
プロローグ
その夜、彼女の人生には突然終止符が打たれた。彼女は予想だにしなかった死を迎えた。
彼女はいつもと同じように仕事を終え、いつもと同じ電車に乗って、いつもと同じ道を家に向かって歩いていた。あと少しで我が家、そう思えた時だった。彼女は背中に激しい痛みを覚え、崩れるように道に倒れこんだ。
何が起こったのか、彼女には理解できなかった。一体何が・・・そう思った瞬間、彼女の視界は闇に覆われた。その後、彼女が再び目を覚ますことはなかった。
第一章
空はよく晴れ渡っていた。
秋だというのに日中は相変わらず残暑が厳しく、それでも朝夕はだいぶ秋らしくなってきた十月のある夜、普握田は、久しぶりに会った友人たちと飲み屋で飲んでいた。
昔から酒の弱かった普握田は、大学を卒業してからも相変わらず下戸で、ビールをコップ一杯飲んだだけで、顔はもう真っ赤に染まっていた。
ほろ酔い気分、というにはいき過ぎている彼の隣には、こちらも顔がタコ状態の由召根來が座っていた。彼も普握田のようにすぐに赤くなる体質だが、そこそこ飲めるほうだった。
さらにその隣にすわっているのは神部である。飲むと静かになるという性格は今も同じで、大いに盛り上がっている普握田と由召根來とは対照的である。
そんな三人は同じ大学のサークル仲間だった。
大学を卒業後、めったに会うことは無くなったが、この日たまたま道端でばったり再会した三人は、久しぶり、ということで近くの飲み屋に入ったのである。
「ところで、神部は今何やってんの?」
由召根來が神部の肩を軽く二、三回たたきながら言った。
「今は、フリーター」
「フリーター?じゃまさか、まだ例のバイトを・・・オーッと、そいつはいっちゃいけなかった」
「・・・・・」
「ま、普握田は、エセ探偵だがな」
由召根來は普握田のほうに向き返った。
「エセじゃないもん」
「だって君の推理間違ってばっかじゃん。大学生の時だってさぁ、全然だめだめだったし」
「それは昔の話。今は違うもん」
「ていうか、ほんまにやってるの、探偵?」
神部が会話に入ってきた。
「それはどうゆう意味?」
「いや、ほんまにやってるのかなぁ、と思って。第一、客くるの?」
「くるわけないじゃん」
由召根來が答えた。
「失礼な。ちゃんと来てますよ」
「じゃぁ、最後に客来たのいつ?」
「え?」
由召根來にきかれて、普握田は言葉をつまらせた。実際最後に客が来たのは・・・