今のところ(2000年1月現在)、日本には法廷通訳人制度というものは存在していない。
法廷通訳人は各地域の高裁単位で通訳人名簿を作り、そこに名前を登録して、指名があれば引き受けるという仕組みになっており、これを他の地家裁に備え付けて、各裁判所における通訳人候補者の選択の幅が広がるようにしている。
また大阪弁護士会では独自の通訳人リストを作成し、さらに通訳人マニュアルを作ったり、弁護人、通訳人の相互研修を実施したりして外国人被疑者の権利保障に精力的に努めている。
また公判前には人権保障のため、以下の物が送付されることになっている。
起訴状謄本(18言語の翻訳)
弁護人に関する通知・照会書(18言語の翻訳)
通訳の要否に関する照会書(日本語、英語、中国語、タイ語)
しかしながら実務上では起訴状は日本語のみの記載しかなく、この謄本を被告人に送付して起訴する扱いがなされている。理解できない日本語の起訴状謄本を送っても意味がない。被告人にとっては弁護人と接見する際以外に通訳してもらう機会はないが、この弁護人の接見も義務付けられていないのでシステム的に問題がある。
1.外国人の基本的人権を保障するためには、捜査段階、公判段階の両方に母国語か第一言語を話すことができる別々の通訳人が付くのが望ましいが、捜査段階において通訳が必要になってくる時は、早朝もあれば深夜にもなる場合があったりするので、依頼する時が定まっていない。
2.通訳人が被疑者に脅されるなどの危険性もあるようで、なかなか能力の高い通訳人をお願いすることは難しい。
3.しかも通訳料金は国費であるため民間の基準よりも低い。
4.通訳人の数を考慮すると、捜査段階と公判段階の両方を通訳することもあり、これは客観的に見て公正とはいえなくなる。
5.平成10年の犯罪白書によると地方裁、簡裁において通訳翻訳人のついた外国人被告人の言語別終局人員の構成比では、
| 中国語 | 39.4% |
|---|---|
| 韓国朝鮮語 | 11.1% |
| タガログ語 | 9.3% |
| ペルシャ語 | 8.9% |
| タイ語 | 7.2% |
| スペイン語 | 5.5% |
| 英語 | 3.5% |
| ウルドゥー語 | 2.9% |
となって、アジア出身の者で63%、南米出身の者が26%を占めており、単に通訳の需要の高さを意味するだけではなく、さまざまな言語、それもアジアの少数言語の必要性が高いので、少数言語の通訳人が不足しており、この辺に公判段階のみならず捜査段階においても同様の通訳の難しさがある。