やっと更新できます。今回の出演者はHIDEさんです。
@HIDEとの出会い
HIDEとであったのは大学入学後すぐの事だった。桜の花が満開の季節、大分過ごしやすい陽気になってきた頃だっただろうか。行き交う新入生の笑い声は希望に溢れていた。
学食で友人と食事をしていたとき、友人の知り合いだった彼はおもむろに私達の席まで歩いてきた。厳つい体つきに、もじゃもじゃした髪型、懐柔的な笑顔を浮かべながら半ば小走りで。うるさい学食の中では声をはらないと会話が出来ない。私は軽く挨拶を交わすとすぐにまた友人の方へと視線を移した。
だがそこで出会って以来、数週間は彼と大学で話をする機会は無かった。同じクラスでもなければ、同じサークルでもない。大学なんて場所は、出きるだけ近い環境にいる人間同士が集団を作る場所だ。
それからしばらくして入学後初めての連休があった。ゴールデンウィークの到来だ。私はクラスの友人と江ノ島まで遊びに行く計画を立てた。参加者は私を含めて四人と決めた。I君、S君、T君の三人。いずれも指折りに仲の良い連中だ。そして出発日であった金曜日を首を長くして待っていた。
午前10時。待ち合わせ場所へ急ぐ。すると参加メンバーのリストに名を連ねていない人が一名・・・・。
厳つい体つきに、もじゃもじゃした髪型、懐柔的な笑顔を浮かべながら半ば小走りで。
こちらへと向かってきた。それは紛れも無くHIDEでした。そこにいる予定の全く無いHIDEがいるのです。そして一言・・・。
「グファファファ!I君から電話あったからきちゃったよ!おおうおおう!!」
グファファファ・・・。なるほど変わった笑い声だ。人と人の出会いとは不思議なもので、それ以来彼は私の数少ない友人の一人となった。
Aその正体は夢想家だ
彼は石川県出身の元ラガーマン。私も昔ラグビーをかじっていた頃が合った為、私達は頻繁にラグビーの話をする。誰の心をも和ませてしまうその笑顔には、愛想笑いなどという言葉は似合わない。私達に心のそこから笑うことの意味を教えてくれる満面の笑みを浮かべる。そんな彼のことを嫌う人は少ないだろう。だからだろうか、彼が時折発する意味のわからない言葉、顔に似合わないクサイセリフの全てが許されてしまう。そしてそれを真剣に自分に似合った言葉と確信している彼に、誰も指図をしようとしない。全てはその笑顔が許容してくれるのだろう。
反面、彼はダサい夢想家である。いつでも頭の中で自分の将来の理想像を描いている。叶うわけの無い夢をいつでも思い描いている。映画好きの彼の夢は映画監督になる事だそうだ。いつかハリウッドに渡り映画を勉強するらしい。そしたら素晴らしく良い映画を撮る自信があるそうだ。いつの日か私は彼に、こう質問した。
「映画監督なら、なんで今お前英語専攻してんの?」と
すると、こう即答してくれた
「グウファファファ。映画好きが映画を撮らなくてどうするんだ!俺は良い映画を撮るぜ。グファファ」
返答は質問の答えになっていない。どこからくるのか分からない、その自信はまさに素人が語る夢物語に過ぎない。だがこんな夢想家が近くにいてくれる事で、日本は平和であるといつも実感できるのである。
そんな夢想家は余りに夢想にふけっていた為、入学後1,2年は学校へも行っていなかった。朝に弱い彼はきっと、将来自分が撮る映画の配役でもベットの中で考えていたのだろう。今、卒業を間近にした夢想家は必死に単位習得に奔走している。もじゃもじゃ頭を掻きむしり、ガニマタで教室を往復する。その姿には、将来映画監督になるオーラなどまるで感じられない。変わりに私の目には、ただの怠け者の典型的なダメ学生として映るのだ。
夢想家を語るときに忘れてはいけないのが、ピーターパン症候群という側面の事である。就職したくない大学四年生。それは。最近私の回りでも人気急上昇中の進路である。来年から彼はシアトルの語学学校に留学し、その後インターンで会社に研修に入ると言う。目標の映画監督はいずこへいったのか。
私は頻繁に夢想家に指図する。「お前は口だけだ」と。すると決まって夢想家からの連絡はぷつりと途絶える。いくら電話してもすべて拒否されてしまう。毎回発する私のその一言が、夢想家の琴線にクリティカルヒットするらしい。
しかし、数ヶ月後夢想家から連絡が入る。「グファファファ」という笑い声から口火を切るいつもの会話が始まる。私達の関係はざっとこんな具合だ。特に何のプレッシャーにも駆られない友情で結ばれている。
夢想家の理屈は確かにおかしいものかもしれない。矛盾点はたくさんあろう。しかし、矛盾のない人間など、世の中どこを探しても見つからないだろう。本当にざっくばらんな奴とは彼のことを指すのだろう。
彼がシアトルから戻る頃には一体どんな夢物語を聞かせてくれるのだろうか。
教えてくれ夢想家よ・・・・・。
