともう一つ。
  社会に役立つという社会的承認など,高次の社会的欲求を求めるようになる。
   つまり,総合的な学習の場合は,事象や対象との出会わせ方の点で,生活科と異な
  る面があると言ってよい。むしろ,自分の世界にこもっている彼らの殻を破ってやる
  教師からの投げかけが,生活科以上に必要となる。「どうしてこんな汚いところ
  (潟)で」「どうしてプールの水は緑に」など。それをかつてのアイドル歌手,田原
  某の唄をヒントにしてくくりたい。「ハッとしてパッとして,グッとくる」である。
   総合的な学習の時間の活動プロセスは,「問題を発見する→課題解決への見通しを
  持つ→実際に課題を処理(解決)する→人に伝えるように表現する」の4段階であ
  る。問題を発見し,ハッとする。そして,問題解決に向けての活動過程で次々と明ら
  かになる真実に,子どもの心はパッとする。そして最後に,グッとくるである。他者
  に伝えようと表現を試みる中で,総合的な学習の最終目標である「自立への基礎」す
  なわち「自己の生き方を考えることができるようにする」(新学習指導要領総則)に
  つながるのである。「ハッと」させること。この一点にこそ,教師は心を配らなけれ
  ばならない。例えば,福祉に関して。教師の側には思いがあっても,子どもにはそれ
  は遠い課題である。子どもの興味・関心をいくら待ってものってこない。
   そこで,「はじめ活動ありき」であ る。彼らの殻を破ってやるのである。「ぜひ
  やってみたい」となる。その際の注意は,1)「ハッと」させる際の,教師の指導性の
  幅は,全国一律の基準で はとらえ切れないということ。子どもの実態に応じて異な
  る。総合的な学習の意図が十 分理解され,「散歩の時間」などで,子どもたち自身
  で気づきを共有できる先進的実践 校と,同じモノサシは使えない。
  2)もう一つ注意すべきは,子どもたちとの意義とズレが生じた場合,俗に言うスベッ
  タ 場合は,さっさと引き下がること。
(4)思いきった発想の転換を
  1)「教師は授業で勝負する」から,「授業の前と後で勝負する」へ
   教師が常に主役を演じる授業ばかりでよいだろうか。新学力観が言われて久しい。
  授業は直接,「知識・理解」を求める場ではなく,子どもたちの関心・意欲・態度を
   基盤に,思考力,判断力,表現力を鍛える場とされた。そのためには,授業の前(意
  欲づけ)と後(活動の連続)が勝負となる。
  2)「教科の枠を超える」とは,質的なレベルを下げること,ととらえる日本教育界の
   神話から脱却すること。
   この神話は,総合的学習を進める側にもある。子どもたちが切実な課題意識を持っ
  て主体的に取り組めば,自然に教科の枠は超えられていくのである。教科は,系統性
  を図る意図的に仕組まれたものである。しかし,広がる子どもの生活認識はオープン
  エンドである。際限がない。生活の中に広がっていく。例えば,共生という概念を追
  究する過程において,理科も社会科もないだろう。またそれは,自らの生活を切り開
  いていく,いわば「創造的な知」である。
  3)学校の既存の枠組みにとらわれないで,様々な可能性に挑戦してみること
   “スペースフリー”“タイムフリー”“マンフリー”“ゴールフリー”総合的な学
  習は,第3の教育改革の一環として創設されている。そこでは,活動の場はスペース
  フリー,総時数はあってもタイムフリー,地域ボランティアの活用などのマンフリー
  到達目標が予め決められていないゴールフリーなど,教師の「裁量」が試される。教
  師は自由な発想を大いに楽しみたい。したがって,子どもだけでなく,教師にも主体
  性という名の個性が求められるようになる。そしてその時,総合的な学習における
  「学びの創造」が始まる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[2]見直そう!今年度の総合的な学習
           来年度に向けて今年度の実践をチェックするときです
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 総合的な学習が成功するかどうかは我々教師の取り組みにかかっています。
かつての「体験あって中身なし」という状況は減ってきたように感じています
が,筋の通った総合的な学習を実践している学校はまだ少ないと感じているの
は私だけではないでしょう。
 そのためにも,今年度の実践を振り返り,問題点を洗い出すことが大切にな
ってきます。やや遅きに失した感もありますが,私の勤務校でも今年度の反省
をする機会をもちました。以下はそのときの資料です。
 ………………………………………………………………………………………
■ 来年度に向けての反省点
1「研究目標」の再確認 
  指導要領に示されている総合的な学習のねらいとしての(1)(2)と本校の研
 究の目標の整合性を今一度考えてみたい。
  4月当初はこれでよいと思ってスタートしたものの,1年を終えてみると
 問題点が浮かび上がってくるものです。研究理論そのものに関わる重要なこ
 とです。
2「つけたい力」をつけることができたか
  問題解決を通してものの見方や考え方を深め,その過程において様々な知
 識や技能,資質や能力を身につけることができ,自己の生活を考える,つま
 り社会力を育むことができているか振り返ってみる。
 「つけたい力」はこれでよかったかどうかについてもチェックしておく。
3「知の総合化」ができたか 
  目指す能力をつけるために,教科学習から得られた力と相互に関連づけた
 知の総合化が図られてきたか。つまり,基礎・基本を生かした学習が展開さ
 れたか。
  *1と2に関しては,その姿を各学年ごとに詳細に検討することが必要で
   す。まずは自分の実践を振り返ってみてください。
4 学年のテーマと対象は適切であったか
  以上のことがらを実現させるために設定した学習内容(学年のテーマと追
 究の対象)はよかったか。 
  *この点については学年で話し合ってみてください。
5 評価について
  評価については次の3つの視点から考えることになっていました。
 1) 子どもがする評価(自己評価と相互評価)
 2) 教師がする子どもへの評価(「支援」へつながる。)
 3) 教師がする自己評価(「指導の改善」へつながる。)
  来年度に向けて考えたいのは「児童の自己評価」です。
  児童が自らの学びの追究活動状況や成果を継続して記録し,その足跡を振
 り返ることが重要である。自分が設定した課題の方向に向かって着実に解決
 過程を歩んでいるのか,自分が考えた解決方法で課題が解決される見通しは
 あるのかなど,振り返りという自分の学びを自分で再構成する機会をもつこ
 とが自らの学びを見つめ自らの考えを築くことができる力を育む。
  このためにも評価規準と評価基準は児童と教師の双方において共有化され
 ていることが必要である。
  *評価規準の例〈4年:リサーチ猿渡川〉
   1)身近な環境の現状から問題を見つけ,見学したり調査したりして,見
    通しを持って追究する。〈本校の目標(1)からの評価規準〉
   2)身近な環境に関心を持ち,その良さや問題点がわかり,環境と自分の
    生活との結びつきやこれからの生活環境のあり方を考える。〈本校の
    目標(2)からの評価規準〉
   3)よりよい生活環境作りに向け,自分にできることを考え,実践する。
    〈本校の目標(2)からの評価規準〉
○ 自己の実践を振り返り,成果と問題点を洗い出しておいてください。
○ 他学年の実践に関しては,後日配布される研究のまとめを読んで考えてみ
 てください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[1]“近代化遺産”って,聞いたことがありますか?
            総合的な学習(地域学習)に使えそうなネタです
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 近代化遺産,聞き慣れない言葉です。私もつい先日まで知りませんでした。
 2月22日,名古屋で「建造環境から学ぶ総合学習シンポジウム」が開催さ
れました。このシンポジウムは国土交通省主催で,身近な町の川,橋,道路,
港などを題材とした総合的な学習を推進していこうというねらいのもとに開催
されました。
 近代化遺産という言葉は,講演(岡山大学教授の馬場俊介氏:「近代化遺産
の教育的価値」)で知ったのです。「近代化遺産」という概念は,我が国が近
代化してくる過程で作られた建築物や構造物のもつ歴史的価値に注目するとい
うものです。
 文化財指定には階層化という概念が根強くあり,古いものから順にという考
え方が固定概念化しているそうです。そんな中で近世(江戸期)から近代(明
治期)へと「近代化のためにつくられた構築物」が見捨てられ,続々破壊され
ている現状を憂う主張です。
 近代化遺産には地域の近代化への特性が顕著に示されています。馬場氏は岡
山大教授ですから,岡山,広島,山口の代表的な「近代化遺産」をあげて説明
されましたが,それは岡山では「高梁川酒津用水取水堰」,広島では「広島湾
要塞を形作る砲台」,山口では「小野田セメントの焼成炉」でした。これ1つ
を見ても,近代化を農業主体で進めようとした岡山県,軍事を重視した広島
県,工業に目を向けた山口県という具合に,幕末から明治にかけての近代化へ
の地域の特性がよく表れているというのです。私は岡山育ちですが,確かに岡
山県は児島湾や高梁川干拓で農地を大量に造成しました。最近滋賀県で小学校
校舎の取り壊しが問題になりましたが,教育に力を入れた地方は,地域でもっ
とも立派な建物が校舎という例が多いそうです。
 この考えは非常におもしろいと思います。大いに知的好奇心をくすぐられま
した。以下に私が調べたことの一部を紹介します。
 ………………………………………………………………………………………
■ 近代化遺産とは
  近代化遺産は明治時代から昭和20年にいたる近代の産業・交通・土木な
 どに関する建造物等が対象であるが、これまで十分な文化財的な保存措置が
 とられていなかった。そのためこれらの文化財的建造物も技術革新や産業構
 造の変革等により、取り壊しや改変が急速に進行しているのが実状である。
  近代化遺産建造物の保存措置を検討するため、群馬県教育委員会では国庫
 補助事業として、平成2年度から総括的な基礎資料を収集するための「群馬
 県近代化遺産総合調査」を実施し、平成3年3月「群馬県近代化遺産総覧」
 として、1・2次調査の結果がまとめられた。それによると群馬県内におい
 ては982件が報告されたが、その内桐生市には約10%にあたる97件が
 あり、群馬県では最も多いものとなった。現在でも独自の継続調査を実施し
 ており、新たな発見がかなり認められている。
    http://www.kiryu.co.jp/kindaikaisan/hajimeni.html

■ 全国近代化遺産活用連絡協議会(略称「全近」)  
  近代化遺産を有する全国の自治体が協調し、それらの保存と活用を研究協
 議することを目的に、平成9年11月22日に設立された全国組織です。
 「全近」は、各地域に残された近代化遺産の保存と活用の方法を、自治体、
 企業、市民が一体となって考えていくことを目指しています。近代化遺産の
 保存と活用に取り組む市民との交流や、全国の会員間の情報交換によって、
 近代化遺産の保存と活用にむけて活動しています。現在、自治体だけでなく
 会の主旨に賛同する法人、またはNPO法人等も賛助会員として仲間に加わ
 っています。
 ○ 私たち「全近」は、めざします。
  1 法制度の整備    2民間との協調     3支援財源の充実
 ○ 私たち「全近」は、近代化遺産の活用に向けて提言します。
  1.関係省庁等者間において連携協力の一層の充実をはかること
  2.技術者・技能者の育成・確保すること
  3.所有者・管理者の負担を軽減するため、新たな税制優遇処置や補助制
   度を設けること
  4.市民団体・NPO等支援団体の育成をはかること
  5.公共投資によって改修の促進をはかること
  6.改修に投資する特定財源(例えば宝くじ等)を創立すること
    http://www.kindaika-isan.jp/
 ………………………………………………………………………………………
 既に「近代化遺産」を総合的な学習で取り扱ったことがあるといわれる方
がいらっしゃいましたら,ぜひお知らせください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[1]総合的な学習の評価
        年度末が近づきました!どうしますか?指導要録への記入
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 新指導要録には「総合的な学習の時間」の評価の欄があります。かなりのス
ペースがありますね。ここはすべて文章で記入しなければなりません。
 私たちをもっとも悩ませるのは「観点」ではないでしょうか。きちんと年度
初めに決めてある学校はいいのですが,私の勤務校も含めて,そうでない学校
もかなりあると思います。指導要録への記入を意識してまとめてみました。
 観点を設定するにあたって,まず「どんな子を育てたいのか」を考えねばな
りません。ここから考えてみたいと思います。
1 私の勤務校での「育てたい子どもの姿」
  子どもたちが社会的認識を広め,そして自身の力で高めていく(市民・地
 球市民としての資質を身につけていく)ことができる子。
  自分の追究を通して社会を見,そして自分なりの主体的な社会への認識を
 持つことは,変化の激しい先行き不透明な21世紀を生きる子どもたちに欠
 くことのできない力である。目の前のさまざまな問題に主体的に対応できる
 力である。
 であると考える。
2 指導要録への記入にあたって
   14年度からの新学習指導要領の全面実施をうけて,指導要録の改訂がおこ
 なわれた。教課審答申によると「総合的な学習の時間」の評価は次の3点に
 ついて記述していくことになっている。
    ・ 第1に,どのような「学習活動」をしたかを記述する。
    ・ 第2に,各学校で指導の目標や内容に基づいて設定した評価の「観
   点」を記述する。
    ・ 第3に,評価の観点にそって子どもがどのように成長したか「評価」
   を文章で記述する。             〈教課審答申より〉
 それでは次に個々について考えてみることにする。
(1)学習活動について
      学習活動の内容がわかるように,簡潔に書く。単元名でよいと思われ
  る。
(2)観点について
      観点設定の方法について,教課審の答申には3つの例が示されている。
        1) 総合的な学習の時間のねらいを踏まえた例
         「課題設定の能力」「問題解決の能力」「学び方,ものの考え方」
     「学習への主体的,創造的な態度」「自己の生き方」 など。
        2) 教科との関連を明確にした例
         「学習活動への関心・意欲・態度」「総合的な思考・判断」「学習
     活動にかかわる技能・表現」「知識を応用し総合する能力」 
        3) 各学校の定める目標、内容に基づいた例
   総合的な学習も「学習」であるから,教科と同様の4観点でよいという
  考えもあるが,私はそうは考えない。それは目的や内容が各学校・各学年
  で教師や子どもの思いに基づいて決められたからである。したがって観点
  もそれに沿って各学校・各学年で決めるべきであると考える。こんなとこ
  ろにも「特色ある学校づくり」が生かされるべきである。
   本来は3)であるべきと考えるが,1)をベースとし,3)との混合型とした
  い。1)では,学習のスキル(学習技能)についての観点を,3)では,自校
  のねらいである
  【子どもたちが社会的認識を広め,そして高めていく。
     (市民・地球市民としての資質を身につけていく)
   自分の追究を通して社会を見,そして自分なりの主体的な社会への認識
  を持つことは,変化の激しい先行き不透明な21世紀を生きる子どもたち
  に欠くことのできない力である。目の前のさまざまな問題に主体的に対応
  できる力をつけること。】
   に基づいた観点を設定したい。
(3)観点の具体例
   ア 総合的な学習の時間のねらいを踏まえた例〈上記の1)に基づく〉
       課題設定の能力  問題解決の能力  学び方・ものの考え方 
    情報収集の能力  学習への主体的・創造的な態度 
    まとめ・発表の能力  自己の生き方を振り返る力
   イ 各学校の定める目標、内容に基づいた例〈上記の3)に基づく〉
       対人関係能力  意思決定能力  行動選択能力(実践力)
    創造的表現力
   *学んだことを積極的に自分の生活と結びつけて考えているか。
   *積極的に地域に関わっていこうとしているか。
   *そのために自分にできることを実践しようとしているか。
(4)評価について
   「児童のよい点,学習に対する意欲や態度,進歩の状況などをふまえて
  評価することが適当(教課審答申)」と指摘されている。
   このことからわかるように,一人一人の中に基準をおく,個人内評価の
  立場から評価することが妥当である。
   また,この欄は「学習状況に顕著な事項がある場合などにその特徴を記
  入するなど,子どもにどのような力がついたかを文章で記述する」ことに
  なっている。学習活動が達成した成果だけでなく,学習の過程における工
  夫や協力,問題解決,主体的な取り組みなど,どのような学習が実践され
  たかも重視する。
〈参考〉評価規準
        本来は総合的な学習においても,つけたい力としての評価規準が必要
   である。これを抜きにして評価の観点は決められない。
    (例)リサーチ猿渡川
   1) 身近な環境の現状から問題を見つけ,見学したり調査したりして,
    見通しを持って追究する。  〈本校の目標(1)からの評価規準〉
   2) 身近な環境に関心を持ち,その良さや問題点がわかり,環境と自分
    の生活との結びつきやこれからの生活環境のあり方を考える。
                  〈本校の目標(2)からの評価規準〉
   3) よりよい生活環境作りに向けて,自分にできることを考え,実践す
    る。            〈本校の目標(2)からの評価規準〉
     * 2)と3)の評価規準があって初めて観点の3)が生まれてくる。
 ○ あとはこれらに基づき,できるだけ具体的な事実に基づいて簡潔,そし
  て的確に表現すればよい。
  「何を調べるのか,問題は何であるのかなど,自ら問題を設定し,見通し
  を持って追究することができた」などという記述には何ら具体性がなく,
  その子の事実もない。「川の調査を通して,汚染のひどさに問題意識を持
  ち,水生生物や水質調査の実施,市役所への聞き取りなど,見通しを持っ
  て積極的に学習に取り組むことができた」というふうになればその子の活
  動がはっきり見えてくる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[1]]「世界でいちばん受けたい授業」
           ご存じですか?藤原和博氏の提唱する「よのなか科」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 藤原氏は東京大学卒業後,リクルートに入社され,現在も同社の社員です。
また,杉並区の教育委員として教育活動にも関わっておられます。同氏の著書
「世界でいちばん受けたい授業」を読まれた方も多いかと思います。
 氏の長男が小学校五年生の時,社会科の教科書をみて愕然としたそうです。
世の中の仕組みがどんどん複雑になっていくのに,自分が小学生の頃と何ら変
わっていない。その旧態依然ぶりに驚いたそうです。
 そこで一念発起し,自己のビジネス経験を生かした「人生の教科書『よのな
か』」(筑摩書房)を執筆されました。氏は会社員という実社会で働く人間の
立場から,子どもがもっと現実の世の中と接した授業ができないかと考えまし
た。その発想から生まれたのが「人生の教科書『よのなか』」です。そのとき
はまだ授業実践はありませんでした。この本には具体的な授業の方法が書かれ
ているわけではなく,一種の理論書なのです。
 氏の提唱は東京:足立十一中で共感を受け,授業が展開されるようになりま
した。「よのなか科」はシミュレーションとロールプレイング,そしてゲスト
ティーチャーが核となって展開されます。自分が行うとしたらどうするか?自
分がその立場だったらどう言うか?という手法です。
 たとえば「1個のハンバーガーから世界が見える」の学習では,自分が店長
ならばどこへ店を出すか?はやっている店はどこが違うかといったマーケティ
ングの調査,さらにハンバーガーの原材料はどこからくるか?原価はいくらか
?といったことから貿易や円高円安問題にまで進んでいきます。追究の過程で
専門家のゲストティーチャーを有効に活用しています。
 氏はまだまだ問題点は山積していると言われていますが,なかなか興味ある
実践ではないでしょうか。 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[2]]『個性を生かした教育』とは?
            総合的な学習の実践に見られる間違ったとらえ方
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 見出しのことについて最近読んだ奈須正裕氏の論評を紹介します。
  個を大事にした教育,個性を生かした教育,昨今当たり前のように使われて
いるフレーズです。しかし,この中身をよく考えてみたことがありますか?
 このことの具体例として奈須氏は,5年社会科「伝統工業」の学習で,教科
書に輪島塗があげられていても全員が輪島塗でなくてもよいと述べています。
神奈川県であれば鎌倉彫でもよいし,岐阜県であれば刃物でもよい,また祖父
が焼き物好きであれば有田焼でもよい,母が染め物をやっているなら友禅染で
もよいと。一人ひとりの興味・関心に応じ,教材や活動レベルでは異なってい
ても,すべての子どもが指導要領レベルでの学習目標と内容が共通であること
が重要なのです。
 こういう学習は以前から教科の学習でも行われてきたことです。ところが,
総合的な学習になるとちょっと話が変わってくるのです。ただ単に「子どもた
ちがやりたいといったから」とか,子どもたちに「やりたいことはないか」と
何の意図性・計画性もなく丸投げする場合が多いのです。このような状況につ
いて奈須氏は次のように言われています。
【好きなことを好きなようにやらせて「個性を生かした」と言い張る人がい
る。そんなだらしない実践をもって子ども中心の教育が揶揄され,総合的な学
習が非難されるのはまったく困ったことであり,迷惑な話ですらある。そもそ
も教科と総合の違いは,子どもが対決する対象が文化遺産か生活現実かという
内容的な面にあるのであって,教育方法的には大きな違いはない。心ある人な
ら,教科だって体験重視の問題解決を基本としていたはずだ。個性を生かすこ
とにしたところで,同じように考えればいい。】
 総合的な学習で問題となるのは,表面的には一人ひとりの興味・関心に応じ
て違う追究対象に向かっていても,大きな問題意識自体が共有されているかど
うかです。その際,その問題が子どもたちにとって解決すべき切実な問題であ
り,その必然として追究が生じていることは言うまでもないことです。
【この町にあるものなら何でもいいです。興味・関心を持ったことを調べて発
表しましょうという投げかけで学習がはじまる。子どもたちは蜘蛛の子を散ら
したようにばらばらに活動し,教師は支援はおろか見取りすらできない。およ
そ価値ある内容など実現されるはずもなく,発表会でも他人の発表など聞くも
のはいない。それはそうだろう,ある子はおもちゃ屋さんのひみつを調べ,あ
る子は公園のあり地獄を調べたのだ。】と奈須氏の言です。
 はじめに解決すべき問題がなく,もちろん共有もされていない。こういう事
態の原因の一つとして,総合的な学習の学習目標と学習内容が明確にされてい
ないことがあげられます。総合的な学習でも教科と同じように指導要領レベル
の目標と内容を設定すべきだ,と奈須氏は以前から主張しておられます。前記
の奈須氏の言〈およそ価値ある内容など実現されるはずもなく〉という場合の
「内容」とは,指導要領レベルの内容のことです。
 このことをきちんと組み立てて取り組んでいるのが山口大附属山口小学校で
す。より詳細を知りたい方は同小の「確かな力を育む総合学習:明治図書」を
参考にされるとよいでしょう。
[1]嶋野 VS 藤井 VS 奈須 オピニオンリーダートーク
        14.12/06 山口大学教育学部附属山口小学校研究発表会より
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 12月6日開催の見出しの研究発表会に参加しました。そこでの3氏のトー
クを以下に紹介します。
 ………………………………………………………………………………………
・オピニオンリーダー          
     嶋野道弘氏(文部科学省視学官)     
     藤井千春氏(茨城大学教授)
     奈須正裕氏(立教大学教授)
○ テーマ1 ―総合的な学習の評価について―
〈嶋野氏〉
 ・ 評価は難しくない。観点(学力を見る窓口)をきちんと決めておく。
   それが指導の重点となる。つけたい力など,指導のねらいがはっきりし
  ていればそれがそのまま評価の観点となる。各校で検討すべきは,その具
  体的方法である。全職員の知を結集し,新しい方法を。
〈藤井氏〉
 ・ 3つの原則
  1) 個別性…他と比べるのではなく,その子のよさ,持ち味,可能性を引
   き出す評価。個人内評価で。
  2) 質………数値化できないものを質的にとらえる。自信を持たせる。
  3) 連続性…学習のまとめではなく,はじめから連続させる。指導と学習
   (児童)の改善を。成長を実感させる。
 ・ 教師は,これらを子どもが表現できる場を作る。教師はそこから得られ
  るその子の言葉でエピソードを集め,その子がどう表れているか(よさや
  抱えている課題),持ち味がどう表れているかを分析する。それを評価に
  生かす。
〈奈須氏〉
 ・ 総合的な学習には総合固有の評価方法はない。教科と同じ視点で捉える
  べき。つけたい力があって,それが達成されているかどうかを見極めてい
  く。総合的な学習のカリキュラムがしっかりできていれば自動的に評価方
  法も見えてくるはず。必要以上に難しく考えないこと。
○ テーマ2 ―学力保証について―
〈藤井氏〉
 ・ 公教育としての学力というとらえかたで。国民の信託に応える。基盤は
  共感的な仲間意識。友だちの言ってること頷きながら聞ける学級,自分が
  努力している姿を安心して表現できる学級。
 ・ 学び合って高め合う集団の学習力の育成を。ともに学ぶという姿がある
  かどうか。
 ・ もう1つ,教師との信頼関係を。
〈奈須氏〉
 ・ 学習指導要領すべてが基礎基本。
 ・ 少人数や習熟度別学習…形を変えただけ,人数が減った,という感覚だ
  けでは逆に学力低下を招く。それぞれの学習内容にあった教材を開発すべ
  き。同じ教材を使っていては学力は低下する。
〈嶋野氏〉
 ・ 知識,技能にとどまらず,学ぶ意欲まで含めて伸ばしたい。
 ・ 生活に根ざした知識を伸ばして欲しい。
    例:子どもの書いた「ザリガニの脱皮」の日記から
    〈脱皮するという知識だけを知るだけでなく,脱皮するときのエネル
     ギーの大きさ,成長することのたいへんさ(「だっぴしたあとのザ
     リガニはとてもつかれているようにみえました」という記述)まで
     もを理解することができるかどうかが体験の価値〉
 ・ 学力のおさえ
  1) 習得すべきもの,繰り返し使うもの。
  2) 考える場に繰り返し立つこと(習いながら慣れよ)
  3) 使ってみて身につく(腑に落ちる)
  4) 多様な方法を(形式におぼれると失敗する)目的と成果を常に確認す
   る。 
○ テーマ3 ―総合的な学習と教科の関連―
〈奈須氏〉
 ・ 総合的な学習の指導要領を作成する。教科は文化遺産の伝達(時空を越
  えた真実),総合的な学習は自己の生き方を考える。両者は車の両輪であ
  り,単元レベルでリンクする。ただし,目的が違うことを認識しておく。
 ・ 教科を総合的な学習で生かす。その意味からも教科の大切さを認識して
  おく。
〈嶋野氏〉
 ・ 教科で育てる資質,能力をきちんとおさえる。特に各学年ごとの縦系列
  を。例えば,社会科の4つの観点を縦に並べて分析してみる。これを総合
  的な学習に生かせないか。
 ・ 総合的な学習は教科の先取りや後付け(未学習でも総合でとりあげる,
  既学習でも同様)
〈藤井氏〉
 ・ 教科学習はすべての基盤となる。
 ・ 総合的な学習で直接体験を通して知的な気づきを数多くさせたい。そこ
  で得た知識を道具として生活で使えるように。
○ トークのまとめ(これからの教師に求められる資質や能力を一言で)
〈嶋野氏〉
 ・ “子どもに対して知的好奇心,探求心を持つ”
   見ようとする教師にしか見えない。ぼんやり毎日を過ごしている教師に
  は,決して子どもを理解することはできない。
〈藤井氏〉
 ・ “子どもの表現への感受性を磨く”
   「なぜこの子はこういうことを言うのだろうか」「なぜこの子はこうい
  う絵を描いたのだろう」「なぜこの子はああいうことをしたのだろう」な
  ど,子どもの表現を受け入れ,共感的な態度で子どもを見ることができる
  か。
〈奈須氏〉
 ・ “○○な○○さんなんだなあ”
   その子を心情を推し量り,理解する。「○○と言わざるを得なかった
  ○○さんだったんだなあ」「○○せざるを得なかった○○さんだったんだ
  なあ」という肯定的な子ども理解。
                              以 上
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[2]有田和正氏の講演記録
        14.12/06 山口大学教育学部附属山口小学校研究発表会より
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 講師:有田和正氏(教材・授業開発研究所代表)
 演題:知識や学習技能を倍増する力をどうつけるか
▼ 総合的な学習では発想の転換を
 ○ 3軒のせんべい屋が並んでいる。ある日A店が「元祖」という看板をか
  けた。B,C店は売り上げが減少する。そこでB店は「本家」という看板
  を掲げた。困ったのはC店。そこでC店は一計を案じた。それは「ここが
  入口です」という看板であった。すると,A店の客もB店の客もC店に来
  るようになった。
   たとえれば,A店やB店は教科であり,C店は総合的な学習である。
 ○ 地域単元…町をちがう目で見つめる。
   浮世絵的見方多様なものの見方を育てる
    …鳥瞰する目(マクロ),虫になって見る目(ミクロ)
      →テーマを持って浮世絵的見方で対象を見る。
▼ これからの学習指導
 ○ タラントのたとえ(新約聖書マタイ伝28章)
   店の主が3年間の旅に出ることになった。そこで店主は番頭に資金を与
  え,それぞれ独立させることにした。番頭Aには5タラント,Bには3タ
  ラント,Cには1タラントを分け与えた。3年後帰ってきた店主が見たの
  は資金を10タラントに増やした番頭A,6タラントに増やした番頭B,
  1タラントのままの番頭Cの姿であった。みなさんは1タラントのままの
  番頭Cをどう感じるだろうか。
   私たちがやってきた教育は番頭Cの教育であった。教師が1教えて子ど
  もが1習得していればテストは100点で,合格であった。これからの教
  育は1習ったことを2にも3にも増やすことができる子どもを育てなけれ
  ばならない。
 ○ ではどうするか?
  ・ 基礎基本の徹底→倍増させる力の源(知識や学習技能)
    基礎基本とは?
    1) 応用できる〈発展していく力〉
    2) 身につきにくい〈だから繰り返し学ぶ:例として九九や漢字〉
    3) しだいに個性化する〈基礎基本がしっかりしているからこそイチ
     ローの現在のバッティングがある〉
 ○ 基礎基本を教えるための効果的な教材とは?
  ・ 子どもにとっておもしろいことが第1
  ・ 子ども自らが興味を持って調べる「内容」があり,自ら工夫できる
   「方法」があること。
  ・ このような教材を「開発」する教師の技量が求められる。
     例:理科の月の動きの学習で
       ……「菜の花や月は東に日は西に」その時の月はどんな月?
 ○ 応用する力を育てる
  ・ 応用する力は知識を倍増する。
    一つのことを追究し終わったら,そこでついた力を他に応用すること
   ができる力に高めていく。
    応用に応用を重ね,自ら学習を発展させることのできる力をつける。
      未知→既知→再び未知→そして既知→しかしまだ未知
     →やっと既知=真の学力
  ・ 体験からの知的気づきを大切に 
   (知的気づき)ぶどう畑の見学でぶどう棚の高さがまちまちであること
         に気づいた。
   (そこから見えてくる真実)栽培者の身長に合わせている。低いぶどう
       棚の畑は跡継ぎがいない。跡取りは若者であり,身長が高い。
▼ 教師のプロとは
 ○ うまい授業
   子どもを引きつける 子どもの人間性を高める
 ○ そのために
   1)よい教材  2)子どもを引きつける発問 
   3)一人ひとりへの対応(切り返し)  4)板書
                                                以 上
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[1]ここが大事だ!総合的な学習
            「総合的な学習」が学校教育に占める位置の重み
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 総合的な学習をめぐって,相変わらず議論が絶えないようです。議論するこ
とは意味あることだと思います。しかし「やっても仕方ない」「総合的な学習
をやると学力が落ちる」といった,否定的でマイナス思考の議論からは何も生
まれてきません。そのような考えをお持ちの方に,以下の私見をぜひとも読ん
でいただきたいと思います。
  …………………………………………………………………………………
 総合的な学習の時間が創設された背景をもう一度考えてみよましょう。これ
については49号に書いてありますので,もう一度下記のアドレスをクリック
してご確認下さい。
  ../../../Berkeley-Labo/6941/sougou.html
 要約すると,変化の激しい21世紀を生きる子どもたちに求められるのは,
社会に積極的に関わり,そして思考し,さらに実践できる人間である,という
ことです。そういう能力を育てるために設けられたのが総合的な学習の時間で
あると解釈しています。これが私の持論である「地球市民としての資質を育成
する」ことの根拠です。
 総合的な学習の時間をより充実させることが「21世紀を生き抜く子どもた
ち」を育てることに大きく作用するのです。その際,基礎・基本の学力がすべ
てのベースとなることは言うまでもないことです。
 次に考えたいことは基礎・基本の学力についてです。私は「基礎・基本」は
2つの側面があると思うのです。言い換えれば2層構造というか,別のことば
で表すと「最低学力」と「基礎学力」となるでしょうか。
 「最低学力」は社会人として生きていく上に欠くことのできない学力です。
これは漢字とか計算といった3Rです。これがなければ社会に出て一人前の扱
いを受けることはできません。例えば計算のできない店員,書類の書けない会
社員では困ります。「基礎学力」は指導要領に書かれていることとでも言いま
しょうか。より高度な教育を受けたい場合,欠くことができない学力です。
 と,こう書くとやはり知識偏重の旧学力観に根ざした考えと受け止められそ
うです。しかし,今の受験体制(今のようなペーパーテスト重視の入試)が変
わらない限り,こういう受け止め方も仕方ないでしょう。また,受験といって
も学校だけではないのです。入社試験しかり,資格試験しかりです。もっとも
身近な運転免許の試験でさえ,学力がないとパスしません。社会にはいくらで
も試験はあるのです。これはまぎれもない事実です。
 「受験システムを変えない限り何も変わらない」と,受験体制のせいにして
ものごとを片づけるわけにはいかないのです。学校教育はこういう側面も考え
ねばならないと思うのです。やはり学力(2層とも)はつけてやらねばならな
いのです。
 しかし,私はもう一つの「学力」があると思うのです。それが「生きる力」
です。上記の学力は「瞬間学力」とでも言う性質のものです。その時が過ぎれ
ばそれでおしまいです。大学受験が終わればそれでおしまいです。もう捨てて
しまっても差し支えないのです。運転免許試験しかり。みなさんもあのころ必
死で覚えた交通法令,今でもしっかり覚えていますか?剥落しているのが普通
でしょう。誰しもがそうなのです。特に差し支えはないでしょう。これが「瞬
間学力」です。
 もう一つの学力は「生涯学力」とでも言うべき,企画力,創造力,応用力,
実行力,などです。何度も言いますが,不安定要素の多いこれからの困難な社
会ではこういう能力が必須なのです。言い古されたことばですが,「生きて働
く力」です。こういった力を総合的な学習で育てたいのです。
 さらに,最近「生きる力」に新しい側面を考えるようになりました。それは
社会を生きていく上での「人間性」の側面です。人の心がわかる優しさ,思い
やり,他人と協調して生きる「共生」といった心情的な側面,そして美しいも
のに感動する情操的な側面です。こういった心情も育てて行かなくては,ます
ます自己中心的でぎくしゃくした世の中になってしまいます。かつて17歳の
犯罪が社会問題となりました。高校生が平気でホームレス者を殺傷する時代で
す。こういう部分にも我々は今まで以上に目を向ける必要がありそうです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[1]総合的な学習を見直す!
                 症状別“5つの視点と17の対策”
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 一昔前,「学校裁量時間」「ゆとりの時間」というものが存在しました。結
果はみなさんご存じのとおりです。総合的な学習がこの二の舞にならないよう
にしなければなりません。このあたりで一度じっくり見直してみませんか?
 ちょうどよい資料を見つけましたので紹介します。
□症状1「ほとんど進んでいない」場合
 1) 総合的な学習の時間のねらいをもう一度全職員に徹底する。
  なぜ総合的な学習が誕生したのか,総合的な学習で育てたい子どもとはど
 んな子どもなのか。こういうことを考えたことがありますか?中教審や教課
 審の答申を読んだことがありますか?私はすべてはここからはじまると考え
 ています。このことについては,今までにも何度か書きました。
 2) 総合的な学習の全体計画,年間計画を立てる。
  すべての教育活動はP(Plan:計画)D(Do:実践)S(See:評価)だと考え
 ています。計画のないところに実践はありません。これも「評価」の特集号
 で書きました。
 3) 学年経営案,学級経営案に具体的な学習内容を記載する。
  学校全体の研究目標や方法を受けて,学年ごとに具体化せよ,ということ
 だと思います。具体的な目標・内容・方法を検討することです。
 4) 総合的な学習の時間の到達度規準を作成する。
  つけたい力,目指す子ども像などを学校レベルで策定し,それを6年間で
 どうつけいくのか,またついた力をどう見極めていくのかという規準をつく
 っておく。これがなければ実践の方向性が見えてこない。
 5) 今の総合的な学習の将来に対する危惧を払拭する。
  困難の多い21世紀を生きる子どもたちに必要な力は何であるのか。これ
 を考えたとき,総合的な学習の果たす役割の重要さに気づくでしょう。 
□症状2「ただ何となくやってきた」場合
 6) 総合的な学習を横断的・総合的に扱う。
  取っつきにくいと思われがちな総合的な学習ですが,教科から入ると分か
 りやすいと思います。教科を発展させ,横断的に扱うと抵抗感が減ると思い
 ます。
 7) 総合的な学習が体験活動だけでなく,ねらいをはっきりさせる。
  体験あって中身なし,とならないためにも体験の位置づけをはっきりさせ
 ることが大切です。子どもたちの追究に必要な体験でなくてはなりません。
 8) 総合的な学習の時間の配慮事項3点を確認し,生かす。
  配慮事項3点は総則のP50〜P53にわたって書かれています。
  ・体験的な学習や問題解決的な学習を積極的に取り入れること。 
  ・指導体制,地域の教材や学習環境の積極的な活用などを工夫すること。
  ・外国語会話等は小学校段階にふさわしい体験的な学習とすること。
 9) 研究紀要に成果,課題の解決策,対応策を記す。
  成果と今後の課題については書かれていることが多い。しかし,解決策や
 対応策など,今後の見通しが書かれている紀要はごく少ないと思います。
□症状3「子ども中心にやってはいるが?」場合
10) 総合的な学習の時間が支援だけに終わる前に,まず指導を。
  総則の P45「総合的な学習の時間のねらい」には次のように書かれてあり
  ます。“次のようなねらいをもって指導を行うものとする”
    文字通り「指導」を行うのです。私は「支援」は「指導」の1つの形態だ
  と考えています。
11) 創意工夫された時間帯で授業を弾力的に運用しよう。
  先を見通し,計画性を持って総合的な学習の運用を考えましょう。突然の
  時間割変更で総合的な学習を増やしたり削ったりするのは厳禁です。
12) 総合的な学習には,教科書,指導書は自分たちでつくろう。
  これは常々立教大の奈須氏が言われていることです。きちんと自校のカリ
 キュラムをつくることが大事です。奈須氏は「総合の指導要領を作成すべき
 である」と言われています。
□症状4「地域の支援に目は向いているが?」場合
13) ねらいの達成に地域の人の人材を活用する。
  呼んだのはいいが,こちらの思惑と違うことを話し出した,という経験は
 ありませんか。ゲストティーチャーは子どもたちの追究の必要性から招へい
 すべきです。
14) 人材活用を含めた地域の支援組織,体制づくりを整える。
  市町村の生涯学習関係(例えば市民大学など)の資料も有効に活用できる
 でしょう。
15) ねらい達成のための教育環境整備をする。
  インターネットや参考図書の整備など。
□症状5「通知票はしっかりつけよう」場合
16) 通知票に総合的な学習の評価の欄を設ける。
  観点をきちんと決め,個人内評価で行うのがよいでしょう。      
17) 保護者に,総合的な学習についての説明会,報告会を行う。
  何をやっているのかよく分からない,という声をよく聞きます。こんなこ
 とでは地域の協力など得られるはずがありません。説明責任はきちんと果た
 しましょう。
              参考資料:学研「教育ジャーナル」11月号
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[2]総合的な学習で発揮すべき教師の意図性・指導性
          神戸大附属住吉小 勝見健史氏の小論をもとに考える
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 第40号で書いた「教師がシナリオを書く」という記事を掲載しました。要
点を再掲します。
>  はじめに子どもたちにつけたい力(私は「知的社会的認識力」と考える)
> は何なのかを見極め,それをどうやって実現させていくのかを話し合うこと
> が必要です。教師自身が指導の見通しをきちんと持ち,到達点はここ,とい
> うふうに展望を持たねばなりません。あくまでも「学習」なのですから。こ
> れをぬきにしては評価規準も作成できません。
> また,指導の途中では失敗することが目に見えている子に対して,教師が方
> 向修正してやるべきだと考えます(少なくとも小学校レベルでは)。それが
> 支援であると思います。最後まではい回って終わった子(もちろんまとめが
> できない,報告もできない,という状況になると思います)は必ず総合嫌い
> になります。いえ,問題解決学習そのものが嫌いになります。さらに言えば
> 勉強嫌いにまで発展するやもしれません。自己の追究課題が設定できない,
> どういうふうに追究していけばよいのか分からない,という子が大部分なの
> です。そういった意味からも,教師はシナリオを描き,時には演出家にもな
> らねばならないというわけです。
 先日,教材屋さんから「生活科・総合的な学習研究No13(文溪堂)」という
リーフレットをいただきました。その中に「総合的な学習で発揮すべき教師の
意図性・指導性」という小論がありました。つまり,総合的な学習でも教師が
しっかり指導しなければならないということです。簡単に紹介します。
● 学習前に教師がすること
 1)カリキュラムをつくる。
 2)活動のレパートリーを増やす。
   例えば「発表」の場面であれば,新聞づくりとかパネルディスカッショ
  ンとかホームページとか,活動のレパートリーを増やすということ。
 3)評価の計画を立てる。
 4)目的を子どもと共有する。
   一人一人に目的のある単元をつくり,教師と子どもが共有する。
 5)多様な学習材・学習環境など,いろいろな場所で調査できるようにする。
 6)他教科を含めた学びのバランスを考える。
   総合的な学習だけでなく,他教科でも主体的な学びを進める。ドリル的
  な学習も必要。
● 実施中に教師がすること。
 1)学習の目的と今やっていることの位置を子どもと確認する。
 2)学び方をささえる。
   分からないことは,そのヒントを与える。
 3)子どもの学習に寄り添いながら評価する。
 概要しか紹介できませんが,要は子どもの主体性を尊重することと教師が指
導しないということは別物だということです。総合的な学習も「学習」である
以上,教師は「指導」しなくてはならないのです。
 詳細が知りたい方は学校出入りの教材屋さんからいただいてください。文溪
堂を扱っている教材屋さんです。 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1]文化創造 ―学びのネットワークを築く子ども―
             愛知教育大学附属岡崎中学校の実践を紹介します
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 去る10月8日,研究発表会が開催されました。同校は高いレベルの実践を
していることで知られています。私が所属する研究会の事務局が同校であるこ
ともあってため,会合などでしばしば訪れる学校です。懇意にしている先生も
おります。酒の席では苦労話をよく聞きますが,話している顔は実に楽しそう
です。そんな同校の研究を紹介します。関心をお持ちになった方は,来年度の
研究会にぜひご参加ください。詳細は下記をクリックしてください。
   http://www.oj.aichi-edu.ac.jp/
 ………………………………………………………………………………………
■基本方針
 先行き不透明で見通しのきかない今世紀,そこに生きる子どもたちにどのよ
うな学びを提供し,どのような「生きる力」を育んでいくか。
 このことについて議論を重ねた結果,子どもたちが一人の人間として,他と
かかわりながら,自分の思いを伝え,よりよい社会を求めてともに活動する
「文化創造」の担い手となることをを目標に掲げた。
 新たな学びと出会い,得られた自分の学びを整理・統合して,新たなものの
見方・考え方を再構成していく「学びのネットワークを築く」ことを目指した
研究を進めてきた。
■研究の概要
 人の価値観が多様化し,自分なりのものの見方・考え方をもつことがいっそ
う求められる今世紀。子どもたちには、人とのかかわりを大切にし、豊かな体
験を通して、より確かなものの見方・考え方を身につけることが求められてい
ます。そこで、わたしたちは,子どもたちが自らの価値観を確立し,他ととも
に動き出そうとすることができるように「学びのネットワークを築く子ども」
の育成をめざしました。その具体的な姿を次のように考え,これらの姿を実現
するため,9教科の学習とネットワークプロジェクトを中心として,教育課程
を構想しました。子どもたちは、将来の文化創造の担い手として,着実に歩み
だしました。
 1) 自分のこれまでの知識や経験をつなげていこうとする姿
 2) 自分のまわりの人・こと・ものと自分自身をつなげていこうとする姿
 3) 常に今の自分を見つめ直し、よりよい自分を求めようとする姿
 4) 互いに思いを共有し、夢の実現に向けて協働しようとする姿
■「文化創造」とは
 一人の人間が,他とかかわりながら,自分の思いを伝え,よりよい社会を求
めてともに活動すること。
■ 「学びのネットワーク」とは
 これまで培ってきたものの見方・考え方を基盤に,学びの対象である人・こ
と・ものに主体的にかかわっていくことで,新たな学びと出会い,自分とのつ
ながりを関連づけていくことを指す。さらにそれまでの自分の学びとつなげて
新たなものの見方・考え方を再構成していくこと。
 ………………………………………………………………………………………
 ここまで読まれた方はすでにお気づきのことと思います。それは第49号でお
伝えした「“総合的な学習の時間”の目指すもの ―21世紀を生きる子ども
たちのためにつけたい力とは?― 」です。要約,再掲します。みなさんもご
一緒に考えてみてください。
〈要約,再掲〉総合的な学習でほんとうにつけたい力とはいったい何なのでし
ょうか。私は一貫して「地球市民としての資質を身につける」ことと考えてい
ます。総合的な学習の時間が創設された背景をもう一度考えてみましょう。
  ・・・・中略・・・・
 その中に「激しい変化が予想されるこれからの社会においては,子ども一人
ひとりが主体的,創造的に生きることのできる資質や能力の育成を図る」と述
べられ,さらに「自ら学ぶ意欲や社会の変化に主体的に対応できる能力」とい
う文言も見られます。さらに「我々はこれからの子供たちに必要となるのは、
いかに社会が変化しようと,自分で課題を見つけ,自ら学び,自ら考え,主体
的に判断し,行動し,よりよく問題を解決する資質や能力であり,(中略)
 我々は、こうした資質や能力を、変化の激しいこれからの社会を生きる力と
称することとし,これらをバランスよくはぐくんでいくことが重要であると考
えた。」と書かれています。
 みなさんの目の前にいる子どもたちは,このようなきびしい時代を生きてい
かなければならないのです。そのためにどんな力をつけてやらねばならないの
でしょうか?これが大きなキーポイントです。〈再掲,終わり〉
 よく「学校の勉強なんか,社会に出たら何の役にも立たない」と言われま
す。これまでの教科学習が子どもたちと意味のある結びつきがなかったからで
す。新指導要領の目指すところは,断片的になりやすい知識・技能を自分の必
要性,自分の生活に動機づけさせ,体系化させ,血肉化させることです。これ
こそが「21世紀の変化の激しい社会」を生きる子どもたちに必要な力です。
 新しい学力観では,教科学習もただ単に「知識・理解」だけでなく「関心・
意欲・態度」そして「思考」を重視しています。ただ単に知識人間では21世
紀を生き抜けないのです。変化の激しい社会と関心や意欲をもって関わり,そ
して思考し,さらに実践できる人間を育てて行かねばならないのです。そのた
めに設けられたのが総合的な学習の時間であると解釈します。
 例をあげましょう。
 日本の食についての問題を扱った場合で言えば,子どもも教師も「米を育て
て食べておわり」という実践すらあります。これでは活動あって中身なしで
す。教師が「総合的な学習でつけたい力」を意識していなかった結果です。総
則に書かれているねらいの2にあたります。
 ねらいの2を意識して指導すれば「現在の我が国が抱える食生活の問題」,
例えば狂牛病や日本ハムの問題などにまで子どもたちの意識は広がっていくは
ずです。
 こういう認識〈社会力〉を高めることは,総合的な学習の時間でつけたい力
として,見逃せない大切なことです。知を総合化させて学習したにもかかわら
ず,子どもたちに意識変革が生じなければその実践は失敗だと思います。
 追究技能が身につくだけでは総合的な学習の場合,目標を達成したことには
ならないのです。言い換えれば,その実践では「生きる力」が身につかなかっ
たからです。
 21世紀を生きる子どもたちに,現代社会の抱えるさまざまな諸問題にどう
対応していくのか,そんな認識を育てることは総合的な学習の時間に課せられ
た大きな使命だと思います。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[1]授業参観の視点 ― 総合的な学習の時間の場合 ―
             愛知教育大学:布谷光俊氏の主張を紹介します
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 布谷先生とは少々おつきあいがありますが,授業参観がたいへんお好きな方
です。授業を分析する眼力は折り紙付きです。その布谷先生の授業参観のポイ
ントを紹介します。
●指導案を読んだ段階で
 ・授業者が学習材の価値や子ども一人ひとりの学びをどうとらえているか。
 ・本時までにどんな授業を構想・実践してきたのか。
 ・本時案では,さらにどんなねらいを据えているか。
 ・子ども一人ひとりのどんな学びを願うのか。
 ・そのためにどんな支援・評価を行うのか。
 ・これらをどれほどリアルな思い描きで語っているか。
●当日の授業で
1体験的な授業では
 1)子ども一人ひとりが対象と直接かかわって抱く思いや願い,疑問心,問題
  意識の持ち方,対象との関わり方や気づき方,こだわり方
 2)その過程で生ずるさまざまな事態や問題のとらえ方とこれらの対処や解決
  の仕方
 3)これらを通して実感することになる成就感や自己効力感の持ち方
 4)対象についての新たな見方や対象との一体感,連帯感,共生意識の持ち方
 5)学びの深まりとこれらのために教師がおこなう具体的な支援,評価の中身
2 調べ活動的な授業では
 1)子ども一人ひとりの追究課題や追究方法の決め出し方
 2)追究への切実感や意気込み,こだわりの持ち方
 3)追究に必要な諸条件や相手の都合を考えた情報の集め方や調べ方
 4)受けての反応や評価を考えた結果のまとめ方や報告,発表の仕方
 5)学びの深まりとこれらのために教師がおこなう具体的な支援,評価の中身
 これから研究授業を参観されるとき,大いに参考になると思います。ついつ
い表面的な見方で終わってしまいますが,ここにあげた「当日の授業」の1の
2)にあげられている「とこれらの対処や解決の仕方」そして4)にある「共生意
識の持ち方」など,たいへん参考になると思います。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[2]地域から世界が見える
       教材・授業開発研究所代表 有田和正氏の主張を紹介します
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 総合的な学習の時間では,地域をフィールドとした単元が設定されることが
多く見られます。しかし,学習が地域内だけで終了している例も結構あるよう
です。有田氏はずっと以前から「地域から世界へ学習を発展させるべき」と言
われています。「トイレから世界が見える」の実践はあまりにも有名です。
 総合的な学習の時間でつけるべき力として,vol.49で紹介したように,「地
球市民としての資質を育てる」があげられます。中教審の答申にも今後子ども
たちが直面し,解決しなければならないであろう問題を5点掲げています。
1 国際化の進展
2 情報化の進展
3 科学技術の発展
4 人類の生存基盤を脅かす問題
5  高齢化や少子化の急速な進展
 学校や地域の実態,目指す子ども像と,以上の5点を考え合わせると,総合
的な学習の時間で目指すべき方向性が見えてくると思います。グローバルな目
を育てることの必要性が理解できるでしょう。
 有田氏の「地域から世界が見える」を「地域から世界を見よ」と言い換えて
みてはどうでしょうか。総合的な学習の時間の行き着く先が見えてくると思い
ます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[1]“総合的な学習の時間”の目指すもの
        21世紀を生きる子どもたちのためにつけたい力とは?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 総合的な学習でほんとうにつけたい力とはいったい何なのでしょうか。私は
一貫して「地球市民としての資質を身につける」ことと考えています。
 総合的な学習の時間が創設された背景をもう一度考えてみましょう。受験地
獄に代表される教育への反省と改革から,84年に臨教審が教育の抜本的な改
革に着手しました。ここから生まれたのが「ゆとり教育」です。これを受けて
第14次中教審が91年に最終まとめを発表し,その中に「新しい学力観」が
盛り込まれました。当時の文部相は93年に「新しい学力観に立つ教育課程の
創造と展開」という指導資料を作成しました。これはみなさんご覧になったこ
とがあるでしょう。
 その中に「激しい変化が予想されるこれからの社会においては,子ども一人
ひとりが主体的,創造的に生きることのできる資質や能力の育成を図る」と述
べられ,さらに「自ら学ぶ意欲や社会の変化に主体的に対応できる能力」とい
う文言も見られます。
 さらに「新しい学力観」に基づく教育の展開を目指して,96年に第15期
中教審が第1次答申「21世紀を展望した我が国の教育のあり方について」を
発表しました。ここからさらに「生きる力」がクローズアップされてくるので
す。なぜ「生きる力」なのか?その背景として次のようなことが書かれていま
す。
〈以下,本文引用〉
 我々はこれからの子供たちに必要となるのは、いかに社会が変化しようと、
自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよ
く問題を解決する資質や能力であり、・・・中略・・・・
 我々は、こうした資質や能力を、変化の激しいこれからの社会を「生きる
力」と称することとし、これらをバランスよくはぐくんでいくことが重要であ
ると考えた。
〈引用終〉
 さらに答申第1章 (2)「これからの社会の展望」では,今後子どもたちが直
面し,解決しなければならないであろう問題を5点あげてあります。
〈以下,本文要約〉
 我が国の社会は、今後、様々な面で変化が急速に進むと考えられる。ここで
は基本的な展望を述べておくこととする。
1 国際化の進展
  冷戦の終焉や交通手段の発達、情報化の進展を背景に、経済、社会、さら
 には、文化の面で交流が一層進み、国際的な相互依存関係がますます深まっ
 ていく。一方、様々な面で国際的な摩擦や競争も生じてくると考えられる。
2 情報化の進展
  世界的な規模の情報通信ネットワークを通じて、不特定多数のものが、双
 方向に文字・音声・画像等の情報を融合して交換することが可能となりつつ
 ある。このような高度情報通信社会の実現は、地球規模で今後の社会や経済
 の姿を大きく変えていくものと考えられる。
3 科学技術の発展
  科学技術の発展は、人類にとって豊かな未来を築く原動力になると考えら
 れるが、とりわけ、人間の知的創造力が最大の資源である我が国にとって、
 諸外国以上に科学技術の発展は重要である。しかしながら、一方、科学技術
 が著しく高度化・細分化・専門化する中で、国民にとって科学技術は分かり
 にくいものとなり、不安感がさらに高まっていくことも懸念される。
4 人類の生存基盤を脅かす問題
  地球環境問題、エネルギー問題なども生じてきている。これらは、大量生
 産・大量消費・大量廃棄型の現代文明の在り方そのものが問われる問題であ
 るが、今後、地球規模でこれらの問題に取り組んでいく必要性はさらに高ま
 り、この面で、我が国の貢献がさらに強く求められるようになっていくこと
 が予測されるところである。
5  高齢化や少子化の急速な進展
  かつて経験したことのないような少子・高齢化社会を迎えることが確実と
 見られている。また、男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によ
 って社会のあらゆる分野に参画する機会が確保される「男女共同参画社会」
 づくりも重要な課題となっている。
〈要約終〉
 さらに次のように結んでいます。 
〈引用始〉
 これからの社会をどのように展望するかについては、様々な変化や要素を考
える必要があり、一概に言い表すことは難しいが、いずれにせよ、変化の激し
い、先行き不透明な、厳しい時代と考えておかなければならないであろう。
〈引用終〉
 みなさんの目の前にいる子どもたちは,このようなきびしい時代を生きてい
かなければならないのです。そのためにどんな力をつけてやらねばならないの
でしょうか?これが大きなキーポイントです。
  よく「学校の勉強なんか,社会に出たら何の役にも立たない」と言われま
す。これまでの教科学習が子どもたちと意味のある結びつきがなかったからで
す。新指導要領の目指すところは,断片的になりやすい知識・技能を自分の必
要性,自分の生活に動機づけさせ,体系化させ,血肉化させることです。これ
は「21世紀の変化の激しい社会」を生きる子どもたちに必要な力です。
 私は義務教育の目指すべき方向はまさしくこれだと思います。新指導要領で
は,教科学習もただ単に「知識・理解」だけでなく「関心・意欲・態度」そし
て「思考」を重視しています。ただ単に知識人間では21世紀を生き抜けない
のです。変化の激しい社会と関心や意欲をもって関わり,そして思考し,さら
に実践できる人間を育てて行かねばならないのです。
 そのために設けられたのが総合的な学習の時間であると解釈します。義務教
育における「社会力」(注:門脇厚司氏「学校の社会力」朝日選書)の養成だ
と思っています。以上が私の「地球市民としての資質を育成する」ことの根拠
です。
 総合的な学習の時間をより充実させることが「21世紀を生き抜く子どもた
ち」を育てることに大きく作用すると考えています。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[2]総合的な学習の時間の要点を指導要領総則から読みとる
                 加藤 明氏(京都女子大教授)の提案
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 加藤氏は,指導要領総則から総合的な学習の時間に関するポイントを抜き出
すと「2つのねらい」「3つの方法原理」「4つの工夫のしどころ」になると
言われています。
〈2つのねらい〉
 ・自らの問題解決の力
 ・生き方へのふり返りを含めた広い意味での学び方
〈3つの方法原理〉
 ・課題
  国際理解や環境,福祉などの課題,地域・保護者・学校・児童の願いを受
  けた課題を設定し,ねらい達成を目指す。何でもありではない。
 ・体験
  その過程を歩むことそのものが内容として意味がある,価値があるという
  体験を。
 ・自ら
  自らの学習展開という方法原理を大切にする。
〈4つの工夫のしどころ〉
 ・時間の柔軟性への工夫
 ・指導体制の柔軟性への工夫
 ・学習形態の柔軟性への工夫
 ・学習の場の柔軟性への工夫
 以上です。ただし「これらのこととて枠組みに過ぎず,各学校の創意工夫を
生かした実践が期待される」と結んでおられます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[1]総合的な学習の時間,悩んでいませんか?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 年間100時間以上の総合の時間,悩んでいませんか?
 ある番組で遠山文科大臣が「教科の力が足りないなら,教科の学習をやって
もよい」という内容の発言をしていました。そのような認識で新指導要領の趣
旨がほんとうに実現されると考えているのでしょうか。おそらく学力低下問題
や総合への不評を考慮しての発言だと思います。
 このような問題の原因は何でしょうか。その一端は現場の教師にもあるはず
です。有田和正氏は次のように述べています。
 ………………………………………………………………………………………
〉 総合的な学習では教科書がない。教科書がないから教材を開発し,指導
〉法を工夫しなければならない。長い間,教科書にたよる指導をしてきた教
〉師は,突然,教材を開発して指導しろと言われ,そのとまどいたるや驚く
〉べきものがある。                         
 ………………………………………………………………………………………
 かつて紹介しましたが,某新聞社の記者は「あなたのお子さんの担任教師に
何かを期待してもむだです。彼らはただのおじさん,おばさんに過ぎないのだ
から」と公言してはばかりません。
 鳴門教育大の村川雅弘氏は次のように述べています。
 ………………………………………………………………………………………
〉 学校訪問,共同研究,自主研究会,さまざまな関わりを通して多くの教
〉師と出会ってきた。腕のよい教師ほど学び続けている。現状に甘んじるこ
〉となく,新たなテーマ・方法にチャレンジする。教科学習でも一目置かれ
〉る教師は常にチャレンジャーだった。この姿勢は特に総合的な学習では重
〉要となる。                            
 ………………………………………………………………………………………
 私たちは専門職であり,研修が課せられているのです。
 では総合的な学習の時間をどうしたらいいのでしょうか。
 有田氏は次のように述べています。
 ………………………………………………………………………………………
〉 ひと言で言うと「教材を開発する力があるかどうか」である。社会科の
〉研究に取り組んできた学校は地域教材の開発を続けてきたため,総合的な
〉学習の時間がはじまってからかえって生き生きと指導をしている。   
〉 次にあげるとすれば,「地域社会に目を向けているか」である。地域は
〉教材の宝庫なのに,それが見えない。見えないから教材開発ができない。
〉だから指導ができない。                      
〉 さらに言うなら,「具体的な?を掘り起こしているか」である。腕のよ
〉い教師は?の掘り起こしに時間をかけ,おもしろい?を引き出している。
 ………………………………………………………………………………………
 また,立教大の奈須正裕氏は,学校独自の総合的な学習の指導要領をつくる
ことを提唱しています。
 ………………………………………………………………………………………
〉 総合的な学習の時間には,総則に「ねらい」が書かれてあるだけで,学
〉習活動として3つの例示があるにとどまっている。総合的な学習の時間も
〉「学習」である以上,目標と内容がきちんとしていなければ単元編成もで
〉きないし,ましてや年間学習計画もできるわけがない。        
〉 ではどうやってつくればよいのか?例えば社会科の指導要領解説編を読
〉めばよい。そこには目標と各学年ごとの内容が明示されている。それをま
〉ねてつくればよい。                 
 ………………………………………………………………………………………
 言われるとおりだと思います。全体計画さえ未完成の学校が多いのではない
でしょうか。
 最後に,以下はある雑誌の11月号に掲載される私の原稿です。参考にして
いてだれれば幸いです。
○ 目標と方法
  総合的な学習では「子ども自らが課題を設定しなければならないから教師
 が課題を与えてはいけない」とか「子ども中心だから教師が口出ししてはい
 けない」などと考えている教師がいる。
  指導要領総則に示されている「自ら課題を見つけ、自ら学び」そして「問
 題の解決や探究活動に主体的、創造的に取り組む」というおなじみの文言。
  これを方法としてとらえている教師が案外多い。このように学習を進めな
 ければならないと。これはあくまでもねらいであって、方法ではない。
  1) 自ら課題を見つけられる子を育てる。
  2) 自ら学び考える子を育てる。
  3) 個性を生かして主体的、創造的に学習に取り組む子を育てる。
  これがねらいなのであり、このような追究ができる子を育てるのである。
 そのための方法は各学校で議論されねばならない。未だに誤解が多い。
○ 内 容
  単元作りをする際、「学校の近くに川があるから環境」とか「近くに介護
 施設があるから福祉」といった具合に、安易に活動レベルから入ってしまう
 例が数多く見られる。そうではない。
  総合は知の総合化である。はじめに子どもたちにつけたい知的社会的認識
 力は何なのかを見極め、それをどうやって実現させていくのかを議論すべき
 である。教師自身が指導の見通しをきちんと持ち、目標が達成されるべくシ
 ナリオを書かねばならない。これをぬきにしては評価規準も作成できない。
 ゆえに学習の内容だけがはいまわってしまう。行き着く先が見えなくなって
 しまう。
 「川がおもしろそう!」という活動面だけにとらわれた安易な動機で入って
 いくことは慎むべきである。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[2]基礎・基本が身についていなけれ
     総合的な学習の時間は実践できないのか 茨城大:藤井千春教授
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[1]の続編です。藤井氏は家を建てることにたとえて,立派な家を建てるに
は材木や建材,金槌やかんな,くぎが必要であり,これが「基礎・基本」であ
る。そして,これらの道具や材料(基礎・基本)がすべてそろっていなくとも
家は建てられると言います。
 総合的な学習の時間では立派な家を建てることがねらいではなく,家を建て
るという「目標」を持ち,努力・工夫して建ててみるという体験をするところ
にねらいがある。建てながら必要な材料や道具をそのつど工面したり,できる
人に聞いたりしながら学習を進めていけばよいと述べています。
 自ら求めて知識や技能を学ぶという経験をさせることに総合的な学習の時間
のねらいがあり,また「生きる力」を育むことにつながると結んでいます。
 私はこの考えに賛成です。実際私の勤務校では総合105時間のうち,実際
の活動時間は70時間で計画し,残りの35時間は総合における基礎・基本の
習得に充てるということで進めています。
 つまり,取材に出かける前には「取材の仕方」を,発表会の前には「発表の
仕方,聞き方」を,報告文を書く前には「報告文の書き方」を一斉学習で指導
するというわけです。もちろんこれは原則であり,学級の実態によって異なっ
てきます。
 安彦氏が言う「基礎学力と思考力は同時進行で習得することはできない」と
は次元がやや違うかもしれませんが,以上のように考えています。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1]総合的な学習の時間の指導要領をつくる
                    立教大教授 奈須正裕氏の主張 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 このところ,いろんな書籍や雑誌で奈須氏の小論を読みました。その中で同
氏がもっとも強く主張されていること,それが「総合的な学習の時間の指導要
領をつくる」です。
 ご存じのように,教科では指導要領にきちんと「目標」と「内容」が明示さ
れています。そしてそれを元に教科書会社が単元編成をし,各学校が年間学習
計画を立案しています。
 しかし総合的な学習の時間には,総則に「ねらい」が書かれてあるだけで,
学習活動として3つの例示があるにとどまっていることはみなさんご存じの通
りです。総合的な学習の時間も「学習」である以上,目標と内容がきちんとし
ていなければ単元編成もできないし,ましてや年間学習計画もできるわけがな
い,というのが氏の主張です。
 ではどうやってつくればよいのか?それに対する氏の回答は「例えば社会科
の指導要領解説編を読んでください。そこには目標と各学年ごとの内容が明示
されています。それを真似てつくればよいでしょう」です。
 そしてその具体例としてある学校が作成した例をあげています。ここで紹介
するわけにはいきません。詳しく知りたい方は―[3]私が最近読んだ本―で
同氏の著書紹介しておりますのでご覧ください。その中に掲載されています。
 総合的な学習全体の目標,そしてそれを受けた学年別の目標と内容,そして
それらを受けて年間学習計画を立てる。口で言うと簡単ですが,なかなか難し
そうです。奈須氏は「これができていなければ指導案さえ書けない」と言われ
ています。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[2]総合的な学習の時間の行方は?
                   目に余るマスコミの無責任な報道
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 先日ある番組で「ゆとり教育」がとりあげられていました。参加していたの
は「ゆとり教育反対論者」ばかり。(だいたいこの「ゆとり教育」という言葉
自体が誤解されているような気がして仕方ありません)言いたい放題言ってく
れる,それが私の感想。どう見ても視聴率アップをねらい,センセーショナル
な内容にしていることが推測されました。 
 そんな折り,興味ある話を聞きました。某大学のM教授のお話です。
……………………………………………………………………………………………
 M教授は某新聞社から電話取材を受けた。総合的な学習の時間に関するイン
タビューである。「インタビューだけで記事を書かないでほしい。実際に学校
へ取材に出かけ,子どもの姿をしっかり自分の目で見て書いてほしい」と要求
した。M教授曰く「ジャーナリズムは死んだと言いたい。アエラも同様であ
る」と。
 さらにM教授は「日本中にうまくいっている学校がいくらでもある。私はあ
る学校でできることはすべての学校でできると考えている。学校教育研究者と
して,それを一般化していく仕事をしていきたい」と話した。
……………………………………………………………………………………………
 ということです。何とも頼もしいお話です。何度かM教授の話を聞いたこと
があるので,よけい説得力がありました。
 総合的な学習を成功させるか否かは私たちの実践にかかっているのです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[1]総合的な学習の時間の落とし
    「目標」と「方法」の区別を明確に    〜私の実践経験から〜 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 以下は立教大学の奈須氏のお話です。
≪「総合的な学習は子ども中心でやるんですよね,と言う人がいる。まったく
その通りだと思う。ところが,その後に驚くような言葉を吐く人がいる。
 「子ども中心だから,教師は何もしなくていいんですよね」これは大間違い
だ。どこが間違いかというと,「子ども中心」と「教師は何もしなくていい」
を「だから」で結ぶ点である。≫
……………………………………………………………………………………………
 これは多くの学校で見られる現象ではないでしょうか。総合的な学習では,
「子ども自らが課題を設定しなければならないから,教師が課題を与えてはい
けない」とか「子どもの主体性を尊重しなければならないから,教師が口出し
してはいけない」などと本気で考えている教師がいます。
 「自ら課題を見つけ,自ら学び,自ら考え,・・・・」そして「問題の解決
や探究活動に主体的,創造的に取り組む・・・・」という指導要領総則に書か
れているおなじみの文言。これをどう解釈するかですが,方法論レベルでとら
えている教師が思いの外多いのです。だから前述のような誤った認識が生まれ
るのです。
 この文言はあくまでも「目標論レベル」でとらえなければならないと思うの
です。具体的に言うと,
  1 自ら課題を見つけられる子どもを育てる。
  2 自ら学べる子どもを育てる。
  3 個性を生かして主体的,創造的に学習に取り組める子を育てる。
 と解釈されるべきなのです。
 このことは総則にもきちんと「次のようなねらいをもって指導を行うものと
する」と書かれています。(余談ですがここには「指導」という言葉が用いら
れています。「支援」ではありません。)
 1〜3の子どもを育てるためにどういう総合を展開するのか,からスタート
しなければならないのです。1〜3を到達目標と考えて実践に取り組めば,そ
んなにむずかしくないと思うのですが。
 もう1つ,我々現場の教師はついつい目が「内容」にばかり向いてしまいま
す。総合でどういう学習に取り組むかを考えるとき,目がいくのは「学校の近
くに川があるから環境でいこうか」とか「近くに介護施設があるから福祉でい
こうか」といった具合に,ついつい内容論レベルの話になってしまいます。
 これではいけないと思うのです。1〜3の子どもを育てるために,どういう
方法で学習を進めるのかをはじめに考えるのです。ああして,こうして,こう
いう手順で学習を進め,こういう手だてをとりながら,到達点はここ,という
ふうにシナリオを書くのです。それから,ぴったりくる学習の対象を考えるの
です。それをしないから,学習の内容だけがはいまわってしまうのです。行き
着く先が見えなくなってしまうのです。川がおもしろそう!という安易な動機
で学習に取り組むことは慎むべきでしょう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[1]子ども大すき人間 大集合! 語り合おう子ども学びのかがやきを
           日本生活科・総合的学習教育学会茨城大会参加報告
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 去る6月22日(土)23日(日)の両日見出しの大会に参加しました。そ
の様子をお知らせします。お役に立てば幸いです。
……………………………………………………………………………………………
1 授業研究会
 ■助言者の加藤明氏(京都ノートルダム女子大教授)
 ・「何をやったらいいか分からない」「どうしたらいいか分からない」とい
  う子どもの声にどう応えるか。
 ・自発的なこだわりが学習の始まり。価値あるテーマを教師が提示するのが
  妥当であろう。
 ・学習テーマには現代社会が抱える問題で学校教育で考えさせたい内容を。
 ・子どもたちの心が動くことが学習の原動力,心が動く事実を見せつける。
 ・1年間に2〜3テーマは学習させたい。年間1テーマで通すのはもったい
  ない。
 ・支援とは少し背伸びしてがんばることの大切さを教えること。
 ・教師の思いと違う方向に授業が進んでいるときには,修正するのが教師の
  指導。
 ・学習技能習得だけでなく,設定したテーマ(環境なら「環境」)にどこま
  で迫れるか,も大事な学習。
2 課題別分科会
  テーマは「生活科・総合的な学習で育つ学力」 
 ■奈良女子大付属小の小幡肇氏
 ・調べて,まとめて,発表する,これを毎日輪番で実践している。
   人の前で活躍→そのための準備(これが力をつける)
   ある子が調べたことの結果→同じ視点で子どもたちが考えることができ
   る→学級に根付いた→個の考えを根付かせることの大切さ
 ・友だちが調べてきた事実の討論方法
   「・・・・・・だった。」→「だけど?」「なぜかな?」
   まず第1段階としての思考「多分・・・・・・だろう」
   次に第2段階として「でも・・・・・・」,
      最後に「きっと・・・・・・だろう」
   それから「聞いてこよう」「見に行こう」「調べに行こう」という行動
   に入る。
3 シンポジウム
  テーマは「語り合おう 子どもの学びのかがやきを」
 ■布谷光俊氏(愛知教育大教授)のお話
 ・ご自身がかかわっている多くの学校での実践を元にした説得力ある話であ
  った。
 ・成否は学級経営がキーポイント。子ども一人ひとりを大切にする教師,そ
  して子どもたち同士のふれあい,子どもと教師のふれあいのある学級。
 ・学びの共有…発信せずにいられない。
 ・学びの輝き…子どもたちの心を揺り動かす学習を。
 ・心を揺さぶる学習の在り方…教師の創意・工夫(腕の見せ所)
 ・授業は生きている…柔軟な対応を。評価規準を途中変更することも。
 ・子どもの学びの輝きを見ることのできる教師…よき先輩を持つ,学び合う
  仲間を持つ。
 ・授業を見てもらう…意識的に学びの共有を。
 ・研究協議…授業テクニックでなく,子ども一人ひとりの学びを話題に。
 ・子どもが帰った後の教室…子どもの魂が残っている。(学び)
 ・教師は子どもが思っていないこと,求めていないこと,考えてもいないこ
  とを押しつけたり,求めたりしていないか。子どもの立場になって,伸び
  る芽を見つけ,それを子どもに自覚させることが大切。 
4 講演会  
  講師:中野重人氏 谷川彰英氏
  中野重人会長は今期限りで退任される。後を受け継ぐのは筑波大教授谷川
  彰英氏。今回は短い時間なが らこのお二人のダブル講演。お一人25分
  という短い時間だったのが残念だった。
 ■中野重人前会長 〈演題:生きて働く学力を育てる〉
  私の思いは「初等教育資料5月号」に書いたので読んでいただきたい。
  学力問題に正解はない。実践者自身が答を出すことが必要。学力問題と言
 えばすぐにドリル学習とか補習学習という話になるが,果たしてそれでよい
 のか。自分の実践を元に「学力とは何か」の責任ある解答を示さねばならな
 い。他人任せは禁物。ただし,保護者や地域などへの説明責任が伴うことを
 忘れずに。私は「学力」とは「学校で育てたい力」すべてだと思う。通知表
 は育った学力を伝えるもの。
  学力をつけることに関して,算数が弱いという実態があるなら算数の「時
 間数」を増やせばよい。なぜかこういう手法は取られていない。子どもたち
 が学校にいる限られた時間で勝負。何にどれくらい時間をかけるか(教育課
 程編成)に工夫を。学習指導要領をベースに,学校の願いを込めた特色ある
 教育課程の編成を。
  教科の時間を削減して創設した総合的な学習の時間。そこには教科だけで
 は育たない「学力」をつけたいという願いが込められている。総合的な学習
 の時間でつける「学力」とは何かを吟味したい。
 ■谷川彰英新会長 〈演題:学力は低下しない〉
  低学力論への反論として,その根拠3点
   1 測定できる学力(測定学力)に限定している点…後述
   2 現場を知らないところから発言している点
    …大半の論者が教育関係以外の学者
   3 50年前の低学力論と何ら論拠が変わっていない点
    …経験主義ではだめだという論。
  学力には3つの側面がある。「測定学力」「目標学力」「潜在学力」
  「目標学力」は子どもたちにつけたい学力であり,「潜在学力」は子ども
 たちの意欲,やる気。潜在学力を培うのは授業。「目標学力」は「潜在学
 力」を引き出す学習という視点で実践を。これには4つの「気」がある。す
 なわち「本気」「やる気」「勇気」「元気」 
  これらをドリル学習や補習学習で引き出すことができるか。「潜在学力」
 こそが生きる力を育てる。「やる気にさせる」「やる気があればなんでもで
 きる」こういう気持ちにさせるのがプロ教師。
  今の総合的な学習の時間で学力は大丈夫か。教科と学力の違いは?方法論
 ではちがわない。カリキュラム編成の仕方が異なる。学校が独自に編成でき
 る。自由さが与えられているが説明責任が伴う。責任を持った総合的な学習
 の時間の実践をしなければ批判の対象に。 
……………………………………………………………………………………………
 詳しくは http://www5a.biglobe.ne.jp/~shimacha/MyHomePage/ をご覧く
ださい。昨年度の神奈川大会の記録もあります。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[1]総合的な学習の時間への私の思い
    第11回日本生活
科・総合的学習教育学会茨城大会での提案から 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 あちこちでいろいろな授業を見ました。またいろんな雑誌や書籍でさまざま
な実践を読みました。私が今思うこと,それは「自分の学校でできることをや
ろう」です。評判の学校と自分の学校を同じレベルで見てはならないのです。
自分の足下をよく確かめて,地道に,そして確実に歩を進めることが大事なの
です。以下に私の思いを述べます。これは見出しの大会で提案した内容でもあ
ります。
……………………………………………………………………………………………
 今,私が考えていることは,総合的な学習では「できないことは指導する」
「教師はシナリオライターであり,演出家であるべき」ということです。
 研究先進校や書籍で紹介されている実践では「子ども自らが課題を設定し,
個性を生かした追究をしていく」と歌われていることが多々あります。しか
し,これは極めてむずかしいことです。そして,これは小3から高3までの9
年間共通のねらいです。これを小学校だけで完結させようとする必要ないので
す。小学校では小学校でできることをやればいいと思うのです。
 小学校レベルで大人がイメージする「自ら課題を設定し,個性を生かした追
究」などできるわけがありません。ですからこれをどうとらえるかが問題とな
ってくるのです。子どもレベルで捉えなおすべきなのです。
 また,これを「方法」と誤解している人が多いと思うのです。自ら課題を設
定して,各自が個性を生かした追究をしなきゃいけないと思っている方が多い
と思います。私はこれを目標ととらえています。「自ら課題を設定することが
できる子」「個性を生かした追究ができる子」を育てる,ととらえています。
 話を「できないことは指導する」「教師はシナリオライターであり,演出家
であるべき」にもどします。
 私は現在までに7つの総合的な学習を実践してきました。そして思うことは
「1年間やったのに,この子たちにどんな力がついたのだろう?」ということ
です。自分の思うように学習が進められない子,例えば取材などを通して得た
情報を自分のものにできない子,自分の感動や発見をうまく文にまとめられな
い子,自分の思いを発表できない子,まとめの表現物作りができない子など,
数多く見てきました。そこから分かってことは,教師が「こうしてみたら」
「こういう方法もあるよ」などと声をかけ,ともに追究していくという姿勢が
欠かせないということです。追究の基礎・基本が身についていない子にとって
は「体験あって中身なし」なのです。
 そこで問題となるのが総合の「基礎・基本」とは何か?です。私は,
?追究する力〈問題を発見する力/計画を立てる力資料を集める力/資料を活
       用する力/事物を観察する力/集めた事実を分析する力/自分
       なりに判断する力〉
?自分の思いを表現する力〈作品(レポート,新聞,パンフレットなど)にま
             とめる力/発表する力,その他の表現する力〉
?学習をふり返り,高めていく力〈自分の学習を評価する力/お互いの学習を
                評価し合う力/自分の生活を見直す力〉
 とおさえています。
 確かに,事後のアンケートでは「楽しかった,おもしろかった」という回答
がが圧倒的です。しかし力がついていないのです。ですから次学年になっても
また振りだしから,ということになるのです。
 私は総合的な学習の時間は,教師が子どもに「知的創造力を習得」させる,
そして子どもが自分の意志で「活用」していく,と考えています。
 こう考えてみると,単元構想をどうするか,評価をどうするか,といった問
題も少しは見えてくると思いますが,いかがでしょうか。
 最後にひと言,学習スキルを身につけるだけが総合的な学習ではないとも思
っています。設定したテーマに迫ることは言うまでもありません。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[2]総合的な学習の時間でつけたい力
              「子どもたちのねらい」と「教師のねらい」 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 総合的な学習の時間の実践をめぐって,いろいろ問題点が明らかになってき
ました。一つは「子ども中心」をどうとらえるか,そして「体験あって中身な
し」という実践です。このことについて具体例をあげて考えてみましょう。
……………………………………………………………………………………………
 例:4年生での実践:単元名「学区のおもしろガイドをつくろう」
 この単元での子どもの目標は
・  学区のよさや問題点を個性を生かして調べることができる。
・  絵地図や1枚新聞,パンフレットなどにまとめ,家庭や地域の方に紹介す
 ることができる。
 とします。
 つまり,子どもたちは「調べて,まとめて,紹介しよう」という目標のもと
に学習を進めていくわけです。しかし,教師は子どもと同じ同じではいけない
と思うのです。一緒になってガイドをつくることに夢中になっていてはならな
いと思うのです。
 教師には教師の指導すべき目標がなくてはなりません。例えば,
「地域に根ざした問題解決学習を設定し,それを解決していく過程においてさ
まざまな学習スキル(学習技能)を身につけさせる」というような単元目標が
必要です。さらにこれを具体化させると,
 1 課題解決に必要な学習スキルを身につけ,知ることの喜びを味わい,自
  ら学ぼうとする意欲をもつことができる。
 2  ものごとを見つめる新たな目や考え方を伸ばすことができる。
 3 自分の生活と結びつけて考え,これからの生き方を考えることができ 
  る。
 さらにミクロに見ると,問題を発見する力,情報を集める力,それを処理す
る力,まとめる力,発表する力,などです。
 つまり,子どもたちは学区のよさや問題点を多くの人に知らせるために追究
活動を重ねます。指導者はその過程において,学ぶ楽しさを味わわせると同時
に確かな力をつけさせるのです。
 これらは教師が子どもたちに身につけてほしいと願っている力であって,子
ども自身が1〜3のことがらを目標としているわけではありません。子どもた
ちはあくまでもおもしろガイドを一生懸命作成すればよいのです。
 このあたりが教科の学習と異なる点だと思うのです。総合的な学習の時間は
ご承知のように教科ではありません。時間です。私たちはともすれば,総合的
な学習の時間を教科と同じレベルで考えていやしないでしょうか。確かに「学
習」には違いありません。しかし,つけたい力をダイレクトに子どもに要求す
ることはできないと思うのです。子どもは子どもで自分の目標に向かって学習
をする。その過程で教師は自分の目標を達成させるのです。
 目標だけにとどまらず,単元構想にしろ,評価にしろ,さまざまな面で,今
までの教科学習と見方,考え方を変える必要がありそうです。これは大きな落
とし穴だと思うのです。
 このことを鳴門教育大付属小では「目標の二重化構造」を呼んでいました。
これをきちんと考えていけば総合的な学習の時間の実践も少し変わってくるの
ではないかということです。
 以下に引用したのは立教大学の奈須氏の著書からです。参考になると思いま
す。
  ★★★★子どもは活動を目指し,教師は内容を目指す★★★★★★
   活動と内容の区別は重要である。しかも,子どもたちが目指すの
  は活動であって内容ではない。子どもからすれば,活動こそが目的
  であり,内容は活動展開の手段として,あるいは活動に伴って,結
  果的に学ばれてしまったものなのである。
   子どもたちはおいしいジャムをつくりたい,山羊を飼いたい,筏
  で川下りをしたいのである。彼らは何も,現代の食をめぐる切迫し
  た状況や命の大切さ,学級みんなで団結して何かをなし遂げること
  の素晴らしさを学ぼうとしたのではない。それらは活動の展開の中
  で,結果的に学ばれてしまったのである。しかも,大事なことは,
  子どもたちもそれによって,より深く納得し,活動に取り組んでよ
  かったという気持ちが強くなることであろう。
   〜中略〜 活動の自然な展開の中で,教育的に価値のある内容の
  学習を実現することこそが教師の目的であろう。 
    奈須正裕著「総合学習を指導できる教師の力量」明治図書刊
  ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[1]総合的な学習で培う「確かな学力」とは
    「何か」「どう培っていくか」       玉川大 山極 隆氏
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 総合的な学習の時間と言えば「自ら課題を設定し,個性を生かして追究」と
いうおなじみの文言が浮かんできますが,中学校,高等学校の指導要領を見た
ことがありますか?小・中・高すべて同じ文言が並んでいます。
 だったら小学校では何をすればいいのか,中学校では何を,高校では何を,
ということになります。山極氏がこの疑問に一つの回答を出しておられます。
……………………………………………………………………………………………
 山極氏は新指導要領に対して次のように言っておられます。
》 世間では授業時間数が減り,それに伴って教える内容が減ったことを学力
》低下と結びつけて考えようとするが,問題なのは子どもの興味・関心に応じ
》た楽しい学習などと耳あたりのよい美辞麗句に彩られた教育論が学校現場を
》覆い,教師主導の教える・鍛える・訓練するなどの学習を軽視してきたこと
》にある。
 なかなか断定的なものの言い方で,反発を覚える方もおられるかもしれませ
ん。氏はさらに次のように言っておられます。
》 教育内容は基礎的・基本的な内容に厳選するが,厳選された学習内容は従
》前以上に質の高い学習を目指している。このような学習への体質改善には教
》師のたいへんな努力と力量形成が問われる。
 確かにそう思います。教師のやるべきことはいくらでもあります。やるべき
ことを洗い出し,やれることから順々にやっていくべきです。
 以上のことを前提として,総合的な学習の時間に関しては,
》 質の高い学習を行ってもその成果が互いにばらばらだと確かな力にはなり
》得ない。この学習の成果を互いに結びつける学習,それが総合的な学習の時
》間の学習なのである。であるから,総合的な学習の時間は,教科の学習と深
》く関わる学習活動が期待されるのである。
 と述べ,小学校での総合的な学習の時間のねらいは
》 教科を基盤とした教科内容の発展や関連づけた学習を行う時間ととらえ,
》“教科自体の発展的な知の形成”
 と位置づけておられます。参考までに中学校レベルでは「教科間で関連づけ
られた知の形成」,高校では「総合的な知の形成」としています。さらに,
》 教科での学習が知の習得に重きが置かれているのに対し,総合的な学習の
》時間の学習活動は主として知の創造に重きが置かれそれらがあいまって,よ
》り確かな学力へと向かっていくのである。言い換えれば基礎・基本を通して
》生きる力を培うこことと言える。
 と結論付けておられます。総合的な学習の時間に関する部分については,私
も同じ考えです。小学校で実施する総合的な学習,中学校でのそれ,高校での
それ,それぞれの発達段階でできることを考えるべきです。
 小学校の段階で「総合的な知の形成」を目指している指導案,結構あるよう
な気がしています。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[2]総合的な学習の成果は「測定」できる!!
    心理学的な立場からその測定は可能     静岡大 弓野憲一教授
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 弓野教授は現在評価について,次のような問題点をあげている。
「日本の学校教育では,知識や知能につながる学力が評価対象となっていた。
知能や学力は伸びるが生きる力(意欲や創造性)を育てていない。すなわち,
子どもの質問や思考を評価せず答えのみを評価することによって,創造性を十
分に開花させていない」と指摘している。 
 教授は静岡県内の小学校5年生81名を対象に「小学生の体験活動と創造性が
どのような関係にあるか」の調査を行なった。
 創造性の測定法として「空き缶の利用法」が用いられた。子どもの出したア
イディアは
「流量性」:アイディアの総数
「柔軟性」:アイディアをカテゴリーに整理し,そのカテゴリーの総数
「独創性」:他には出ないアイディア
 その結果,独創性がとくに高かったのは
・知らない街を探検したことがある
・秘密基地を作ったことがある
・新しいゲームを考えたり,ゲームのルールを変えたことがある
■ 創造性の測定は心理学的立場から可能
 日本とカナダの子どもの創造性を比較した教授の調査結果によると「小学校
3年生までは,日本の子どものほうが創造性テストに若干高い点数をとる。し
かし,小学校 4年から6年にかけ、日本の場合はぐっと点数が下がり,カナ
ダの子どもは高くなる」傾向があるという。
 これについて弓野教授は「常識はずれのアイディアやとっぴょうしもない質
問は、実は高い創造性の可能性を秘めているものだ。しかし日本においては,
他人 から見た自分を意識するようになる小学校4年より常識はずれのアイ
ディアやとっぴょうしもない質問を人前にさらすことに勇気がいるためでない
か」と考える。
 また,創造性を伸ばすことを視野に入れると,誉め方も変わってくると述べ
ている。「よくできた」「がんばろう」というコメントは,創造性とは無関係
な誉め方である。「この絵のこの部分があなたらしい」「その質問はユニーク
だ」など,その人らしさが現 われている部分に特に評価を与えなければなら
ないと言及している。
 しかし「総合的な学習で,ただ自由に体験させれば創造性が育まれる,とい
うわけではない」と釘もさす。他の実証実験では「厳しい条件を示すほど創造
性が出てくる」という結果も出ている。
「総合的な学習を通して子どもの「生きる力」が育ったかどうか,ある程度測
定する目安がなければ,先生たちは自分の実践に自信がもてない。そこで,創
造性が育まれているかどうかを測定のするために,今後研究を進めていく必要
がある。心理学的な立場からその測定は可能」と弓野教授は述べている。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[2]「総合的な学習の時間で育つ子の具体的な姿」
          初等中等教育局視学官 嶋野道弘氏の論説より
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 初等教育資料に掲載されています。読んでいて2月に聞いた講演と
同じ内容であることに気づきました。講演内容は
 http://www5a.biglobe.ne.jp/~shimacha/MyHomePage/
 の「私の学習ファイル」の中の「わたしのノートから」に記載して
あります。よろしければご覧ください。
…………………………………………………………………………………
 優れた実践では思慮深い子どもが育っている。すなわち,
1 思慮深い子
  問題意識が高まり,断片的な「知」がネットワーク化する。さま
 ざまな角度からものごとをとらえるようになる。自分は世の中のシ
 ステムの中で生きているという認識が深まる。
  このような子は,独善や偏見,スローガンやキャッチフレーズに
 惑わされなくなる。
2 現場を科学する子
  漠然としか見えていなかった現実を実証的,分析的,具体的に見
 ることができるようになる。
3 生活の中に埋め込まれている知を見つけることができる子
  人工物にも自然物にも,生活用具や生活の営みの中にもさまざま
 な知が埋め込まれている。それらは学ぶ者に対して応分の姿しか見
 せてくれない。しかし,知的好奇心・探求心を持つ子どもにはそう
 した顔が次々と見えてきて,数多くの発見や感動を味わうようにな
 る。知を見つけ,先人の知恵を知り,未来を拓くことができるよう
 になる。
4 責任感や判断力のある子
  子どもたちは調べたり考えたりして,最も望ましいと思うことを
 提案したり自ら実践したりする。そこには責任や判断が伴うもので
 あり,子どもながらにも自身が地域社会を構成する1人であること
 を感じるようになる。
 これら4つは総合的な学習の時間でめざす具体的な子どもの姿であ
り,やればできる,という可能性である。 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[1]「総合的な学習の時間の問題点」はどういう意味か?
                 立教大学教授 奈須正裕氏
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 今年2月に奈須氏の講演を聞きました。その時も歯に衣を着せない
論に納得してしまいました。そして今回も私が常々思っていたことを
斬って捨ててくれました。それは総合的な学習の時間への取り組みを
めぐる問題点についてです。以下,その概略を紹介します。 
…………………………………………………………………………………
 ここ数ヶ月「総合の問題点」という言葉を聞くようになった。そこ
で確認だが,「総合の問題点」とは,勉強不足ゆえの誤解その他に基
づく実践展開上の混乱や困難と解されるべきで,仮に残念ながらそれ
が多数を占めたとしても,総合的な学習の時間の原理そのものの問題
と考えるべきではない。
 なぜ,あえて確認したかというと,最近,現場の混乱に乗じて「一
部の熱心で優秀な教師や学校ではうまく行くが,そうでない教師や学
校ではなかなかうまくいっていない。だから総合はだめなんだ」とい
った暴言を吐く人があるからである。しかし,それはまさに「悪貨が
良貨を駆逐する」であって,この国の教育はよくはならない。
 それどころか,「総合の問題点」の多くは,総合に固有な問題点で
はない。できているはずの教科が,実はできていなかったからこそ,
総合もまたうまくやれないのである。正確に言えば総合か,教科か,
といったことを超えて,カリキュラムと言うことが構造的に分かって
いないのである。
 ただ,教科の場合には学習指導要領と教科書があったから,何とか
繕えてきた。問題が露呈しなかっただけのことである。したがって,
ここで現在の混迷の原因を総合的な学習の時間の原理の問題にすり替
え,目を背けてしまったなら,根本的な問題は残存してしまう。
…………………………………………………………………………………
 「熱心で優秀な教師や学校ではうまく行くが,そうでない教師や学
校ではなかなかうまくいっていない。だから総合はだめなんだ」私も
この言葉を聞くたびに残念に思ってきました。
 浅学非才の私は単に「やる気」の問題として考えていましたが,奈
須氏はこの問題に明快な回答をくれました。簡単に紹介します。
…………………………………………………………………………………
 多くの学校における最大の問題点は,内容編成をしていないことで
ある。総合的な学習の時間ではカリキュラム編成が全面的に各学校に
任されたが,つくるべき2つのカリキュラムの一方しかつくらず,も
う一つがない学校が多い。総合的な学習の時間に限らず,カリキュラ
ムには2つの水準がある。内容水準と単元水準である。教科で言うな
らば,前者は学習指導要領であり,校舎は教科書等を参考に各学校で
編成する年間計画である。まず学習指導要領があり,そこに記された
内容を実現するために,単元や活動を構想する。それを集約したもの
が年間計画という関係だ。
 ところが総合的な学習の時間のカリキュラム編成に際して,多くの
学校は年間計画はつくっているが,学習指導要領に相当するものをつ
くっていない。しかし,教科で考えればすぐに分かるように,学習指
導要領がないのに,年間計画があるというのは異常である。なぜなら
ば指導すべき内容がはっきりしていないのに,単元・活動だけはある
というのだから。
 そういう学校では早晩「カリキュラムをつくったはいいが,評価を
どうしたらいいのか分からない」という問題が持ち上がる。当然の帰
結である。その単元を通して何を指導するのかをしっかり考えていな
いのだから,評価などできるわけがない。   〜中略〜
 なぜそんな愚かな過ちに陥るのか。あるいはそれ以前に,学習指導
要領に相当するものをつくろうと,なぜ考えつきもしないのか。どう
も,従来,教科の指導をするにあたり,学習指導要領を見ていなかっ
た,あるいは意識していなかったのではないか。そう考えればつじつ
まが合う。
 残念ながら,学習指導要領なんか読んでいなかった教師が大多数な
のだ。そんなことだから,それ自体はたいしてむずかしくもない総合
的な学習の時間をむずかしく感じるのである。これを直視し,その奥
底にある真の問題をこそ解明,解決したいものである。そうすること
で総合的な学習の時間はもちろん,教科も断然よくなるはずだからで
ある。 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[1]「手応えのある学びの成立に向けて」
       総合的な学習の時間の創始       嶋野道弘氏
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 総合的な学習の時間の開始にあたって,順調な滑り出しを見せた学
校もあれば,まだまだ手のつかない学校もあるのではないかと思いま
す。しかし,どちらかと言えば順調にスタートした学校は数少ないの
ではないでしょうか。私の勤務校もしかりです。まだ手のついていな
い学校は一度基本に戻って,一から考えてみるのが得策かもしれませ
ん。
 そんなことを考えているところに日本生活科総合的学習教育学会の
学会誌第9号が届きました。その中から,文部科学省の嶋野氏の論文
(概略)を紹介します。
 総合的な学習の時間を開始するにあたって,何が大切か,どんな手
順で構想すればよいかなど,基本的なことをもう一度振りだしに戻っ
て考えてみませんか。
…………………………………………………………………………………
1 総合的な学習の時間創設の背景
 ○ 社会の変化への対応
 ○ これからの教育の基本的な方向への対応
   生きる力が全人的な力であるということをふまえると,横断的
  総合的な指導をいっそう推進できるような新しい手だてを講じて
  豊かに学習活動を展開していくことがきわめて有効。
 ○ 求められる学力の向上への対応
   知識や技能だけでなく,自ら学ぶ意欲や思考力,判断力,表現
  力などまでも含めて学力としてとらえ,こうした学力をしっかり
  と身につけさせ,その向上を図るものとして構成。
 ○ 知識と生活の結びつき,知の総合化への対応
  各教科の学習で身につけられた知識や技能,資質は能力は,本来
  子どもの中で一体となって働くもの。意図的・計画的に知識と生
  活を結びつけ,知の総合化を図る機会。
2 各学校が作る総合的な学習の時間の基準
  総合的な学習の時間は自由である。各学校はこの自由を積極的に
 生かして,主体的に自校のこの時間の基準を作ろうとするのか,そ
 れとも場当たり的な活動や先進校の追試で終始するのか。
 ― 自校の総合的な学習の時間の基準を作成する視点と手順―
(1)指導要領総則第3の「総合的な学習の時間の取り扱い」に基づ
  いて,この時間の取り扱いについて共通理解する。その際,次の
  点に留意する。
 ・ 創設の趣旨を理解する。
 ・ 示されたねらいを踏まえて,この時間の目標を定める。
(2)児童や学区の実態などを考慮し,自校では何をしたいか,何を
  しなければならないかという自校の課題を明らかにする。
(3)自校でできる可能性を明らかにする。
(4)この時間の目標,取りあげる課題,名称,実施上の配慮事項な
  どを決め,構造化する。
(5)こうして構想したものを外部に公表し,その反応をとらえる。
(6)取りあげる課題についてはその内容と段階を明らかにする。ま
  た,育てたい資質・能力,経験させたい学習方法などを学年別に
  段階的に整理しておく。   
3 学習の成立要件
  総合的な学習の時間は,端的に言って,子ども主体,課題中心,
 体験重視の教育原理を持つ。それが子どもにとって心地よい手ごた
 えのある学習として成立するには,次のような要件と学習過程が考
 えられる。
(1)活動の方向をつくる。
   子ども主体であっても学習の方向性については教師の思いがあ
  る。めあてというほど具体的ではないが「このような方向に向か
  ってくれればいいな」という思いを子どもに伝える。また「こん
  な方向に向かってみたいな」という子どもの思いを育むようにす
  る。
(2)子どもの中に生成する方向をとらえる。
   子どもの驚き,疑問,発見など,教師はそこから課題となりそ
  うなものを紡ぎ出し,課題と言えそうなものに仕立てていく。子
  どもの中に生成した疑問,驚き,発見,してみたい活動などを取
  りあげ,子どもと共に話し合いながら今後の学習活動の方向を具
  体化していく。その場合,教師の思いを修正したり,広げたりす
  ることも余儀なくされる。
(3)創り出した方向を発展させる。
   教師は出場とあんばいに配慮しながら,創り出した方向を発展
  させる。
(4)新たな世界へ方向を転換する。
   知の世界は広く深い。これまで進めてきた方向は,より広くよ
  り深い世界へ転換してやる必要がある。また学びは多様である。
  もっといろいろな方法で学べるようにする必要がある。それは発
  展という意味における方向転換である。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[1]「知の総合化」を進める学校の教育計画
        文部科学省教科調査官 板良敷 敏氏の論文から
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 言うまでもなく総合的な学習の時間について,詳しい学習内容につ
いて,指導要領には何も書かれていません。それどころか,ねらいに
ついても具体的なことは何も書いてありません。そこが混乱の原因の
ように言われています。しかし,それを言う前に,それぞれの学校が
「総則」に書かれている「目標」解釈する努力が必要だと思います。
そこから総合的な学習の時間をどうするか,という話が始まるのでは
ないでしょうか。
 私は総合的な学習の時間のねらいは「思考力・判断力・創造力・企
画力」などを育てることではないかと思っています。教科の学習で育
てた力をフルに発揮して,自分のまわりで起こるさまざまなできごと
に対処していく力を身につけるのです。
 最近,「これだ」という論文を見つけました。板良敷敏氏の論文で
す。以下にその一部を紹介します。
…………………………………………………………………………………
  知の総合化を進める学校の教育計画
               文部科学省教科調査官 板良敷 敏
…………………………………………………………………………………
 子どもたちの知が総合的,関連的に働くようにするということは,
子どもたちが学校や生活で身につけた知識や技能を,その時,その場
の状況に応じ,活用し,働くようにすることである。ここには当然の
ことながら,教育計画や学習指導を工夫することの意味が含まれてい
る。
 子どもたちにとって,概念化した知識や技能が必要となることもあ
るが,日常の生活はいつも同じ状況が生起しているわけではない。そ
の時,その場の状況が知識や技能を柔軟に組み替え,新たな形で働く
ようにすることである。学びはそのような対象との関わりの過程に埋
め込まれていると言えよう。
 人が直面する様々な問題をよりよく解決する際に,足りないものを
探し出し,他のもので代用し,それでも見つからないときは,自ら創
り出す資質や能力が必要となる。そこでは知識や技能などを総動員し
て,再構成などしながら問題の解決や願いの実現に向けて働かせるこ
とになる。
 このように知が総合的・関連的に働き「生きる力」を育む指導を
いっそう推進しうるような新たな手だてとして「総合的な学習の時
間」が設けられたのである。
 子どもたちが獲得した「何々はこれこれである」といった宣言的な
知識や理解,「何々の時はこれこれする」といった手続き的な知識や
理解を,主体的,創造的に関連づける学習指導においては,子どもた
ちが自ら学び,自ら考え,判断し,満足や納得のいく学習活動が展開
できる環境を工夫することが大切になる。そこでは子どもたちの実態
に配慮し,指導の効果を高めるために,合科的・関連的な指導を進め
ることである。
 学校全体の教育計画においては,子どもたちが学習や生活で獲得し
た知識や技能を関連的に働くようにすることが課題であり,各学校に
おいては,子どもたちのよさや可能性,成長・発達の状況,学習体
験,関心や意欲などの実態をもとにし,知識や技能が関連的に,主体
的に働く学習内容を新たにつくることや選ぶことなどが,学校全体の
教育計画の工夫である。 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[2]再考「生きる力」とは
     来年度に向けてしっかりおさえておきたい
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇ 総合的な学習の時間の最も重要なねらいは「自己の生き方を考え
 ることができるようにすること」でしょう。いわゆる「生きる力」
 を育てることです。では「生きる力」とはいったいどんな力なので
 しょうか。来年度の方向性を固める上でも,もう一度原点に戻って
 考えてみたいと思います。
◇ 総合的な学習の時間では,子どもたちは自分たちの身の回りの世
 界に飛び出していきます。それは現実の社会や自然です。学校内と
 は異なり,たいへんシビアな世界です。そこから自ら問題を見つけ
 出し,解決を目指す学習をしていきます。その複雑怪奇で多岐にわ
 たる問題との格闘を通して,自分の生活や生き方について考え,自
 ら実践する資質や能力,態度を育てることを目指すのです。このよ
 うに実践的,実際的な学習を通して,最終的に,自己の生き方を考
 えることができる自立的な生き方や主体的に生きる力を身につけて
 いくのだと考えます。
◇ 目の前の社会や自然といった身近なところから自ら解決課題を発
 見し,それをさまざまな体験を通して解していきます。この過程で
 子どもたちはうれしい体験や苦しい体験など,さまざまな体験をす
 るはずです。この体験こそが大切であり,これを通して自己の生き
 方をふりかえり,今後の生き方を考えることができるのです。そし
 て,獲得した知識や技能などを,自分の生活上にすぐさま反映させ
 ることでしょう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[1]総合学習は死んだか?
       「週刊アエラ」の衝撃的な記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■トップ記事として
「総合学習は死んだか」―実践は無理,教師・親から総スカン―
 という記事がありました。
「はじめる前からすでに失敗が半ば見えている。これほどむなしい改
革はないだろう。4月から始まる総合的な学習の時間が教育現場を大
きな混乱に陥れている。生きる力を育てるという大目標と裏腹に,子
どもの学力をいっそう低下させかねない」と,きびしい論調です。
 そして「総合学習なんてどうせすぐに終わっていまいます。かわい
そうなのは子どもたち。もっと勉強したい子もいるだろうに。職場で
は『こんど入って来る1年生が一番あほになるね』と話し合っていま
す」という現場の教師の声を紹介して終わっています。
 皆さん,どうお考えですか。総合的な学習の時間の設置された背景
がまったく理解されていないですね。なぜ,総合的な学習の時間が誕
生したのか。そこではどういう学習を展開するのか。教科学習でつく
力は何なのか,総合的な学習の時間でつけるべき力は何なのか。そう
いったことを職場でもっともっと議論すべきです。
 記事中に「外国人を呼んで少し話を聞いて,仲良くなって……,そ
れが本当の国際理解になるのか」「まつりをやっても,その時は楽し
いけど,あとに残る物がない」「イベント主義,体験主義になってし
まっている」「『生き生き』や『わくわく』はあるかもしれないが,
『探究』がない」という談話があります。このように言われるのは教
師側に原因がありそうです。
 今こそ「教師のやる気」が求められています。来年度,職場の力を
結集してがんばりましょう。
■次の記事は
「エリート育成こそ主眼」―時代に合う新たなエリートを作るという
主眼が表に出てきた形だ―
 という記事です。
 ゆとり教育から基礎学力重視へ舵を切ったかに見える文部科学省。
ポスト産業社会を迎え,経済界は教育界に対して,これまで大量生産
を支えてきた平均的能力の高い多くの労働者を育てるよりも,飛び抜
けた「個性的エリート」の育成を求めている,というわけです。
 そしてそれに応えたのが新指導要領であり,知識偏重を脱して自ら
考えられるエリートを作るための総合学習である,としています。
 ただ,誤算だったのは学力が当初の予想を超えて進んだこと。経済
界からも,あまりに平均的学力が下がるのは困る,という声が出てお
り,文部科学省にも迷いが見える,と結んでいます。
 信じたくないですが,これは真実でしょうか。記事中には経団連会
長の教育改革を求める談話も紹介されています。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[2]来年度からの「総合的な学習の時間」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 100時間以上の総合的な学習の時間の時間,週あたりに直すと2
〜3時間です。持て余しそうだという声をよく聞きます。皆さんの学
校ではどのように計画を立てていますか。持て余したり,時間オーバ
ーになったりするとたいへんです。ただでさえよけいもの扱いされて
います。基礎・基本の敵とさえ言う人もいます。次の指導要領改訂で
は消え去るか,または大幅削減されるという声もあります。要は私た
ちの実践にかかっているのです。
 私は効果的に学習を進めるには70時間程度の単元を立案すること
がよいと思います。これは私見ですが,総合的な学習の時間には総合
的な学習の時間の基礎・基本があります。それが既に身についていれ
ば問題ないわけですが,現実にはそうはいかないでしょう。そのため
の時間として30(35)時間を充てるのです。
 では総合的な学習の時間の基礎・基本とは何か?その答の一つの基
準として有田和正氏の「18の学習技能」をあげます。既にいろいろ
なところで紹介されているのでご存じのことと思います。ひと言で言
うと「発見技能」「追究技能」「表現技能」です。
 単元を構想するとき,これらの技能をどこで身につけさせるかを位
置づけておきます。例えば聞き取り調査やアンケート調査が必要にな
るときに「おたずね技能」を位置づけておく,という具合です。調査
活動をする際「おたずね技能」を持っているかどうかはきわめて重要
なポイントとなります。
 105時間の中に「総合的な学習の時間の基礎・基本」のための時
間を別枠として設けておくのです。それをしないと必ず時間不足にな
り,ちっとも進まなくなってしまいます。105時間すべての単元構
想ではなく,70時間程度にとどめておいてちょうどよいあんばいに
なると思っています。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[1]「教育評価研究会」に参加しました
     愛知教育大学寺西和子教授と野田敦敬助教授
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 1月12日土曜日,愛知教育大学にて同大附属教育実践総合セン
ターの教育評価研究会が開かれました。この会は日本生活科・総合的
学習学会の愛知支部の1月例会を兼ねています。
 センター長寺西教授のポートフォリオ評価についての講演,そして
同氏と野田助教授の対談という内容でした。私も仲間とともに参加し
ました。以下はその概要です。
…………………………………………………………………………………
1 ポートフォリオは自己成長ファイルづくり
2 凝縮ポートフォリオ(1年間の成長をまとめる。例えば本やレポ
 ート,新聞づくりなど)
3 ファイルをどう生かすか,何に使うかが重要なポイント。
  成長をふり返る/自己評価力を育てる/家庭とのコミュニケーシ
 ョン/学びの再構成 
  自己評価はもちろん,相互評価や保護者の評価も盛り込む。それ
 が保護者の評価,また学習の説明責任につながる。
4 評価assessmentはプロセスを重視し,子どもを励まし,次へとつ
 なぐ機能を。
(1)評価の目的として,
   ?子ども理解 ?自己評価(ふり返り) ?教師の支援やカリ
      キュラム見直し ?コミュニケーションの機能(学校⇔家庭)
5 総合的な学習の時間の評価
(1)学習の節目節目でチェックを。単元を立てるときに盛り込んで
  おくことを忘れずに。
(2)子どもと共にという姿勢を持つ。
(3)体験を通して問題意識を持ったことを追究させる。そうするこ
  とで様々な問題が広がる。
    問題づくりに1学期かかってもよい。苦しむ過程がポートフォリ
  オに表れる。適切な支援を。
(4)これらを理解した上で,次の段階へ。
  ?育てたい力を明らかに。
   ・評価基準の作成。6年間で身につけることを見通した系統性
    を持たせる。
   ・問題解決能力/情報活用能力/見通しを持って学習する力
    コミュニケーション能力/表現力/企画力/自己評価力など
    ?単元全体のデザインに評価活動を位置づける。
    ・複数の評価者を単元全体に位置づける………相互評価
   ・自己評価能力を育てる………それが可能な授業づくりを。
      ・アンケート方式の形骸化した自己評価とならないように。
   ・ここでは相互評価を,ここでは自己評価をという使い分け
6 評価基準………できるだけ具体化させておく。
(1)年度当初立ててそのまま,ではなく子どもと共につくりあげ
  る。
(2)育てたい力の具体化
   テーマや子どもの実態,発達段階に応じて。
(3)例えば「表現力」の基準として
   新聞づくりを通して「絵やグラフをうまく使うことができた」
  「見出しを工夫することができた」など
(4)評価基準は変化していく
   ・実践とともに変化していく(子どもと話し合う)
    A(具体化)→A´(精緻化)→A´´(共有化)
 (5)たとえばコミュニケーション能力の基準
   ・どういう能力なのかを分析【評価基準】
  「人と通じ合える力」
    (かかわる,ふれあう,助け 合う,など)
    「人といっしょにできる」
    (交流する,など)
7 自己評価
(1)その子の満足度となりがち(満足感を味わえる単元づくりを)
    ・教師の評価との食い違いに気をつける………支援を。
…………………………………………………………………………………
 いろいろ気になる点がありましたが,最も気になったのは7の1で
す。「自己評価がその子の満足度となりがちであるから,教師の評価
と食い違った場合は教師の支援が必要」というところです。楽しい学
習で満足すれば,当然自己評価は上がるでしょう。それはそれでいい
のではないでしょうか。あまり評価のことをつつくと,評価のための
学習になる危惧をはらんでしまいます。
 総合的な学習の時間では共通の到達目標はないといわれる方もおら
れます。個別化された到達目標でよいと思います。何より学ぶ楽しさ
が味わえればよいのですから。(実は[3]で紹介する本は,こうい
う私の考えを批判しているのです) 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[2]― 総合的な学習の時間 ― 本格実施!!
  ぼやぼやしていられない「自分ならどうするか?」を考えたい
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 以前述べたように,我々教師の実践しだいで総合的な学習の時間は
つぶされてしまうかもしれません。総合的な学習の時間のねらいにつ
いて私見を述べます。問題提起となればうれしいです。
 私は,最終的には総合的な学習の時間のねらいは「追究能力を育て
る」ことではないかと思っています。追究能力イコール学習技能とい
ってもよいでしょう。
 指導要領に書かれている文言を十分に吟味してみる必要があると思
いますが,“自ら課題を見つけ,自ら学び考え,問題を解決する力な
どの「生きる力」を育てる”(指導要領解説:総則編)この一文では
「生きる力」を,例えば“問題を解決する力”としています。私はこ
れを「個性を生かして追究し,学ぶ楽しさを味わう」と解釈し,そし
て実践の目標をこの1点に絞って取り組んでいます。
 具体的な視点として「課題発見能力」「課題解決能力」「知識活用
能力」の3つの能力の育成を目指しています。平たく言えば「知識を
生きて働く智恵に変えていく」ことではないかと思っています。
 以上の点をふまえ,さらに私の実践をもとにまとめた「総合的な学
習の時間実践10か条」をご覧下さい。 URLは下記のとおり。
 http://www5a.biglobe.ne.jp/~shimacha/MyHomePage/sougou2.htm
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[2]子どもは発表させられている?
     有田和正氏のきつ〜いひと言!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 研究授業でよく見受けられる発表の場面。これに対して有田和正氏
がある雑誌に書いてありました。その中から気になる箇所を抜き出し
てみます。
「かっこよく発表させて『よくやってるな』と思わせようとしている
ことが見え見えの発表もある」
「何しろ練習に練習を重ねて,発表内容を覚えさせ,何も見ないで発
表させている。子どもたちは覚えたことを思い出そうと,目を白黒さ
せたり,・・・・」
「5〜6人のグループの子どもが,全員声をそろえて,呼びかけのよ
うな研究発表をしていたことである。これは研究発表ではない。劇で
ある」
…………………………………………………………………………………
 皆さんも「そういえばそういう授業見たことあるなあ」とお思いで
しょう。有田氏はこの文の中で「子どもが発表したくなるようにす
る」ことの大切さを述べておられます。発表したくなるような追究が
なされていないことが大きな原因であって,発表の時間だけをとらえ
て論じることはナンセンスでしょう。既にスタートの時点から問題あ
り,なのです。懸命に追究してきた子どもたちは発表したくてたまら
ないのです。要は追究の過程です。
 有田氏は矢作西小学校で10年間常任講師として指導にあたられま
した。私はその初年度から3年間研究主任として関わりを持ってきま
した。研究会当日もお会いし,この日の授業についてお話をしまし
た。研究の初期の段階で関わった私から見ても,矢作西小の子どもた
ちは大きく成長していました。発表力,そしてそれに対する発言力が
すばらしいと思いました。あの,引っ込み思案だった子たちが‥‥,
という思いです。これは有田氏が言われる「内容のある追究を重ねた
結果,発表したくなるような内容を持っている」からでしょう。
 最後にひと言。私は発表会の場面を研究授業とすることには常々反
対しています。私たちが見たいには「過程」なのですから。「過程」
を公開してこそ後の協議会が盛り上がると言うものです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[2]有田氏の「現場に見る総合的学習の問題点
    ― 教材(内容)のない指導案が多いのはどうしてか ―
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 こちらも見出しに誘われ,読んでみました。要点を紹介します。
 「指導する」とはどういうことなのか。これに対して有田氏は,
「子どもが見えない(分からない)ことを,見える(分かる)ように
することが指導であり,そのプロセスで学び方を体得させ,学習する
ことはおもしろいという学習意欲を引き出すことが指導である」
と言われている。さらに次のようなことを言われている。
《 指導案には「こんな子どもだから(実態把握)」「こんな教材を
 使って(教材選定)」「こんな指導をして(指導法の選定)」「こ
 んな力をつけたい(ねらいの決定)」を書くべきなのに,「こんな
 指導をして」ばかりを強調して,「こんな教材を使って」「こんな
 力をつけたい」がない。教材がないのに,どうして指導が成り立つ
 のか私には分からない。子どもの実態にあった教材を選定し,それ
 を使って多様な指導をし,ねらう力をつけるのが「指導」というも
 のである。「指導する」とはどうすることなのか,が忘れられてい
 る。》
 方法論ばかりが論じられていることを訴え,さらに,教材(内容)
のない指導案の具体例を挙げ(これについては省略),指導案を書く
ことの2つの目的について言及されている。
《 1つ目は,自分が本時にどんな内容を使って,どのような指導を
 して,どんな力をつけさせるかを書くもので,自分のための指導案
 である。2つ目は他人に見てもらうもので,見る人に「ねらい・内
 容・方法」が分かるように書かねばならない。》
 最後に,なぜこうも「方法」ばかりが前面に出てきたかということ
について,総合的な学習の時間の特質の誤解をあげておられる。総合
的な学習の時間では何でもあり,何をやってもいい,何かをやればい
いと誤解されていることを述べておられる。
…………………………………………………………………………………
 ごく最近あったことです。初任者が指導案について助言をもとめに
来ました。一通り読んで感じたことは,文字通り「指導案」であり,
「授業案」であることです。「学習案」になっていないのです。
 つまり「こうやって結論にたどり着かせよう」という教師の思惑が
強すぎるのです。これは教師の指導メモであり,子どもの「学習案」
ではないのです。つまり子どもサイドからは「学習」になっていない
のです。先生から「授業」されるのです。有田氏の言われる《「こん
な指導をして」ばかりが強調されている》は,このことにあてはまり
そうです。
 また,くだんの指導案は《子どもの実態にあった教材を選定し,そ
れを使って多様な指導をし,・・・・》が弱かったのです。
 独創的で個性ある教材を開発することは勇気がいることです。「学
校でこんなことやっていいの?」という不安もつきまといます。しか
し,これからはそんなこと言っていられないと思います。独創的な教
材を持ってくれば,子どもは必ず個性ある多様な追究を始めます。
 意識改革,発想の転換が大切です。
[3]私が最近読んだ本
   「 教育の流れを変える 総合的学習 」
              東京学芸大教授 児島邦宏:著
              ぎょうせい刊 ¥1,600(税別)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 初版が98年ですから,やや古い本になります。しかし,総合的な学
習の時間のあり方をめぐって混乱している今,初心に返って総合的な
学習の時間を見直すのに絶好の本です。
 著者の言葉を借りると
「中教審の専門委員として総合的な学習の時間の創設を提言し,また
文部省の教育研究開発学校の協力者会議のまとめ役として総合的な学
習の時間の研究開発を推進し,支援してきた立場から,その創設の背
景を含め,何なのか,なぜ創設されたのか,に可能な限り応えたいと
考え,小著をまとめたものである。」
 わたしも2度読みました。
[3]総合的な学習の時間の10カ条
 “総合的な学習の時間”によせる思い10カ条
●第1条  何よりも“基礎・基本”が大事!!!
 基礎・基本をおろそかにする教師は総合的な学習の時間を実践する
資格なし,と言いたい。
●第2条  スタートは “子どもの知的好奇心”!!!
 学習の始まりは子どもたちの知的好奇心をくすぐることであろう。
子どもは本来「知りたがり屋」である。「なぜ?」「どうして?」と
いう気持ちを刺激すれば,必ず学習はスタートする。
●第3条  間口が広く,奥行きのある題材を!!! 
 個性を生かした深まりのある追究が期待できる教材を開発すべきで
ある。だれもが興味・関心を持つことができ,そしてどこからでも切
り込んでいける間口の広さが必要。これは個の能力差に対応すること
にも有効に機能する。
●第4条  地域に根ざした生活密着型の単元を設定!!!
 自分たちの住んでいる地域を取り上げ,行動しやすくすることで,
いろいろな調査活動を体験し,常に地域を肌で感じながら学習を進め
ることができる。いつでも行ける,いつでも体験できる,思ったとき
すぐに対象に向き合うことができる,これは総合的な学習の時間では
不可欠の条件である。
 また,地域単元の最大のメリットは,地域の人々との交流を通し,
人々の生き様に直接触れることができるという点にある。これは計り
知れないほど貴重な体験となる。このことが「自分の生活をふり返
る」ことの原動力となる。
●第5条  ミクロの追究からマクロへの追究へ!!! 
 いきなりテーマに迫るような立派な追究問題を設定できる子はいな
い。些末な問題でもまずは認め,追究にかかる。些末に思えても,実
は大きな問題を内包している場合もある。まず,思ったことを直ちに
やってみよう,できることからやってみよう,である。これも個の能
力差に対応している。
●第6条  情報掲示板をフルに活用する!!!
 お互いの追究結果を発信しあい,相互に情報交換することは,子ど
もたちの自己評価,相互評価にも有効に作用する。ポートフォリオ評
価の初期段階の導入という点からも情報掲示板を中心とした追究を取
り上げた。
「計画カード」と「結果カード」の2種類を用意し,1回の学習が終
わるたびに追究の結果と次の時間の計画をカードに書く。そしてそれ
を全員が情報掲示板に掲示する。次回からもどんどん重ねて貼ってい
く,というものである。
●第7条  表現物を数多く作成する!!!
 自分の追究の成果を表現物に表すことは,2つの点から有効な手だ
てとなる。
 一つは,自分の追究をふり返り,そしてまとめることで次への見通
しを立てることができる点である。
 二つ目は,友だちに情報として発信することで相互評価の手段とす
ることである。自分の追究を友だちから評価され,そして自分も友だ
ちの追究を知り,そして評価する。メディアリテラシーの観点からも
育てたい力である。
●第8条  関係外部機関との連携を!!!
  学校外の方々と関わることで新鮮な刺激を受け,かつ貴重な情報が
得ることができる。また,別の見方をすれば,子どもたちの追究を専
門的な立場から評価していただくことができることも見逃せないメ
リットである。
●第9条  多面的な評価を!!!
 以下の3つの評価を心がけたい。
? 子どもが自分(たち)の学習を確かめるための自己(相互)評価
【子どもがする評価】
? 子どもたち一人ひとりの学習の成果と問題点を確認する評価【教
師がする子どもへの評価】
? 今後の指導の改善に向けた自己評価【教師の自己評価】
●第10条 追究問題の設定は“はじめに体験ありき”で!!!
 本気に,そして根気よく追究を継続させるためには,机上の空論で
はなく,自らの体験の中から疑問を持たせることが重要である。
「実は自分は何も知らない」「わからないことがたくさんある」とい
う知的なショックを与えたい。