法廷通訳において重要なことは、言語に関して不利な刑事被告人に対し、いかに信頼するに足りる通訳人を選任し、公正な裁判を受ける権利を保障するかにある。
しかしながら、法廷通訳人はただ普通の日常会話ができるというだけでは足りず、刑事裁判手続きや法律用語等をある程度理解し、さらには被告人の国の社会的、文化的実情にもある程度通じていることが望ましい。
だがの通訳の問題はただ単にソース言語からターゲット言語への事務的な変換を意味するだけではない。本や小説とは違い、人権が深く関わってくるのである。また日本人同士と違って、微妙な供述やニュアンス等を捜査機関側が敏感に感じ取ることは難しい。
これは、日本の裁判では被疑者、被告人が反省しているかどうかが、ある程度直接量刑に関係したりするので、通訳人を介する段階で、場合によっては彼等の処遇が変わるような差別が出てくることも考えられる。
しかしながら、そういったことに対処できるほどの高度な能力を持つ人々は限られてくるし、たとえある程度いたとしても、よりよい環境、条件の民間会社などで、その能力を伸ばしたいと思う人も多いだろう。
現時点では、基本的な会話能力を有し、かつ秘密を保持できるような誠実で真摯な通訳人を確保し、その上で育成していくほかはない。
ただ、少数言語の需要が大きいなど様々な実情を考えると、その通訳人の数や通訳の正確性、被告人の権利を担保できる制度が早く作られなければならないことは言うまでもない。
言葉の問題だけに適正かどうかを判断するには、基本的にその通訳人自身に任せる他はないが、その質を見極めたり運用の仕方など、制度あるいは周りの環境についてすべきことはまだまだたくさんあるので、今後深く議論していき、早い時期に通訳人制度を確立させていかなければならない問題である。