演習V 前期個人プレゼンテーション 2002年7月4日
出版不況
1.鈴木書店の倒産
・鈴木書店とは…?
人文社会科学書専門の中堅書籍取次。取次とは、出版社と書店を結ぶ問屋のような存在で、日本ではトーハンと日販が2大大手と言われている。同書店は、昭和23年(1947年)の設立。利幅を薄くして「良書を普及させる」ことを経営方針に掲げ、岩波書店や有斐閣、東大出版会筑摩書房などをはじめとする出版社の人文社会科学系の専門書を中心に、大手書店や大学生協などに配本してきた。発行部数三千部ほどの専門書、学術書を着実に流通させる手法を戦後確立したのがこの鈴木書店。日本の人文社会分野の研究水準を底上げし支えた。
・倒産の経緯
いわゆる「出版不況」により鈴木書店の経営は悪化していった。87年度から98年度まで赤字を計上。最大の取引先の岩波書店が98年に役員を派遣し、本社の土地の売却やリストラ策を実行したが、経営状況は好転しなかった。2001年11月下旬、出版社側に債権の一部を放棄してもらい、新会社を設立する再建案を提示した。しかし、協力が得られず、納品や取引停止などの信用不安が広がっていた。同年12月7日東京地裁に自己破産を申請し、事実上倒産した。負債総額は約40億円とみられる。
・出版社の倒産・合併の動き
98年…読売新聞社が中央公論社を買収
99年…婦人画報社がフランスの大手出版社ガシェットの傘下に
京都の光琳院出版が自己破産→写真集『空の名前』がベストセラーになって元気がいい出版社と見られていた
01年…小学館がプレジデント社を実質買収
2.出版不況の現状と原因
人気雑誌を多数刊行するマガジンハウスでさえ、売上がここ数年で3割近く落ちこみ、赤字・無配に転じている
・長引く不況
・読書離れ(特に若年層)…読書スタイルの変化
コンビニやキオスクの乱立…雑誌は気軽に手に入る(立ち読みも含)
→書籍を手に取る機会が減る
・情報源の多様化…携帯・パソコン(お金もそちらにかかる)
・マンガ喫茶・大型古本店などの出現…ブックオフが代表
しかしながら、出版業界の構造のほうが根本的問題
.出版社・取次・書店間の「負のスパイラル」
・ 新書・文庫本ブーム
新刊依存…70年代は2万タイトル前後、今はその3倍
一点あたりの売上が減っているから、新刊をどんどん出して穴埋めしようとする。しかしタイムリーで「二匹目のドジョウ」的なもの が多く、すぐに飽きられてしまう。
書店は出版社の「書庫」?…大型書店が取次のバックアップで次々誕生。しかし、本の売上が伸び悩んでいるため、書店は在庫を持て余 している状態
・専門書はより高く…出版不況により、2000円以上の専門書の売れ行きはガタ落ち。出版社は本の値上げをし、結局ますます売れなくなる
・ 定価販売の弊害…再販制度と表裏一体 価格競争が起こらない
委託制やマージン一定
中小取次・書店に不平等な、「納入さえすれば代金は支払われ、返品分は後日清算」の慣行
3.出版界の新しい動き
・ オンデマンド出版…消費者の要求を受けてデジタルコンテンツを直接的に紙へ印刷し、納品するサービス。従来だと絶版・品切れなど で入手困難だった商品を1冊単位で購入可能(コストは高い)。出版社は在庫を抱えるリスクを減少させることが可 能となる。しかし、著作権の問題(著作権使用料が大幅に減る)など課題も多い。ちなみに、ヨーロッパではマイ ノリティーの文学者を中心にオンデマンド出版に対する取り組みが始まった。アメリカでは、ビジネスとして認め られつつある。
・ ウェブマガジンの進化…マガジンハウス 「デジタルマッツ」
編集のノウハウをウェブにも使う
・インターネット書店の淘汰…サービスの充実、多角化
・ 付録つき雑誌…02.5コミックバンチ ケンシロウフィギュア
01.12なかよし ゴマキフィギュア
style創刊号 ストッキング
4.まとめ
・旧態依然のシステムが生んだ「起こるべくして起きた」不況
・ハリーポッターブームなど明るい話題も
【参考URL】
経済産業省『出版業界の現状と課題』http://www.meti.go.jp
impress Watch http://career.impress.co.jp/im0205/break.htm
web産経 http://www.sankei.co.jp/edit/anke/kekka/0820books.html
【参考文献】
小田光雄『出版社と書店はいかにして消えていくか』ぱる出版 1999年
畠山貞『出版流通ビッグバン』日本エディタースクール出版部 1998年
清丸恵三郎『出版動乱』 東洋経済新報社 2001年
小林一博『出版大崩壊』 イースト・プレス 2001年
佐野眞一『誰が本を殺すのか』 プレジデント社、2001年