日本の通訳人制度の現状

通訳人制度の現状

今のところ(2000年1月現在)、日本には法廷通訳人制度というものは存在していない。
法廷通訳人は各地域の高裁単位で通訳人名簿を作り、そこに名前を登録して、指名があれば引き受けるという仕組みになっており、これを他の地家裁に備え付けて、各裁判所における通訳人候補者の選択の幅が広がるようにしている。
 また大阪弁護士会では独自の通訳人リストを作成し、さらに通訳人マニュアルを作ったり、弁護人、通訳人の相互研修を実施したりして外国人被疑者の権利保障に精力的に努めている。

 また公判前には人権保障のため、以下の物が送付されることになっている。
  
          その他については一部作成中。

通訳の必要性

 国際化社会の成熟に伴い、増加している外国人被疑者・被告人に対して自己の持つ権利や犯罪の嫌疑の告知などをすることによって、外国人の人権保障をしていく必要がある。以下のようなグローバルスタンダードもあり、日本も一部批准しているので、起訴時にその理解できる言語により起訴の理由(起訴状記載の罪名、罰条、公訴事実)を告知される権利のみならず、逮捕時の罪名、被疑事実の告知をされる権利等の保障も確立がされなければならない。
 
そして捜査の便宜のための通訳であってはならず、人権保護を念頭に置いた中立的な通訳活動が必要となってくる。 
【根拠条文】
・国際人権B規約(日本も1978年に批准)
9条2項 「逮捕される者は、逮捕のときにその理由を告げられるものとし、自己に対する被疑事実を速やかに告げられる。」
・国際人権B規約
14条3項(a)「理解する言語で速やかにかつ詳細にその罪の性質および理由を告げられること」
14条3項(f)「裁判所において使用される言語を理解すること又は話すことができない場合は、無料で通訳の援助をうけること。」
・刑事訴訟法175条
「国語に通じない者に陳述をさせる場合には、通訳人に通訳をさせなければならない。」
・国家公安委員会規則「犯罪捜査規範」232条 (捜査段階)
・世界人権宣言 10条
「すべて人は、自己の権利及び義務並びに自己に対する刑事責任が決定されるに当たつて、独立の公平な裁判所による公正な公開の審理を受けることについて完全に平等の権利を有する。」
・あらゆる形態の拘禁・受刑のための収容状態にある人を保護するための諸原則  
原則10・11の2項
原則14「逮捕・抑留・拘禁を行う当局によって用いられる言語を十分に理解しまたは話すことができない者は、そのものの理解する言語により、原則10(略)に関する情報を速やかに告知される権利を有する。」
・居住する国の国籍を有しない者の人権に関する宣言
・被拘禁者処遇最低基準規則
・人権および基本的自由の保護のためのヨーロッパ条約

 しかしながら実務上では起訴状は日本語のみの記載しかなく、この謄本を被告人に送付して起訴する扱いがなされている。理解できない日本語の起訴状謄本を送っても意味がない。被告人にとっては弁護人と接見する際以外に通訳してもらう機会はないが、この弁護人の接見も義務付けられていないのでシステム的に問題がある。


通訳人依頼の問題点

 1.外国人の基本的人権を保障するためには、捜査段階、公判段階の両方に母国語か第一言語を話すことができる別々の通訳人が付くのが望ましいが、捜査段階において通訳が必要になってくる時は、早朝もあれば深夜にもなる場合があったりするので、依頼する時が定まっていない。
 2.通訳人が被疑者に脅されるなどの危険性もあるようで、なかなか能力の高い通訳人をお願いすることは難しい。
 3.しかも通訳料金は国費であるため民間の基準よりも低い。
4.通訳人の数を考慮すると、捜査段階と公判段階の両方を通訳することもあり、これは客観的に見て公正とはいえなくなる。
 5.平成10年の犯罪白書によると地方裁、簡裁において通訳翻訳人のついた外国人被告人の言語別終局人員の構成比では、

中国語 39.4%
韓国朝鮮語 11.1%
タガログ語 9.3%
ペルシャ語 8.9%
タイ語 7.2%
スペイン語 5.5%
英語 3.5%
ウルドゥー語 2.9%

となって、アジア出身の者で63%、南米出身の者が26%を占めており、単に通訳の需要の高さを意味するだけではなく、さまざまな言語、それもアジアの少数言語の必要性が高いので、少数言語の通訳人が不足しており、この辺に公判段階のみならず捜査段階においても同様の通訳の難しさがある。

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