Myth−よくある勘違い

アメリカの大学は入学するのはやさしいが,卒業するのは難しい

NO→Pharm.D.コースは入学するのも卒業するのも難しい

 

・アメリカには全米で約85校しか薬学部はない。ということは,州によっては州に1つしか薬学部がないところもある。州立大学は州の住民を優先して入学させる規定になっており,留学生は空きがあるときのみ(事実上空きなどほとんどない),ときに受け付けないとする大学もある。大学の個性を調べることが重要。フロリダ大学のように,外国人に寛容な大学もある。

・アメリカの薬剤師の社会的地位は非常に高く,薬剤師は安定した生活が送ることができる常に人気の職業。不景気なアメリカにおいては,アメリカ人にとっても,憧れの職業の一つである。入ることのほうが,むしろ大変。

 

日本では英会話は伸びないが,アメリカに来れば伸びる。アメリカに留学するのが一番の策

NO→そんな保障はどこにもない。

 

・日本で英会話がある程度できるまで勉強し続ける根性がない人は,アメリカに来ても伸びない。Pharm.D.コースに行き着く前に語学学校で終わってしまう可能性もある。年齢が上がれば上がるほど,語学力を伸ばすのは時間がかかる傾向がある。Pharm.D.コースで要求されるのは日常会話のレベルではない。TOEFL600点あったとしても授業についていける保障などない。医歯薬系プロフェッショナルスクールは,人の命を預かる仕事という点で,他学部の大学院とは性質が異なる。ちょっとした聞き間違えが,患者の命にかかわる大事を招きかねない。コミュニケーション力が非常に重要。

 

資金は足らないが,働きながら勉強すれば何とかなる

NO→授業についていくので精一杯。アメリカ人でさえ落第生が毎年でる。

 

・アメリカのPharm.D.コースは,日本の大学のように試験結果に寛大ではない。再試験は形式上あることにはあるが,事実上の落第通告である。南カリフォルニア大学では,1科目でもDがあると,進級させてもらえない。一度失敗すると,取り返しのつかない結果になる。常に試験は本番一発勝負。

・留学生は労働時間に制約があり,たとえインターン免許を持っていても,1箇所での労働のみしか許可されない。アメリカ人のように,数箇所の職場を掛け持ちすることはできない。資金を補えるのは4年間働いて半年分が精一杯。お金は足らないが,とりあえずアメリカに行ってしまおうというのはあまりに無計画。

 

アメリカに留学すれば,将来日本で良い職につくことができる。

NO→そんな保障はどこにもない。世の中そんなに甘くない。日本には日本の流儀がある。全ては心がけ次第。

 

・卒業できれば道も開けるかもしれないが,途中で挫折すれば,ただの「留学崩れ」。日本でもアメリカでも中途半端になってしまう。この場合,日本での経験のない人はさらに痛い。英会話が意思の疎通ができる程度まで上達する人は多いが,二十歳すぎで英語を始めてもバイリンガルになるのはまず難しい(不可能とは考えたくないが,厳しい現実)。特にアメリカ人レベルの英語で正確で上手い文章を書くことは至難の業。

・日本語がきちんと話せること(敬語が使えること),書けることは基本中の基本。日本の社会は,報告書・電子メールの書き方,電話の応対の仕方,患者さんとのコミュニケーションのとり方など,大学卒業後いわば2年間は,社会人として薬剤師としてのトレーニング期間。ここの時期をスキップしてしまった人は,学生時代のお友達感覚での電子メールのやりとり,話し方から脱出できない傾向にある。目上に与える不快度は高い。特に最近は,言葉の言い回し,敬語の使い方がきちんとできない人が多く,社会経験のあるなしが,文章を見た一瞬でわかってしまう。逆に,社会経験があって書き方がきちんとしていない人は,仕事ができない,もしくは頑固で人の注意など見向きもしない人間像を想像させる。帰国後日本でキャリアアップするためには,きちんとした日本語を使えることが重要。それがあってこそ,英語が光るのである。

・アメリカで習得したこと全てを満足に適応できる職場に出あうことは簡単ではない。特に薬剤師のようなドメスティックな職業に関しては,日本の薬剤師業務がわからない人間,周りとの調和ができない人間は,臨床現場では使えない。日本の島国文化的発想を理解せずに,アメリカ式のダイレクトな物言いが染み付くと,周りから拒絶反応を招く。出方を間違えれば「アメリカ帰り」のステレオタイプ的なレッテルを貼られ,頭を押さえつけられておしまい。薬学の社会は,今でも縦社会。狭い世界だけに,失敗はしたくない。