計量経済学
この研究会では,観察されたデータによって日本経済や世界経済に関する知見を深めることを目的にしています.データをビジュアルに眺めたり,平均値を計算したりすることは,観察された対象を知る上で重要な方法ではありますが,それ以上でもありません.どうしてデータがそのように見えるのか,平均値が時点間や地域間でなぜ異なるのかという疑問には答えることができないからです.つまり観察されたデータを整理して記述するだけでは,そのデータの発生メカニズムを知るのに必要であっても十分ではないのです.データの発生メカニズムを知るためには,理論(モデル)が手助けになります.通常,理論というのはAという変数がA’という状態であるならば,Bという変数はB’になり,A’’という状態ならばB’’になるという具合に記述され,それはAという変数の状態を与えたもとでのBという変数の発生メカニズムを示していることになります.したがって,他の条件一定にしてAという変数を我々の意のままに自由に変動させて,Bという変数の変化を調べることができれば,変数Bの発生メカニズムを知る大きな手がかりになることは理解できると思います.これを実験と呼びます.実験を通じて変数Bの発生メカニズムがわかれば何が便利かといえば,変数Aの状態を与えればBの状態がわかるからです.これを予測といいます.残念ながら,我々が観察できる経済社会現象に関するデータは我々が能動的に行った実験の結果ではなく,我々は自然が行った実験結果を受動的に観察しているにすぎません.そこで,データの観察の仕方を工夫したり,統計的方法を工夫することによって,データの発生メカニズムを追求し,予測を行うことによって,我々の経済社会生活に役立てようとする学問を広い意味で計量経済学と呼んでいます.
研究会では,この計量経済学の手法を用いて,経済発展と環境保全の問題に取り組んでいます.先進国に住む私達は,資源やエネルギーが無尽蔵にあるものと思い込み物質文明を謳歌してきました.しかし,私達の生活を豊かにしてきた生産プロセスやエネルギーの燃焼が地球環境を破壊しつつあることが明らかになってきました.現在の開発途上国が日本のような先進国と同じ轍を踏まないためには,どのような制度設計が必要で,どのような施策があり得るのか,研究会では計量経済学の方法を用いたモデル(理論)を構築しながら追及していきます.観察するデータも日本のみならず,東アジアを中心とした様々な発展段階にある諸国に広がります.もちろん,分析を進めていく上で基礎的な経済理論,数学,統計学の知識は不可欠ですし,しっかりやろうとすれば決して楽勝な研究会ではないでしょう.そろそろ食わず嫌いを払拭し,楽勝を卒業してチャレンジしてみてはどうでしょうか.