仲井 斌 (なかい たけし)

専修大学法学部教授

 今は昔、独逸に赴(おもむ)きボン大学に政(まつりごと)学びたる者ありけり。独逸社会民主党(PDS)研究に学位とりてボンなる処(ところ)に永住の庵(いほり)を造(つく)り、物書きなどよろづの事に精を出しつつ自らボン(凡)人を名乗りて25年の月日を過ごしけり。人の定め一寸先も見えず。平成5年住み慣れし西ゲルマニアの都(みやこ)に別れを告げて帰国の途につきにけり。成蹊大学文門なるところに糧を求めたり。光陰矢のごとし、異国にさまよひし苦楽の日々の想ひ、ひとつ去りふたつ去りて、異邦人ふたたび邦人のアイデンティティを得たり。人々を環(めぐ)る境地ことのほか麗しく山々を覆ひし黒緑の森遥か連なり止まぬゲルマニアの地に永遠(とは)のアウフヴィーダーゼーンせしは悔やまぬこともなし。然(さ)れど過ぎたるは遠きにありて想ふこそ興あるものなれ。住めば都、ジパングの日々また愉(たの)し。
 大和の国、暮らし始め労ありけり。四半世紀にこの地に起こりしこと掻き消へて、名だたる人、あまた市井の語りごと、流行(はや)りの言の葉さへ知らず恥かきにけり。平成11年禄ありて専修大学の法門に入り「よろづ異国まつりごと物語」(国際政治史)「今様(いまよう)欧州事(こと)調べ」(地域研究W)など担ひける。
 特技なし。酔ひもの。麦酒(むぎざけ)中瓶(なかびん)ひとつ、葡萄酒(ぶどうさけ)ギヤマン器(うつは)にひとつ(ゲルマニア葡萄酒甘過ぎて喉にあはず。ローマ、ガリアの酒よし)。歌ひ劇・古(いにしへ)の洋楽心好し。野の球遊びは巨人、卵焼き稀なり。今は昔、社交ダンスに親しみて花よりタンゴの若きころあり。今は歳も経にければ花よりダンゴなり。さほど付き合ひにくからぬ者なり。

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