参考資料;研究概要(抄)

夏に「研究概要」という、「卒論では、こんなことをやりたいです」という報告書を提出したのですが、これはその研究概要の中で、なんとか(かろうじて?)人に見せても良さそうな所を抜粋した物です。インターネット出現以後の著作権制度の動きが概観できると思います。いや、思いたいです。よかったらどうぞ。


 インターネットの出現は、すべての人に情報発信の機会を与え、一部の芸術家やミュージシャンに限らず、だれでも表現者として自身の作品を世に問うことが出来るようになった。例えば、写真を撮る人ならば、自分の作品を広く世間の人に見てもらいたいなら、以前なら雑誌に載るか写真集を出版するか個展を開くかするために、プロになってある程度名が売れなければならなかった。それがインターネットに自分のホームページを作り、そこに作品を載せることにより、世界中の人たちに見てもらえるようになったのである。
 インターネットは人々の生活を便利にし、潤いを与えるとメディアは囃し立て、世間にはインターネットは便利なものという空気が流れている。確かにインターネットは便利で、今後ますます重要なメディアになることだろう。しかし、インターネットに関する問題・課題は山積みで、これらの解決を待たねばインターネットが真に便利なメディアとはならないであろう。

 その山積みされた問題の中のひとつが著作権問題である。15世紀のグーテンベルクによる活版印刷技術の発明により出版特許として誕生して以来、著作権制度は時代の流れに応じて少しずつ変化して現在に至っているが、インターネットの出現で、その制度は大きな転機にさしかかっている。
 現在の著作権制度は、保護・規制の対象を出版社やレコード会社、放送局などを通じて情報を発信する者など、限られた少数の人にしていればだいたい良かった。アンダーグラウンドで個人が発行するものについては著作権侵害があっても経済的損害がないに等しいからである。
 それが、インターネットが現れたために事情が変わった。すべての人が情報発信できるということは、すべての人が他人の著作物を無断で利用し、世界中にばら撒くことが出来るようになったということである。また、プログラムやデータベースという新しい形態の創作物が出現、はじめはそれらに創作性が認められなかったので著作権はによる保護が無かった。著作物の定義は、「思想また感情」を「創作的」に「表現」したものであったからである。
 以下では、インターネット出現以後の各方面の動向を示す。



ヨーロッパの動向

ヨーロッパではデータベースを著作権の保護下に置くなどの動きが見られた。1991年に、コンピュータプログラムを著作権により保護する旨のEU指令がだされ、1994年の「情報化社会へのヨーロッパの途」構想の公表を経て、1996年3月のデータベース保護に関するEU指令が採択、それに呼応してEU各加盟国で立法化が進められている。データベースは、創作性の全く無いものに関しては、著作権のよる保護の対象にはならなかった。なぜなら、創作性が無いからである。96年のEU指令は、データベース産業の発達を促す為に、構築のために相当の投資を要したデータベースに関しては、著作権により保護をするとしている。

アメリカの動向

アメリカの情報基盤タスクフォース(IITF)内の情報政策委員会に設置された知的財産権ワークグループは、1994年7月の「グリーンペーパー」と1995年9月の「ホワイトペーパー」の2つの報告書で、デジタル著作権の保護強化を発表している。すなわち、データやプログラムをメモリへ蓄積することは複製であるとする米国固有の考え方を下敷きにして、ネットワーク上の著作物の利用は、メモリへの一時的複製を行う為、複製行為とし、ネットワークへのアップロードは複製物を配布する行為と見なし、「頒布権」による保護を主張した。

WIPO著作権条約とWIPO実演・レコード条約

WIPOとは国連の専門機関で、世界知的所有権機関が正式名称である。ここで著作権保護の国際的調和を図るため、ベルヌ条約の改定作業が進められている。ベルヌ条約は採択後110年以上経っており、また、119もある加盟各国の思惑の違いから、その改定は難航している。
 ベルヌ条約の改定作業の一環として、1996年12月に「WIPO著作権条約」と「WIPO実演・レコード条約」が採択された。「WIPO著作権条約」では、プログラムの著作権による保護を初めて明文化した。また、著作権の支分権に「公衆への伝達権」を盛り込んだ。「公衆への伝達権」は、インターネットへの対応として、著作物を公衆に提示された状態に置くことを含むもので、Webに著作物を無断でアップロードする行為は著作権侵害になる。
 「WIPO実演・レコード条約」は、著作隣接権についての規定。また、この2つの他に、データベースの保護に関する条約草案も検討されていたが、審議されなかった。

日本の対応

WIPOの新条約を批准する為に、日本は1997年6月に著作権法を改正、1998年元旦から施行されている。



各方面からの異論

1.GNUプロジェクトのcopyleft
 米国のリチャード・ストールマンは、知的所有権によるソフトウェアの保護は、単にプログラマの間に軋轢を生じさせるだけとし、「GNU(グニュー)プロジェクト」を立ち上げ、「copyleft」を提唱した。「copyleft」はつまり、プログラムはすべて配布自由で、無償でなければならないという考え方である。「copyleft」の精神のもと、GNUプロジェクトによって作られたGNUプログラムは、コピー自由、改変自由で、何人もプログラムを独占してはならないとされている。


2.CONFU
 上記の米国「グリーンペーパー」を受け、インターネット時代の公正使用(Fair Use)の有り方を論議する為に著作権者側と利用者側双方の団体、約100団体によるCONFU(CONference on Fair Use)が組織される。協議の結果、1996年12月、各種のガイドラインの提案を含むレポートが発表された。しかし、あまりにも公正使用の範囲を限定的に解釈しているとして、参加団体からも支持を得られなかった。


3.(米国)産業界内部からの反発
 米国では上記の「ホワイトペーパー」公表と時を同じくして、その一部を内容とする「NII法案」が議会に提出された。その内容は、著作権侵害者は財力に乏しい場合が多いことを理由に、インターネット・サービス・プロバイダーに著作権侵害の責任を一定限度転嫁するものであった。つまり、例えばある者が自分のホームページ上に著作権者の許可なく著作物をアップした場合、そのホームページのプロバイダーが著作権侵害の責を負うということである。この法案はプロバイダーからの強い反発に遭い廃案になった。
 しかし、1998年4月、プロバイダーの責任を限定付で認めるDigital Millennium Copyright actが米上院司法委員会で可決された。


音楽のネット配信とMPEG3問題


インターネットの発展と現行の著作権制度との衝突で、今実際に起こっているものがこの問題である。MPEG3とはサウンドデータの圧縮技術の一種で、CD並みの高音質と高圧縮率が特徴である。その優れた特質のためにインターネット上で無断複製による楽曲のMPEG3データが氾濫し、レコード会社や著作権権利団体などがMPEG3反対・排斥の声を高くしている。しかしながら、インターネットとMPEG3の出現により、アーティストは現行の音楽流通構造を介さずに直接聞き手に接触できるため、作曲家の坂本龍一氏などを始め、MPEG3を歓迎する見方も強い。だが、MPEG3には著作権保護機能が無いため、MPEG3対抗の著作権保護機能付き新フォーマットを開発する向きもある。



著作権集中管理について

1.私的録音録画補償金制度
 私的な録音や録画は本来認められているものだが、わが国の著作権法では、デジタル著作物の特質である完全な複製の容易性、改変の容易性を鑑み、デジタル方式の録音録画に関しては、機器類や空の媒体(例えばMD)の代金に上乗せして購入者から補償金を徴収する制度を採っているが、これをデジタル著作物の権利処理全般に及ぼす意見もある。しかし、この方法では実際の著作権者に補償金が届く見込みがない。

2.著作権集中管理
 著作権の集中管理といっても様々な方法が提案されている。まず、JASRAC(日本音楽著作権協会)のように、行政の関与のもとでの集中管理をネットワークにも及ぼす意見であるが、著作物利用料などに競争原理が働かず、利用者の負担が減らなくなり、また、利用者の利用控えが進むことで権利者側にもデメリットになるとして反対の声が強い。
 他方、デジタル著作権の電子的集中管理システムを民間で構築する動きがある。一つは森亮一教授の提唱する超流通である。これはネットワーク上のコンテンツを利用、あるいは使用する場合に、利用する都度に課金されるシステムである。もう一つ、注目されているものとして北川善太郎教授が提唱するCOPYMARTがある。これは、ネットワーク上に著作物データベースと著作権者データベースからなる著作物の市場を民間で構築し、利用者が著作物のコピーを入手すると自動的に権利者の講座にライセンス料が振り込まれる仕組みである。
 最近の傾向として、JASRACのような著作権集中管理団体を1団体だけに独占させず、競争原理を働かせるという議論がある。複数の管理団体の間で競争させ、サービスの向上、利用料の低減などが望めるという理論である。


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