WU☆ニュース≪6≫
特集テーマ連載「初夏の景色」@〜D
2002/05/12
5月の連休も瞬きする間に過ぎて行きました。
今年は梅雨のはしりのような天候で幕をあけた皐月ですが、今回のニュースから数回にわたり「初夏の景色」と題してWUメンバーによる各地の初夏の一頁をご紹介させて頂きます。かつて訪れたことのある思い出の風景や、今度ぜひ訪れてみたいと思う風景に出会って頂けることを願いつつ、DRでの国内旅行をお楽しみいただければ幸いです。
初夏の景色@ 〜山形〜
静岡県在住 1期生・齋藤俊之
「蔵王」と聞くと宮城蔵王と山形蔵王のどちらを先に思い浮かべるだろうか。
山好き、スキー好き、温泉好きにはたまらない蔵王山は宮城県と山形県に裾野
を広げる広大な山である。だから、蔵王に来る時には、自分は山形の蔵王に行こう
としているのか、 宮城の蔵王に向かっているのか意識しないと、ほら、迷ってし
まうよ。
東北自動車道と山形自動車道の村田ジャンクションの手前にある、村田インター
チェンジの出口案内標識には蔵王の表示が大きく構えてあるのでうっかりすると
山形の蔵王に向かっている人は慌ててしまう。そんな事情を察してか、ガードレ
ール脇に、「山形蔵王」はそのまま本線を直進せよと小柄な指示板が何枚も立ち
並び本線へ導く気苦労がにくい。
冬は路肩に雪がつもり、沿線から見える景色も白、灰色一色で厳冬を目から体
感からも感じさせるのだが、今回は違う。鮮やかなさまざまな緑色の木々に覆わ
れた山、そして路肩の若芝が初夏の日差しに照らされ、車内に入る風もなんとも
心地よい。贅沢だと感じる一瞬だ。そんな気持ちの変化を感じつつ、この立て看
板を横目にもうすぐ山形県だ。(終)
≪6≫-A
2002/05/13
例年、連休後には夏休みの計画を企て旅行社のカウンターへいくこの時期。院生になってからは、読む本が各地のガイドブックからレポート課題図書にかわりました。来年はまた旅行社を訪れていることでしょう。さて、前回は山の息吹が感じられる蔵王の話題でした。今回は米どころ新潟から。
初夏の景色A 〜新潟〜
新潟県在住 四期生・佐藤勝矢
私が暮らす新潟県上越市に桑取谷という「まんが日本昔話」そのままの山里
があります。日増しに色合いを増す緑、耳に心地よい川のせせらぎ。この時期
山の上からは、棚田のあちこちで田植えの姿が見渡せます。また山の幸が豊か
で、今は破れ傘(聞いたことあります?)、うど菜、筍が旬です。この時期に
桑取谷にあるお宅を訪ねると、必ずこれらの山菜の料理を勧められますので、
慮したら損です。山菜は大好きなのですが先日、山で大の苦手な蛇にばったり
出くわし、不肖私、しっぽを巻いて逃げ帰ってしまいました。
≪6≫-B
2002/05/15
ツツジの咲く頃はまた、蕨採りの季節でもあります。日当たりのよいカヤの繁る山の斜面。目を凝らしてみると、力強くて、それでいて柔らかな蕨が頭をもたげている姿を見つけることができます。
一本見つかればしめたもの。少なくても10本は近くで収穫できるはずです。気をつけないと、うっかり足で踏みつけてしまっていることも。
そして木苺の花が咲いている場所を記憶にとどめながら散策が続きます。
さて前回の新潟では山里のあたりを歩きましたので、今回は同じ米どころ、秋田県の町中に出てみることに致しましょう。
初夏の景色B 〜秋田〜
福島県在住 2期生・星亮一
20日ほど前、秋田県の角館町に行って来ました。今年は桜の開花が早く、
もう葉桜でした。この町は不思議な魅力があります。東北の血と京都の公家
の血が入り混じったブレンド文化なのです。ここの文化は戦国大名芦名氏に
よって築かれました。芦名氏は私が住む福島県の会津七十万石の大大名でし
たが、仙台の伊達政宗に敗れ、その後、転々として、この角館に来たのです。
領地はわずかの一万五千石でしたが館を築き、京都の文化を入れ、城下町
を作りました。その後、佐竹氏が入り、明治を迎えたのですが、武家屋敷が
そのまま今日まで残り、その風情はなかなかのものです。
商店街はアンティクな店が並び、人力車が走り、大正ロマンの雰囲気もあ
り、楽しい町ですね。帰りに「角館」という酒を求めてきました。これがう
まい。美人も多いし、皆さんにお勧めのコースです。来週は山形県最上川の
舟下りです。いずれも私が講師を務める「星亮一と歩く歴史探訪の旅」です。
≪6≫-C
2002/05/16
歴史探訪の旅を続けられる星さん。
このDRでの6回にわたる連載でお馴染みになった『白虎隊と会津武士道』がいよいよ5月20日に全国一斉発売(平凡社新書)されます。
さて、歴史の町といえば、こちら大阪も見所がたくさんですが、今回は日々の生活の中にすっぽり溶け込んでいる静かな町の風景をご一緒させていただきましょう。
初夏の景色C 〜大阪〜
大阪府在住 3期生・安田保
初夏の陽気にさそわれて、近所の散策に出かける。
大阪城から天王寺にかけて大阪の中心部を伸びている上町台地を歩くのが
お気に入りのコース。
四天王寺近くに清水寺という小さな寺がある。寛永17年(1640)に京都
の清水寺を模して作られたそうだが、訪れる人は多く無い。
ここには大阪市内唯一の天然の滝『玉出の滝』があり、滝の奥には不動明王
が祀ってある。床机に腰掛け、しばらく滝を眺めていると、水音以外に聞え
て来るものは無く、時の経つのを忘れてしまう。マイナスイオンを吸収し、
足取りも軽く帰路につく。
≪6≫D
2002/05/22
そろそろ、梅雨色の空がお目見えするようになりました。紫陽花の葉裏に、蝸牛がそっと出番をまっているかもしれません。「自然」はいつも私達に語りかけてくれます。「景色」はいつも私達の心を和ませてくれます。風の音に、葉のそよぐ音に、流れる水音に、耳を傾けていると特別な時の流れが私達を包み込んでくれます。今回でご紹介がラストになります「初夏の景色」は、そんな特別な時の中に見えた蜃気楼なのかもしれません。
初夏の景色D〜忘れ去られた能舞台〜
東京在住 3期生・宮西ナオ子
その能舞台は、深く、新しい緑の中で、ゆったりとくつろいでいるように見
えた。能舞台を囲む、初夏の生命力あふれる樹木や草花は、全身から湿った
空気を吐き出し、その周辺一帯は、まるでバリ島で見る聖域のようだった。
熱帯の神秘的な雰囲気を演出する、ほのかな甘い香りで満ちている。
この数年、しばらく能を演じられたことのないという、人々から忘れ去られ
た能舞台。かつてここで演じられた、さまざまな能の数々を思い出し、反芻し
ながら、まどろんでいる美しい老人のようでもあった。朽ち始めた舞台以外、
何もない空間には、美しさと激しさと、悲しさと喜びが見え隠れ、実に表情
豊かで、いつまでも見飽きることはなかった。明らかにその能舞台の持つ、
ある種の意志を感じた。空間に意志がある。いや、空間は意志の集まり……。
そこから静かな風が、時のように、静かに流れていた。